ゆるむしの森プロジェクト

休耕田に自然発生した森林緑地「ゆるむしの森」の観察、チョウ類を中心とする調査記録、管理・運営活動を中心とする情報ブログです

カテゴリー別記事

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「ゆるむしの森」は、関東平野の休耕田跡に自然発生した森林緑地です。ハンノキ、アキニレ、エノキ、ブナ科樹木、ヤナギ類、メダケなどが生える林とイネ科植物を中心とする草地が形成されています。緑地形成は発展途上の段階にあり、植生の大きな変遷とともに、生息する昆虫の量的・質的分布の変化が見られます。私たちは、この緑地を生物多様性の復元のモデルの場として捉え、チョウ類を中心とする生態調査と保全を行なっています。

            

ゆるむしの森のチョウー2025年のまとめ

2026.01.02更新

カテゴリー:ゆるむしの森のチョウ

2025年もあとわずか。今年も多少の数の変動はあるものの、例年通りのチョウ種が見られました。モンシロチョウの発生が特に目立ち、ムラサキツバメやクロコノマチョウなどの南方系の種も一段と増えてきました。やはり、地球温暖化の影響が大きいのでしょう。

ここでは過去5年間の観察をまとめてYouTube動画として紹介します。

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タネツケバナ

カテゴリー:チョウの食草と食樹

       

タテネツバナ Cardamine occultaアブラナ科タネツケバナ属) 🟠食草とする幼虫のチョウ種:モンシロチョウ、スジグロシロチョウ、ツマキチョウシロチョウ科

アブラナ科の越年草、あるいは一年草です。別名、タガラシ、ミズガラシ、コメナズナともよばれます。茎下部から分枝して高さ 10〜30 cm になり、白い花を咲かせます。アジアの農耕地域に広く分布する植物で、日本の全土(北海道・本州・四国・九州・南西諸島)に分布します。平地の水田、あぜ道、湿地、溝、河川敷などの水辺に自生し、湿った場所を好んで群生します。水田雑草の代表の一つです。

水田の周囲によく見られるタネツケバナですが、稲刈りが終わった頃(10 月)に発芽し、葉を放射状に広げた状態で越冬し、翌春に成長し、花を咲かせます。茎は暗紫色を帯び、葉は互生し、根元と下部に一回羽状複葉の葉をつけます。葉の大きさも、草丈に応じて大きく変化します。

花期は 3 - 5月です。白色の小さな 4 弁花(十字花)を 10 - 20 個つけます。果実は棒状で上を向き、長角果は長さ2 cm ほどです。

シロチョウ科のいくつかの種の食草で、特に、春に 1 回だけ発生するツマキチョウが好んで産卵する植物です。田んぼやあぜ道によく生えているために、耕作とともに除草されることが多く、しばしばツマキチョウの幼虫が駆除されてしまうことが起こります。

       

カテゴリー:チョウの食草と食樹 

5 月のチョウ-2025

カテゴリー:生き物観察

5 月に入ると、見かけるチョウの種類も多くなってきます。ここでは、2025 年 5 月にゆるむしの森で目撃できた主なチョウを紹介します。例年と同様な種類の発生が確認できていますが、個体数は若干増えており、森の植生の変遷と成長に伴うものでしょう。

写真1 はアゲハチョウで、ホトケノザで吸蜜していました。ホトケノザで吸蜜する姿はこれまであまり見かけたことはありません。

↑写真1. ホトケノザで吸蜜するアゲハチョウ(2025.05.05)

アゲハチョウ科の種は 5 月から目立ってきます。5 月の森内には、毎年、あちこちスイカズラの花が咲き、ジャスミンのようないい匂いを漂わせますが、今年もナガサキアゲハ写真2)やジャコウアゲハが盛んに訪れていました。

↑写真2. スイカズラで吸蜜するナガサキアゲハ(2025.05.20)

ジャコウアゲハは、食草のウマノスズクサの周辺をユラユラと飛んでいることが多く、時々周辺の樹木や草に翅を休めます。写真3 は、柿の葉の上に止まったところを撮ったものです。

↑写真3. ジャコウアゲハ(2025.05.05)

ウマノスズクサをチェックしたら、早速産卵と幼虫の発生を確認できました(写真4)。

↑写真4. ウマノスズクサの葉裏に位置取るジャコウアゲハの幼虫(2025.05.28)

森内には、ところどころにタヌキのため糞があります。タイミングがいいと、ため糞の養分を吸いに来るチョウに出会えることがあります。今年の 5 月は、クロアゲハが訪れていました(写真5)。そのほかには、コムラサキやウラギンシジミが訪れていましたが、シャッターチャンスがありませんでした。

