博客金烏工房 新天地

中国ドラマの感想や読書メーターの転載など。

最近見てるドラマ(2026年1月)

長安二十四計』


淮南県の小役人謝淮安は、先頃長安を制圧して皇位を簒奪した蕭武陽に招聘されることになる。実はこの謝淮安は粛清された劉子温の忘れ形見で……


ということで成毅主演作です。今年は成毅の顔をよく見ますが、『赴山海』よりは安心して見れます (^_^;) 「長安」とありますが架空物です。中身はよくある仇討ち物なんですが、劉奕君、王勁松、倪大紅、そして久々に見る張涵予など、大物おっさんズが惜しげもなく登場します。そして思わせぶりに登場しながらあっさり退場する登場人物たち…… 全28集と短めなのでいきなり長安が陥落したりと急展開もありますが、先を読ませないストーリーとなっています。

2025年12月に読んだ本


古代文字を解読していたら、研究に取り憑かれた話 (一般書)古代文字を解読していたら、研究に取り憑かれた話 (一般書)感想
ヒエログリフフェニキア文字など、主に地中海沿岸地域の古代文字の研究者の半生。古代文字との出会い、学生時代の学問遍歴等々三者三様で面白い。それにしても同じ古代文字とはいっても甲骨文字など中国の古文字学とは随分スタンスが違うなと感じさせられた。大城先生の、好太王碑のような漢字資料には興味が持てないというのには共感を覚えた。これは私が秦漢簡にもうひとつ興味が持てない理由でもあるのかもしれない。
読了日:12月04日 著者:大城 道則,青木 真兵,大山 祐亮


罪と罰の古代史: 神の裁きと法の支配 (歴史文化ライブラリー 624)罪と罰の古代史: 神の裁きと法の支配 (歴史文化ライブラリー 624)感想
要するに日本古代法制史。古代の法制に直接影響を与えた唐の法制、あるいは西洋や現代日本の法制との比較もかなり盛り込まれている。尊属殺人の話題では朝ドラ『虎に翼』でも取り上げられた裁判が紹介されている。また首を斬って晒すというのは後の軍記物から武士の風習と思われがちだが、古来より存在するとのこと。平安時代の死刑の停止については、死刑制度が廃止されたわけではなく、本来死刑にすべきところを勅命による恩赦によってその都度免除するという形式が取られたらしい。
読了日:12月06日 著者:長谷山 彰


成瀬は都を駆け抜ける成瀬は都を駆け抜ける感想
京大に進学した成瀬の活躍と新たな仲間たち。森見登美彦作品が読みたくなる効果もある。森見作品はまったく読んだことがなかったが、何となくエッセンスは窺うことができる。前巻までの人物も登場し、城山などは「こんなやついたっけ?」となってしまった。今回は京都が舞台なのかと思いきや最後はきっちり滋賀で締めている。今巻で完結ということで名残惜しい気もするが、いつまでも続けるのもあるいは成瀬らしくないかもしれない。
読了日:12月08日 著者:宮島未奈


日本の就活──新卒一括採用は「悪」なのか (岩波新書 新赤版 2088)日本の就活──新卒一括採用は「悪」なのか (岩波新書 新赤版 2088)感想
主旨としては新卒一括採用擁護本。もっともな論点もあるが、どうも現状追認という側面が強いように思う。読み所はそこよりむしろ日本の大学生の就活の歴史と現状、問題をまとめている点。就職氷河期世代の感想としては、就職難ということではリーマンショック世代やコロナ世代とは比較にならず、しかも採用停止による企業側のデメリットなど、我々の世代の就職難によって認識された問題点が可視化されて後々改善されていったということで、就活という面では我々は本当に割を食ったんだなと思った。
読了日:12月10日 著者:常見 陽平


