VICSとは? わかりやすく解説

道路交通情報通信システム

(VICS から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/01/04 16:16 UTC 版)

光ビーコンによる情報受信画面例
渋滞情報ポップアップ表示例
高速道路に設置された電波ビーコン(ITSスポット)
一般道路に設置された光ビーコン

道路交通情報通信システム(どうろこうつうじょうほうつうしんシステム、英語: Vehicle Information and Communication System、略称: VICS、ビックス)は、日本国内で一般財団法人道路交通情報通信システムセンター(VICSセンター)が収集・処理・編集した道路交通情報を、FM多重放送や路側ビーコンによりリアルタイムでカーナビなどの車載器に提供するシステムである。渋滞回避、交通安全支援、災害対策、環境負荷低減を目的とし、高度道路交通システム(ITS)の中核を担っている[1][2]

提供される主な情報には、渋滞・所要時間、事故・故障車・工事・規制情報(通行止・車線規制・速度規制・チェーン規制等)、駐車場・SA/PA満空情報、気象警報・大雨エリア情報、イベント規制予告などがある。これらの情報は、日本道路交通情報センター(JARTIC)が警察・道路管理者から収集したデータに加え、車両プローブデータを活用して生成される[3][4]

また、2015年より実用化された、専用の760 MHz帯電波を用いて車間および路車間で直接通信を行うITS Connect(アイティーエス・コネクト)とも連携し、より高度な安全運転支援が提供されている。

伝達メディア

VICSの情報伝達は以下の3種類のメディアで行われる。かつての2.4 GHz帯電波ビーコンは2022年3月末に終了し、現在は5.8 GHz帯に一本化されている。さらに、VICSを補完する高度安全運転支援メディアとして760 MHz帯通信が活用されている。

FM多重放送

NHK-FM放送波に多重化され、都道府県単位の広域情報を提供する。データ容量は50KB(5分で100KB)、伝送速度16Kbps。2015年に開始したVICS WIDEにより伝送容量が約2倍に拡大され、一般道の詳細リンク旅行時間(交差点間通過時間)、複数ルート所要時間、特別警報(気象・津波・火山噴火等、地震除く)のポップアップ、大雨エリア(50mm/h以上を250mメッシュ単位で表示)、イベント規制予告などが追加された[5]

さらに2025年4月1日から本格運用された「VICSプローブ活用サービス」により、自動車メーカーから収集した車両プローブデータを活用し、従来の感知器情報と補完・補強。全国の高速道路・国道・主要都道府県道(ほぼ全ての約20万km)で高精度な渋滞・旅行時間情報が提供可能となり、トンネル・橋梁などの難所や災害時も情報継続が可能になった[6][7]

電波ビーコン(5.8 GHz帯DSRC、ITSスポット/ETC2.0)

主に高速道路に約1,800箇所設置。データ容量25KB、伝送速度4Mbps。進行方向前方約1,000 kmの広域情報、簡易図形複数枚、画像・音声による安全運転支援(落下物注意、渋滞末尾注意等)を提供。渋滞回避支援に有効[8]

光ビーコン

主に一般道路に設置。赤外線通信(下り1Mbps、上り64Kbps)、データ容量10KB。前方約30 km・後方約1 kmの情報を提供。信号情報活用運転支援システム(TSPS:信号通過支援、赤信号減速支援等)にも活用。一部の安全運転支援機能(DSSS:追突防止、出会い頭防止等)は老朽化により2027年3月31日運用終了予定[9][10]

760 MHz帯(ITS Connect)

ITS Connectは、2015年10月に世界初の商用サービスとして日本で開始されたシステムである。総務省がITS専用に割り当てた760 MHz帯電波(専用狭域通信)を使用し、VICSが担う広域情報配信を補完する形で、交差点付近等でのリアルタイムな安全運転支援を担う。

