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そのとき人は風景になる(2)
高原の、ただそこにある岩 その高原はそこにあった。ただ大きくて、ただ広くて、ただそこにあった。以前に初めてその広い風景を眼にしたときの驚きが、ふたたび蘇ってきた。視界の果てまで、ほとんど人の手が加わっていない、原初の姿そのものが放置されてあった。広さは広さのまま、草は草のまま、土は土のまま、風は風のまま、人も人のまま、になりきれそうだった。その風景そのものが大きな感動としてあった。詩や小説のよう...
そのとき人は風景になる(1)
そこには風が吹いているいつも、そこでは風が吹いている。いつも、春先の柔らかい風の記憶が、一番鮮烈な形で蘇ってくるのはなぜだろう。ある時、突然、そして偶然に、山々の姿を、草原のうねりを、大きな放物線をいくつも描きながら、懐かしい風景を運んでくるのは、いつも風だ。そのとき風は、草いきれと微かな草の擦れ合う音も運んでくるのだが、ぼくには思わず口ずさみたくなる、記憶の奥にある旋律にも聞こえる時がある。ぼ...
作文教室
あさおきて、かおをあらって、ごはんをたべて、それからがっこうへいきました……そこでもう、ただ鉛筆を舐めるばかり。その先へは、ちっとも進めない。楽しかったことや、辛かったことも書いたらいい、と先生。やすみじかんに、こうていで、やきゅうをしました……それは楽しかったことだ。しかし文章にしてみると、すこしも楽しくない。一日のあったことを、ありのままに書いたらいい、と先生。ありのままに書くとは、どう書くことな...