中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

想像力の結晶『新しい法律ができた』(講談社・編)

法律は、人の命や尊厳を守るためにあるんだと思っていました。(本文より)


新しい法律ができたという一文で始まる

25人の作家による楽しい競作短編集だ。


発売時期はちょっと前で2025年5月。

多士済々ゆえにジャンルは何でもありだ。


面白いんだけど奇想天外な話が多いゆえ

感想を書きつつここでは紹介しなかった。


けど、前年に素材文適性無しと判断して

読メ・アマゾンのみでレビューした本が

豊島岡などで出ていたのでやはりご紹介。


車が人間に擬態して襲ってくる物語とか

高機能化しすぎた人形の怖さとか楽しい。


しょうもないことに必死になるおかしな

主人公に自分を重ねてみたりもしたよ~。


レベルは様々だが概して難しいだろうな。

以下はマイレビューからのちょっとだけ。

 

あらゆる方向に想像を膨らませる楽しさを教えてくれる一冊でした。

 

25本の短編は殆どがSFでしたね。

合うものもあればそうでないものもチラホラ。

 

特に面白かったのはサッカーの勝敗に国の命運がかかる話。

マンガ的デスゲームになるかと思いきや、人間の矜持が意外な展開を見せるところがよかったです。

 

保安官が登場する西部劇のような世界観の話は、思わぬところで芽吹く仲間意識に驚きと共感がありましたよ。

 

『新しい法律ができた』感想・レビュー

 

真下みこと先生、くどうれいん先生も参加(2025/5発売)

 

ついに、青春に影を落として生きてきた私たち「いじめられっ子」が反撃の狼煙をあげることができるのだ。(本文より)

 

オーホッホッホ『ティータイム』(石井 遊佳)

ぼくたち、いらない子供なんです。(本文より)

 

芥川賞受賞歴のある作家の奇想天外な本。

 

読者の想像力を暴力的なまでに凌駕する

著者の高笑いが聞こえるような短編集だ。

 

いちばん驚かされたのは旅館業の舞台裏。

仲居の日常とか解像度がありえない感じ。

 

昔、草津温泉で仲居をしていただけあり

ホスピタリティの担い手描写は完全無双

 

クルーズ船を描いた話もやはり光ってた。

 

ただし一部ではあるけど凄惨であったり

性的部分もあり子どもには薦めにくいな。

 

大人にはよさげな本作の難易度は難しい

以下、俺の感想のショートバージョンだ。

 

表題作は旅館の舞台裏の生々しさが凄い!

おもてなしの向こう側にある苦労や人間関係の煩わしさが胸に迫りすぎてもう大変。

そんな世界でささやかな癒しになった時間のまさかにもヤラレました。

 

『奇遇』はクルーズ船員を巻き込むつながりの妙に痺れました。

これはハラハラが止まらない話。

 

『網棚の上に』は初っ端から飛ばしまくるSF込みの異色作。

 

そして最終話は迷惑サンタのお節介が絶妙に転がりに転がって、垣間見えた人間の本性に戦慄したのよ。

 

なるほど、確かに奇想ぎっしり。

でも絵空事じゃない人の生き様がただならぬ迫真性をもって感じられましたよ。

 

『ティータイム』感想・レビュー

 

光まぶしい監獄とは・・(2025/6発売)

 

インドにはなんでもある。インドに身を置いたことで、それまでの自分が御破算になった感覚があった。(本文より)

 

吹きすさぶ逆風の先に『陽ちゃんからのそよ風』(山崎 ナオコーラ)

「自分は友情を築くために生きている」と、生まれたときからアマネは知っていた。(本文より)

 

自分は女の子ではないと思っている子の

小学校からの長い長い歩みを描いた作品。

 

これはジェンダーを扱った本のなかでも

とくに当人の苦悩が刺さりまくったわ~

 

けど、陰の主人公に陽のキャラが関わり

重苦しくならないストーリーになってる。

 

だから深遠なテーマなのに読みやすいの。

しかも学生パートはどんどん面白くなる。

 

特に高校の仲間エピソードがいいんだわ。

大学での出会いもユニークで楽しげだよ。

 

学生というやさしい世界を過ぎた先には

社会の風当たりがビュンビュンくるな~。


その逆風のなかで著者の言いたいことが

乱れ打たれてことごとくぶっ刺さるのよ。


障害にまつわる思いの丈とか必見だから。


素材文適性については結構あった印象だ。

 

小5の日記トラブルや高校卒業式の後の

思わぬ展開は問題文に使いやすいかな?

