社会に出ると、感情は悪いこととして捉えられることが多い。アメリカの会社で、あの人は感情的だという表現は、大抵の場合、短所 (weakness) として使われる。感情を抑えられることは、長所 (strength) として捉えられ、そのような人は成熟していると思われることが多い。会社などの場面では色々な文化や考え方の人がいて、感情が少ない方が何かと物事がスムーズに運ぶからだ。
でも感情はポジティブにも使える。本当に人を動かすものは、必ず感情が伴っている。心に響くものは、大体が感情的なものだ。強い感情は文字となり、絵となり、物となり、他の人へと、時には世代を超えて伝わっていく。発信する方も、強い感情をこめて書いたり作ったりすると、時には行きどころのないような感情を誰かに聞いてもらったような、受け入れてもらったような気持ちになる。
長いあいだ会社で働いていると、感情を抑えることが多くなり、それが自分の中に溜まっていく。気がつけば、感情を押し殺し、スムーズに物事を運ぶことがどんどん上手になり、その一方で、人を動かすようなものを書けなくなり、作れなくなっている自分もいる。4年以上働いていた会社を辞め、数週間経つ。今まで抑えていた感情が溢れ出す。それが楽しいものであれ、悲しいものであれ、深く心に響くものであれ、同情であれ、それら全てを含む感情を自由に感じ、表現できることは素晴らしいことだと思う。
その感情を一つ一つ確かめて、文字にしていく。陶器の土に練り込む。料理に込める。それは、会社という社会の中でグッと押し込め続けられ、凝り固まった感情が少しずつ溶けて、癒される過程だと思う。