中国TikTok民俗学: スマホからはじまる珍神探訪 (NHK出版新書 754)中国TikTok民俗学: スマホからはじまる珍神探訪 (NHK出版新書 754)感想
抖音にアップされている動画を手がかりに中国内地の淫祠邪教……もとい民間信仰を探る試み。通常中華圏の民間信仰というと台湾や東南アジアでの報告となるのだが、前作に引き続き大陸をメインフィールドとし、文革によって廃れたとされていたシャーマニズムなどの民間信仰がしっかり生き残り、かつ現代的な展開を遂げていることを生々しく報告。豊富なカラー図版とともに中国の旅あるあるも追体験できる。前作のテーマの無常信仰にも続考があり、読み応え抜群。
読了日:12月12日 著者:大谷 亨


歴史小説のウソ (ちくまプリマー新書 510)歴史小説のウソ (ちくまプリマー新書 510)感想
かつて歴史学徒であった歴史小説家による「歴史とは何か」。歴史小説歴史学との違いというのは歴史学の入門書で必ず話題にされることだが、歴史学歴史小説の両方に関わってきた佐藤賢一ならではの切り口になっている。当然歴史小説家としての立場というか、歴史学より優位な点をアピールするものにもなっている。「司馬史観」が戦後日本で受け入れられた事情の考察も面白い。歴史小説の愛読者だけでなく、歴史学に関する本の愛読者にとっても得るものがある本になっているように思う。
読了日:12月14日 著者:佐藤 賢一


中国学術を貫く視座: 章学誠の可能性中国学術を貫く視座: 章学誠の可能性感想
「章学誠の可能性」とあるが、章学誠との距離は論者によって様々である。李弘喆論文では譙周の『古史考』が『史記』批判の書ではなく『史記』の校訂書であったと評価する。楊維公論文では『三国』など、章学誠の俗文学観を問題にするが、章学誠は意外にも『説唐』『楊家将』、更には『金瓶梅』も読んでいたようである。章学誠の書簡を問題にする陳佑真論文では、同時代の学者との交友や地方志編纂への関与から、その人間性の面倒くささを垣間見れる。
読了日:12月18日 著者: 


ラフカディオ・ハーン-異文化体験の果てに (中公新書 1056)ラフカディオ・ハーン-異文化体験の果てに (中公新書 1056)感想
ハーンの生涯と交友、その作品と思想について。妻のセツをはじめ、朝ドラ『ばけばけ』のモデルと思しき人物や事件についても触れられており、よい副読本になりそう。ハーンは当時お雇い外国人の立場から「日本通」として著名な存在だったようだが、一方で交友のあったチェンバレンとの論争、日本人女性との結婚や日本への帰化をめぐる他の外国人の視線、宣教師への非難などを見ると、どうも日本在住欧米人の中では浮いた存在だったようだ。
読了日:12月20日 著者:牧野 陽子


イスラームが動かした中国史-唐宋代から鄭和の大航海、現代回族まで (中公新書 2886)イスラームが動かした中国史-唐宋代から鄭和の大航海、現代回族まで (中公新書 2886)感想
中国ムスリムの歴史と現在。特に近代以降は宗教集団としての回民か少数民族としての回族か、中国ムスリムアイデンティティないしは政治的な位置づけが揺れ動くさまが描かれる。それと付随して開封ユダヤ人、あるいはウイグル族など回族以外のムスリムにも触れる。文革の引き金となった「海瑞罷官」、あるいは紅衛兵のネーミングに回族が大きく関わっていたという点が意外。また蒲寿庚、海瑞などをはじめとして関係する歴史上の人物や、歴史学者として著名な白寿彝など、現代の著名な回族出身者の紹介もある。
読了日:12月22日 著者:海野 典子


大大阪という神話-東京への対抗とローカリティの喪失 (中公新書 2885)大大阪という神話-東京への対抗とローカリティの喪失 (中公新書 2885)感想
ラジオ放送、吉本の漫才、プロ野球宝塚歌劇といった文化面から「大大阪」時代の大阪を見る。これらは大阪(あるいは関西)らしさを示すものと見なされがちだが、この大阪らしさというのは近代に東京との対抗上打ち出されたもので、東京と同じゴールを目指してらしさを強調すればするほど却って大阪のローカリティーや独自性を喪失していくという逆説が述べられている。つまりは「大大阪」は日本全体の均質化を牽引する先進地域だったということになりそうである。
読了日:12月24日 著者:長﨑 励朗


