ホタルの独り言 Part 2

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ハラアカマドボタル(サキシママドボタル)

 ハラアカマドボタル Pyrocoelia abdominalis Nakane, 1977 は、ホタル科(Family Lampyridae)マドボタル属(Genus Pyrocoelia)で、石垣島と西表島に分布する一生を通じて林内の陸地で過ごす陸生ホタルである。
  前胸背は鮮やかな淡赤色で両縁は黒色で腹部腹側が淡赤色である。マドボタル属ではあるが、前胸部の窓ははっきりしない。しかしながら、幼虫や翅が退化したメス成虫もマドボタル属特有の形態である。幼虫はマイマイなどの陸生貝類を食べている。成虫は3月~5月頃に発生し、ほとんど発行することはなく、配偶行動はフェロモンによる。石垣島には、同属ではヤエヤママドボタル Pyrocoelia atripennis Lewis,1896 が生息しているが、発生時期が10月~3月頃と異なっている。今回、成虫はバンナ公園にて撮影し、蛹は茂登岳の山麓で夜間に発光しているところを発見し撮影した。

 ハラアカマドボタルサキシママドボタルとも呼ばれている。学名については国際命名規約があり世界共通であるが、和名についての規定はない。ホタル科の場合では、分類学者の対立により同一種に異なった和名が使わてれいるのが現状であり、本種の場合は、過去にハラアカオバボタルとサキシママドボタルの和名があてがわれていた。大場信義氏は、ハラアカオバボタルに関するいくつかの論文を過去に発表しており、「原色日本甲虫図鑑」や「九州大学農学部の日本産昆虫目録」ではサキシママドボタルと記載されている。サキシママドボタルという和名は、インターネットで検索しても多くがヒットする。
  和名に規定がないとは言え、マドボタル属でありながらオバボタルという名が付くのは変であるし、分布からもサキシマでは正しくない。先島諸島は八重山諸島と宮古諸島を合わせた地名であるが、本種は宮古諸島には生息していないのである。こうした日本産ホタルの分類学上の問題点の洗い出しと和名の混乱の解消を川島逸郎 氏と鈴木浩文 氏が行った A check-list of Japanese fireflies では、和名の安定性を考慮しハラアカマドボタルという新称があてがわれている。したがって、本ブログでは、ハラアカマドボタルという和名に統一したいが、和名の現状を知っていただくために括弧付でサキシママドボタルも表記した。

 参考までに日本国内に生息しているマドボタル属の種名と分布、成虫の発生時期を以下に記しておきたいと思う。尚、撮影済の種にはリンクを貼ったので、クリック頂ければ記事と写真をご覧いただくことができる。

  1. マドボタル属
    • ハラアカマドボタル / 石垣島、西表島 3月~4月
    • ヤエヤママドボタル / 石垣島、西表島、竹富島、黒島、(小浜島)10月~3月
    • オオマドボタル/ 本州西部、四国、九州 6月下旬~7月中旬
    • クロマドボタル/ 本州 6月下旬~7月中旬
    • イリオモテマドボタル / 西表島
    • オキナワマドボタル / 沖縄本島、久米島、渡嘉敷島、渡名喜島、藪地島、伊計島、浜比嘉島、瀬底島、屋我地島 3月中旬~5月上旬
    • オキナワマドボタル久米島亜種 / 久米島 3月下旬~4月
    • ミヤコマドボタル / 宮古諸島(宮古島、池間島、来間島)、下地島、伊良部島 ほぼ通年
    • アマミマドボタル / 奄美諸島 5月
    • アキマドボタル / 長崎県対馬 9月中旬~10月下旬

参考文献:Kawashima, Itsuro, Hirobumi Suzuki & Masataka Satô, 2003. A check-list of Japanese fireflies (Coleoptera, Lampyridae and Rhagophthalmidae). Japanese Journal of Systematic Entomology 9 (2): 241-261.

*以下の掲載写真は、クリックしますと別窓で拡大表示されます。

ハラアカマドボタル(サキシママドボタル)の写真 ハラアカマドボタル(サキシママドボタル)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 1000(撮影地:沖縄県石垣市 2025.4.03 8:22)

ハラアカマドボタル(サキシママドボタル)の写真 ハラアカマドボタル(サキシママドボタル)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 1250(撮影地:沖縄県石垣市 2025.4.03 8:22)

ハラアカマドボタル(サキシママドボタル)の写真 ハラアカマドボタル(サキシママドボタル)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 800(撮影地:沖縄県石垣市 2025.4.03 8:23)

ハラアカマドボタル(サキシママドボタル)の蛹の写真 ハラアカマドボタル(サキシママドボタル)の蛹
Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/100秒 ISO 3200(撮影地:沖縄県石垣市 2025.4.03)

ハラアカマドボタル(サキシママドボタル)の蛹の写真 ハラアカマドボタル(サキシママドボタル)の蛹
Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 2500(撮影地:沖縄県石垣市 2025.4.03)

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