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歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

『ブラックオーケストラ(Black Orchestra)』(Game Salute)をプレイする

ボードゲームマルチプレイ

 

第二次世界大戦中のドイツを舞台に、ヒトラー暗殺をテーマとした協力型ボードゲーム『ブラックオーケストラ(Black Orchestra)』(Game Salute)をプレイしました。

 

 

ゲームの概要

初版は2016年発売。今回はその後追加されたエキスパンションを含めた構成でのプレイです。本作は史実に材をとった重いテーマを扱いながらも、明確な目標と緊張感のある進行を備えた協力ゲームになっています。

 

プレイヤーキャラクターと役割

プレイヤーはヒトラー暗殺を企てる「共謀者」となり、国防軍・情報部・民間人のいずれかに分類される実在の人物を担当します。キャラクターのバリエーションはかなり多く、史実に名を残した人物から、あまり知られていない人物まで幅広く収録されています。

イベントやアイテムの中には特定の職業でなければ使えなかったり使用時にボーナスがもらえないといった制約が存在するため、キャラクター選択の際には3つの属性がバランスよく揃っている方が、ゲーム運営は安定しやすい印象です。

共謀者には、映画にもなったヴァルキューレ作戦の中心人物であるシュタウフェンベルク大佐や、白バラ運動で知られるゾフィー・ショルなども含まれており、テーマ性の強さを感じさせます。

 

キャラクターのパラメーター

各キャラクターには以下の2つの重要なパラメーターが設定されています。

  • 動機(Motivation)

  • 容疑(Suspicion)

「動機」が低い状態では、手札枚数制約が厳しい、固有能力を使用できない、特定の暗殺手段が使えないといった制約を受けます。そのため、ゲーム序盤ではいかにして早めに動機を高め、行動の自由度を確保するかが重要になります。

動機はカード効果や他キャラクターからの支援、あるいはイベント(例:ユダヤ人迫害を目の当たりにする)によって上昇します。一方で、ゲシュタポからの威圧など意欲を削ぐようなイベントによって低下することもあり、常に安定しているとは限りません。

「容疑」はゲシュタポからの疑念の度合いを表します。行動やイベントによって上下し、最高レベル(Extreme)の状態で「ゲシュタポの手入れ」が発生すると、そのキャラクターは逮捕されてしまいます。

 

マップとナチス高官

マップはベルリン市街の詳細マップと、ドイツおよび占領地を抽象化したポイント・トゥ・ポイント形式のマップで構成されています。キャラクターは移動アクションによって各地点を行き来し、配置されているアイテムを探索・取得します。

アイテムには銃器、爆薬、毒薬など暗殺に直結するもののほか、尋問や危機を切り抜けるための補助的なものも存在します。また、一部の地点には固有効果が設定されており、例えばアウシュビッツではキャラクターの「動機」が大きく上昇する、といった強烈な演出が用意されています。

非プレイヤーキャラクターとして、ヒトラーの他、ゲーリング、ヘス、ゲッベルス、ボルマン、ヒムラーといったナチス高官が登場します。彼らはイベントに応じてマップ上を移動し、同じ地点にいるプレイヤーに対して厄介なペナルティを与えます。

例えば、ゲーリングであればアイテムの破棄、ヒムラーであれば容疑の上昇など、キャラクターごとに異なる嫌らしい効果が設定されています。

落ち着いて雰囲気のある色調のマップ。下はベルリン市街の詳細図
封筒を模したマーカーがアイテム。カラーのポーン(木駒)がキャラクターを表す。
上方にある横に細長い名前がはいったユニットがヒトラーの他、ナチス高官を表す。

 

カードとゲームの進行

ゲームで使用するカードは大きく3種類あります。

  • 共謀者カード
  • 尋問カード
  • イベントカード

共謀者カードはプレイヤーがアクションで引くカードで、「暗殺計画」や「違法書類」などが含まれています。違法書類を所持したままゲシュタポの手入れが起きると、逮捕のリスクが一気に高まります。

尋問カードは、逮捕後に釈放されるまでの間に使用されるカードです。カードに書かれた選択肢について、他プレイヤーと相談することは許されておらず、個人の判断が強く問われます。運良く疑いが晴れることもありますが、多くの場合はゲシュタポとの取引が発生し、ときには仲間を売るという展開もあり得ます。

イベントカードは全7ターンの進行に沿って公開され、歴史的出来事、ナチス高官の移動、そして一定枚数の「ゲシュタポの手入れ」カードが含まれています。

イベントカード例

 

ゲームシーケンス

 

暗殺の実行

暗殺は専用の6面ダイスを複数個振り、「スコープアイ印」の目をいくつ出せるかで成否が判定されます。「スコープアイ印」が出る確率は各ダイス1/6です。振るダイスの数は暗殺手段、アイテム、カード効果によって増加させることができます。

成功に必要な「スコープアイ印」の個数は、ゲーム開始時に設定される難易度(Easy / Standard / Hard)と、その時点での「ヒトラーに対する軍の支持」によって決まります。最低は2個、軍の支持が最大になると7個必要になります。

軍の支持は戦争前半では高く、ドイツが勝利するイベントでさらに上昇しますが、敗北イベントが続くと徐々に低下していきます。そのため、ゲーム開始直後の支持が低いうちか、戦争後半に暗殺を狙う流れになりやすいでしょう。

とはいえ、必要数の「スコープアイ印」を揃えるのは容易ではなく、「共謀者カード」による振り直し効果などを駆使しても失敗することは珍しくありません。万全を期すと同時に、失敗時の次善策を用意しておく重要性を強く感じました。

デザインと質感が良い専用ダイス。スコープアイ印の面が成功。

 

終盤の演出

最終ターンとなる第7ターンでは、連合軍が東西から進撃してくる影響で、キャラクターが移動できるマップ範囲が徐々に狭まります。時間切れが迫る焦燥感を、ルールとマップの両面から表現している点が印象的です。

 

プレイ

今回は3人プレイ。

民間人キャラクターである「ベルリン市警警察本部長ヴォルフ=ハインリヒ・フォン・ヘルドルフ」を担当しました。このキャラクターは、ベルリン市街にいる間はナチス高官と同じ地点にいてもペナルティを受けず、さらにベルリン市街で暗殺を試みる際にはダイスを2個追加できるという特性を持ちます。特にダイス追加は心強い能力と言えます。

若干さえない印象ですが、ベルリン市街内であれば能力を発揮する優秀マン。

 

他の2人は軍人と情報部を担当。銃器を用いた暗殺は軍人である必要があります。

序盤、共謀者たちはマップ内を移動しながら準備を進めます。ナチス高官の移動を避け、ゲシュタポの疑いを招かないように注意深く。
目的は明確で、「動機」を高め、手札枚数を増やすこと。行動の選択肢を広げなければ、暗殺そのものに辿り着けません。
「共謀者カード」に含まれる「暗殺計画」の書類には、列車爆破や毒殺といった手段と、それを実行するために必要なアイテムが記されています。

最初に選ばれたのは毒殺でした。首謀者はヘルドルフ。
ヒトラーの食事に毒を混入させるという、静かな方法です。
結果は失敗でした。十分な数のダイスを振りましたが、必要な目は揃いませんでした。理由は示されず、ただ失敗として処理されます。

暗殺計画は失われ、状況は振り出しに戻りました。
再び計画書を探し、その内容に沿ったアイテムを集め直す必要が生じたことになります。時間と余裕は、確実に削られていきます。

その過程で、ヘルドルフは二度ゲシュタポに逮捕されています。
いずれも取引によって釈放されたが、代償は小さくありません。仲間からの発奮により、再び「動機」を高め、計画を再始動させます。ただ、行動の自由は制限され、次の手入れが現実的な脅威として意識されるようになります。

そうしているうちには戦況は次第に悪化していきます。
ノルマンディーに第二戦線が開かれ、東部ではソ連軍がワルシャワ近郊まで進出しました。敗北を示す報告が重なり、これ以上の戦争継続は国の存亡に関わるという認識が、共謀者たちの間でも共有されます。

新たな暗殺計画やアイテムの収集は困難と判断され、方針が切り替えらます。
国防軍からヘルドルフに銃器が提供され、暗殺の舞台はベルリン市街に定められます。ヘルドルフの特殊能力が効果を出す地理的条件によって、非軍人であることの不利を補う狙いです。

前線での敗報が続くにつれ、国防軍内でのヒトラー支持も低下しきます。機会が着々と近づいている予感です。残された条件は一つ、ヒトラーがベルリンに戻るタイミングだけです。

その機会が訪れると、共謀者たちは同じ地点に集まります。
銃器が渡され、少しでも成功率を高めるための細々としたアイテムやカードが共用されます。

結果は成功。
こうして共謀者たちは、ヒトラーの排除を成し遂げました。

 