飲中八仙歌:杜甫と李白飲中八仙歌:杜甫と李白感想
杜甫の「飲中八仙歌」に詠まれた酒飲みたちと杜甫との交友を描いた短編連作。詩人が多く登場して各種の唐詩が取り上げられているという点で、中国のアニメ映画『長安三万里』と好対照になりそうである。終盤では著者がこれまでの作品でテーマとしてきた安史の乱が取り上げられている。『長安~』と比べて李白が美化されているなあと感じるが、それもまたよしである。李林甫に見目のいい幼子が献上されるというのは中国現代ミステリ『検察官の遺言』を連想した。この李林甫が学のある者を嫌うというのも、何やら当世とかぶりそうである。
読了日:12月26日 著者:千葉 ともこ


困ったときは中国古典に聞いてみる困ったときは中国古典に聞いてみる感想
菱岡憲司『その悩み、古典が解決します。』の中国古典版みたいな内容であるが、こちらは漢詩や『論語』『菜根譚』など思想書からの引用が多い。また、アニメ映画の『ナタ2』など、エンタメ作品も言及されている。本題の悩みの解決を古典に求めるということのほかに、中国での古典の受容のされ方や現代の中国思想のエッセンスも読み取ることができる。中国思想入門として読むこともできるかもしれない。
読了日:12月28日 著者:伏 怡琳

最近見てるドラマ(2025年12月その2)

『大秦帝国起源』
周の東遷から間もない時期の秦国。秦の襄公は犬戎との戦いで負傷して死期を悟り、次男の文公を後継者として指名。文公は兄の補佐を得て遷都事業、そして周王室や秦国を苦しめる犬戎との戦いに邁進するのであった…… 

 

というわけでまさかの短劇スタイルでの歴史ドラマ。元は映画として企画されたようですが、1話15分以下×11話とコンパクトにまとまっています。スケールがショボいという欠点はあるものの、戦争シーンもふんだんに盛り込まれています。残念ながら本家『大秦帝国』シリーズとは違って歴史考証はあんまりやっていないっぽいですが……

 

『唐詭奇譚』
『唐朝詭事録』シリーズが短劇で登場。第4部という触れ込みですが、実際のところは第3部の外伝的な位置づけで、第3部での時系列の中に入るエピソード2篇から成ります。ノリはこれまでのシリーズのまんまで特に違和感なく見られます (^_^;) 元々第3部のエピソードだったのが例の限集令に引っかかり、やむを得ずエピソード2つ分を削って別途第4部ということにして短劇に仕立て上げたということなんじゃないかと勘ぐってしまいますがw

最近見てるドラマ(2025年12月)

『大生意人』
古平原は科挙受験時に人に陥れられて不正行為ということで東北は寧古塔に流刑となり、当地の役人徐三に仕える身。そこを女商人の蘇紫軒や北京の豪商のお坊ちゃん李欽の協力を得て脱出に成功。馬幇の常四・玉児父女とともに平遥に落ち着くが、今度は当地の商人王天貴に陥れられ、彼の走狗として質屋の掌柜となるが…… 

 

ということで清末が舞台、商売物、陳暁主演と、イヤでも『月に咲く花の如く』を連想してしまいますが、味わいはまったく異なります。というか古平原、変転が激しすぎでしょう (^_^;) いい意味で先の展開が読めないドラマです。李自成の財宝の話が出て来たり太平天国を思わせる反乱勢力が主人公と関わったりと、歴史要素も結構あります。

 

『水龍吟』
唐儷辞は記憶を失っているところを方周に拾われ、彼や柳眼ら仲間たちの世話になるが、その方周を殺害してしまう。それにより闇落ちした柳眼に付け狙われることになり…… 