 

超考えさせられる本作の難易度はやや難

以下では例によってマイレビューを展開。

 

振り切れたエピソードが楽しい!

 

人との違いに戸惑いつつ生きるアマネの物語です。

狂おしく友を求めてもずっと独りだったアマネの人生が、太陽のような少女からの誘いをきっかけに光を帯びていきます。

 

主人公の低すぎる自己肯定感や底知れぬ不安が胸にじんじん沁みましたよ。

人によってアマネの個性の受け取り方が全然違うところは興味深かったです。

 

終盤には生きづらさにまつわるエッセンスが凝縮されていましたね。

私も「障害」は社会が少数者へ貼り付けるレッテルだという考えには共感を覚えずにいられませんでした。

 

『陽ちゃんからのそよ風』感想・レビュー

 

初出の『すべてが友情』より改題(2025/11発売)

 

この社会は、多数派の平均値から離れた人に対して「障害」という言葉を使いがちだ。(本文より)

 

もうひとつの命のビザ『おとうさんのポストカード』(那須田 淳)

あいつらはユダヤ人には何をしてもいいと思っているからさ。(本文より)


キンダートランスポートを知ってるか?


ナチスの魔の手からドイツの子供たちを

イギリスに逃がしたって逸話なんだな~。


一万人救ったっていうから結構な規模だ。


本作は父親と離れて暮らすことになった

少年の視点で険しい道のりが描かれてる。


迫る危機を息子への手紙で全く触れない

父親の気持ちとか想像したら泣けてきた。


凄惨なシーンがほぼないにもかかわらず、

戦争の哀しさを嫌というほど味わえるな。


課題図書に良さげな本作の難易度は平易

以下は俺の感想から持ってきた断片だよ。

 

実在する父子書簡をもとに練り上げられた戦争の哀しさを今に伝えるストーリーです。

 

描かれるのはユダヤ人迫害の機運が高まるドイツから送り出された少年の生き様。

届けられた短い手紙のほんの一句に揺れる少年が切なく、のちに父の身に何が起こるかわかっていても、やはり胸を締め付けられました。

 

人が人を人間扱いしないって恐ろしいですね。

 

あとがきの「戦争という過ちを人は何度くり返すのでしょう」という言葉が頭から離れません。

 

『おとうさんのポストカード』感想・レビュー

 

海を渡った本物の手紙が何度も登場する(2025/6発売)

 

ただ、あの子は今安全なところで暮らしている。それだけが喜びなんだ。(本文より)

 

世渡り術まで身に付きそうな『未来への人生ノート』(清水 晴木)

今は就活の試験だとしたらという前置きをしましたが、これは日常の場でも使えることなので知っておいて損はありません。(本文より)

 

10月に出た生き方の指針になる本だよ。

 

前作で高校生たちのお悩みに寄り添った

あの校務員がさらに重要な役割を果たす。

 

今作では立場を変えて大学生達の岐路に

とことん向き合う相談員になるんですわ。

 

こんなに真剣に人の話を聞けるって凄い。

その導きには神々しささえも感じたよ~。

 

就活なんてまだまだ先の子どもたちにも

きっと生涯の宝物になる発見があるかと

 

夢なんて叶えられなくてもいいみたいな

ギョッとするような言葉もあるんだけど

それに続くやりとりってのがまたいいの。

 

白熱のディベート対決もマジ面白かった。

 

本作の難易度はやや難といった水準かな。

以下、思いの丈をぶつけたレビューだよ。

 

主人公は就活という一つの大事な節目に立つ大学生たち。

自分軸の定まらない彼らが、情熱と冷静さを兼ね備えた”人生先生”との出会いをきっかけに、一生モノの尊い気づきを胸に刻みます。

 

これは凄い!

人を見極める方法などもいいのですが、夢について誠実にメリデメを語る部分には特に圧倒されました。

 

こういった話は大人があまり教えたがらないと思うので、ぜひ中高生も「第四話」に注目してほしいです。

 

それにしても、似たような言葉でもあの先生が語ると自己啓発系やハウツー本より響くから不思議。

これこそが物語が持つ力なのでしょう。

 

さぁ、あなたも無敵のカウンセラーをお手元に!