今回終了時の状況。
ヒトラーがヨーロッパ要塞を宣言し、ベルリン空襲やワルシャワ蜂起が起こる中、ベルリンに来たヒトラー(写真でポーンが集まっている場所にカードにより誘引された)は、ベルリン市警長官ヘルドルフにより銃で暗殺された。

 

感想

ゲシュタポの存在、頻発する「ゲシュタポの手入れ」、逮捕後の重苦しい尋問、マップ上を徘徊するナチス高官たち、そしてターンとともに進行する戦況。

さらに、強制収容所の存在や、イベントカードに散りばめられたユダヤ人迫害をはじめとするナチスの異常な行動が、通奏低音のようにゲーム全体の雰囲気を形作っています。単なるフレーバーにとどまらず、プレイ中に何度も精神的な重みを突きつけてくる点は、本作ならではでしょう。

ゲームの骨格自体は「マップを移動し、アイテムを集め、条件が整ったらラスボスに挑む」というオーソドックスな構造です。しかし協力ゲームとして、カードやアイテムの受け渡しによって役割を集中させ、暗殺役を明確に決める設計がよく機能しています。

一方で暗殺の難易度は高く、ヒトラーと同じ地点にいるタイミング調整、国防軍の支持状況、十分な準備、そして最終的には運も要求されます。成功したときの達成感と、失敗したときの絶望感の振れ幅はかなり大きめです。

暗殺に失敗しても首謀者が退場しないとか、複数回も逮捕されても保釈されたりなどいやいやゲシュタポはそんなに甘くないだろう、といったツッコミどころはありますが、ゲームのたてつけとして仕方がなかったのでしょう。

イベントカードやマップ、ダイスといったコンポーネントデザインが美しく、テーマの重さを損なわずにゲームとしての完成度を高めている点も好印象でした。

 

補足:

タイトルになっている「ブラック・オーケストラ」は、史実に現れるナチス・ドイツに対する最大級の地下抵抗組織の総称で「赤いオーケストラ(Rote Kapplle)」からとられた造語ではないかなと

 

(終わり)

 

 

残念ながら未プレイですが、同じテーマの作品です。

 

 

 

『BURNING BANNERS』(Compass Games)を対戦する【4戦目】シナリオ12・17

ファンタジーマルチプレイ

 

『Burning Banners』(Compass Games)を4人で対戦しました。

 

本作は今までも複数回プレイしていますので、ゲーム内容の詳しい紹介は過去記事をご参照ください。

種族の紹介

『Notebook LM』でインフォイラストレーションんを作成したら非常に出来がよかったので掲載します。

 

第1戦:シナリオ12「ゴブリン全盛期」

侵略側:シャシュカ王国(ゴブリン)、闇の軍勢
抵抗側:オースボーン(ドワーフ)、東方帝国
担当勢力:闇の軍勢

 

シナリオ概観

シャシュカ王国を構成するゴブリン族が大挙してフィヨルドランドへ侵入しました。フィヨルドランドは滅亡の縁に立たされ、ゲーム開始時点では小島の港を1か所保持するのみという状況です。ゲームにはフィヨルドランドの軍隊の残党が登場しますが、東方帝国のプレイヤーが操作します。
シャシュカ王国は続けて南方の東方帝国領内へ侵攻しようとしたところ、東方からオースボーンの救援軍が到着しました。シャシュカ王国は正面の東方帝国に加え、側面からのオースボーンの攻勢にも対応しなければならないでしょう。

 

闇の軍勢という勢力

闇の軍勢は、本作の中でも特に癖の強い勢力です。

  • 「居住地」をほとんど持たない
    自前の居住地を持たず、他勢力の居住地に生成される「集結地」から兵力を動員します。性質上、ゲリラ的な運用が基本になります。
  • 制限付きだが厄介な兵種構成

     多くの兵種が「野生」タイプで、居住地の占領などに制約があります。一方で「飛行」能力を持つユニットが多く、機動性は高めです。個々の戦闘力は高くありませんが、「集結地」から動員できるため、相手からすると安全な自国内など自由に軍隊が湧いてくることになり、嫌らしい配置が可能です。

  • 代表的ユニット:野ネズミの群れ

     他勢力の一般兵に相当するユニットですが、
    ・耐久力はなく、損害を受けると即除去
    ・しかし「先制攻撃」能力を持ち、攻撃力は黒ダイス1個と強力という極端な性能をしています。どこにでも設置可能な「集結地」から突然現れ、先制攻撃で相手を除去しうるため、対戦相手から見ると非常に鬱陶しい存在になります。

  • 特殊能力「奴隷化(Enslave)」

     成功すると、他勢力の軍隊ユニットを1個支配下に置くことができます。奪われた側が一気に崩れる危険性をはらんだ能力です。
    (他勢力には全く存在しないタイプの能力のため、「闇の軍勢」を担当する中では発動が最も楽しみな技でもあります)。

 

シャシュカ王国の宿命

シャシュカ王国(ゴブリン)は、経済面でも非常にピーキーな勢力です。

  • 他の勢力は支配下の居住地から定常収入を得ますが、シャシュカ王国は中立または他勢力の居住地を占領した際の「略奪」による一時収入のみ
  • さらに、支配下にある居住地1か所ごとに維持費が発生し、これを支払えなくなった時点で王国は崩壊します。
  • 居住地は動員やユニット回復に必須なため、最低1か所は保持せざるを得ず、何もしなくても毎ターン出費が続きます。

結果としてシャシュカ王国は、焼畑農業のように占領と略奪を続けなければ生き残れないという、非常に攻撃的かつ不安定な運命を背負っています。

 

プレイの流れ

マップは縦長で、地形の関係から湾を挟んで上下2つの大陸に分かれています(海上移動は可能)。

下側(南側)の大陸:シャシュカ王国 vs 東方帝国

上側(北側)の大陸:シャシュカ王国 vs オースボーン救援軍

闇の軍勢:南側の港と島嶼部を確保

という構図で戦線が形成されました。

 

今回のゲーム終盤、南側の大陸の状況(上のマップと向きが異なるので注意):

大動員を実施し、戦力を充足させたシャシュカ王国は南下を試みますが、戦力を整えた東方帝国による防衛線を前に前進を阻まれました。進撃の停止はシャシュカ王国の「崩壊」につながります。

茶色:シャシュカ王国(ゴブリン)  水色:フィヨルドランド
紫色:東方帝国  赤色:闇の軍勢

 

結果

定常収入によって安定的に戦力を増強できる東方帝国・オースボーンに対し、シャシュカ王国が新たな居住地を確保できなくなった時点でゲーム終了としました。

戦略の工夫次第で可能性はあるのかもしれませんが、シャシュカ王国を維持しつつ2勢力を同時に相手取るのは相当な高難度に感じられます。

闇の軍勢としても、もう少しうまく介入できれば展開は変わったかもしれませんが、
牽制するには戦力不足でした。

 

 

第2戦:シナリオ17 不死の皇后

侵略側:東方帝国、闇の軍勢
抵抗側:オースボーン(ドワーフ)、フィヨルドランド
担当勢力:オースボーン

 

シナリオ背景とバランス

魔女(本作ストーリーにおける諸悪の根源)に操られた東方帝国の皇后が皇帝を殺害。
東方帝国は侵略側として動くことになります。

一見変則的ですが、正統派の軍事力を持つ「東方帝国」と「オースボーン」がそれぞれの陣営に分かれるため、実はバランスの良いシナリオになっています。

侵略側:
東方帝国(正規軍)+ 闇の軍勢(トリッキー)

抵抗側:
オースボーン(重装・高耐久)+ フィヨルドランド(高機動)

と、役割分担が明確な構成になっています。

参考図:「闇の軍勢」の配置位置が今回は異なりますが、他3勢力については上記の状況になっていました。

※今回「闇の軍勢」は右上の「オースボーン」の勢力圏の下あたりに展開しました。

 

オースボーンという勢力

オースボーンはドワーフ族の国家で、経済力と軍事力を兼ね備えた富裕勢力です。

居住地からの税収に加え、鉱夫ユニットを配置することで鉱山収入を得られます。

一般兵クラスの「鉱夫(Miner)」は戦闘力こそ白1個と最低限ですが、

  • 動員コストが安い
  • 2ステップユニットで打たれ強い
  • 経済基盤にも貢献

と、非常に優秀な存在です。

最強ユニット「Storm Giant」は黒3・白3というゲーム屈指の戦闘力を誇ります。

 

展開

今回はゲーム会のリアルイベントの都合で時間が限られており、各勢力が勢力圏を広げ、本格的な衝突が始まる直前で終了となりました。

今回の終盤図:前掲のマップとは逆向きでオースボーン側から全体を俯瞰しています

東方帝国対フィヨルドランド、オースボーン対闇の軍勢といった対決状態になっています。オースボーンは種族固有の特殊能力カードを入手したことにより、山岳地帯や敵対する軍隊ユニットを無視した高速移動が可能となっており、実はこのとき「Storm Giant」と英雄ユニットのスタックにより、「東方帝国」の首都を急襲することを画策していました。ゲーム終了のため未遂に終わりました。

