
全体で考えたい話
はじめに
日本高校野球連盟から、「7イニング制の諸課題に関する検討会議」の結果が公表されました。
2028年のセンバツ大会を見据え、いよいよ本格的に7回制が議論の俎上に載ってきた、という印象です。
私は小学生の頃から投げ続け、高校3年のときに肩を壊しました。
だからこそ、投手の負担軽減という話題には、どうしても当事者として考えてしまいます。
ただ今回の資料を読んで感じたのは、
7回制は「投手だけの問題」ではなく、
野手も含めた“高校野球全体の話”として整理されている
という点でした。
今回は、あえて「野手側・チーム全体の視点」から、この7回制の話を整理してみたいと思います。
部員数の減少という、避けられない現実
まず避けて通れないのが、部員数の問題です。
少子化の影響もあり、加盟校の中では
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部員が多い学校
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ギリギリでチームを維持している学校
この二極化が、年々はっきりしてきています。
実際、部員不足により連合チームで大会に参加する学校が増えているという現状もあります。
7イニング制になることで、
少ない人数でも試合終盤の負担が軽くなり、特に夏場に起きやすい熱中症のリスクを下げられる。
これは、投手だけでなく、最後まで守備に立つ野手にとっても大きな意味を持つ話だと思います。
また、活動時間が短縮されることで、
「野球をやりたいけど、時間的に厳しい」
そんな生徒が一歩踏み出しやすくなる可能性もある。
7回制が“普及”という側面で期待されている理由も、ここにあります。
健康対策は、投手だけの話ではない
高校野球ではこれまで、投手の障害予防を中心に、さまざまな対策が取られてきました。
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1週間500球以内の投球制限
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低反発金属バットの導入
こうした取り組みは確かに前進です。
ただ一方で、
投球数制限があっても、怪我をしてしまう投手がいる
という現実も、資料の中でははっきり触れられていました。
データ上では、
9回制 → 7回制に変わることで
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試合時間:約30分短縮
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投球数:約30球減少
今年の国民スポーツ大会では、この予測が実際に数字として確認されています。
ここで重要なのは、
これは投手だけの話ではないという点です。
試合時間が短くなることで、
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捕手の負担
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夏場の内野・外野での集中力低下
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足が攣る、痙攣するといったトラブル
こうした野手側のリスクも、同時に下がっていく可能性があります。
熱中症と「見られる競技」としての責任
夏の高校野球は、年々暑さが厳しくなっています。
これはもう、感覚の話ではなく事実です。
地方大会でも、全国大会でも、
できる限りの対策は取られています。
それでも、
テレビやネット中継を通じて、
グラウンドで足を攣り、苦しそうにする選手の姿が何度も映る。
重大事故に至らなかったとしても、
それを見た社会がどう受け取るか。
この点を、高校野球関係者は意識する必要がある、という指摘はとても現実的だと感じました。
医学的にも、
「7回制が完璧なエビデンスを持つわけではないが、
9回制よりも安全域を広げる方向性である」
という見解が示されています。
これは、
選手だけでなく、
審判、運営、観客を含めた“全体の安全”の話です。
教員・指導者の負担という問題
高校野球は部活動です。
そして、その多くを支えているのは学校の先生です。
調査によれば、監督の約9割以上が教員。
大会運営を担う高野連の役員も、多くが現場の先生たちです。
7イニング制によって試合時間が短くなれば、
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大会運営の負担
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休日の拘束時間
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練習試合にかかる時間
こうした部分が、少しずつ軽くなる可能性があります。
これは野球の話であると同時に、
社会全体で進められている「働き方改革」と無関係ではありません。
高校野球は、社会の中にある
高校野球は、特別な存在です。
多くの人に愛され、注目されている一方で、
あくまで「高校の部活動」であることも忘れてはいけない。
だからこそ、
内輪の論理だけで物事を決めることの危うさも、資料でははっきり指摘されていました。
熱中症、働き方改革、安全配慮。
社会全体が向き合っている課題に対して、
高校野球もまた、変化していく姿勢を示す必要がある。
その一つのメッセージとして、
7イニング制には意味がある――
そう整理されていたのは、素直に理解できる部分でした。
おわりに
正直に言えば、
7回制については、賛否どちらの気持ちもあります。
決まってしまえば従うしかない。
それもまた、競技のルールです。
ただ今回の資料を読んで、
「投手を守るためだけの制度」ではなく、
野手も、チームも、支える人も含めた全体の話として考えられている
その点は、理解できました。
それでも個人的には、
回数を減らすこと以上に、
投手分業制や運用の見直しにも、もっと目を向けてほしい。
そんな思いが残っているのも事実です。
高校野球が、
安全に、無理なく、そして長く続いていくために。
7回制の議論が、その一歩になればいいなと思います。