 

ということでレオ・ロー主演の武侠です。『金庸武侠世界』の包上恩や『蓮花楼』の肖順堯、そしてみんな大好き修慶が共演。レオ・ロー主演というあたりで『長月燼明』のトラウマが蘇りましたが、こちらはいい感じのライト武侠ですw しかし話題作が続きすぎて途中で視聴が止まってしまったのが残念…… いつか折を見て再開したいです。

2025年11月に読んだ本

続・日本軍兵士―帝国陸海軍の現実 (中公新書 2838)続・日本軍兵士―帝国陸海軍の現実 (中公新書 2838)感想
今回は明治からアジア太平洋戦争まで時代幅を広げて英米軍などとの比較も加えつつ日本軍兵士の徴兵、兵士の食事と栄養状況、衛生環境と病気の治療、軍備と機械化などを検討。飯盒炊爨の導入が却って薪の調達や調理などで兵士の体力を奪ったことや、薪の必要性から戦地で現地民の住宅の破壊などが行われたこと、食糧の不足から戦地どころか沖縄も含めた国内でも農民などからの食糧物資の略奪が行われたといった事実が興味深い。結局は英米と違って将兵に対する「人間軽視」の発想が軍自身の弱体化を招いたというのは、現代政治への教訓となるだろう。
読了日:11月02日 著者:吉田 裕
反オープンレターズ黒書vol.1 亀田俊和検証本反オープンレターズ黒書vol.1 亀田俊和検証本感想
呉座騒動、オープンレター、Colaboなどの活動をめぐる「暇アノン」問題などに対するTwitterの日本史界隈の動きをまとめる。彼らの言動をこうして振り返ると「酷い」のひとことに尽きる。それはそれとして亀田氏の2000年代半ばからのネットでの活動を見てると、Web2.0が喧伝されていた頃の状況を思い出して懐かしさを覚える。本書は図らずも「裏・電脳日本史学」的な内容ともなっている。
読了日:11月04日 著者:法眼純也
完全版 社会学入門: 資本主義と〈近代〉を捉えなおす (NHKブックス 1297)完全版 社会学入門: 資本主義と〈近代〉を捉えなおす (NHKブックス 1297)感想
理論と主要な研究者に着目した入門書。というか社会学史。社会学前史からウェーバーデュルケーム、そしてマルクス主義との関係、現代の社会学が置かれた苦境、すなわち経済学や文化人類学、心理学などとの競合と今後を論じている。入門書としては結構歯ごたえがあると思うが、完全版で加えられた補講3編はもともと中級者向けの文章とあって門外漢には難しい内容。
読了日:11月07日 著者:稲葉 振一郎