灰色:オースボーン  水色:フィヨルドランド
赤色:闇の軍勢  紫色:東方帝国

 

まとめ

面白い作品です。比較的手軽なマルチプレイヤーによるファンタジーウォーゲームとして楽しめます。

多彩なシナリオと特色ある種族が登場するマルチプレイヤーゲームで、ルール難易度も高くはありません。コンポーネントも良く、気持ちよくプレイできます。
若干侵攻側の勢力はトリッキーな分、扱いが難しいところはありますが、それでも全体のバランスは良いのではないでしょうか。
Compass Gamesからは種族の追加を行うエキスパンションのリリースが発表されていますので、そのあたりの調整がはかられているとよいかなと考えます。

(終わり)

 

 

 

『Model's Counterback』(Dissimula Edizioni)を対戦する【2/2】

東部戦線・作戦級

 

『Model’s  Counterback』(Dissimula Edizioni)を対戦しました。

 

 

1. ゲーム概要とテーマ

『Model’s Counterback』(Dissimula Edizioni)は、1944年夏、ドイツ軍中央軍集団崩壊後の戦局を扱った作戦級ウォーゲームです。攻勢を続けるソ連軍に対し、モーデル元帥がワルシャワ郊外で機動防御を駆使して反撃を試みる「防御側が主役」の戦いが描かれます。

ソ連軍のスチームローラーに対する機動防御のドイツ軍、と聞くと、鈍重なソ連軍と、少数精鋭で縦横に動くドイツ軍、「柔よく剛を制す」構図を思い浮かべがちですが、本作におけるソ連軍は決して鈍重ではありません。

ソ連軍の主力となる戦車軍団を構成する部隊ユニットは、ドイツ軍の部隊と同程度の機動力を持ち、戦闘力においても見劣りすることはありません。本作のソ連軍は数と戦力、さらに機動力を兼ね備えた、非常に使いやすい戦力として登場します。

一方ドイツ軍には、

  • 活性化における自由度の高さ(ソ連軍は活性化単位が軍団毎に固定)
  • 縦深陣地による損害回避(=後退することでステップロス損害を軽減できるが、ソ連軍は不可)
  • 強力なスツーカによる航空支援(ソ連軍にも砲撃支援があるが射程の制約ため局地的)
  • 特殊能力を持つモーデル元帥ユニット(ダイス振り直しや、活性化済スタックの再活性化等)

といった特徴的な優位点が与えられています。ただし、それらは決して圧倒的優勢といったことはなく、使いこなせなければ、ソ連軍の正面攻撃に押し潰される危険性を常に孕んでいる状態です。

 

2. 両軍の性格とプレイ感

ソ連軍:王道の正面攻撃+軽快な部隊による後方撹乱

ソ連軍は部隊数でドイツ軍より優勢です。ドイツ軍はもはや連続した強固な戦線を構築できるほどの兵力を持たないため、ソ連軍の機動力の高い偵察大隊といった部隊ユニットは、薄い防衛線を容易に突破し、ドイツ軍の背後へ回り込むことができるでしょう。

ドイツ軍が、道路結節点への注意が疎かになっている場合は、一般道路や幹線道路を伝って、一気に後方深く侵入されることになります。本作のソ連軍は、前線を押し潰すだけでなく、後方を荒らすことで勝利を引き寄せる軍でもあります。

ドイツ軍:ソ連軍を止めることはできないが遅らせることはできる・・

ソ連軍の活性化が軍団単位で、かつ軍団同士が協働しづらい関係性であるのに対し、ドイツ軍は未活性ユニットであれば自由に活性化可能です。後半に登場するSS装甲師団と組み合わせることで、局地的な優勢を作り出す余地は十分にあるでしょう

ただし、それは「ここぞ」という一点に限られます。漫然と、または全体で押し返そうとすると、ソ連軍の物量と機動力に飲み込まれかねません。

 

3. 本作を特徴づけるシステム要素

本作の印象を一言で言えば、盤面全体で展開する機動戦といえます。それを強く後押しする仕掛けが、いくつも用意されています。

■ 小さなマップスケールと大きな移動力

  • 1ターン=1日
  • 1ヘックス=2km

という細かいスケールのため、ユニットの移動力は全体的に大きい数値が設定されています。
偵察大隊14、戦車大隊12、機械化歩兵でも10と、道路移動を併用すれば20~30ヘックス以上の移動も珍しくないでしょう。

■ 移動しやすい地形

ワルシャワ郊外という設定上、マップには幹線道路と一般道路が密に張り巡らされています。
道路の消費移動力は次の通り定められており、

  • 一般道路:1/2MP
  • 幹線道路:1/3MP

高速移動が可能なため、部隊は想像以上の距離を一気に移動できます。

■ ZOC拘束の弱さと「離脱」ルール

  • ZOC侵入時:1MP追加、その時点で移動終了
  • ZOCからの離脱:ペナルティなし

さらに一定の移動力を持つ部隊であれば、相手の移動タイミングで相手ユニットが自部隊のZOCに侵入してきた際に、ノーコストで1ヘックス後退できる「離脱」が可能です。しかも回数制限はありません。無軌道に後退するのは得策ではないにしても、下手に相手に拘束されることを避け、自軍に有利な場所へ位置を変えることができます。
このため、戦線は固定化しにくく、毎ターンさらに毎ラウンドで状況が変わる流動的な戦いになります。

■ 強力なイベントカード

毎ターン両軍が引くイベントカードは、局地的ながら局面をひっくり返す力を持つものが多い印象です。
※ オリジナルは「イベント・チット」ですが、プレイアビリティ向上のためチットをカード化してプレイしています。

オーバーランの存在感

移動力が続く限り、何度でも攻撃可能なオーバーランは本作の華とも言える攻撃手段です。防御側も「離脱」で戦闘を回避できるため、戦闘は単発で終わらず、追撃と後退の連鎖になりやすいです。

■ 緩めの補給ルール

補給源につながる道路ヘックスから5ヘックス以内であれば補給下にあると判定されます。道路網が豊富なため、自軍ユニットの周囲6ヘックスを完全に囲まれ包囲状態でもされない限り、補給切れに陥ることはないように思います。
1ターンのスケールが1日という点も補給判定が厳しくない理由のひとつだと思われます。

 

4. プレイレポート

ソ連軍を担当しました。

写真右手が北になります。
マップ上部にある半円状の部分がワルシャワ市街。上端になっている東西に描かれているのがヴィスワ川(Wista)。

オレンジ色の星印で印をつけている勝利ポイント都市はマップ内に8か所あり、ゲーム開始時はすべてドイツ軍の支配下におかれています。

太い線が幹線道路。マップ上方向を左右に走るものから、マップ左下からワルシャワ方向、またマップ右下からワルシャワ方向に走る線の3本がメイン道路となります。
幹線道路以外にも縦横に細い線(一般道路)が走っていることがわかります。

ソ連軍は写真左端から第1ターンに2個戦車軍団、第2ターンに1個戦車軍団が登場。この3個の戦車軍団が主力となる。第7ターンにさらに1個軍団(非自動車化の歩兵)が写真下側(西側)から登場します。

ドイツ軍は第3ターンに第19装甲師団がマップ右上方向から、第4ターンに第5SS装甲師団ヴィーキングがマップ下左方向から、第5ターンに第3SS装甲師団トーテンコップがマップ下右方向からそれぞれ幹線道路をたどりマップ上に現れます。

 

第1ターン(1944年7月27日)

ソ連軍はマップ左端から2個軍団が登場します。
今回、ハウスルールとして、初期配置のドイツ軍はスタック禁止、またソ連軍登場ヘックスへの配置も禁止としました(初期配置条件からソ連軍の登場ヘックスを塞ぐことが可能であったため制約をかけたもの)。

第3戦車軍団(水色のライン)では、最初にドローしたイベントカードの中にあった「タンク・エース」を使い、同軍団の最強ユニットである戦車師団(8-4)に配置し、戦闘修正+4(元の修正値+2にタンクエース効果による+2)という戦闘修正値を得ます。このユニットが除去されない限りこの効果は続くのです。両軍の最強重戦車大隊(ドイツ軍のティガー、パンテル装備の大隊、ソ連軍の場合はJS2)(+3)すら上回るこの修正値は、本作では極めて危険な存在となりえます。

