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日々雑感(ミステリ感想中心)

兇人邸の殺人(今村 昌弘/東京創元社)

107.兇人邸の殺人(今村 昌弘/東京創元社

総評:★★★☆☆

おすすめ:パニックホラーとミステリのフュージョン。『屍人荘の殺人』シリーズが好きな方へ。

 

あらすじ(引用)

廃墟テーマパークにそびえる奇怪な屋敷。

そこに入ったが最後、

姿を見ることは二度とない。

“廃墟遊園地”に建つ奇怪な屋敷「兇人邸」。班目機関の研究資料を探すグループとともに、深夜そこに侵入した葉村譲と剣崎比留子を待ち構えていたのは無慈悲な首斬り殺人鬼だった。同行者が次々と惨殺され、比留子は行方不明になってしまう。絶体絶命の状況下で葉村は比留子を見つけ出し、謎を解いて生き延びることができるのか。『屍人荘の殺人』の衝撃を凌駕するシリーズ第3弾。対談=綾辻行人・今村昌弘

 

 


魔眼の匣の殺人の内容もほぼほぼ忘れかけてる中で、やっと文庫化したので読んだのだけども、うーん...

特殊設定ミステリ、全く嫌いじゃないし、なんなら白井智之とか大好きなんだけど、なんかこう、このシリーズあんまりピンときてなくて...

とはいえこのミス4位だし、私が気づいていない良さがあるのかな〜と思って感想を覗いてたところ、まぁ出るわ出るわ酷評レビューが...

そもそも葉村譲と剣崎比留子のコンビが好きでないとこのシリーズしんどいよね。かなりキャラ小説って感じの文体だし。文庫版後書きで綾辻行人との対談が載ってたんだけど、今村先生は元々ラノベ系の小説書きだったらしくて、大変納得いきました。

自分の推しは明智さんなので...いつまでも明智さんの影を追ってしまうよ......というか比留子は全然ホームズじゃないから......

ということで、ネタバレあり感想もかなりネガティブ寄りの感想になってしまうのだけど、一応4作目への引きもあり、特殊設定クローズドサークルなので、シリーズが好きな人なら読んでも良いのではという感じ。はい。

 

 

 


※以下ネタバレあり感想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


特殊設定ミステリの難しいところは、アンフェアにならないような伏線の出し方だと思っていて、例えば今回で言うと「生き残りは巨人の特性を持っているから、怪我をしてもすぐ回復する」というやつ。

いや、確かに何度もその設定は出てきてたけど、「大量出血してもものの数分で完治しました!」って、服に血がついたりしないのか?とか脅威の回復力ってそんなレベルなん??とか色々アンフェアに感じてしまってですね。

 

メイントリックは巨人の特性によるものとしても、もう一押し、裏井が犯人で間違いないことを裏付ける証拠があった方が納得感があったなぁ。「おそらくこうだろう」の部分だけで推理を構築されるとさすがにアンフェアがすぎる気がするんだよね。

 

あと、酷評寄りレビューでもよく言われていて、かつ自分もモヤっとした点は、

①巨人のパニックが強すぎて殺人どうでも良い(犯人探しの緊張感がない)

②裏井の動機が酷すぎる(家族になるために無関係の人を殺し、全くの他人の剛力を庇うためにウルトラCのトリックを使う)

 

一つ目はまぁ、この特殊設定だとそうなるよね、というか、(良い意味で)巨人描写が凄すぎるが故にと言う感じではあるけど、まじでこんなヤバい状況で犯人当てしてる場合じゃないし比留子のいうとおりすぎて。

パニック×ミステリというのは他にも作品がいくらでもあるわけだけど、例えば紅蓮館や蒼海館の方は(ホラーではないから本作とは違う趣ではあるけど)パニック要素と推理に関する緊急性・切実さがちゃんとマッチしていて違和感がなかった。

 

あと今回安楽椅子探偵ポジになるまでのシチュエーションは面白かったけど、作中でも言及してた通り、葉村が取ってくる情報次第でしか推理できないから「ほんまに葉村情報のみで推理しとんの〜?」感は常にあった。どうやって事細かに伝えてるんだ、葉村。

 

二つ目については、正直新本格ミステリだとクソ動機は例を挙げるにキリがないので、個人的には普段そこまで気にしないと言えば気にしないのだけど、今作は「ずっと剛力を庇うかのように見える真犯人の意図が見えない」という話で引っ張っていたからには、もう少し納得できて驚きのある動機の方が良かったかな。

 

あと剛力結局どうなったんだろうね。

幕引きをあれにしちゃったから書く余白なかったのかもしれないけど、若干尻切れトンボ感。

 

やっぱり全体的に今村作品合わないのかもしれん...でも次が出たらまた読んじゃうかも。文庫化したら。