食物網とは? わかりやすく解説

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食物網

読み方:しょくもつもう
別名:フードウェブ

自然界における、多様に入り組んだ生物の「食う・食われる」の関係、生態系を指す語。

食物網はいわゆる食物連鎖」の同義語といえる食物連鎖は「鎖」の語から半ば固定的直線的な弱肉強食の関係が想起されがちであるが、自然界における実情直線的関係では捉えきれないあたかも網の目のような複雑な関係性といえる。そのため、近年では「食物連鎖」の語に替えて「食物網」と呼ぶ場合の方が多くなってきている。

食物連鎖

(食物網 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/12/15 22:54 UTC 版)

食物連鎖の一例(ミンミンゼミハラビロカマキリ

食物連鎖(しょくもつれんさ、: food chain)とは、生物群集内での生物捕食(食べる)・被食(食べられる)という点に着目し、それぞれの生物群集における生物種間の関係を表すことである。栄養段階のこと(#後述)

食物連鎖 (Food chain)

陸上と海中での連鎖

生物は同種、他種を問わず、様々な形で自分以外の生物個体を利用して生きている。その中で最も典型的に見られる利用法が他者の捕食である。

陸の上の生物には、草の葉(ススキ)をバッタが食べる→バッタをカマキリが食べる→カマキリを小鳥が食べる→小鳥をタカが食べる、といった生物間のつながりがある。 海中でも同じように、たとえば、植物プランクトン→動物プランクトン→イワシイカアシカシャチ…… などのつながりがある。

このように、食べる・食べられるの関係をたどっていく。そうすると、ある一定の場所の生物間に、1つの鎖状の関係を見いだすことができる。これを一繋がりの鎖として取り出したとき、食物連鎖と呼ぶ。このような関係を結ぶためには、関係する生物が同じ場所に所属しているはずで、つまり、食物連鎖は生物群集の中の構造の一つだと言える。

通常、食う・食われるの関係で結ばれる食物連鎖では、植物と草食動物の関係をのぞけば、食う側の方が食われる側よりも大きい。空想的には、連鎖はかなりの数をつなぐことができる。

また、この連鎖において、一般に、下位のものほど生物量が多い傾向があり、連鎖の順に個体数を棒グラフ表示すれば、上にゆくほど小さくなり、ピラミッド型になる。これを生態ピラミッド(Ecological pyramid)という。

また、現実には複数種の餌を食う動物は珍しくなく、また、複数種に食われることも当然あり得るので、それらを考慮に入れて図を描けば、食う食われるの関係の入り乱れた複雑な網目が描ける。これを食物網(Food web)という。こうした食物網を調べてみると、上述の古典的食物連鎖と異なり、連鎖の段階は錯綜し、段階数も非常に数が多くなることが判明してきている。そのため、現在の群集生態学では食物連鎖は歴史的術語となりつつあり、食物網としての概念の方が現実的なものとして重視されてきている。

食物網(Food web)

淡水の水生食物網。青い矢印は、完全な食物連鎖藻類ミジンコ → ギザード・シャッド → オオクチバスアオサギ)を示している。

現在の群集生態学によれば、実際の生態系はピラミッド上の単純な食物連鎖ではなく、食物網と呼ばれる網の目のような複雑な関係にあるとする知見が得られてきている[1]。食物網の概念によれば、たとえどの網の箇所でも引っ張れば全体に影響し歪みを与え、それと同様に、乱獲や過剰保護[注釈 1]などの極端な資源運営を行えば、バイオマスのバランスが崩れる要因になる。近年ではEcopath with Ecosimなどの生態系モデル (Ecosystem model) が開発され、日本でもクジラと漁業の競合関係を調べるためにジャルパン2 (JARPN II) と呼ばれる研究が行われており、その目的の一つがクジラを含めたFood webを数値モデル化するための科学的データの提供とされる[2][3]

食物網管理(food-web management)およびトロフィック管理(trophic management)

食物網管理food-web management)およびトロフィック管理(trophic management)とは、生態系における捕食・被食関係や栄養段階trophic level)の構造を維持・調整することによって、生物群集の安定性を保つことを目的とした管理概念である。従来の単純な食物連鎖に基づく管理手法とは異なり、近年の群集生態学において重視される食物網food web)の複雑な相互作用を前提としている。