続くソ連軍第2活性化ラウンドでは第8親衛戦車軍団(赤色ユニット)も前進。薄く張られたドイツ軍防衛線を排除すると、「予備」指定されていた移動力14の偵察大隊が道路を使って、一気に前進。ドイツ軍側に対応可能な非活性状態の部隊ユニットがなかったことから、次ターンにはワルシャワ蜂起が発生する条件となる蜂起ラインを越えることが確定的となりました。

第1ターン終了時:
ソ連軍の2個戦車軍団がマップ左端より侵入。ソ連軍の偵察大隊のひとつがPraga付近に接近。ドイツ軍ユニットは明灰色のユニット(活性化済を表すトラックのシルエットが描かれたマーカーが載っている)

 

第2ターン(1944年7月28日)

第8親衛戦車軍団の偵察大隊が蜂起ラインを突破し、第3ターンからのワルシャワ蜂起が確定します。
同軍団の主力はドイツ軍の部隊ユニットを排除しつつ、道路移動を最大限活かしながら、Praga(ワルシャワヴィスワ川西岸地区)外縁まで進出します。

第3戦車軍団の「タンクエース」師団は、移動力の続く限りオーバーランを連続して実施します。3回目の攻撃ではVP地点 Minsk Mazowiecki のドイツ軍守備ユニットを攻撃し、さらに同市街を越えた実に4回目の攻撃でようやく停止するほどの暴れぶりを見せました。
Minsk Mazowiecki はその後、後続の第3戦車軍団主力により包囲攻撃を受け陥落しています。

ドイツ軍はバラバラと到着する増援ユニットから、ワルシャワ蜂起発生にあたって除去(蜂起の鎮圧に投入されるということで盤面から除去)されるユニットを確保し、Pragaの防御を固めます。

第2ターン終了時:

 

第3ターン(1944年7月29日)

本作では各ターンの先攻はソ連軍に固定されており、常に先行するソ連軍がターン開始時の主導権を握る展開になります。

第8親衛戦車軍団はワルシャワへ突入するのではなくPragaを左手に見ながら、北上し、Radzymin、Nieporet付近の渡河点ヘックスといった他のVP地点を目指します。
Pragaの市街にドイツ軍が対戦車砲部隊を混在させ、陣地構築したハイスタックをいくつも作ったことにより、無理攻めによる損害と部隊の拘束を嫌ったのです。

補足:ワルシャワ蜂起前後
史実でもソ連軍はPraga外縁まで進出した後、7月29日に攻勢停止命令を出している。
政治的な理由が主と言われるが、Pragaへの本格侵攻は9月10日と約1ヶ月後に先送りされた。

ドイツ軍はもともとPraga北側付近で戦線を張り、ソ連軍の北上を避けることを企図していたようですが、ソ連軍先鋒の侵攻が早かったことから、マップ北側より増援で到着した第19装甲師団もRadzymin(VP地点)等の防衛に送り込むしかなかった。

第3ターン:
ソ連軍第8親衛戦車軍団はParagaへの攻撃は避け、そのまま北上し、RadzymiやNieporet方面へ向かいます。後続の第16戦車軍団もそれに続きます。
ソ連軍第3戦車軍団は、第4ターンにマップ左下からドイツ軍の強力な増援である第5SS装甲師団が進出してくるのに備え、Minisk Mazowieckiの防御を固めます。

第4〜5ターン(1944年7月30日~同8月1日)

ソ連軍の先鋒となった第8親衛戦車軍団とそれに続いた第16戦車軍団とともに、北西に進路を取り、Radzyminを攻撃、さらに北側から登場したドイツ軍第19装甲師団とNieporet付近の渡河点(VP地点)を巡って激突しました。ドイツ軍は森林や湿地ヘックスを巧みに使いながら戦線を張り、スツーカを使った対地支援を執拗に行うことでソ連軍を悩ませますが、押し切られ、渡河点(VPヘックス)はソ連軍の手に落ちました(第5ターン)。


第5SS装甲師団ヴィーキングは第4ターンにマップ西端(写真手前側)に登場することが可能でしたが、登場タイミングを1ターン遅らせることで、登場位置を北側のRadzyminに続く街道に変更しました。
これによりソ連軍第3戦車軍団が位置していたMinsk Mazowiecki への圧力が減り、代わりにRadzyminへの圧力が強まることが必至となります。
ソ連軍は第3戦車軍団をRadzyminへ向かわせ、ドイツ軍の第5SS装甲師団ヴィーキング、第3SS装甲師団トーテンコップ(第5ターンに登場)の最強2個師団とソ連軍の2個戦車軍団がRadzymin付近で激突することになるのです。

第4ターン:
Radzymiは第8親衛戦車軍団の攻撃により陥落。第16戦車軍団、また第8親衛戦車軍団の一部はNieporetの周囲に展開するドイツ第19装甲師団他を攻撃しました。

 

第6ターン(1944年8月2日)

Radzyminにおける2個のドイツSS装甲師団との激突が予想される中、ソ連軍はRadzyminを堅守すべきか、いったん引くかを迷いますが、VP確保を優先しRadzymin周辺を強化します。

一方、Nieporet周辺のVPヘックスも確保済ですが、こちらはドイツ第19装甲師団が執拗に絡んでくることから、ソ連軍(第3戦車軍団中心)は、同師団の後方に部隊を迂回させ、北上を目指します。

SS装甲師団ヴィーキング、トーテンコップがマップに登場し、Radzymin付近でソ連軍と激突、ソ連軍防衛線は押し込まれました。ただしドイツ軍も戦力分断を恐れ、オーバーランの使用には慎重のようです。

コラム:勝利条件

ゲーム終了時のVP獲得状況による

マップ上には8か所のVPヘックスが存在し、この時点でソ連軍は4か所(Minsk Mazowiecki の2か所、Radzymin、Nieporet付近の渡河点)を確保済であるためドイツ軍と同点の状況ドイツ軍はPragaの3か所と北方の1か所を確保中。
他にはドイツ軍がスケジュールとして決まっている他戦域や蜂起鎮圧への戦力引き抜きに対応できない場合のペナルティがある

 

というところで時間切れ終了。両軍のほとんどの戦力が登場する中、残り4ターンがどう展開するのか読めない状況です。

「タンクエース」1枚、また戦線を張れないにしても部隊ユニットの位置ひとつで間隙を突かれ、移動力の大きさゆえに主戦場が短期間で南から北へ移っていきました。
こうしたダイナミズムこそが、本作の魅力となっています。

第6ターン終了時:
ドイツ軍のSS師団2個が到着し、Radzymiへの攻撃を開始します。
ソ連軍はMinsk Mazowiecki方面から第3戦車軍団の主力を急ぎ移動させます。各軍団の所属部隊がバラバラになりかけていますので、この後のターンにおいて課題となった可能性があります。

 

(終わり)

 

 

 

 

 

2025年はこんなゲームをプレイした!(ウォーゲーム)

 

 

2025年も12月に差しかかろうとする11月末日、ウォーゲーム界隈では大きなニュースがありました。

『レッドサンブラッククロス』(以下、RSBC)の再販です。
非常に喜ばしい知らせである一方、同時に伝えられた報として『レッドサンブラッククロス2』(以下、RSBC2) の制作中止が明らかになりました。

 

RSBC2中止については従来より「実現は難しいかもしれない」という印象が拭えなかった一方でどこか期待していた部分もありました。今回の決定は「さもありなん」と納得しながらも落胆も含んだ複雑な思いです。

オリジナル版が発売された当時のように、ビッグゲームが乱発され、プレイヤー層がそれを享受していた時代とは状況が異なります。現代において、あのスケールの作品をどうアップデートし、再構築するのかという方向性を決めるだけでも困難が予想されます。

資金面はクラウドファンディングなどで解決の道筋がつく可能性はありますが、作品として作り上げるための時間と情熱は、他から調達したり代替したりすることが難しいリソースです。ある種カルト的な人気を持つファンを満足させつつ、現代的な装いや、今この時代にリメイクする意味合いを持たせるだけの情熱とエネルギーを注ぎ込むのは、もはや困難だったのだろうと想像します。一種さみしい思いを感じつつも、この幻となった作品を見送りたいと思います。

 

 

一方で再販が決まったRSBCには期待しています。ゲームジャーナル誌では、『江戸幕府の黄昏』や『激闘関ヶ原』のように再販にあたりコンポーネント刷新した実績もあり、期待値は自然と高まります。

とはいえ、あまりハードルを上げすぎても仕方ありません。オリジナル版の踏襲であったとしてもまったく問題ありません。なお再販版RSBCはそれなりの価格になるのではと想像しています。

再販にあたり期待したい要望は以下のとおりです。

  • エラッタの対応、ルールの不明瞭部分の明確化

  • FAQやリプレイ、プレイ例の充実によるプレイアビリティ向上の支援

  • 一部シナリオ設定の見直し: 設定がおかしい(意図的か判然としない)部分の精査

また、本作の魅力のかなりの部分を占めていたヒストリカルノート類は、残す方向で検討していただくと、コレクション性がさらに高まると考えます。

(補足) 後日、関係者から設定資料系は収録するとXで発言がありました

 

