ChemSHERPA
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/18 03:16 UTC 版)
chemSHERPA(けむしぇるぱ、ケムシェルパ)とは、経済産業省が主導で開発した、サプライチェーン全体で利用可能な共通の製品含有物質情報伝達スキーム。またそのデータ作成ツールと、拡張子*.shaiもしくは*.shciのデータ形式を指す。[1]
概要
サプライチェーン上で主に川下企業が、自社の「グリーン調達基準」と「個社様式」で含有物質情報の独自調査を行っていたため、標準化してサプライチェーンの負荷を低減する目的で開発された。(個社様式とは、製品単位に自社の個別の様式で含有化学物質調査を行うための様式を言い、材料宣言などの「独自調査表」、また「不使用証明書」、「確認書」、「誓約書」等)[2]
JEMAI(産業環境管理協会)内、JAMP(アーティクルマネジメント推進協議会)が運営しており、chemSHERPAのウェブサイトからツールをダウンロードして無償で利用できる。
主に川上企業(化学品・混合物等の材料メーカー)で使用するchemSHERPA-CI(*.shci)と、成形品メーカーなどの川下企業で使用するchemSHERPA-AI(*.shai)がある。
データの中身は、物品の構成部品をRoHSの均質材料[3]やREACHのガイダンス[4]に基づく成形品単位で記述し、その材料に「管理対象物質リスト」[5]に該当する物質が含有される場合は、その含有率を入力するものである。全成分開示(FMD:Full Material Declaration)、すなわち物質リストに該当しない物質まで100%記載することが要求されている訳では無いため、営業秘密情報は保護することが出来る。物質リストは2025年時点で化審法(CSCL)、ELV、RoHS、REACH、EU-POPs規則、MDR、およびIEC62474とGADSL(IMDSの物質リスト)に対応している。多くは海外法規制だが、ISO14001の要求事項としての法令順守義務(企業コンプライアンス)の観点からすれば、日本国内の法令に留まらず、その事業者が販売する物品が製品に組み込まれ、市場に流れて廃棄されるまでのライフサイクル全般に渡って適用される法令がスコープとなるため、事業者が順守しなければならない法的要求事項として、材料・部品のサプライヤが順守義務を果たすための有効な手段となる。
責任ある情報伝達
chemSHERPAにおいて「責任ある情報伝達」とは、"「chemSHERPA製品含有化学物質情報の利用ルール」に則り、供給者からの情報や自社の知見や実績、科学的知見等に基づいて、可能な限りの努力によって作成した製品含有化学物質情報を、組織が定めた手続きに従って製品含有化学物質管理の責任者が承認した上で、伝達すること"、と定義されている。[6]
この利用ルール[7]において、具体的には「製品含有化学物質の管理や情報伝達に必要となる製品の情報だけを、情報の回答の依頼対象とすること」で、「知り得ない情報を調査し続けるようなことを強いたり」することではなく、また「全ての調達品の製品含有化学物質情報を、供給者から入⼿できるとは限らないため、組織の有する知見や科学的な知見等の情報を加えるなどの合理的な努力により情報を作成し、伝達すること」と定められている。従ってBOM (部品表)のようなすべての構成部品情報、材質情報、質量情報を100%記載する必要は無い。
問題点
chemSHERPAをはじめとする製品含有物質の情報伝達においては、サプライチェーンの中で多くの課題がある。
- 下請法の優越的地位の濫用や、不正競争防止法におけるトレードシークレット(営業秘密)を侵害しない配慮が必要。中小企業庁の調査報告では、取引関係で「注意を要する事例」として、以下のようなchemSHERPAに関するヒアリング結果が掲載されており、サプライヤへの過大要求にならないよう注意が必要である。[8]
取引先のchemSHERPAへの対応に疑問を持っている。(中略)協力ベースの調査のようなものなのに、経費が掛かる対応であり注文書を出して発注して貰いたいぐらいの話。chemSHERPA の依頼は各種大手からあるが、取引先だけ要求の水準が高い。下請事業者がどれだけ負担があるのか判っていない。【電機・電子・情報通信機器-金属製品製造・加工】
- 有償化については、そもそも製品含有物質の情報伝達はそのコストも含め、物品を供給する企業側が利害関係者(ステークホルダー)に対する説明責任(ISO14001におけるアカウンタビリティー)を果たすべきものとして位置づけられており[9]、供給者と購入者どちらがコスト負担すべきとは言えず、十分な協議検討が必要である。
- chemSHERPAでは、コンタミネーションやUVCB[10]の取り扱い、検出限界(LOD)を考慮した含有率の特定・定量プロセスが充分に明確化されていない。主に最終セットメーカーによるサプライヤへの要求事項(グリーン調達基準など)において、近年では特にストックホルム条約(POPs条約)等を根拠として、物質の含有閾値を設定せず、実質0ppmの品質保証が要求されているケースがある。chemSHERPAでは報告すべき含有閾値は0.1%が基準であり、最小入力下限値も10ppbであるため、chemSHERPAでは判断できず、個社様式の再調査が必要となっている。サプライヤに対する企業努力(デューデリジェンス)のガイドラインや、原産地証明や輸出管理規制におけるデ・ミニミスのような指針も無いいため、各企業がどこまで厳密な調査努力をすればよいのかが分からない。
- chemSHERPA利用ルール(6.7. 情報の更新)においては、法規制・業界基準の改正変更に伴って、サプライヤ企業が川下に更新情報を自発的に伝達することとなっているが、実際には自発的に納入先に提供されていることはなく、川下側から更新有無を確認しなければならないことがほどんの実態である。そのためサプライヤ企業は、多くの納入先企業から最新のchemSHERPAもしくは個社様式の再調査を受ける。
こうした問題の一部を解決するため、CMP(Chemical & Circular Management Platform)という新たなプラットフォームの構築が進められている。[11]
関連項目
脚注
- ^ https://chemsherpa.net/
- ^ https://chemsherpa.net/aboutchemsherpa/eachcompany
- ^ https://eudirective.net/rohs201107/kinnsituzairyouteigi.html
- ^ https://www.env.go.jp/chemi/reach/article.pdf
- ^ https://chemsherpa.net/tool#declarable
- ^ https://chemsherpa.net/docs/guidelines
- ^ https://chemsherpa.net/aboutchemsherpa/description
- ^ https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/torihikimondai/021/dl/003.pdf
- ^ https://tayori.com/faq/44be07764d645190f5c840045b8ef3c4d9673c6f/detail/7f50b2c66c18276afd44b798036643e6c79eadd6/
- ^ https://www.tkk-lab.jp/post/reach20230421
- ^ https://chemsherpa.net/cmp
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