天空龍機 鋼鉄紅女2 下 (ハヤカワ文庫SF SFシ 16-3)天空龍機 鋼鉄紅女2 下 (ハヤカワ文庫SF SFシ 16-3)感想
世紀の奇書、待望のというかまさかの第2弾。蘇った始皇帝に易之の裏切り、李世民の行方、そして舞台は華夏を飛び出し神々の世界へ。登場人物の名前と設定のマッチのキレは相変わらず(狄仁傑が宦官にされているのには笑ってしまったが)、そして始皇帝の政治思想や政策がまんま社会主義のそれであることはどう評価すべきだろうか?おそらく完結編になるであろう第3弾にも期待したい。
読了日:11月12日 著者:シーラン・ジェイ・ジャオ
倭寇・海商・華僑 ――海はいかにして歴史をつないだか (ちくま新書 1887)倭寇・海商・華僑 ――海はいかにして歴史をつないだか (ちくま新書 1887)感想
タイトルから想像・期待される内容と実際の中身とで少しくズレがあるなあという印象。特に海商について扱う(はずの)第Ⅱ部でそれを強く感じた。また現代とのつながりを強調するのはよいのだが、結びつけが強引な部分があるのも気になった。内容自体は、林道乾ら東南アジアで活躍した中国海賊の事跡と現地での信仰の関係など、興味深いものも多い。
読了日:11月14日 著者:松尾 恒一
B.C.1177 (単行本)B.C.1177 (単行本)感想
エジプト、ヒッタイトミュケナイ、ミノア、キュプロス、カナン、ウガリト、ミタンニ等々地中海域の諸国、諸地域の間で築かれていた緊密な国際関係が崩壊し、後期青銅器時代の文明が終わりを告げた顛末について。従来その原因がこれら諸国に押し寄せた「海の民」の侵略であると考えられていたが、彼らはどちらかというと崩壊した後にやってきた移住者と見るべきのようだ。文明崩壊の原因も大地震、気候変動など複数の要因があると指摘する。同様に緊密な国際関係・経済の下で成り立っている日本の末路を暗示しているのではないかと思わせられる。
読了日:11月16日 著者:エリック・H・クライン
江戸の刑事司法 ――「御仕置例類集」を読みとく (ちくま新書 1885)江戸の刑事司法 ――「御仕置例類集」を読みとく (ちくま新書 1885)感想
江戸中期の五つの判例から見る江戸時代の司法のあり方。公事方御定書が明律の影響を受けているとか、細かいところまで規定があるわけではないので奉行らは過去の判例によりつつできるだけ妥当な判決を導き出そうとしたという話が興味深い。自白に頼らず物証を重視する、厳罰百戒的な発想でもなくできる限り客観的な吟味を心がけるというあたりは現代日本の警察の取り調べよりも近代的なのではないかと思わせられる。
読了日:11月18日 著者:和仁 かや
世界のはじまりの神話学 角川選書ビギナーズ (角川選書 1207)世界のはじまりの神話学 角川選書ビギナーズ (角川選書 1207)感想
世界各地の創造神話と人間・文化(火)・食物のはじまりの神話に関して。世界のはじまりの神話と終末神話は一致するという話や、巨人型神話の裏返しのような形で人間のはじまりが説かれることがあるというのは面白い。ただ、中国の洪水神話としてポピュラーな禹の治水について触れられていないのが気になる(何となくその理由は察せられるが)。
読了日:11月19日 著者:松村 一男
九龍城砦2 龍頭九龍城砦2 龍頭感想
出だしの描写の陳腐さにめげそうになったが、そこを乗り越えた後は普通に香港ノワールというか現代武侠という感じで楽しめた。今回は前作より増して女性キャラが少ないので、そのあたりの違和感もない。前作ともども映像なら盛り上がりそうな展開も文章にしてしまうと陳腐なものになってしまうのだなあと気づかされた。結末は映画版につながりそうでいて、必ずしもつながらない部分もある。
読了日:11月21日 著者:余兒
コナン・ドイル伝 ホームズよりも事件を呼ぶ男 (講談社現代新書 2797)コナン・ドイル伝 ホームズよりも事件を呼ぶ男 (講談社現代新書 2797)感想
コナン・ドイルの生涯と、ホームズ物をはじめとする彼の作品が書かれ、読まれた時代的背景について。妖精事件との関わりなど既知のこともあったが、クリスティー失踪事件やタイタニック事件をめぐるバーナード・ショーとの論争など知らないことも多く、楽しめた。彼の心霊主義についても当時の時代的背景や彼本人の宗教に対する否定的なスタンスと絡めて論じている。ホームズを心霊主義者にしなかった理由に対する考察がなかなか興味深い。
読了日:11月23日 著者:篠田 航一
ナショナリズムとは何か-帰属、愛国、排外主義の正体 (中公新書 2880)ナショナリズムとは何か-帰属、愛国、排外主義の正体 (中公新書 2880)感想
ナショナリズムの諸相、帰属意識愛国心、排外主義三者の関係、ナショナリズムとスポーツ、出版、音楽、言語、学校教育、経済格差、移民の増加等々との関係などを、統計調査の結果をもとに議論する。本書によると、通俗的にいろんな文脈で特殊であると言われてきた日本、あるいは中国、韓国のナショナリズムの諸相も決して特殊なものではなく、普遍的に見られるものということになりそうである。スポーツの国際的な大会や選挙との相関性や隠れた反移民感情をあぶり出す手法の話が面白い。
読了日:11月25日 著者:中井 遼
中世武士団 偽りの血脈 名字と系図に秘められた企て (講談社選書メチエ 825)中世武士団 偽りの血脈 名字と系図に秘められた企て (講談社選書メチエ 825)感想
佐藤、伊藤をはじめとする中世武士の○藤氏は佐伯、伊香氏などの古代氏族が母系で秀郷・利仁流藤原氏の血を受けるという当時の武士の字に由来する氏族名で、藤原氏の父系子孫を仮冒するものであり、院政期には院がそれを利用して卑賤の者を取り立てたという趣旨。日本中世史において系譜研究の重要性を示す著作。その手法は当時の草書体での字形の類似や発音の類似を駆使したもので、中国古文字学の手法とも似通っているが、その反面、多くの事例で用例上の根拠も示しているとはいえ、古文字学のそれと共通する危うさも感じる。
読了日:11月28日 著者:桃崎 有一郎