 

  • 2025年 プレイまとめ
    • ■ Fighting Formations: US 29th Infantry Division(GMT Games)
    • ■ LITTORAL COMMANDER THE BALTIC(The Dietz Foundation)
    • NAPOLEON’S TRIUMPH(Simmons Games)
    • ■ 第五次辺境戦争(IED/GDW)
    • ■ Model's Counterback(Dissimula Edizioni)
    • 江戸幕府の黄昏(ゲームジャーナル
    • ■ CONGRESS OF VIENNA(GMT Games)
    • ■ ARDENNES II(Multi Man Publishing)
    • Bulge 20: The Ardennes Offensive(Victory Point Games / ボンサイゲームズ)
    • ■ 九州侵攻 オリンピック作戦 Operation Olympic Kyushu 1945(ボンサイゲームズ)
    • ■ STORM OVER JERUSALEM(Multi Man Publishing)
    • ■ Battlefields of the Napoleonic Wars(Ingenioso Hidalgo)
    • ■ 独ソ電撃戦(国際通信社/IED)
    • 関ヶ原(エポック/サンセットゲームズ)
    • ■ LIBERTY ROADS(HEXASIM)
  • 2026年にむけて

 

2025年 プレイまとめ

さて、本題に戻ります。

2025年にプレイした作品数は30本強、ブログ記事は約50本と、昨年(35作品・50本)とほぼ同等のペースでプレイした一年でした。

以下、特に強く印象に残った作品を記載します。なお紹介は順不同です。

表示しているアイコンは、作品の特徴として評価したポイントを表しています。

 ゲームメカニズムに特徴

シチュエーションや設定が魅力(個人的好みがはいります)

 プレイアビリティが高い

難易度が高い

定番作品

 

■ Fighting Formations: US 29th Infantry Division(GMT Games)

 第二次世界大戦西部戦線を舞台にした戦術級ゲーム。シリーズ3作目。1・2作目は東部戦線を舞台にしていました。

最大の特徴は「アクションポイント」という独自のメカニズムにあります。敵味方が、種類と使用回数があらかじめ制限されたアクションというリソースを奪い合う仕組みで、ウォーゲーム的なシミュレーションの観点から見ると「これは何を再現しているのか?」と不思議に思うかもしれません。メカニズムとしてはユーロゲームのワーカープレイスメントに近く、実施するアクションを奪い合うという盤外でのプレイヤー同士の駆け引きが生まれるのが面白いところです。結果として「これはこれでアリ」と納得させられる魅力を持っています。
アクションポイント制というメカニズムを除けば、戦術級ウォーゲームとしては軽快な印象です。もう少しやりこんでこの「軽やかさ」の正体を探りたいところです。

 

■ LITTORAL COMMANDER THE BALTIC(The Dietz Foundation)

 2030年のバルト海での米露衝突を扱う作品。盤面で展開されるユニットの動きよりも、事前に行うデッキ構築とカードを使ったプレイが主役ではないかという、主客転倒した感もあるゲームシステムが特徴です。

限られたポイントで最適な編成を選ぶ必要があり、対応策(さらには対応策を複数用意しておく必要がある)を読み違えると途端に打ち手が尽きる厳しさがあります。

前作(INDO-PACIFIC)ではそこまでの強い魅力を感じなかったのですが、「BALTIC」で、カード和訳や読み込みを進めたところ、面白みが一変。「カードを読み込んだぶんだけ面白くなるタイプのゲーム」だと言えるでしょう。

 

NAPOLEON’S TRIUMPH(Simmons Games)

 アウステルリッツの戦いを扱うエリア方式の作戦級ゲーム。
細長い積み木のユニットと美しいエリアマップが特徴で、戦闘解決にダイスや戦闘解決表といった偶発性に依存した仕掛けはありません。プレイヤーは盤面全体での作戦と、エリアの中での位置取りという戦術的な要素で勝負していかなければならないというある種、スパルタンな印象を受けるシステムです。
見た目は素晴らしい一方、盤面から状況が読み取りにくく、独自メカニズムのためプレイ難度は総じて高め。挑戦的なタイトルです。

 

■ 第五次辺境戦争(IED/GDW)

 超光速通信が存在しない宇宙を舞台にした戦略・作戦級ゲーム(生産の要素はありません)。通信はジャンプ艇頼み、ジャンプ航法にも距離制限ありという技術の設定が背景世界の理(ことわり)の根幹になっています。
総司令官(プレイヤー)からの命令が前線の艦隊に届くまでにタイムラグが生じることから、一部の優秀な提督が率いる艦隊以外は1〜4ターン先までプロットが必要という仕組みが独特の雰囲気を生みます。
古い作品のためルールにあいまいな部分がある点は気になりますが、他に類を見ない独特のプレイ感はじっくりと取り組みたくなります。

 

■ Model's Counterback(Dissimula Edizioni)

 1944年夏、ワルシャワ郊外を舞台に、ドイツ軍が機動防御でソ連軍を迎え撃つ作品。ドイツ軍だけではなく、ソ連軍も軽快にマップ全体を動き回り、双方が盤上でダイナミックに展開します。ゲームシステムはオーソドックスなものなので安心感があり、プレイアビリティも高いです。イベントカードのイベントがけっこう強力で、また機動戦のため展開がプレイによってかなり変わる点もよいです。1日でプレイできるサイズ感で、緊張感あるプレイを楽しむことができる作戦級ゲームです。

 

こうして並べてみると、『Model’s Counterback』を除けば、いずれもゲームメカニズムに何らかの独自性を持つ作品が顔を揃えています。
もっとも、発表年は新旧入り混じっていて、必ずしも「最近の作品」というわけではありません。
「結局、目新しいメカニズムがすべてなの?」と言われそうなので、ここからは別の観点で印象に残った作品も挙げておきます。紹介は順不同です。また表示したアイコンの数は優劣を表すものではないです)。

 

続きを読む

『THE GREAT BATTLES OF ALEXANDER』(GMT Games)を対戦する

 

アレキサンダー大王の時代の古代における会戦を戦術レベルで描いた『THE GREAT BATTLES OF ALEXANDER』(GMT Games)を対戦しました。

 

 

作品概要

  本作と共通の基本システムを用いた作品群は「GBoH(Great Battles of History)」シリーズと総称されており、アレキサンダー大王時代に限らず、古代ギリシャ古代ローマ、古代インド、中世ヨーロッパ、さらには日本の戦国時代まで、幅広い時代と地域を扱った各タイトルがリリースされています。

各作品には複数のエキスパンションが用意され、再販時にはそれらをまとめたデラックス版として発売されることも多いため、シリーズ全体の構成はやや把握しづらい印象を受けます。

 

今回プレイしたタイトル

  今回プレイした『The Great Battles of Alexander Deluxe Version』は、2023年に最新版が発売されたタイトルです。アレキサンダー大王の父であるマケドニアフィリッポス2世の時代から、大王死後のディアドコイ戦争までをカバーし、関連するエキスパンションをすべて包含した大規模な内容となっています。

含まれるモジュール

ルールブックは第6版が最新版となっています。

 

基本スケール

  • 1ターン:20分
  • 1ヘックス:70ヤード(約64メートル)
  • 1ユニット(1戦力あたり):歩兵:150~200人、騎兵:100人

 

基本シーケンス

 

基本システムの考え方

  アレキサンダー大王の戦いを振り返ると、しばしば両軍の動員兵力の多さに驚かされます。しかし当時は通信手段や精緻な命令伝達網が未発達であったため、兵力が膨大であっても組織的統制には限界がありました。隊列と統制が極めて重要で、一度それが崩れると、個々の兵士では状況を立て直せず、連鎖的な潰走に至ることも珍しくありませんでした。

本作の基本システムは、こうした古代戦争特有の性質を強く意識して設計されています。

デザイナーズノートによれば、本作は「諸兵科連合戦術」と「リーダーシップ」の二点を中核としてデザインされています。アレクサンダー大王の戦いでは、兵力で敵を上回る場面はほとんどなかったにもかかわらず、異なる兵種と戦術体系の複雑な相互作用を巧みに運用することで勝利を収めてきました。本作は、その点をルールとして体感させることを強く意図した作品だと言えるでしょう。

 

指揮官と命令システム

  シーケンスに示されている通り、本作ではまず指揮官を活性化させ、活性化した指揮官が自身の指揮範囲内にある部隊へ命令を下します。部隊は命令を受けてはじめて、移動や射撃といった能動的な行動を取ることができます(敵ユニットと隣接している場合の白兵戦は例外的に自動発生します)。