↑写真5. ため糞の養分を摂るクロアゲハ(2025.05.20)

5 月は、スイカズラと入れ替わるようにウツギの花が咲き始めます。早速モンシロチョウが訪れていました(写真6、7)。

↑写真6. ヤエウツギ(ウツギの品種)の花を訪れるモンシロチョウ(2025.05.28)

春先に発生したモンシロチョウは 5 月初旬に個体数を減らしますが、下旬から 2 化目が発生し始め、急速に個体数を増していきます。この時期、ヤエウツギやネズミモチの白い花に群がっていて、優雅な光景が見られます。

↑写真7. モンシロチョウ(2025.05.28)

シロチョウ科では、この時期モンキチョウも 2 化目の発生が始まります(写真8)。

↑写真8. モンキチョウ(2025.05.28)

上記シロチョウ科 2 種と並んで、最も普通なシロチョウ種がキチョウ(キタキチョウ)ですが、例年この時期はとても少なく、写真に収めることができませんでした。

5 月は、幼虫で越冬したタテハチョウ科の多くの種が本格的に発生する時期です。ゴマダラチョウは、それを代表する種の一つです。写真9 の個体は、エノキ低木を枝上を盛んに動き回っていて、早速産卵をする様子でした。1 化目の成虫は白化していることが多いですが、この個体もその傾向が見られました。

↑写真9. エノキ上のゴマダラチョウ(2025.05.14)

ゴマダラチョウは木々の周りを高速で飛んでいることが多く、写真に撮るのが容易でないですが、写真10 の個体は、クワの木に止まっているところを偶然目撃できました。この個体も白化しています。

↑写真10. クワの葉に止まるゴマダラチョウ(2025.05.28)

白色型と言えば、1 化目のアカボシゴマダラはより顕著です(写真11)。ゴマダラチョウとほぼ同じ発生サイクルを持ち、少なくとも 5 月、7 月、8 月下旬〜9 月の年 3 回発生します。白いやや大型のチョウが森内を飛翔する姿は優雅で目立ちます。写真11 の個体は、アカボシが全く消失しています。

↑写真11. アカボシが消失した白化型アカボシゴマダラ(2025.05.28)

タテハチョウ科の中でも、成虫で越冬するタテハチョウ亜科の種の発生となると、5月はまだ早く、キタテハくらいしか見かけません。ルリタテハは 5 月下旬になると、終齢幼虫(写真12)あるいは蛹の状態で見ることができます。

↑写真12. サルトリイバラの葉裏で丸くなるルリタテハの終齢幼虫(2025.05.20)

写真13 は、幼虫で越冬するタテハチョウの仲間であるイチモンジチョウです。ウツギの花で吸蜜していました。森内では、食草のスイカズラが豊富に生えていますので、イチモンジチョウは割と見かける機会が多いです。

↑写真13. ウツギで吸蜜するイチモンジチョウ(2025.05.28)

類似種のアサマイチモンジ(写真14)も混在していました。アサマイチモンジは、埼玉県の準絶滅危惧種(NT2)の一つですが、ゆるむしの森ではコンスタントに見ることができます。

↑写真14. 小川沿いに生えたサツキの上で止まるアサマイチモンジ(2025.05.14)

5 月に入るとやはり姿を見せてくれるのがジャノメチョウ亜科のヒメジャノメです(写真15)。

↑写真15. ヒメジャノメ(2025.05.05)

ヒメジャノメと並んで姿を現すジャノメチョウが、サトキマダラヒカゲです(写真16)。

↑写真16. サトキマダラヒカゲ(2025.05.28)

セセリチョウ科の中では、5 月を代表する種と言えばダイミョウセセリです(写真17)。

↑写真17. カラムシの葉上にとまるダイミョウセセリ(2025.05.14)

春に発生するセセリチョウ種としては、ミヤマチャバネセセリとギンイチモンジセセリが代表的ですが、この 2 種に次いで 4 月下旬〜 5 月上旬から姿を見せ始めるのがコチャバネセせりです(写真18、19)。埼玉県の準絶滅危惧種(NT2)の一つです。

↑写真18. オヤブジラミの葉上にとまるコチャバネセセリ(2025.05.05)

↑写真19. ヒメジョオンで吸蜜するコチャバネセセリ(2025.05.08)

上で名前を挙げた種の他に、キアゲハ、アオスジアゲハ、コミスジ、ウラギンシジミベニシジミ、ルリシジミ、ツバメシジミヤマトシジミを 5 月中に見ることができました。

         