最近見てるドラマ(2025年11月)

『暗河伝』
少年江湖シリーズに登場する暗殺者集団暗河。その暗河をメインに据えた番外編です。時系列は『少年春風』と『少年歌行』の間となるようで、両作で登場したキャラも出てきます。前2作はコメディタッチでしたが、本作は画面が暗い (^_^;) そしてシリアス。

 

暗河三家のうち蘇家の若き使い手、蘇暮雨と蘇昌河を主役として話が進みます。2人は子どもの頃から虎の穴よろしく厳しい修練に耐え、蘇家に属することになった身。親友同士で、それぞれ大家長と蘇家の家主となり、暗河を変えることを志す。しかし暗河三家を統べる大家長の背後には提魂殿の三官が控えており、彼らの背後には更に黒幕として朝廷に仕える人間が控えている模様。彼らの戦いの行方は…… というストーリー。

 

40話かけて暗河内部の暗闘が延々と繰り広げられるのかと思いきや、10話あたりから朝廷や前作に出て来た影宗が絡んできます。

 

『唐朝詭事録之長安
待望のシリーズ第3弾。西域の貢納品とともに都に戻った盧凌風。しかし貢納品の金桃を食しようとした新帝に突如来襲した怪鳥と人面鳥(!)が襲いかかり…… 

 

と今作も伝奇テイストは健在です。劉十七兄弟など、前作・前々作以来のキャラクターも健在。シリーズのファンをにやりとさせてくれます。太上皇、皇帝、公主といった皇室の面々の駆け引きの中で盧凌風と蘇無名はどう立ち回っていくのかなど、今作も見所たっぷりということになりそうです。

