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ことしも半分が終わった
梅雨のしとしと雨かと思えば、澄みきった青空のときもある。空の景色もあわただしく変貌する。ふと立ち止まると、はや6月も終わろうとしていた。今年のはじめに取り掛かったものが、仕上がらずに残されてしまっている。マスクだ、手洗いだ、うがいだ、三密だと、そんな日常に追われていたのだろうか。いや、そうでもなかった。けれども、いつもとは違う浮わついた生活感があり、なんとなく落ち着かなかったのも事実だ。そうして今...
メダカのように泳いでみる
四国霊場のあるお寺の境内で、古い陶器の大鉢でメダカが飼われていた。たっぷりと溜められた雨水、空からの水。メダカは鉢の外を知らないけれど、おそらく水面には無限の空が写っている。水の中も水の外も、空へと広がるそのすべてが、メダカにとっての世界なのだろう。そこは波立つこともない、静かで平穏な宇宙かもしれない。メダカは小さい。その小さい体の中に、どれほどの魂があるのだろう。どれほどの優しさと欲望があるのだ...
ネズミはどこへ行ったか
いまでは、いちばん古い記憶かもしれない。幼少期、祖父に力づくで押さえつけられて、灸をすえられたことがあった。だからずっと、祖父のことを恐い人だと思っていた。その後は九州と大阪で離れて暮らしていたので、長いあいだ祖父には会うことがなかった。高校生になり一人で旅行ができるようになって、10年ぶりに大阪の祖父と会ってみると、おしゃべりな祖母のかげでただ黙っている、そんなおとなしい人だった。夏休みの短い期...
風の栞(しおり)
きのうの記憶は香っているかあしたの希望は光っているか届かなかったメールや古くなった交信記録や細かい欠片を探してみてもけさの夢も思い出せない過ぎた日々を追って人々の影を探してきのうからあしたへいまもなお彷徨っている伝わらない呟きや揺れうごく魂のそよぎ見えるものも見えないものもそのままの確かさで揺れうごくもののすべてを揺れうごくままに閉じこめるいまはただいつかひもとく風の栞に いまは何も...