トロフィック管理(trophic management)は、特定の栄養段階、特に中位捕食者(trophic level 3 前後)の維持や調整を通じて、下位栄養段階の過剰増加や資源枯渇を防ぐことに重点を置く。一方、食物網管理(food-web management)は、種間競争・捕食・間接効果など複数の相互作用が連結した網状構造全体を対象とし、群集レベルの安定性および生態系サービスの維持を目指す包括的な管理概念である。

これらの手法は、特定の生物種の増加や減少が他の栄養段階を介して連鎖的な影響(トロフィック・カスケード)を引き起こすことが知られている水域環境において特に重要である。淡水湖沼における小型魚類の過密化、外来生物の侵入、上位捕食者の減少などによる食物網の不均衡に対し、中位捕食者の導入・維持、捕食圧の調整、栄養段階ごとのバイオマス構造の最適化などが管理手法として採用される。

食物網管理は、近年の生態系モデル(例:Ecopath with Ecosim)を用いた定量的解析や数値シミュレーションと組み合わせて実施されることが多く、海洋生態系のみならず、河川・湖沼の資源管理や希少種保全、外来生物対策などに幅広く応用されている。

フードウェブ解析と生態系管理

現代生態学では、複雑なフードウェブを解析して生態系の問題の原因を特定し、バランスを回復させることが目指されている。しかし自然の生態系は極めて複雑であるため、いきなり大規模な介入を行うことは大きなリスクを伴う。 そのため、バイオマニピュレーションやリワイルディングの理論においても、マイクロコズムおよびメゾコズムを用いた実験的アプローチが重視され、小規模な操作実験から中規模実験へと段階的に拡張される。これらの知見は、最終的に適応的管理(adaptive management)の枠組みに基づき、実際の生態系における管理・介入へと適用される。

様々な側面

生物の栄養供給の形は、食う・食われるの形だけをとるものではない。様々な違った形があり、それらを考慮に入れると、また違った食物連鎖が考えられる。

寄生者と宿主の関係を、寄生者が宿主から栄養をとっていると見れば、寄生関係による食物連鎖が考えられる。たとえば

植物をイモムシが食べる→イモムシに寄生蜂が入り込む→寄生蜂に重寄生する寄生蜂が入り込む→重寄生の寄生蜂の体内に細菌が入る

というようなものが考えられる。この場合、寄生者は宿主より小さいのが普通なので、段階を追うごとに小さくなる。寄生食物連鎖は、通常の食物連鎖ほど段階が多くならないのが普通である。

特に地上の生態系では、植物の生産物は生きた状態では使用されず、植物遺体となって後に利用される率が非常に高い。この場合、落葉や枯木は、直接に動物に食われるのではなく、菌類細菌の分解を受けたものが餌となっている。これをスタートに、

菌(細菌菌類)のついた枯葉をトビムシが食べる→トビムシをダニが食べる→ダニをクモが食べる→クモ小鳥が食べる……

というようにして、通常の食物連鎖へつながってゆく。また、

菌のついた枯葉をトビムシが食う→タンパク質に富んだ菌の細胞が消化吸収され難分解性の成分が糞として排泄される→トビムシの糞にまた菌がつき繁殖する→菌がついたトビムシの糞を再びトビムシが食う……

というループ状のサイクルによって植物遺体の主成分であるセルロースリグニンが分解されていく過程も重要である。これらを総合して腐食連鎖(デトライタス・サイクル)と呼び、生きている植物を食べることから始まる食物連鎖、即ち生食連鎖(グレイジング・サイクル)とともに食物連鎖の2大潮流を形作っている

腐食連鎖は水中生態系でも、植物遺体が大量に流れ込む干潟マングローブ林、アマモ場などにおいて非常に重要な役割を果たしている。

食物連鎖において肉食動物の関係が複雑であれば複雑であるほど、中間捕食者や外来種の暴走を抑えることができる[4]

現状と発見

陸上の生態系と水中の生態系の間も、魚食性の鳥や魚つき林などでつながっている。海鳥の糞に由来するグアノは昔から肥料として使われてきたし、海岸の「魚つき林」に由来する有機物が沿岸部の生態系を豊かにすることが明らかになってきた。

