質実剛健
質実剛健とは、質実剛健の意味
質実剛健とは、見た目は飾り気がなく、内面はまじめで、しかも強く逞しい、ということを意味する語。基本的には人物(人となり)を形容する表現といえる。質実かつ剛健なさま。質素・質朴、誠実・実直、剛毅・剛強、強健・頑健。質実剛健の語の由来・語源
質実剛健という言葉そのものの直接の由来は定かでないが、明治の開国によって西欧列強と対峙するにあたり質素倹約と勤勉とを奨励する旨のスローガンとして成立したという見方がある。質実剛健の類語と使い分け
質実剛健の類語・類似表現としては、「質朴剛健」や「剛毅木訥」などが挙げられる。「質朴剛健」ほぼ「質実剛健」の同義語といえる。「剛毅木訥」は、強い意志を持ち、性格は飾り気がない、という意味で用いられる。「木訥」には「口数が少ない」という意味合いを含む。すなわち質実剛健で寡黙な人物には「剛毅木訥」という表現が似つかわしい。 剛毅木訥仁に近し、ともいう。質実剛健の意味する根本は「実直でたくましい」とか「強くて真面目」ということであるから、そのような言い回しも言い換え表現として十分に使える。
質実剛健の英語
質実剛健は simple and sturdy あるいは simple and strong のような言い方で主義がだいたい表現できる。要するに「素朴でしかも強い」ということである。unaffected and sincere(飾り気がなくまじめである)といった表現もできる。質実剛健
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/01/25 13:11 UTC 版)
|
|
この記事は中立的な観点に基づく疑問が提出されているか、議論中です。 (2026年1月)
|
質実剛健(しつじつごうけん)は、飾り気がなく誠実なこと(質実)と、心身ともに強くたくましいこと(剛健)を併せ持つさまを指す四字熟語、および徳目[1][2]。明治以降、日本の公教育や組織運営における重要な指針として広く用いられてきた。
1. 概要
1-1. 戊申詔書
日露戦争後、国民生活の風紀や勤倹の維持が課題として意識される中で、1908年、日本政府は戊申詔書(ぼしんしょうしょ)を通じて「華を去り実に就く」ことを国民に訓示した。戊申詔書は「勤倹を励み、華美を戒める」趣旨を含み、以後の道徳政策や国民教化の文脈で参照された[3]。この時期より、「質実剛健」は近代日本語の価値語として普及し、知識人の言説や教育機関の理念語として用いられ始め、教育界では校風・学風を表す語として「質実剛健」が採用される。
明治末期に東京・神田地域で形成される私立法律教育機関の集積いわゆる「五大法律学校」(東京・神田5大学)は、共通の文化圏を形成していた。中央大学では1914年(大正3年)の学長訓辞を契機として「質実剛健の校風」が掲げられた経緯が紹介されており[4]、 専修大学は、学風として「質実剛健・誠実力行」を掲げている[5]。 また明治大学付属校(中学校・高校)では、「質実剛健」が校訓(建学の精神)として明示されている[6]。
1911年(明治44年)の中学校令施行規則改正に関連する文部省の訓令では、剣道・柔道について「質実剛健なる国民精神を涵養し、心身を錬磨するに適切」と武道教育の意義が説明され、学校制度の中で質実剛健が国民精神の涵養と結びつけて位置づけられた[7]。また1924年には徳富蘇峰が質実剛健(剛健質実)に言及した文章も存在する[8]。
2. 歴史的背景
2-1. 武士道から教育理念への継承
「質実剛健」は、中世以来の武士の美意識である「質素」「尚武(しょうぶ)」が近代化したものである。
封建社会において、質素倹約は単なる個人の美徳ではなく、国家の維持と経済の安定を目的とした統制であった。特に政権の転換期には、既存の価値観を否定する風潮が社会に実害を及ぼさないよう、法整備が進められた。
中世:建武式目とバサラの抑制
1336年(延元元年/建武3年)、室町幕府の創始者である足利尊氏は、幕府の基本方針である建武式目を制定した。本式目の第1条には「倹約を致すべき事」が掲げられている。背景には、鎌倉幕府滅亡後の混乱に乗じて流行した「バサラ(奢侈)」と呼ばれる社会現象があった。身分を無視した派手な意匠や、既存の権威を軽んじる振る舞いは、軍事組織としての規律崩壊、および武士の経済的自立を損なう危険性を孕んでいた。
足利幕府は倹約を最優先課題として明文化し、生活態度そのものを法的な統制下に置くことで社会の再編を図った。
近世:武家諸法度と傾奇者の排除
戦国の混乱期を経て、江戸時代の統制はより体系的かつ厳格なものとなる。1615年(元和元年)、徳川家康と2代将軍徳川秀忠は、禅僧・金地院崇伝に起草させた武家諸法度を発布した。