指揮官の活性化は、各指揮官ユニットに設定された「主導権値(Initiative Value)」の低い順に、所属する軍を問わず進行します。この主導権値は、その指揮官が発行できる命令数も兼ねているため、優秀な指揮官ほど後半に活性化し、かつ多くの命令を行える仕組みです。

指揮官の重要性を強調したシステムを特徴づける重要な要素が二つあります。

モーメンタム(Momentum)

指揮官の活性化終了後にダイスを振り、成功すると再度命令フェイズを実施できます。失敗時には追加のペナルティ判定が発生する可能性もありますが、優秀な指揮官であればおおよそ半分程度の確率で連続して活性化が可能です。成功時には実質的なダブルムーブとなり、戦局を動かす強力な手段となります。

奪取(Trump)

主導権値が高い指揮官は通常後半に活性化しますが、相手指揮官の活性化中やモーメンタム成功時に割り込みを宣言できます。割り込まれた側の指揮官は活動済みとなり、命令を実行できなくなります。代わりに宣言した側の指揮官が即座に活性化され、主導権を奪って自軍の行動に転化できる点が本ルールの肝です。

 

部隊ユニット

  本作では兵種の区分が非常に細かく設定されています。射撃可能な部隊も弓兵に限らず、投槍兵や投石兵などが個別に表現されています。

ファランクスや重装歩兵といったユニットは横に長いダブルサイズカウンターで表され、密集隊形による強力な戦闘力と、方向転換に制約を受ける鈍重な運動性といった性格が視覚的にも示されています。ユニットには向きが設定され、ZOC(支配地域)は前面にのみ及びます。

各部隊には結束力(Cohesion)が設定されており、戦闘による損害だけでなく、森や丘陵などの不整地を移動したり、後退するなど隊列を乱す行動を行うことでも低下します。累積した損害が部隊ユニット毎に設定されている結束力の限界を超えると、その部隊は潰走します。

 

戦闘と勝敗条件

戦闘には射撃戦と白兵戦があります。

射撃戦では投石、弓、弩、投槍など装備した兵器毎に射程があり、命中チェックで成功すると損害を与えることができます。

白兵戦に入る際には突撃手順があり、その前段階で士気チェックが行われます。失敗すると隊列が乱れ、結束力が低下します。

白兵戦の解決には、兵種間の優劣、ユニットの向きや位置関係、指揮官の存在など、複数の要素が影響します。結果は結束力の喪失として反映され、限界を超えた部隊は潰走します。

潰走、あるいは除去されたユニットは、その価値に応じた潰走ポイントを自軍損害に加算します。全軍の潰走ポイントが、シナリオで定められた撤退レベルに達した時点で、その軍は敗北となります。

 

シナリオ紹介と初期配置

今回は両名ともシリーズ初プレイであったため、システムの感触を確かめることを目的とした試行的プレイとなりました。

題材:エリゴン渓谷の戦い(BC358年)
対戦:マケドニアフィリッポス2世) vs イリュリア(バルデュリス王)

イリュリアは紀元前4世紀にバルカン半島西部に存在した部族連合国家で、バルデュリス王の下で一時はマケドニア領を支配しました。しかしBC358年、フィリッポス2世の反撃に敗北し、本戦は両国の力関係が逆転する転機となった戦いです。

初期配置は指定です。マケドニア軍は中央に「ファランクス」を配置し、両翼に「重歩兵」や「散兵」を展開。指揮官は2名です。一方イリュリア軍は中央に「重装歩兵」を置き、「中歩兵」を主力とし、両翼に「軽歩兵」や「軽騎兵」を配置。指揮官は3名となっています。

戦力面ではファランクス5個を有するマケドニア軍が優勢ですが、指揮官数ではイリュリア軍が上回ります。両軍とも初期状態では、指揮官の指揮範囲が全軍を完全には覆っていない状態から始まります。

 

両軍の兵力は拮抗しており約1万程度の歩兵と500騎程度の騎兵と伝わっています。
手前の黄土色のユニットがイリュリア軍、赤がマケドニア軍です。

両軍の間の距離は1ターンでファランクスや重装歩兵が相手への攻撃位置を取ることができる程度の距離ですので、即開戦できる状態と言えるでしょう。

 

プレイ経過(概要)

イリュリア軍を担当。主導権値の低い指揮官から順に活性化し、両翼から前進を開始しました。右翼では軽騎兵を前進させ、投槍による射撃後に白兵戦へ移行。左翼では軽歩兵主体で前進しました。

この過程で、主将以外の指揮官を敵ZOC内に進入させてしまい、移動も指揮もできなくなるという大きなミスを犯しました。これは本作の指揮官運用の厳しさを端的に示す失敗例でした。

中央ではバルデュリス王率いる重装歩兵が前進し、マケドニア軍のファランクスと激突。続くフィリッポス2世の活性化と連続したモーメンタム成功により、イリュリア軍中央の中歩兵が次々と潰走し、戦線は急速に崩壊しました。

 

戦訓

  • 指揮官数や中歩兵の数といったイリュリア軍の優位点を活かせなかった
  • 指揮官を敵ZOCに進入させる致命的ミス
  • 戦列が一度崩れると、連鎖的に全体が瓦解する危険性が高い
  • 不利な白兵戦を避けるため、「撤退」ルールの積極的活用が必要
  • 連続した活性化を可能とする「モーメンタム」は積極的に活用する

総じて、戦術機動や戦法に対する理解不足が露呈した内容でした。

 

イリュリア軍は中央から左翼にかけて接敵しています(右翼の部隊は潰走した後)。
イリュリア軍のダブルサイズユニットである「重装歩兵」は3個と、マケドニア軍の「ファランクス」5個と比べ少ないため、その穴埋めに「中歩兵」(シングルサイズ)を中央部の突撃に用いますが耐久力に劣る「中歩兵」は次々と潰走し、マケドニアの「ファランクス」はイリュリアの「重装歩兵」への集中攻撃を開始しようとしている状況です。
一度崩れた戦列の穴を塞ぐことは難しく、イリュリア軍はこの後、全軍が崩壊に至ることでしょう。

 

感想と総評

本作は、多くの優れた戦術級ウォーゲームと同様、ゲーム的な最適解よりも、史実で用いられた戦術がそのまま有効に機能するよう設計されている印象を受けます。

戦術レベルの微妙なニュアンスを表現するため、ルールは細分化されています。そのため、一定以上の理解を前提としたプレイが求められます。この点はASLなどと共通する雰囲気があります。

一方で、版を重ねている割にはルールの整理が十分とは言えず、全体として見通しが良いとは言い難いのも事実です。これは根本的なルールの再構築を行わず、追加と改変を重ねてきた結果ではないかと推測されます。

日本語ルールについて

こうした見通しの悪さに拍車をかけているのが、日本語訳における訳語の揺れや判読性の問題です。例えば、失われた結束力を回復する「Recover」と、潰走状態の部隊を正常化する「Rally」の双方に「回復」という訳語が用いられており、文脈理解を難しくしています。

訳語選択の厳密さや略語処理の整理が行われていれば、理解のハードルは大きく下がったのではないかと感じました。(自分で基本システムの部分だけでも訳し直すことも考えています)

 

システムとしては非常に興味があるところですので、引き続きプレイをしていくことにしました。

(終わり)

 

 

 

ウォーゲームの「めんどくさい」をAIで解決する【紹介記事】

 

ウォーゲーム(いわゆる「重ゲー」と呼ばれるボードゲームの一部も含まれるかもしれません)を遊ぶにあたって、プレイ前の準備段階や、実際のプレイ中に発生する「正直ちょっとめんどくさい」作業を、生成AIを使って簡単にできないか。
そんな問題意識から書いた記事群です。

 

現在、Noteで公開しており、本記事ではその概要を紹介します。

1本目の記事では、ウォーゲームを遊ぶ際に発生しがちな「めんどくさい」作業全般について触れたうえで、特にルール内容の把握に焦点を当てています。
Googleの「NotebookLM」を活用し、分量が多く把握に時間のかかるルールブックを、いかに効率よく理解するか、という点を中心に書いています。

2本目の記事では、海外製ウォーゲームのルールブックや関連資料を、生成AIを使って翻訳するというテーマを扱っています。
従来の機械翻訳との違いに触れつつ、生成AIならではの利点や、ウォーゲームとの相性の良さについて整理しています。

3本目の記事では、2本目の内容を踏まえ、生成AIを使って翻訳を行う際の注意点やコツを紹介しています。
あわせて、「ここが実際にとても役に立った」という具体的な使用例も挙げ、実践的な内容になるよう意識しました。

 

ご興味があればリンク先をご参照ください。

 

 

(終わり)

 

 

 

 

 

 

『Battlefields of the Napoleonic Wars』(Ingenioso Hidalgo)を対戦する

 

 

