平成16年改正の改正本(「平成16年 特許法等の一部改正 産業財産権法の解説」 発明協会)を見ると、まず最初の特例法の話は、まあ、不要でしょう。(とはいえ、私が受験していたころは出題されていたので、特例法も一生懸命覚えましたが今は昔。)
平成16年改正の目玉はなんといっても「実用新案登録に基づく特許出願制度」(改正本75頁~)でしょうね。
まず、条文を挙げると、
第46条の2(実用新案登録に基づく特許出願) 実用新案権者は、次に掲げる場合を除き、経済産業省令で定めるところにより、自己の実用新案登録に基づいて特許出願をすることができる。この場合においては、その実用新案権を放棄しなければならない。
一 その実用新案登録に係る実用新案登録出願の日から三年を経過したとき。
二 その実用新案登録に係る実用新案登録出願又はその実用新案登録について、実用新案登録出願人又は実用新案権者から実用新案法第12条第1項に規定する実用新案技術評価(次号において単に「実用新案技術評価」という。)の請求があつたとき。
三 その実用新案登録に係る実用新案登録出願又はその実用新案登録について、実用新案登録出願人又は実用新案権者でない者がした実用新案技術評価の請求に係る実用新案法第13条第2項の規定による最初の通知を受けた日から三十日を経過したとき。
四 その実用新案登録について請求された実用新案法第37条第1項の実用新案登録無効審判について、同法第39条第1項の規定により最初に指定された期間を経過したとき。
2 前項の規定による特許出願は、その願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が当該特許出願の基礎とされた実用新案登録の願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にあるものに限り、その実用新案登録に係る実用新案登録出願の時にしたものとみなす。ただし、その特許出願が第29条の2に規定する他の特許出願又は実用新案法第3条の2に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用並びに第30条第4項、第36条の2第2項、第41条第4項、第43条第1項(第43条の2第3項において準用する場合を含む。)及び第48条の3第2項の規定の適用については、この限りでない。
3 第1項の規定による特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第三号に規定する期間を経過するまでにその特許出願をすることができないときは、同号の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその特許出願をすることができる。
4 実用新案権者は、専用実施権者、質権者又は実用新案法第11条第3項において準用するこの法律第35条第1項、実用新案法第18条第3項において準用するこの法律第77条第4項若しくは実用新案法第19条第1項の規定による通常実施権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、第1項の規定による特許出願をすることができる。
5 第44条第3項及び第4項の規定は、第1項の規定による特許出願をする場合に準用する。
となります。
さて、
★第1項 主体は実用新案権者です。共有の場合は全員ということになるのは、特許法14条になくても、出願分割と同じように、新たな出願だからです。第1項本文後段は、「実用新案権を放棄しなければならない。」となっていますが、放棄しなかったらどうなる?ま、普通に考えれば、46条の2第1項の要件を満たさない特許出願ということになって、2項の遡及効が得られない、ということになるでしょう。
各号は、実用新案登録に基づく特許出願をすることができない場合の規定です。
具体的には、
①実用新案登録出願の日から三年経過後はできない。
②自分が実用新案技術評価請求をした場合はできない。
③他人が実用新案技術評価請求をした旨の通知から30日経過後はできない。
★★おっと、ここでは、「最初の通知」となっている点に注意ですね。
④無効審判請求があった場合に答弁書提出の機会を与えられた場合に、その期間を経過したらできない。
★★おっと、ここでも「最初に指定された期間」となっている点に注意ですね。
★第2項は遡及効を定めた規定です。遡及効といってもいつまで遡及するのか、というと、実用新案登録出願の時まで遡及するわけですね。ただし、特許出願の書類に記載されたものは、基礎となる実用新案登録に記載された内容にあるものだけに限られます。(優先権みたいですね。→ただし優先権は遡及効ではありませんが。)
★★おっと、ここでは願書に「最初に」添付した明細書等となっていないことに注意。ただし書は分割や変更の場合と同じですね。実質的に手続期間を確保するために出願時を遡及させない規定です。他人より先願となって後願を29条の2で拒絶するような遡及効が持てないのは分割や変更と同じですね。
★第三項は不責事由があった場合には3号の期間(他人が評価請求をしてから30日)を経過した場合でも救われる旨の規定です。3号だけに限られていて、4号については適用はない点に注意ですね。
★第四項は放棄や訂正の承諾権と同じ承諾権を通常実施権者等に認めますよという規定です。実用新案権を放棄しなければならないのだから納得できますね。
★第五項は優先権証明書等についての提出擬制規定を準用します、という規定。これは実用新案登録出願をしたときにパリ条約の優先権主張をしていたら、優先権証明書等の提出については特許出願をしたときに擬制してあげましょう、ということですね。
改正本81頁には、
「実用新案登録がすでに消滅していたら、46条の2の特許出願はできない」
「一つの実用新案登録からは一つの特許出願しかできない。単一性がないなら特許出願をした後に分割することになる」
旨の話が出ています。
(補説1)46条の2の特許出願を行った後に実用新案登録が無効になったらどうなる?
→46条の2の特許出願はなんら影響を受けないそうです。
82頁では評価請求があったら46条の2の特許出願はできなくなりますが、評価請求が一部の請求項だけにされた場合でも全部の請求項にされた場合でも、扱いは同じ、と書いてありますね。「ボクは特許出願になるんだぞお。」と元気のよかったあの子が、他の請求項について評価請求されたために、46条の2の特許出願ができなくなってしまって泣いている。かわいそうな請求項。泣くな。我慢していればいつかきっと特許出願に生まれ変われるときが来るぞ。(来ない。)
他人が評価請求した場合に30日としたのは、他人の請求によって直ちに特許出願できなくなるのは出願人や権利者に酷である一方、出願人や権利者が他人になりすまして評価請求をする可能性は否定できないから長期間とするのは適切でない。よって30日とした。
なにそれ~。論文では、「30日以内にしなければならない。30日としたのはなりすましによる請求の可能性を否定できないからである。」なんて書かないよな~。もっとかっこいい理由にしてくれよ。
84頁には特許出願が実用新案登録の範囲を超えている場合には遡及効がない、と書いてあります。でも、特許査定までに補正すればよいわけだね。ただし、特許出願の補正は(いくら実用新案登録に記載があっても)特許出願の当初明細書の範囲でしかできないので注意。
補説2では、「当初明細書」ではないですよ、ということが書いてある。
そのくせ補説3では、当初明細書の範囲を超えているような内容については遡及効を認めない、と書いてある。これは、実用新案登録については基本的に無審査登録なので、新規事項追加の補正がされた状態でも登録がされてしまうことになるため、いくら実用新案登録の内容にあっても、当初明細書に書いていないようなことにまで遡及効を認めるわけにはいかない、ということを言いたいということはわかる。分割や変更でも実質的には当初明細書の範囲を超えている変更や分割には遡及効がないことから考えれば、妥当な運用かと思われる。
85頁⑥については、30日については不責理由により追完が可能ということで、実用新案登録出願の段階で評価請求があって、出願変更をしようかなと思っていたところ、評価請求の通知の日から28日目くらいにひょっこり実用新案登録がされたようなケースを考えてみると、急遽、46条の2の特許出願をしようとしたら、タイムリミットオーバーということになってしまいかねない。そういう場合をも想定した規定なのかもしれませんが、一般には、本人の重篤とかそういうことを考えておけばよいでしょう。
(つぶやき)
その3くらいまでしかできないかもな~。みんな頑張れ~。