カテゴリー:生き物観察

ミズキ

カテゴリー:チョウの食草と食樹

       

ミズキ Cornus controversa(ミズキ科ミズキ属) 🟠食樹とする(葉を食べる)幼虫のチョウ種:トラフシジミシジミチョウ科

落葉高木の広葉樹で、高さ 10–20 m になります。和名の由来は、漢字で「水木」と書かれるように、地中から多くの水を吸い上げて、枝を切ると大量の水のような樹液を出すことによります。別名、クルマミズキ(車水木)とも呼ばれます。横に枝を大きく伸ばし、それが階段状に成長する樹形が特徴です。葉は枝先に集まってつき、晩春に白い小花を密に咲かせます。

日本では、北海道から九州まで全土に分布し、国外では、南千島朝鮮半島、台湾、中国からヒマラヤ南部まで分布します。日当たりのよい低山、丘陵地、緑地などでよく生育します。ゆるむしの森では亜高木が多く、あちこちに幼木が生えてきます。

葉は幅 3~8cmの広卵形~広楕円形で、枝先に集まって互生します。葉柄は 2~5 cm、側脈は 6~9対で、全縁の葉が全体に大きく波打ちます裏面は粉白緑色で、全面に白色の伏した毛があります。

花期は 4 月下旬から 5 月で、新枝の先に直径 6~12 cm の散房花序を上向きにした白い花を多数つけます。花弁は 4 個、長さ約 0.5 cm の長楕円形で平開します。果実は核果、直径0.6~0.7cmの球形で、8~10月に黄紅色から紫黒色に熟します。

主幹の樹皮は灰色を示し、細かい縦筋が入ります。ごく若い樹皮や枝は暗赤褐色を呈します。春先は樹液の吸い上げが著しく、樹皮を傷つけると多量の水があふれ出します。樹液は糖分を含んでおり、酵母や真菌類が繁殖するために、その部分が赤くなることがあります]。 

ミズキはトラフシジミの幼虫の食草になります。トラフシジミは多食性で、マメ科アジサイ科、バラ科植物を主に食べるようですが、これらが少ないとミズキにも産卵するようです。しかし、ゆるむしの森では、これまでのところミズキで産卵や幼虫を見たことはありません。

        

カテゴリー:チョウの食草と食樹

春のチョウ-2025 (2)

先のブログ記事で、ゆるむしの森における「春のチョウ-2025」を紹介しました。ここでは、さらに 4 月中に追加して見られたチョウを中心に記します。

写真1 は森の中心に生えるハンノキのツインタワーで、3 年前と現在を比較しています。ハンノキの樹高が伸び、さらに周辺の草地に灌木が茂るようになりました。

↑写真1  2022年春(上)と2025年春(下)の比較

4月に入って急に数が増えてきたのがアゲハチョウです(写真2)。アゲハが飛び始めると本格的に春がやってきたという感じがします。

↑写真2  アゲハチョウ Papilio xuthus(2025.04.21)

写真3 は前回も紹介したモンシロチョウです。ここではセイヨウタンポポで吸蜜する姿を載せています。チラチラと見える小さな青い花は、オオイヌノフグリです。

↑写真3  タンポポで吸蜜するモンシロチョウ Pieris rapae(2025.04.17)

春を代表するチョウの一つといえばツマキチョウです(写真4、5)。年 1 回この時期にしか発生せず、5月に入ると急速に数が減っていきます。

モンシロチョウよりやや小さ目で、ヒラヒラと直線的に飛んでいるシロチョウを見かけたら、本種の可能性が高いです。ただ、一旦止まってしまうと、周囲の色に紛れ込んでしまい、見つけるのが容易ではありません。写真4 では、真ん中にツマキチョウがいます。

↑写真4  周囲の色に紛れるツマキチョウ Anthocharis scolymus(2025.04.17)

↑写真5  ツマキチョウのメス(2025.04.17)

タテハチョウ科の中では、最も早く発生するのがコミスジです。4 月中旬から姿を現し始め、下旬から急速に数が増えてきます(写真6)。

↑写真6  コミスジ Neptis sappho(2025.04.27)

そのほかのタテハチョウでは、前回紹介したキタテハやルリタテハの越冬明けの成虫の姿が目立ちます。4 月中ルリタテハは結構目撃したのですが、きれいな写真に納めることができませんでした。4 月上旬、森内のサルトリイバラに産卵するシーンも見られ、孵化した 1 齢幼虫も確認できました(写真7)。

