遊泳する言葉

言葉が追いつけないものがある。言葉に追いつけないものがある。だから言葉を追いかける……

朝のひかり 

まだ夏の暑さが残る朝は、こもれびの光を浴びながら歩く。アスファルトに落ちた、光と影のまだら模様がまぶしい。かつてはそこに、黄金色に光り輝くものが落ちていた朝もある。それは、まるで小さな宝石のようだった。朝の光が生み落とした、小さな美しい虫だった。その虫のなまえは、タマムシ(玉虫)。あの法隆寺の宝物、玉虫厨子の装飾に用いられたというタマムシである。そんな美しい虫とは、めったに遭遇するものではなかった...
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石山の石より白し秋の風 

いつのまにか、夏から秋に季節が変わろうとしている。騒がしかったセミの声もまばらになり、夜になると虫の声がさかんになった。日射しはまだまだ強いが、空気が透きとおってきたように感じる。四季にはそれぞれに色があるらしい。春は青、夏は朱、秋は白、冬は黒だという。秋は白い季節なのだ。俳句などでも白い秋とか白い風といった表現があるようだ。   「石山の石より白し秋の風」(松尾芭蕉)目には見えないが、白い風が吹...
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マラソン 

ヨーイ ドン校長先生のピストルでランナーはみんな逝ってしまったあれからぼくはどこを走っているのだろうか豆腐屋がある醤油屋がある精米所があるお寺があり風呂屋があり芝居小屋があるかんじんが居て落ち武者が居るカミナリ先生の家がありター坊の錆びた自転車がある新聞販売店があり製材所がある床屋があり薬局があり鍛冶屋があり郵便ポストがある桐の下駄が積まれた工場があり竹の篭を作る職人が居る仕立て屋があり雑貨屋があ...
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小さい秋みつけた 

どこかに、小さな隙間ができたみたいだ。どっかりと居座っていた猛暑のあとに、すこしずつ秋の風がしのび込んできている。にぎやかだった蝉の声が遠くなって、ベランダの朝顔の花が日毎に小さくなっていく。その小さな花の口でなにか言葉を発しているとしたら、その声はひそひそ声になっているにちがいない。秋は、じっと耳を澄ますことが多くなる。過ぎた日々や明日の声に耳を澄ます。 過去の声はにぎやかだ。責め立てられて反省...
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ガリガリ君の夏が終わらない 

もう秋だというのに、いつまでも暑い。週間予報でも、この暑さはまだまだ続くという。だが逃げ出すわけにもいかない。いつでも冷たい氷と水があり、ときどきはアイスもある、アイスを愛す人間としては、暑いときは冷蔵庫はありがたい。なのに冷蔵庫というのは、暑い季節に壊れるものなのだろうか。夏はなんとか乗り切ってくれたが、だいじな冷凍機能が夏バテになってしまったみたいだ。庫内の温度調節を最強にしても、ガリガリ君が...
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夢のつばさ 

小さな穴を掘って小さな埋葬をした小さなかなしみに小さな花を供えた小鳥には翼があるから土の中では虫のようには眠れないだろう空を忘れてしまうまで暗くて長い夢をみるだろうぼくには翼がないから夢の中でしか空を飛べない夜の翼を失ったあとで手足をとりもどしてぼくはゆっくり人になっていくあかるい朝もくらい朝も新しい始まりを告げてくれるのは風の扉をノックする小さな羽ばたきだ (ふわふわ。り)...
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