2025年10月に読んだ本

田沼意次の時代田沼意次の時代感想
田沼意次再評価の書として一世を風靡したということだが、本論の田沼評価よりも彼が世に出るきっかけとなった郡上一揆の話や、田沼時代の社会・文化状況、没落の過程での天命の飢饉と打ち壊しの話とかが面白い。解説によると、肝心の再評価については、特に「清廉な政治家だった」という人格面について本書の内容を真に受けるのは問題があるようだが。解説にある本書初版、あるいは岩波現代文庫版刊行時の社会状況との関係もなかなか興味深い。
読了日:10月01日 著者:大石 慎三郎
関東大震災「朝鮮人虐殺」否定論を否定する 偽史研究からの新知見関東大震災「朝鮮人虐殺」否定論を否定する 偽史研究からの新知見感想
偽書である史書契丹古伝』著述の背景に関東大震災での朝鮮人虐殺があったという話は(面白がってはいけないのかもしれないが)面白いものの、これと震災一般の憎悪煽動の話題は別の本にすべきだったと感じた。東日本大震災時の原発事故での放射脳流出に対する懸念と関東大震災発生時の自警団の問題を果たして同列に置くべきかという問題もある。既にほかの本で話題にしているのかもしれないが、戦前に古史古伝が現れ読まれた背景、すなわち第4章の内容をもっと読みたかった。
読了日:10月02日 著者:原田 実
ムスビの系譜 書とは根源的に如何なる行為なのかムスビの系譜 書とは根源的に如何なる行為なのか感想
中国と日本の書の源流論。文字学というよりは思想の方面から検討する。契刻と筆写を「工(人)」と「文(人)」と対比的にとらえるのは面白い。しかしそうなると「文」と「工」の統合の試みとして、文人の嗜みとしての篆刻の意義についても言及してほしかったところ。
読了日:10月04日 著者:松宮貴之
哲学史入門IV: 正義論、功利主義からケアの倫理まで哲学史入門IV: 正義論、功利主義からケアの倫理まで感想
今回のテーマは倫理学倫理学一般から功利主義、正義論、ケアの倫理まで噛み砕いて説明されている。個人的に読み入ったのはケアの倫理を扱った第4章。夫の介護を抱え、先般「ワークライフバランス」で物議を醸した高市氏には本章か岡野八代『ケアの倫理』を読んでもらいたい気分になった。そしてテロを通じてしか自分たちの存在を訴えることができない人がいるという話には、思わず宗教2世問題の当事者であり、それ故に安倍元総理を殺害した山上氏を連想した。
読了日:10月06日 著者:古田 徹也 児玉 聡,神島 裕子  立花 幸司,岡野 八代  ブレイディ みかこ
中国思想の基礎知識中国思想の基礎知識感想
中国思想の展開と日本への影響の要点を押さえているが、その厚みもあって教科書というよりはさながら読む事典といった方がよさそうな内容。中国思想が諸子百家の段階から強い政治性を帯びていたということや現実性を重視すること、現代の躺平族が道家的な隠逸の伝統を承けていることなどを指摘。出土文献による研究の成果を引いていることゃふんだんなカラー図版も見所。
読了日:10月09日 著者:湯浅 邦弘
後宮 宋から清末まで後宮 宋から清末まで感想
下巻にあたる今回は宋以後を扱う近世編。宋の後宮がほかの王朝より比較的まともで、外廷とも運命共同体として滅亡をともにしたと指摘している。関係史料が豊富ということか、明清の後宮についてはかなり詳しく解説されている。暗君暴君のオンパレードという印象が強い明朝皇帝についても、正徳帝や英宗に対しては再評価を行っている。明清後宮のこぼれ話を読むと、近年の明清を舞台とした宮廷劇も意外とそういったエピソードをこまめに参照して話を作っていることが窺われる。中国時代劇好きにもお薦めである。
読了日:10月12日 著者:加藤 徹
戸籍の日本史戸籍の日本史感想
日本古代の戸籍、江戸時代の人別帳、戦前の戸籍と家制度、そして家制度亡き後の現代の戸籍と住民票制度、その他近代沖縄と北海道、植民地台湾と朝鮮、満洲国での戸籍の扱いと戦後の変転。現代の天皇家の扱いと無戸籍の問題、マイナンバーと戸籍等々、読みやすい語り口で歴史的展開から現代の諸問題まで幅広く扱っている。戸籍を利用した徴兵逃れのテクニックが面白い。「日本人とは何か?」という問題が戸籍制度の展開に現れているというのがよくわかる。