設置場所と普及状況

ITS Connectの路側装置(インフラ)は、主に事故多発交差点や見通しの悪い交差点を中心に整備が進められている。

  • 設置場所: サービス開始当初は東京都および愛知県(豊田市など)を中心に整備。その後、大阪府、福岡県、神奈川県などの都市部および主要交差点へ順次拡大。2025年時点で全国約1,000箇所以上の交差点に設置されている。
  • 支援内容:
    • 右折時対向車注意喚起: 路側装置が検知した対向車の情報を通知。
    • 赤信号見落とし防止: 信号情報を車載器へ送信し、運転者に警告。
    • 信号待ち時間表示: 赤信号の残り秒数や青信号への切り替わりタイミングを表示。

予算と整備体制

ITS Connectを含む自動運転・ITSインフラの整備には、政府による重点的な支援が行われている。

  • デジタルインフラ整備基金: 経済産業省および国土交通省が主導し、2023年度(令和5年度)補正予算にて約200億円規模(デジタルインフラ整備基金)を確保。この予算を原資として、V2X(車車間・路車間通信)に対応した路側機の全国的な設置加速が図られている[11]
  • 官民連携: トヨタ自動車、本田技研工業、および電機メーカー各社が参加する「ITS Connect推進協議会」が中心となり、車両側とインフラ側の足並みを揃えた普及活動を行っている。

表示形態

VICS情報はカーナビ上で以下の3形態で表示される(メディアにより提供内容・範囲が異なる)。

Level 1(文字表示)
文字のみの情報提供。
Level 2(簡易図形表示)
簡易地図上に渋滞・規制等をアイコン・図形で表示。
Level 3(地図表示)
カーナビ地図上に重ねて渋滞(赤・橙・緑)・規制等を表示。渋滞回避ルート検索や到着予想に活用。

沿革

  • 1995年7月:VICSセンター設立(設立30周年を2025年に迎える)。
  • 1996年4月:サービス開始(首都圏)。
  • 2011年:ITSスポットサービス開始。
  • 2015年4月:VICS WIDE開始。
  • 2015年10月:ITS Connectを搭載した市販車(トヨタ・クラウン等)が世界で初めて発売され、商用サービス開始。
  • 2022年3月:2.4 GHz帯電波ビーコン終了。
  • 2025年4月:VICSプローブ活用サービス本格運用開始。
  • 2027年3月予定:DSSS(光ビーコンによる安全運転支援)運用終了。

問題点と改善

従来は感知器未設置道路の情報不足や更新タイムラグ(数分)が課題だったが、2025年のVICSプローブ活用サービスにより全国主要道路で高精度情報提供が可能となり、大幅改善された。ITS Connectについては、インフラ設置箇所の地域格差や、搭載車両が限定的であることによる車車間通信の効果限定が課題となっているが、前述の「デジタルインフラ整備基金」による設置加速で改善が期待されている[12]

関連項目

外部リンク

  1. ^ VICS公式サイト”. 一般財団法人道路交通情報通信システムセンター. 2026年1月5日閲覧。
  2. ^ VICSの仕組み”. 一般財団法人道路交通情報通信システムセンター. 2026年1月5日閲覧。
  3. ^ VICSの仕組み”. 一般財団法人道路交通情報通信システムセンター. 2026年1月5日閲覧。
  4. ^ VICSプローブ活用サービス”. 一般財団法人道路交通情報通信システムセンター. 2026年1月5日閲覧。
  5. ^ VICS WIDE”. 一般財団法人道路交通情報通信システムセンター. 2026年1月5日閲覧。
  6. ^ 「VICSプローブ活用サービス」の本格運用を開始”. PR TIMES (2025年3月28日). 2026年1月5日閲覧。
  7. ^ 「VICSプローブ活用サービス」本格運用開始”. Car Watch (2025年3月27日). 2026年1月5日閲覧。
  8. ^ VICSの仕組み”. 一般財団法人道路交通情報通信システムセンター. 2026年1月5日閲覧。
  9. ^ 安全運転支援システム(DSSS)”. 一般財団法人道路交通情報通信システムセンター. 2026年1月5日閲覧。
  10. ^ VICSの仕組み”. 一般財団法人道路交通情報通信システムセンター. 2026年1月5日閲覧。
  11. ^ 自動運転に係る情報通信インフラの取組について”. 国土交通省. 2026年1月5日閲覧。
  12. ^ VICSプローブ活用サービス”. トラベル Watch (2025年3月26日). 2026年1月5日閲覧。


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