「あわら温泉」ひらがな表記で全国にPR、駅名や旅館協同組合名は漢字の「芦原」のまま…「目的に合わせた使い分けが、今の時代に合っている」
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1883年(明治16年)に開湯し、「関西の奥座敷」として親しまれてきたあわら温泉(福井県あわら市)。ただ、玄関口となる新幹線の駅名は「芦原温泉駅」、温泉街の15旅館が加盟する「芦原温泉旅館協同組合」と、随所に2004年の合併前の旧町名「芦原」の表記が残る。

芦原温泉駅は旧金津町に位置し、元々は「金津駅」だったが、1972年、現在の駅名に改称され、温泉の玄関口であることが明確となった。しかし、JR西日本金沢支社によると、2004年の合併時に自治体から表記の変更を求める要望はなかったという。
1969年設立の組合についても、そのままの表記であることに、特段の理由はないようだ。事務局は「元々あった組織なので、名称を変える必要性はなかったのでは」とする。
実は、合併後のあわら市は観光戦略として「あわら温泉」のひらがな表記を使うようにしている。漢字だと「あしはら」などと誤読されることも多く、中嶋英一・市経済産業部長(60)は「北陸新幹線の県内開業に向け、全国にPRするにはひらがなの方がいいと考えた」と話す。
ただ、既存の組織などに表記変更を求めることはしなかった。「駅名は変更すると影響が大きく、組合名には歴史や文化が残っているから」というのがその理由だった。表記が混在している背景には、こういった経緯があるようだ。
北陸新幹線県内開業後、あわら温泉は関東圏からも多くの観光客が訪れるようになった。さらなるにぎわい創出に向けて奮闘する、若手経営者らはどう見ているのだろうか。
温泉旅館「グランディア芳泉」常務の山口高澄さん(38)は、「福井のすごい若旦那」として、インスタグラム、ユーチューブなどで動画を配信し、総フォロワー数9万人を誇るインフルエンサーでもある。動画で用いるのは「あわら温泉」の表記だが「両方あっていい。『芦原温泉』にはかっこよさがある。目的に合わせた使い分けが、今の時代に合っている」と話す。
開湯翌年に創業した、老舗旅館「べにや」の取締役、奥村紘生さん(28)は「長年、組合で支え合ってきた歴史から表記を変えなかったのでは。諸先輩方が守り続けてきた組合名に、リスペクトを感じる」とする。現在、組合で温泉街の活性化に取り組むが「『芦原温泉』の歴史を生かしながら、新しい『あわら温泉』にしていければ」と力を込める。
表記が漢字でもひらがなでも、温泉街を次代につなぐ人たちの思いに変わりはないようだ。(杉原慶子)
芦原町→あわら市
1889年の町村制施行に伴い、84年に温泉が湧出した舟津村、
芦原町史には、舟津村「阿原」の湯が最も良かったことから名付けられたとある。一方、あわら市郷土歴史資料館によると、二面村にも「荒原」の地名があり、2か所とも「あわら」と読み、温泉集落の中心地となったことに由来すると推測されるという。ただ「芦」の字が当てられた経緯はよく分かっていない。
2004年、金津町との合併で「あわら」の音は残ったが、「芦原」の表記はなくなった。





