『Battlefields of the Napoleonic Wars』は、ユーロゲーム風のコマンドシステムを採用した新機軸のナポレオニックです。伝統的なウォーゲーム要素を残しながらも、システム全体はかなり軽量化されており、高いプレイアビリティを実現した作品になっていました。

 

 

ゲームの紹介

特徴的なコマンドシステム

本作の最大の特徴は、ユーロゲーム的要素を取り入れた独自のコマンドシステムです。

 

基本ルール:
  • 両軍が1ターンに実施できるオーダー(=コマンド)は回数制限があります
    (シナリオによって異なるが3回程度と少ない)
  • ターン中、プレイヤーは交互にオーダーを実施します
    オーダーを使い切り、「回復」という処理を行うとターン終了になります
    (オーダーを残した状態で「回復」を行うことも可能だが、ターン終了となる)
  • 1回のオーダーで3〜4ユニットを対象にアクションを行うことができます

 

コマンドの種類と制約

各ターンで使用できるオーダーの種類は以下の通りで、各オーダー種類はターンを通じて1回のみ実施可能という制約があります。オーダー種類毎に実施できるアクション(移動・射撃・突撃など)が規定されています。

  • 縦隊状態の歩兵部隊を活性化
  • 横隊状態の歩兵部隊を活性化
  • 騎兵部隊を活性化
  • 砲兵部隊を活性化
  • 指揮官を活性化指揮官がいるヘックスに隣接した部隊を活性化)
  • 機動(移動力2倍で移動が可能)
  • 回復(両プレイヤーともオーダーを使い切った、ターンの最後に実行され、オーダーの使用がリセットされる。実施する毎に相手にVPを与えるため多用には制約あり)

プレイヤーは「どのオーダーを」「どのタイミングで」「どのような順番で」実行するかを考慮する必要があります。この、「ゲームシステムに起因する制約の中で最適化を図る」という構造は、ユーロゲーム的なアプローチからくるメカニズムと言えるでしょう。

 

ウォーゲームとしてのアプローチ

兵種とユニット構成

シンプルながらもナポレオニック・ウォーゲームとして押さえるべきポイントを押さえた内容になっています。

  • 基本兵種: 歩兵、騎兵、砲兵の3種類
  • 指揮官ユニット:木駒で表される
  • 歩兵と騎兵には3段階のレベルがある(歩兵の場合は一般・ベテラン・エリートの3レベル)

各兵種は異なるオーダー種類で活性化され、移動・射撃・突撃などのアクションを実施できます。*1

 

戦術要素の考慮:
  • 方向の概念: 全ユニットに向きが設定されており、側面・背面攻撃に対して非常に脆弱です
  • 歩兵の隊形: 縦隊・横隊・方陣が設定され、使い分けが必要です*2
  • 各種攻撃: 射撃と突撃が攻撃方法として用意され、さらに兵種と攻撃方法による違いがそれぞれ特性を持ちます

  • 指揮官の役割: 「指揮官を活性化する」オーダーにより、隣接ユニットに対してアクション実施を可能としますので、兵種毎のオーダーによるアクションとあわせ、隣接ヘックスにいるユニットは同一ターン内で2回の活性化、いわゆるダブルムーブを可能とします。

 

地形効果

マップには丘陵、森、街などの地形が用意されており、それぞれ地形効果が設定されています。

 

戦闘システム

戦闘はシンプルなファイアパワー方式を採用しています。

  • 攻撃側の火力に応じた個数の専用ダイスを振ります
  • ダイス面に表示された絵文字(アイコン)で結果を判定
  • 射撃用ダイスと突撃用ダイスが別々に用意されています
  • 損害を顧みない攻撃を行う場合に強攻状態を表す専用の追加ダイスを振ることができます(損害が嵩むリスクあり)

シンプルでテンポの良い戦闘解決が可能となっています。

 

収録シナリオ

本作にはヒストリカルな4つの会戦が収録されています。

それぞれサイズや地形が異なる専用マップが用意されていますが、登場する部隊規模やスケール感などは抽象化されていることもあり、歴史的厳密性よりもゲームプレイの楽しさを優先したデザインになっています(他のシナリオをプレイする印象が異なってくる可能性はあります)。

 

RIVOLI(リヴォリの戦い)

発生年: 1797年
戦役: 北イタリア戦役
対戦国: オーストリア
補足: ナポレオンの初期の勝利の一つ

LA CORUÑA(ラ・コルーニャの戦い)

発生年: 1809年
戦役: 半島戦争
対戦国: イギリス
補足: イギリス軍の撤退作戦における後衛戦

HAGELBERG(ハーゲルベルクの戦い)

発生年: 1813年
戦役: 諸国民戦争
対戦国: プロイセン・ロシア連合

AUSTERLITZ(アウステルリッツの戦い

発生年: 1805年
戦役: 第三次対仏大同盟戦争
対戦国: オーストリア・ロシア連合

 

 

プレイ報告

30分のインストの後*3、プレイ開始。題材は『RIVOLI』。

Rivoliの街は左下付近の2ヘックスサイズの街。
勝敗はVPヘックス(街ヘックス、一部の丘陵ヘックスに設けられる:旗マーカーで表示)と、撃破した相手ユニットによるポイントによって決まる。

ゲームスタート時点で両軍は右側の丘陵地帯でにらみあっている状態から始まる。
オーストリア軍は丘陵地帯を突破しRivoliの街を目指す。

ターンが進んだところでフランス軍はマップ左端からの街道から、またオーストリア軍はその後、マップ左上の街道から増援が登場する。

 

※ 上のマップ全景写真とはマップの向きが異なるので注意

青(フランス軍)、赤(オーストリア軍)
紙製コマの部隊ユニットが正方形に配置されているヘックスと横に長く配置されているヘックスがあることに注意(前者が縦隊、後者が横隊を表す)。また背が高い木駒が指揮官を表す。なお初期配置位置は指定。

写真ではRivoliの街ヘックスは見切れている。
フランス軍左翼は丘の上にて防衛線を張るが、右翼を突破したオーストリア軍歩兵がRivoliまで進出する。直後、マップ下側に登場したフランス軍の有力な増援によりRivoliは奪還され、その後はVP地点の取り合いとなる。

 

終盤、2人目の指揮官やアクションマーカーの追加等があったフランス軍に対してオーストリア軍の増援は間に合わず、兵力に優れたフランス軍が守りきった。
オーストリアは増援が間に合わないと苦しいのではないかという印象。

 

感想戦

『Battlefields of the Napoleonic Wars』は、ユーロゲームのメカニクスとウォーゲームのシミュレーション性を融合させた作品になっています。コマンドの制約というゲーム的なジレンマはその解決の快感を得ることができます。当日インストでもプレイできるほどの軽量なシステムはシミュレーションよりもプレイそのものを楽しむためにはよく、高いリプレイ性を実現しています。
ナポレオニック・ウォーゲームの入門としても、また歴戦のベテランゲーマーへは新基軸のナポレオニックゲームとして良いのではないでしょうか。

このシステムでアウステルリッツを扱ったシナリオなどどうなるのでしょう。楽しみです。

 

ミニチュアゲームとの相性もよさそうなシステムです。

 

(終わり)

 

過去に記事にしたナポレオニックは少なくない数あるのですが、変わったシステムを採用していた作品を中心に紹介します。
ご興味があれば「ナポレオニック」というタグを用意していますので他の作品も探ってみてください。

コンポーネントが美しいという点では本作に共通するものがありますが、メカニズムの特異さ・難解さでは対極にある作品かもしれません。(ちなみにシミュレーション的な観点でのナポレオニックゲームの極北はバタイユシリーズ(La Batailleシリーズ)だと思われます)。

 

ナポレオニックの古典的作品のひとつです。積み木ユニットとシンプルなデザインのマップが美しい名作です。

 

ユーロゲーム的コマンドシステムを採用した作品ということであれば、この作品のシステムにも近似を感じます。さらにユーロゲーム風のギミックが加えられていたのと、ヒストリカル性がフレーバー風に処理されていた点で、こちらの作品のほうがよりユーロゲーム寄りという印象です。

 

*1:逆に一般のナポレオニックで取り込まれている要素で本作からは捨象されている要素としては、散兵、カウンターチャージ、強行軍・・などでしょうか。

*2:ユニットは横に長いダブルサイズになっていて、2個で1セットになっています。2個を四角に並べると「縦隊」、横に長細く並べると「横隊」とヘックスの中の置き方で状態がわかるようになっています。このあたりの処理もすっきりしていてわかりやすいです

*3:当日インストでも対応できるほど軽量なシステムで変なルールもなくクセが少ない

『Model's Counterback』(Dissimula Edizioni)を対戦する【1/2】

 

 

