アイキャッチ画像撮影:鷲尾 太輔
こんなに万能だったとは!登山で役立つ「自己融着テープ」
撮影:鷲尾 太輔(今回の検証で使用する自己融着テープ)
自己融着テープとは、その名の通りテープ同士がくっつき、まるで一つに“同化”するアイテムのこと。重ねて巻きつけることでテープ同士が分子レベルで結合して一体化します。
そのため、剥がしてもベタつかないだけでなく、固定力も折り紙つき。高い防水性と絶縁性があるため、電気工事の現場や水道管の補修など、プロの現場で長年使われています。
実はこれ、登山シーンでも大活躍するんです!
ここがすごい!自己融着テープの優れた3つのポテンシャル

自己融着テープが登山に優れているポイントは、大きく3つあります。
1. 密着性が高く剥がれにくい

写真はトレッキングポールの上部に滑り止めとして巻き付け、グリップ部分を延長する使用法です。自己融着テープの場合はテープ同士が重なった部分が一体化しているため、しっかりと密着しており隙間がありません。
一方で一般的なテーピングテープの場合は若干の隙間があり、テープ自体も接着剤で固定されているだけなので、端から剥がれやすくなっている状態です。
2. アウトドアでの使用に適した性質

今回使用した自己融着テープの特徴には「優れた電気的諸特性、耐水耐湿性、耐オゾン、耐化学薬品性、良好な耐寒性、耐老化性、機械的特質、長期保存可能。」と記載されています。
少なくとも太字で示した特徴は、厳しい屋外環境での行動もありうる登山での使用に適した性質であり、実用性の面でかなり期待できそうです。
3. 身近な場所で安価に購入できる

もともと工業用に使用される自己融着テープは、近所のホームセンターやDIYコーナーなどで販売されています。一般向けのものは、価格もほとんどが数百円と安価で、気軽に購入することができます。
登山での使用例は、主に“滑り止め”。実は専用品もある

これだけ実用的な自己融着テープだけに、登山シーンでも以前から一部の経験者には重宝されてきました。アイスクライミングに使用するアイスアックスのグリップに巻き付けたり、トレッキングポールのグリップを拡張したりと、おもに滑り止めとして活用されています。
実際、以下のような自己融着テープがアウトドアブランドから販売されています。この後ご紹介する市販品よりも価格はやや上がりますが、登山における特定の用途に特化している信頼性や必要最小限の長さでコンパクトに携帯できる点はさすが。こうしたポイントを重視したい方のチョイスにはよさそうです。
PETZL グリップテープ
| 幅 | 19mm |
|---|---|
| 長さ | 1m |
こんなことにも使える!?登山シーンで3つの活用法を実践

登山シーンでの真価を体感するべく、自己融着テープのよくある3つの活用法を様々なシーンで試してみました。
- 気温が低い冬山で冷たくなる金属製品などに巻きつけて「手を保護」する
- 手袋をした状態だと滑りやすいアイテムに巻きつけて「滑り止め」にする
- 切れたり折れたりしてしまったアイテムを「応急的に修理」する
今回は大手通販サイトで購入した、古河電工の「エフコ®︎テープ2号」を使ってその実力を見ていきましょう!
活用法①|断熱材代わりにして「手を保護」

行動中、常に握っているピッケルは氷のように冷たい金属の塊です。厳冬期の高山ともなれば、厚手のグローブを通してさえ、その冷気が手に伝わってくることも。そこで自己融着テープの出番です。
テープ自体に断熱性能はありませんが、巻きつけたテープの層がちょっとした断熱材代わりに。巻かないよりも断然冷えを感じにくくなります。
アイスアックスのシャフトはもちろん、ピッケルを持つ際に手で握るピックやブレード部分にも巻いておくのがおすすめです。

雪山で雪洞やイグルーを作ることがある場合は、スノーショベルのシャフト両端に巻き付けておくのもおすすめ。体温が上がりにくい静止状態での長時間作業でも、スノーショベルの冷たさが手に伝わることを軽減してくれます。
自己融着テープは耐水性・耐湿性・耐寒性・耐候性に優れているため、寒冷下でも巻いたテープが硬化や脆化しにくいところも雪山をはじめ登山で活用しやすいポイント。対応温度域は製品によって異なるので、用途にあわせて選びましょう。
活用法②|手袋をしたままでも操作しやすい「滑り止め」に