↑写真7  サルトリイバラ上のルリタテハの 1 齢幼虫(2025.04.21)

写真8 ヤマトシジミです。発生して早速交尾しています。

↑写真8  交尾中のヤマトシジミ Zizeeria maha (2025.04.12)

春に最も多いシジミチョウと言えば、ツバメシジミです。前回も紹介しましたが、ここではメスの個体を載せます(写真9)。

↑写真9  ツバメシジミ Everes argiades のメス(205.04.12)

春に発生するセセリチョウは数が少なく、希少な種が多いです。その中の一つがミヤマチャバネセセリです(写真10)。全国的に急速に数を減らしている種ですが、この森では毎年 4 月になると姿を現してくれます。類似種のイチモンジセセリやチャバネセセリが高速で飛翔するのに対し、本種はやや緩やかに飛びます。

↑写真10  ミヤマチャバネセセリ(2025.04.17)

このほかに、前回紹介したものを除いて、クロアゲハ、ナガサキアゲハ、ムラサキシジミ、ギンイチモンジセセリを確認することができました。今年の 4 月は、アカボシゴマダラ(白化型)も 1 頭目撃できました。

         

カテゴリー:生き物観察

春のチョウ-2025

カテゴリー:生き物観察

2025年も春を迎え、ゆるむしの森でも昆虫たちが動き始めました。ブログ更新がおろそかになっていましたが、今日(4 月 5 日)までに見られたチョウ類を紹介します。

写真1 は 2 月末のアキニレの林です。落葉した木々がとてもきれいです。この時期まだ芽吹いていませんが、何となく春を感じさせます。地面に白っぽく見える枯れ草の群生はチヂミザサです。初夏になれば、青々と地面を覆い尽くし、ジャノメチョウのエサになります。

↑写真1  アキニレ Ulmus parvifolia の林(2025.02.27)

今年最も早く見ることができたチョウは、ムラサキツバメとキタテハでした。どちらも成虫で冬を越す種で、冬でも暖かい日には姿を現します。

↑写真2  ムラサキツバメ Arhopala bazalus(2025.02.17)

早春においては、キタテハは最も多く見られるチョウ種です。

↑写真3  キタテハ Polygonia c-aureum(2025.02.27)

写真4 は菜の花(セイヨウアブラナ)にとまるキタテハです。シャッターチャンスと思い、慌てて撮りましたが、焦点が合わないピンボケになってしまいました。

↑写真4  キタテハ(2025.03.26)

早春、キタテハの次によく見られるのがモンキチョウで、2 月から見ることができます。最近、幼虫で越冬すると言われるようになりましたが、この森での観察を考えるとそうは思えません。明らかに成虫で越冬していると思われます。

写真5 は翅が痛んだモンキチョウの雌で、いかにも成虫で冬を過ごしたという感じです。

↑写真5  モンキチョウ Colias erate(2025.03.26)

春に最も早く発生するチョウと言えばモンシロチョウでしょう(写真6)。3 月初旬から羽化が見られます。4 月に入ると急に個体数が増え、いま最も多く見られるチョウになっています。

↑写真6  モンシロチョウ Pieris rapae(2025.03.14)

春に発生するシジミチョウでは、ベニシジミとツバメシジミが最も早く姿を現します(写真7)。

↑写真7  ベニシジミ Lycaena phlaeas(2025.04.05)

菜の花にとまるベニシジミも撮ることができました(写真8)。

↑写真8  菜の花で吸蜜するベニシジミ(2025.04.05)

写真9 はツバメシジミです。この時期、早速カラスノエンドウ(ヤハズエンドウ)で産卵する姿を見ることができます。

↑写真9. 枯れたオギにとまるツバメシジミ Everes argiades(2025.04.05)

このほかに、アゲハ、キチョウ、テングチョウ、ウラギンシジミヤマトシジミを見ることができましたが、シャッターチャンスがありませんでした。

森の一角には、タチツボスミレが花を咲かせていました(写真10)。ツマグロヒョウモンをはじめヒョウモンチョウ類の食草になります。

↑写真10. タチツボスミレ Viola grypoceras(2025.04.05)

タチツボスミレは丸っこいハート形の葉が特徴的で、他のスミレの多くが紫色の花を咲かせるのに対し、花は薄紫色です。

↑写真11. タチツボスミレの花(2025.04.05)

最後の写真はサクラ(ソメイヨシノ)です(写真12)。この時期満開を迎えていました。

↑写真12. 満開を迎えたサクラ(2025.04.05)

春の後半のチョウについては追って紹介したいと思います。

       