 

『未来への人生ノート』感想・レビュー

 

社会の厳しさにも触れられる(2025/10発売)

 

私はこんな話は成人した大人にしか話しません。(夢を追うリスクを語る本文より)

 

情熱をコトコト煮込む『本読むふたり』(菊池 良)

ぼくは森の中に迷い込んだのかもしれない。ノルウェイの森じゃない。読書の森に。(本文より)

 

9月に出た読書の醍醐味が詰まった作品

 

本を読まない大学生が物語の魅力に嵌り

そこから思わぬ縁が生まれてく筋書きだ。

 

洗練されていない学生の恋は共感度高め。

 

有名作家の小説がバンバン出てくるから

コレ知ってる!ってな意味でも楽しめた。

 

本を推す書店員のノリも超好きですわ~。

清涼感あふれる本作品の難易度はやや難

以下、少しだがレビューから引用したよ。

 

主人公は奥手な大学二年生。

文学に苦手意識のある彼が、課題で手にした小説をきっかけに、本好きワールドの扉を開きます。

 

読了してすぐ他の人の感想が気になる気持ち、そして同じ意見を目にしたときの喜びもわかりすぎる!

頬を緩めながら彼が物語にのめり込んでゆくさまを見守りましたよ。

 

本がつないだ「あの子」とのじんわりくる恋愛も楽しいわ~。

こんなもどかしい二人が身近にいたら、絶対余計な世話を焼きたくなりそう!

 

『本読むふたり』感想・レビュー

 

ノスタルジーに溺れそう(2025/9発売)

 

「それまで小説なんて読んでこなかったから、ほんとうにびっくりしたんです。こんな世界が、すぐそばにあったなんて、って」(本文より)

 

出題されるかもしれない新刊本(2026年1月前後)

年明け以降の情報はあまり出ていないが

2月の末ごろから新刊ラッシュが来るよ。 


1月は例の新人賞作品が良かったことは

報告済だけど村上しいこ先生も良さそう。


毎回言ってるが以下の作品は殆どが未読。

出題向きじゃないのも混じってると思う。 


1/23発売 フレーベル館ものがたり新人賞大賞

『ふたりのマンガ線』(庭野 るう)

閉じた天才少年と開けた陽性男子の交流。

 

1/26発売

『しらんけどな』(村上 しいこ)

中学生漫才コンビの楽しく騒がしい日々。


1/29発売

『はくしむるち』(豊永 浩平)

現代と80年前の子らの運命が交差する。

 

2/16頃発売 先行レビュー予定

『ぼくがぼくであるために』(蒼沼 洋人)

男らしさを求める少年は苦しみを超えて。

 

2/18頃発売

『万丸食堂、奇跡のソフトクリーム』(山本 悦子)

謎めいた噂に包まれたお店がくれる体験。 

 

2/19頃発売

『うちのクラスに日本代表』(吉野 万理子)

卓球のスゴ腕小学生がいる教室の群像劇。


2/19頃発売

『僕たちの青春と君だけが見た謎』(雨井 湖音)

支援学校の青春を描いたシリーズ第二弾。

 

2/26頃発売

『明日、あたらしい歌をうたう』(角田 光代)

遺影でしか知らない父の真実に触れる時。


2/26頃発売

『ばんざい!ぼくらのフシギ島: 悩んだら、いつでも来んね!』(辻堂 ゆめ)

都会と違う島の日々で躍動する少年少女。


2/26頃発売 小説すばる新人賞

『ギアをあげて、風を鳴らして』(平石 さなぎ)

教団で崇められる少女と転校生の関わり。

 

2/28頃発売

『青のナースシューズ』(藤岡 陽子)

看護師を目指す青年の道はトラブル続き。

 

マンガを扱うけど堅実な文体で道徳的(1/23発売予定)


2月以降も強力な作品が続きそうな感じ。

新情報が出たら当記事に加筆していくよ。 

 

発売済みで今後レビューしたい新作

『教室のハルモニア』(辻 みゆき)

『つないだ手 沢田美喜物語』(植松 三十里)

『パルティータを鳴らすまで』(せやま 南天

『フェンシング部の王子さま』(石川 宏千花)

『花丸先生、ありがとう』(本田 有明

『カレンダーのない家』(兵藤 るり)

 

【過去記事】

紹介作品からの出題(2025年度中学入試の国語出典)

紹介作品からの出題(2024年度中学入試の国語出典)

【旧作・準新作限定】レベル別中学受験生向け推薦図書

涙をチカラに変えて ~或る早稲アカ女子の疾走~

どんなに心が挫けても ~或る公文男子の矜恃~