読了日:10月14日 著者:遠藤 正敬
オーラル・ヒストリー入門オーラル・ヒストリー入門感想
岩波新書の『語る歴史、聞く歴史』のようなものかと思って手に取ってみたら、こちらはオーラル・ヒストリーの記録を企画、実施、公開等々を進めるうえでの手順、そして地域のお年寄りなど一般人、あるいは政治家や官僚など、聞き取り対象ごとに実践例や聞き取りを進めるコツ、注意点などを具体的にまとめた、まさに「入門」と称するにふさわしい本だった。複数名による共著ということで、執筆者ごとの問題意識も垣間見られるのもよい。
読了日:10月16日 著者: 
定本 中世倭人伝 (講談社学術文庫)定本 中世倭人伝 (講談社学術文庫)感想
倭寇の「倭」=「日本」ということでなく、当時の倭人倭寇を日中朝の境界上のマージナルな存在としてとらえる。そして本編の最後に述べられているように、豊臣秀吉倭寇的勢力の統括者ということになるのだろう。本書を読めば「後期倭寇は中国人中心」であるとか「日本人のふりをした」などという話がいかに浅薄かわかるであろう。朝鮮王朝では少なくとも建前上は海賊であっても中国人は「上国」の民として丁重な扱いをすることになっていたということであるから、そもそも日本人のふりをする必要もない。
読了日:10月20日 著者:村井 章介
豊臣家の女たち豊臣家の女たち感想
タイトルに「女たち」とあるが、秀吉の妻たちや母親姉妹のほか、弟秀長をはじめとする男性親族(小早川秀秋など養子も含む)とその妻子、更には血縁者以外の奥女中や茶々の乳母の大蔵卿ら女性たちの生涯についても紹介されている。秀吉と寧、あるいは寧と茶々、茶々と千との関係、そして旭の実像などが巷間言われているむようなものではないこと、秀吉が一夫多妻、すなわち寧と茶々以外の女性たちも「妻」であったこと、秀吉に茶々所生以外の男児が存在した可能性があることと、母子ともに存在が抹殺された事情など、興味深い指摘が多い。
読了日:10月22日 著者:福田 千鶴
福音派―終末論に引き裂かれるアメリカ社会 (中公新書 2873)福音派―終末論に引き裂かれるアメリカ社会 (中公新書 2873)感想
福音派と歴代大統領との関わりを中心に議論する。カーターやクリントンオバマら意外な人物も福音派と関わってきた、あるいは福音主義的な信仰を持っていた。そして福音派と一口にいっても当然一枚岩というわけではなく、人種主義を批判するなど進歩的な団体もある。また、福音派が特定の大統領を支援・期待しつつ裏切られ続けてきたという歴史もある。近年はその影響力に比して、特に若者を中心に教会離れが進むといった動きもあるようだ。ウォルマート福音派との関わりも興味深い。
読了日:10月25日 著者:加藤 喜之
日本史を宗教で読みなおす日本史を宗教で読みなおす感想
教科書、特に日本史で扱われる宗教の最新の知見と学校現場での教育の問題点についての論集。神仏習合(融合)が日本の特性というより仏教に内在する特性であることや「鎌倉新仏教」を喧伝することの問題など、刺激的な論点が多い。公民教科書での扱いについても、「世界宗教」「民族宗教」の区分が宗教に優劣の視点をもたらしてしまっているということや、イスラームの取り上げ方が生徒に偏見を植え付けているというのは盲点だった。
読了日:10月27日 著者:佐藤 雄基 大西 信行
古墳時代の歴史 (講談社現代新書 2792)古墳時代の歴史 (講談社現代新書 2792)感想
日本の古墳を世界史的視野から理解する、巨大前方後円墳を直接王権を象徴するものとして見ないというのが本書の特徴だろうか。世界のほかの地域とは異なり、古墳には王宮や都城の跡が付随しているわけではないとか、日本の古墳は盛土の底深くではなく盛土の頂上近くに被葬者を埋葬するのが特異であるといった指摘が興味深い。そして4世紀頃までは王族ないしは門閥氏族が並立する状況で、「大王」と呼べるような権力主体は存在せず、4世紀末以後に統合が進んでいくという。また文献の使い方も無理がなく考古学による知見と整合的であるように思う。
読了日:10月29日 著者:松木 武彦