自己癒着テープ自体にグリップ力があるため、さまざまな物に巻き付けるだけで、そのアイテムのグリップ力を拡張したり強化することができます。
トレッキングポールのグリップ拡張

トレッキングポールを使用する際、アジャスターで長さ調整をしてグリップ位置を変える必要がありますが、トレッキングポールのシャフト上部に自己融着テープを巻き付けておけば、グリップとなる部分を簡単に拡張できます。
先に紹介したmont-bellの「シリコーン グリップテープ トレッキングポール用」は、まさにこの用途のために販売されています。
保温ボトルの滑り止め拡張

前述のピッケル操作や雪洞づくりはもちろん、雪山登山においては凍傷リスクの観点から素手になることは原則NG。もちろん休憩中であっても同様です。
温かい飲み物が入った保温ボトルは、手袋を装着したままだと滑りやすく落としてしまうことも。保温ボトル自体がそもそも円筒形をしているため、雪の斜面を転がり落ちて紛失してしまうリスクもあります。
写真の保温ボトルは本体部分にカーキ色の樹脂製滑り止めが付いていますが、さらに自己融着テープを巻き付けて滑り止め部分を拡張。フタにも巻き付けることで、手袋をしたままでの落下リスクを低減できます。
テントポールのグリップ強化

また、雪山登山での細かい作業の代表例がテント設営です。特にテントポールを本体角のループに通してテントを立てる際にはそれなりの握力が必要なため、思わず素手になりたいと感じる場合も。そんな時に備えて、テントポールの両端に自己融着テープを巻き付けておくと、手袋を装着したままでもスムーズに設営ができますよ。
なお、自己融着テープは引っ張って伸ばすことによって融着するもの。寒冷環境では伸びにくく、そもそも手袋を装着したままでの貼り付け自体が困難です。貼り付けは現地ではなく事前に行っておきましょう。
どうしても寒冷下で貼る必要がある場合は、体温などで少し温めると伸ばしやすくなります。
活用法③|もしものときの「修理テープ」として
靴ひも切れの修理

登山中に靴ひもが切れてしまったら……!?特に写真のようなクイックシュータイプやダイヤルを回して締め具合を調整するBOAフィットタイプなど「結ばない」靴ひもは、その場で予備靴ひもへ交換するのが困難です。
ひもをつなげるだけなら切れ端同士を結んだり、手持ちのテーピングテープで補修したりも可能ではありますが、自己融着テープを使うのもひとつの手。
なお、簡単な実験をしてみたところ、テーピングテープよりも自己融着テープの方が強度が高いようでした。詳細は以下。
折れた部品の応急的な修理

サングラスのつる(耳にかける部分)などが折れてしまった時などの応急的な修理にも、自己融着テープは活躍します。
一般的なテープと異なり接着剤を使用していないため、熱で糊が溶け出す心配もほとんどありません。ただし、夏場にゴム素材が直接肌に触れ続けると、汗で蒸れたり、人によってはかぶれたりする可能性も。
自己融着テープによるギアの補修は、あくまでも一時的な固定です。本来の強度を完全に取り戻すものではありませんので、登山後は早めに正式な修理や部品交換を行ってください。
過信は禁物!効果が期待できない活用法も

今回、さまざまな活用法を実践してみましたが、なかには自己癒着テープの特徴が裏目に出てしまう結果も。それが靴底剥がれの応急処置です。
靴底剥がれの応急的な対応としてよく使われるテーピングテープと、自己融着テープを片足ずつ巻き付けて、耐久性を比較してみたところ……どうやら、自己融着テープは摩擦には弱い印象なんです。
今回歩いたのは稜線までは樹林帯の中の土道、稜線に出てからは岩場のアップダウンが続くコースです。

稜線までは自己融着テープを巻いた左足は元の状態をキープ、むしろ右足のテーピングテープが若干めくれあがってしまっていました。

しかし稜線歩きを半分ほど終えたところで靴底をチェックすると……左足の自己融着テープは、ほとんど消失してしまっていたのです。
自己融着テープは、その高いグリップ力ゆえに「摩擦」には少し注意が必要です。ゴム素材のため、登山道の砂利、岩、階段などで激しくこすれると表面が削れたり、引きちぎれたりして破損することがあります。
絶えず登山道へ接地して摩擦が生じる靴底の修理には、自己融着テープは適していないということがわかりました。
また、擦れやすい箇所に使用する場合は少し厚めに重ねて巻いておくのが安心です。