本法度は「文武弓馬の道」への専念を命じ、衣食住の贅沢や私的な徒党を厳禁とした。これにより、武士は個人の武勇を誇示する「戦士」から、規律を遵守する「官僚」へと変質を余儀なくされ、突出した個人行動を許さない安定した社会構造が確立された。 またこの法度は、戦国時代から続く「傾奇者(かぶきもの)」的な気風を徹底して排除することを目的としていた。傾奇者は異様な風体で徒党を組み、路上での辻斬りや集団暴行といった物理的な治安悪化を引き起こす、幕藩体制にとっての明白な実害であったためである。
江戸時代を通じて、財政再建や風紀引き締めの観点から倹約令が繰り返し強化された。享保・寛政・天保などのいわゆる三大幕政改革期には、財政再建や風紀の引き締めの観点から、倹約の奨励が強化された。江戸時代は全国的な平和期であり、戦乱期と比べて軍事行動が少なく、経済的負担の軽減が求められた時代である。
武士の収入基盤である禄米制度は固定的であり、経済構造上、質素さが合理的な行動選択として促されていた側面もある。江戸期の町人文化においても、勤勉・誠実・倹約といった価値観が「町人道」として言及される例がある。これは都市文化の中で武士道的な価値観(徳目)を取り入れた文化的潮流である[9]。こうした統治方針のもと、節度ある生活や勤倹の徳目は、武士階級に限らず社会全体の規範として位置づけられるに至った。
近代:藩閥政治による士風の継承と「戊申詔書」
明治維新を経て、新政府の中枢を薩摩藩出身者らが担ったことにより、彼らの虚飾を嫌い、実践を重んじる気風は、近代日本の軍隊や官僚組織の精神的バックボーンとなった。 この価値観が国家的な国民規範として、広く浸透する決定的な契機となったのが、1908年(明治41年)の戊申詔書(ぼしんしょうしょ)である。
3. 高校、大学における校訓・校風
「質実剛健」という理念が現代日本にも受け継がれていることを示す最も明確な根拠は、高等学校(旧制中学校)や大学において校訓・校風として繰り返し採用されてきた事例の多さである。
公立進学校(旧制中学校系)
「質実剛健」の校訓・校風を掲げる教育機関は、明治・大正期に創立された各都道府県を代表する旧制中学を前身とする名門校に多く、文武両道の象徴となっている。
北海道・東北
関東
中国・四国
九州
私立大学・私立中高
私立校においても、建学精神や、特定の学問領域(特に実学やスポーツ)を支える哲学として質実剛健が掲げられている。
- 開成中学校・高等学校 教育理念の4つの柱の一つとして「質実剛健」を挙げている[24]。
- 早稲田実業学校高等部 「質実剛健」「文武両道」の校風としている[25]。
特殊な教育機関
国家の安全や公共の秩序を担うような極めて高い規律が求められる機関でも質実剛健は採用されている。
- 陸上自衛隊幹部候補生学校 「質実剛健にして清廉高潔」を校風としている[29]。
- 陸上自衛隊高等工科学校 「明朗闊達(かったつ)・質実剛健・科学精神」を校風としている[30]。
出典
- ^ “質実剛健 | スピーチに役立つ四字熟語辞典 | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス”. 情報・知識&オピニオン imidas. 2024年6月12日閲覧。
- ^ “質実剛健(しつじつごうけん)とは? 意味・読み方・使い方 - 四字熟語一覧”. goo辞書. 2024年6月12日閲覧。
- ^ “戊申詔書(明治四十一年十月十三日):文部科学省”. www.mext.go.jp. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “中央大学の「建学の精神」と「校風」:研究:Chuo Online : YOMIURI ONLINE(読売新聞)”. www.yomiuri.co.jp. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “建学の精神・理念|専修大学”. www.senshu-u.ac.jp. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “校訓・沿革”. 明治大学付属明治高等学校・明治中学校. 2026年1月25日閲覧。
- ^ 瀧本, 誠樹、タキモト, セイキ、Takimoto, Seiki「日本における武術の変容と理想の境地に関する一考察」『札幌大学総合論叢』第49巻、2020年3月、1–11頁。
- ^ “国民新聞(大正13年2月13日) コラム 「剛健質実と女子教育」”. 徳富蘇峰記念館. 2026年1月25日閲覧。
- ^ 日本大百科全書(ニッポニカ). “町人道(ちょうにんどう)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “大西新会長 就任ご挨拶〜未来への生命が芽生える創立125周年へ|六華だより”. 六華同窓会(札幌尋常中・札幌中・札幌一中・札幌一高・札幌南高) (2020年3月1日). 2026年1月25日閲覧。