1944年東部戦線、ソ連軍が発動した「バグラチオン作戦」によりドイツ軍中央軍集団は壊滅的な損害を受け、戦線は大きくポーランドまで後退しました。ワルシャワ郊外まで進出したソ連軍を食い止めるべく、モーデル元帥は部隊をかき集めて反撃を企図するのですが、ちょうどワルシャワ蜂起が始まり……という状況を扱う本作を対戦しました。
直近で発売された作戦級ゲームとして評判が良い作品です。
メーカーはイタリアのDissimula Edizioniですが、同社の作品としては1943年からのイタリア戦線を扱った『From Salerno to Rome』がとてもよかったです(本記事の最後に扱った記事のリンクを貼っておきます)。

 

 

ゲームの概要

スケール:

1ターン=1日(1944年7月27日~ 全10ターン/ワルシャワ蜂起は1944年8月1日)
1ヘックス=2km(作戦級としては小さい印象)
1ユニット=中隊~大隊~連隊

 

ゲームシステムの特徴

各ゲームターンでは、ソ連軍とドイツ軍の活性化ラウンドが3回ずつ交互に実施されます。
ソ連軍の主力である第2戦車軍は3つの戦車軍団から構成されるのですが、1ラウンド毎に戦車軍団を1個ずつ活性化します。一方、ドイツ軍は3回の活性化ラウンドで活性化していないユニットであれば何ユニットでも活性化でき、ドイツ軍の作戦的柔軟性を表現しています。
各活性化ラウンドでは、移動、オーバーラン攻撃、統制攻撃、予備の移動を行います。ドイツ軍には移動中の敵ユニットに隣接されると直ちに1ヘクス退却できる「離脱」や、ソ連軍はユニット単位でしか行えないオーバーラン攻撃をスタック単位で実行できるといった戦術的優位も再現されています。
オーバーランは特徴的で、移動力9以上の装甲/戦車ユニットのみが実施できるのですが、移動力が続く限り1ターンの間に何度でも実施でき、さらにはその後の通常の攻撃にあたる統制攻撃も実施できるなど、装甲/戦車部隊の機動性が強調されています。特にドイツ軍はまさに機動防御を地で行く活動を行っていく必要があります。
特徴的なルールや派生的なルールはあるものの、全体にはルール難易度は中程度という印象で、プレイアビリティが高い点も評価が高い理由でしょう。

 

機動戦を表現する特徴的なルール

「離脱」:

機動力がある部隊ユニット(自動車化されたドイツ軍部隊、ソ連軍の偵察部隊)は、敵の活性化フェイズに敵ユニットの移動により接敵された場合、活性化状況を問わず1ヘックス移動することができます。

「予備」:

両軍とも「予備」として指定したユニット/スタックについては、通常の移動・戦闘の処理の後、または後続の活性化フェイズに移動させることが可能です。マーカーの数は両軍とも3個まで。通常のゲームの第二次移動にあたります。

「ZOC(支配地域)」:

ZOCルールは緩めです。
敵ユニットによる敵ZOCに入る際、必要移動力が「+1」されます。
離脱は自由。敵ZOCから敵ZOCへの直接移動も敵ZOCに入る際の「+1」移動力を消費すれば可能になります。

戦闘結果により敵ZOCへの退却も可能ですが、1ステップロスのペナルティを負います。ただし味方ユニットが存在する敵ZOCの場合はこのペナルティは不要です(損害なく敵ZOCを通った後退が可能となる)。

 

戦闘ルール

戦闘はメイアタック(戦闘は任意)。戦闘力比率によって解決されます。
損害結果は攻撃側・防御側のステップロス数と、防御側の後退ヘックス数からなります。本作がユニークなのは、戦闘力比率が4対1や5対1といった高比率においても攻撃側に損害が出るケースが残っている点です。着実に相手にダメージを与えるには戦闘力比率を高比率にするよりも、ダイス修正でプラス修正を得た方がメリットが大きいといえます。
ダイス修正は、次に説明する「戦闘ボーナス」の差分がメインになるでしょう。

戦闘ボーナス:

装甲・戦車部隊については「戦闘ボーナス」という数値が与えられています(1~3)。戦闘実施時には戦闘に参加した装甲・戦車部隊ユニットについて、攻撃側の合計値と防御側の合計値の差分が「戦闘ボーナス」としてダイス修正に用いられます。
防御側は防御を行うヘックスに存在する全てのユニットの「戦闘ボーナス」を加算できるのですが、攻撃側は攻撃に参加するスタック毎に1ユニットしか「戦闘ボーナス」を加算できません。このため攻撃側が効果的な攻撃を行うには、複数のヘックスから「戦闘ボーナス」を持った部隊ユニットを含んだスタックによる攻撃を行うことが必要となるでしょう。なお、本作で複数ヘックスから攻撃を行う場合は、攻撃目標のヘックスに隣接しているだけでは共同での攻撃とはみなされず、共同で攻撃を実施する「統制攻撃」とするには攻撃を行うヘックスが互いに隣接しておく必要があります。
「戦闘ボーナス」の数値は各部隊ユニットごとの装備車両によって異なる数値を与えられているようで、最も強い重戦車――おそらくユニットのシルエットから判断するとドイツ軍のパンテル、ティーガーⅠ、ソ連軍のIS-Ⅱあたりは最高値の3が与えられています。
Ⅲ号突撃砲などの突撃砲装備の部隊ユニットの「戦闘ボーナス」値は、防御時のみに使用できる数値になっています。

ドイツ軍の縦深陣地

ドイツ軍は被ったステップ損害を1ヘックス後退することで吸収することが可能です。ソ連軍には同様の回避措置はないため、発生したステップ損害はそのままステップロスとして受け入れなければなりません。

イベントチット

歴史的イベントというよりは、戦術的なボーナスカードのような内容になっています。オリジナルは毎ターンチットドローを行うのですが、今回はカード化しています。
チットの内容は両軍とも似たような内容・構成になっています。

 

特別ルール

ワルシャワ蜂起:

ソ連軍部隊がワルシャワから6ヘックスの地点まで到達した次のターンに発生します。ワルシャワを介した移動や補給などに影響が出ます。ワルシャワ市街(ゲーム中は特別なエリアとして扱われる)に一定数の部隊を留め置くことで影響を抑えることが可能になっています。

マグヌシェフ橋頭堡対応:

隣接する戦線にソ連軍が設けた渡河用の橋頭堡。こちらへの増援のため、中盤以降ドイツ軍は少しずつ戦力の転用(ゲームから除外される)が求められます。

モーデル元帥:

モーデル元帥がユニット化され、いくつかの効果を発揮させることができます(ドイツ軍プレイヤーの選択):

  • 離れた位置にいるスタックによる統制攻撃を可能とする
  • ダイスの振り直し
  • 活性化済のスタックの再活性化

 

初期状態

初期配置は一定エリア内への配置を指定されたものが多いです。ソ連軍はゲーム開始時にマップ端から登場します。
今回プレイするにあたって、ドイツ軍の初期配置においていくつかのハウスルールを取り入れました。具体的には、ソ連軍が登場してくるヘックスへの配置は禁止、また初期配置状態でのスタックは禁止というものです。

 

勝利条件

マップ上の勝利ポイント対象地点(8か所)の支配によりVPが入ります。
またドイツ軍はマグヌシェフ橋頭堡対応で定められたユニットの撤収ができなかった場合、ペナルティを負います。

 

 

こうしていろいろ特徴を書くと複雑に見えるかもしれませんが、基本となるルールはオーソドックスなものなので迷うところは少ないし、派生ルールやアレンジされたルール内容も素直なため、プレイ中、詰まるようなところはほぼありませんでした。

 

写真右手が北になる。
マップ上部にある半円状の部分がワルシャワ市街。上端になっている東西に描かれているのがヴィスワ川(Wista)。
ワルシャワ蜂起そのものは本ゲームのスコープではないが、ドイツ軍はワルシャワ市街にとどめておく部隊ユニットを増やすことで、蜂起による悪影響を抑えることができる。
なおソ連軍は蜂起とは全く何の関係もない。ワルシャワ市街に突入したとしても、蜂起軍と協働できるといったこともない。

オレンジ色の星印で印をつけている勝利ポイント都市はマップ内に8か所あり、ゲーム開始時はすべてドイツ軍の支配下におかれている。

ソ連軍は写真左端から第1ターンに2個軍団、第2ターンに1個軍団が登場。第7ターンに1個軍団が写真下側(西側)から登場する

ドイツ軍の増援は開始当初はバラバラとワルシャワ市街を通って到着する(ヘルマン・ゲーリング師団など)。第4ターン以降になると、写真下側(西側)から前線から撤退してきた第3SS装甲師団「トーテンコップ」、第5SS装甲師団「ヴィーキング」などが登場してくるので心強い。ただしターンの進行に伴い一定数の部隊ユニットを、マグヌシェフ橋頭堡対応のため撤収させなければならないのはつらい。

 

続く