これらは生物間のつながりと同時に、エネルギーや炭素窒素リンなどの物質のつながりでもある。物質やエネルギーが順に受け渡される様から"連鎖"と表現される。

その区域の生物での食物連鎖を見渡すとき、すべての生物のエネルギーは、元をたどれば光合成に依存している。そしてそれを利用するものに、光合成するもの、それを食うもの、さらにそれを食うもの、のような段階があることがわかる。これを栄養段階(trophic level)と呼ぶ。

生産者といくつかの段階の消費者、そして分解者という3つで構成される。

生産者 (producer)

植物は、太陽のエネルギーと二酸化炭素を利用して光合成をおこない、デンプンを作る。さらに、窒素や各種ミネラルを組み合わせて、タンパク質脂肪などを作り出す。

消費者(consumer)

植物(生産者)をえさにする草食動物(シマウマなど)が第一次消費者で、草食動物を食べる肉食動物(ライオンなど)が第二次消費者である。以後第三次、第四次…… となるが、第三次消費者が第一次消費者を捕食することもおこりうるし、雑食の動物もいるので、消費者間の捕食・被食の関係はとても複雑である。一般に高次の消費者ほど個体数が少ない。

分解者 (decomposers)

生物の死骸やフンなどは、さらにほかの動物に食べられたり、細菌菌類などの働きによって分解されてゆく。生物を構成していた有機物は、やがて無機物と水と二酸化炭素まで分解され、ふたたび生産者に利用される日まで、自然の中を循環する。

生物濃縮

食物連鎖の結果、生物に蓄積しやすい物質が上位捕食者に集中していく生物濃縮という現象が生じる。魚類に多く含まれているドコサヘキサエン酸や、フグ毒・貝毒などは、いずれも微生物によって合成された物質が食物連鎖過程で濃縮されたものである。ある物質が生物を取り巻く環境により高い濃度で体内に蓄積されることを生物濃縮という。

食物連鎖による生物濃縮は、ダイオキシン類[5]重金属農薬等の有害物質が問題としてとりあげられることも多い。この問題はレイチェル・カーソンが著書『沈黙の春』で取り上げたことで有名になった。汚染物質の排出源が特定・除去された後でも、土壌や湖沼の底質に蓄積されている汚染物質が食物連鎖によって濃縮されるため、暴露が長期にわたり継続する場合もある。

脚注

注釈

  1. ^ 俗に過剰保護の影響であるかのようにいわれるクロミンククジラの増加は飽くまでも他の鯨種が乱獲された生態系破壊の結果とされ(クロミンククジラ#生態参照)、過剰保護とは無縁の現象である。他の種でも過剰保護が具体的に何かを引き起こした事例は未確認である。

出典

  1. ^ Fishing Down Marine Food Webs[リンク切れ], Fisheries Centre, University of British Columbia
  2. ^ Luis A. Pastene et al. (2009). “The Japanese Whale Research Program under Special Permit in the western North Pacific Phase-II (JARPN II): origin, objectives and research progress made in the period 2002-2007, including scientific considerations for the next research period”. SC/J09/JR1. オリジナルの2010-09-11時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20100911192357/http://www.icrwhale.org/eng/SC-J09-JR1.pdf. 
  3. ^ 『なぜクジラは座礁するのか? 「反捕鯨」の悲劇』河出書房、森下丈二、2002年、59頁 この書籍の「食物網」の記述に添付されている図版は「生態ピラミッド」である。
  4. ^ Complex predator communities can mitigate the effects of mesopredators and invasive predators. Red arrow, negative impact; blue arrow, positive impact; hatched arrow, indirect impact. Numbers in square brackets correspond to references. (Euan G Ritchie:2012)
  5. ^ 環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課 環境リスク評価室, "ダイオキシン類による人の暴露実態調査の結果について", 平成14年12月24日発表資料[1]. これによると、ヒトのダイオキシン類への暴露は食品によるものが97%と最多で、なかでも魚介類からの暴露が約50~70%と最も高い。特に年齢階級が上がるほど魚介類からの暴露が増加し、反対に幼少時では乳・乳製品からの暴露が増加する傾向にある。

参考文献

関連項目

外部リンク


食物網

出典:『Wiktionary』 (2017/04/05 09:24 UTC 版)

名詞

食物 しょくもつもう

  1. 食物連鎖が網のように複雑になっていること。

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