- ^ “校長あいさつ|盛岡一高/岩手県立盛岡第一高等学校”. www2.iwate-ed.jp. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “学校概要 | 山形東高等学校”. www.yamagatahigashi-h.ed.jp. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “校訓・校風 - 埼玉県立熊谷高等学校”. kumagaya-h.spec.ed.jp. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “教育方針 - 栃木県立宇都宮高等学校”. www.tochigi-edu.ed.jp. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “とりネット/鳥取県公式ホームページ”. www.pref.tottori.lg.jp. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “創立記念式典” (jp). 福岡県立修猷館高等学校. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “校風 ::: 鶴丸報告 ::: 鹿児島県立鶴丸高等学校同窓会”. tsurumaru.org. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “中央大学の「建学の精神」と「校風」:研究:Chuo Online : YOMIURI ONLINE(読売新聞)”. www.yomiuri.co.jp. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “大学紹介 | 第23回明治大学ホームカミングデー”. 明治大学. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “大学シンボル・校歌|日本体育大学”. www.nittai.ac.jp. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “「実学主義」のもと「生きる力」を育む | 東京農業大学”. www.nodai.ac.jp. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “建学の精神/学園のあゆみと理念/大学概要|神奈川大学”. www.kanagawa-u.ac.jp. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “校訓・建学の精神・教育の理念|「学術とスポーツの真剣味の殿堂たれ」|大学案内|中京大学”. www.chukyo-u.ac.jp. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “教育理念 | 開成中学校・高等学校公式サイト”. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “早稲田大学進学の先を見据え 豊かな学識と表現力を身につける――早稲田大学系属 早稲田実業学校中等部|中学受験情報 朝日みつかるナビ”. www.asahi.com. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “日本大学付属校の唯一の男子校。「強く 正しく 大らかに」を校訓に、質実にして剛健なる男子の育成に取り組む 日本大学豊山高等学校・中学校”. 朝日みつかるナビ 中学受験情報. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “日本大学第二学園初代理事長 山野井 亀五郎 | 日本大学の歴史”. www.nihon-u.ac.jp. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “教育目標・実践目標 | 学校紹介 | 日本大学第三中学校・日本大学第三高等学校”. www.nichidai3.ed.jp. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “幹部候補生学校ってなに?”. 陸上自衛隊幹部候補生学校. 2026年1月25日閲覧。
- ^ “青春を「国防」にささげる学生たち…なぜ中学を卒業後すぐに茨の道へ? - MAMOR-WEB” (英語). (2023年2月27日) 2026年1月25日閲覧。
- ^ “中部管区警察学校 | 中部管区警察局”. www.chubu.npa.go.jp. 2026年1月25日閲覧。
関連用語
質実剛健と同じ種類の言葉
品詞の分類
| 名詞および形容動詞(性格) | しみったれ 助兵衛 質実剛健 H エッチ |
- 質実剛健のページへのリンク