カテゴリー:生き物観察

2024年の秋ークロコノマチョウを中心に

2024.11.04更新

カテゴリー:生き物観察

年を経るごとにだんだんと夏が暑くなり、かつ長期化していますが、今年の夏は特に著しいものでした。秋の訪れが遅くなっていますが、それでも10月も半ばを過ぎると秋らしくなってきます。ここでは温暖化と秋を象徴するチョウ種の一つとして、クロコノマチョウを取り上げたいと思います。

クロコノマチョウは、タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科の種で、日本産のジャノメチョウとしては最も大きい部類に入ります(前翅長が 40 mm 前後)。南方系の種で、西日本では普通種ですが、それより東へ北へ向かうにしたがって個体数が少なくなり,本州における分布の東北限は神奈川、千葉県付近と言われています。そして、ゆるむし森が位置する埼玉県内でも年を経て目撃例が増えてきました。

ゆるむし森では 3 年前からちらほら見かけるようになり、今年になって一気に個体数が増えました。成虫で越冬するので一年中見られる種ですが、主に 7 月中旬から新規個体が発生するようになり、秋に最盛期を迎えます。黒木間蝶と漢字で表されるとおり、森林性が強く、日中は日光が当たらない林間やブッシュの中でじっとしていることが多いです。林の中を歩いていると、突然ヒラヒラと飛び出してきて驚かせてくれます。夕方になると活発に飛び回る性質があります。

クロコノマチョウの翅は濃い茶色です。夏型と秋型があり、前者で比較的黒っぽいですが、後者では翅裏が枯葉模様になります。裏翅の色や模様は個体差が大きく、写真に撮ってよく見ると、ほとんど全てが違う色彩と模様をしてします。

翅の表翅の両端には大きな蛇目模様がある一方、裏翅は目立った蛇目がなく、翅を閉じて静止するので、地面に止まっている時は保護色になって見つけるのは簡単ではありません。写真1 は地面にとまる夏型の個体です。羽化してから時間が経っているためか、少し色が薄くなっています。

↑写真1. 地面に静止するクロコノマチョウ Melanitis phedima(2024.09.26)

写真2 は、アキニレの葉上にとまった秋型の個体です。写真1 の個体に比べて明るい色をしています。

↑写真2. アキニレの上にとまるクロコノマチョウ(2024.10.11)

写真3-5 は、同じ日に撮った別々の 3 個体です。写真3 の個体は、写真2 のそれと似ていますが、後翅縁の小さな斑点が 1 個多いです。

↑写真3.  下草の上にとまったクロコノマチョウ(2024.10.17).

写真4 の個体は上記よりも色が濃いめです。

↑写真4. 地面に静止するクロコノマチョウ(2024.10.17)

さらに、胴体に向けて色が濃くなった個体です(写真5)。

↑写真5. ムキノキの幹にとまったクロコノマチョウ(2024.10.17).

写真6-8 は、さらに日が経って撮った別個体です。それぞれ、微妙に異なる色彩と模様を持っています。

↑写真6. 地面にとまるクロコノマチョウ(2024.10.22)

↑写真7.  落ち葉の上にとまるクロコノマチョウ(2024.10.22)

↑写真8.  落ち葉の上にとまるクロコノマチョウ(2024.11.04)

このようにしてみると、あらためて、クロコノマチョウは色彩と模様に個性があると感じます。

ゆるむし森には、クロコノマチョウが特に好むジュズダマをはじめとしてイネ科植物が豊富に生えており、本種の発生には適した環境だと思われます。温暖化がますます進行するとともに、目撃できる回数もさらに増えていくことでしょう。

クロコノマチョウ以外のジャノメチョウでは、ヒメジャノメがまだまだ沢山います。この時期は 4 化目の個体で、翅が傷んでおらずきれいです(写真8)。

↑写真9.  ヒメジャノメ Mycalesis gotama(2024.10.17)

ヒカゲチョウもいますが、最盛期を過ぎています(写真9)。この森では主に 6 月と 9 月に発生します。

↑写真10.  ヒカゲチョウ Lethe sicelis(2024.10.11)

10月も下旬になると、この森に沢山生えているアキニレの一部が色づき始めました。

↑写真11.  紅葉し始めたアキニレ Ulmus parvifolia(2024.10.22)

11月に入って赤みが増してきました。

↑写真12.  赤みを増したアキニレ Ulmus parvifolia(2024.11.04)

ジャノメチョウ以外のこの時期のチョウについては、次の記事で紹介したいと思います。

         

カテゴリー:生き物観察