別姓とは? わかりやすく解説

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夫婦別姓

(別姓 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/02/02 09:25 UTC 版)

夫婦別姓(ふうふべっせい)、あるいは夫婦別氏(ふうふべっし/ふうふべつうじ)は、夫婦結婚後も法的に同氏へ改姓せず、婚前の名字苗字)を名乗る婚姻および家族形態あるいは制度のことをいう[1]。 夫婦で別姓・同姓を選択できる制度を、「選択的夫婦別姓」(せんたくてきふうふべっせい)、あるいは「選択的夫婦別氏」(せんたくてきふうふべっし/せんたくてきふうふべつうじ)と呼ぶ[2]通称として旧氏旧姓)を使用することは「旧姓通称使用」と呼ぶ[3][4]

夫婦別姓(氏)に限らない夫婦の婚前・婚姻後の姓一般については、「Maiden and married names」(英語版記事)を参照。

概要

日本においては、現在、民法750条で夫婦の同氏が規定されており、戸籍法によって夫婦同氏・別氏が選択可能な国際結婚の場合を除き、婚姻を望む当事者のいずれか一方が氏を変えない限り法律婚は認められていない[5](「#関連法令」「#現状」参照)。現在の日本において何らかの理由で当事者の双方が自分の氏を保持したい場合に、別氏のまま婚姻することを選択できる選択的夫婦別姓制度を導入することの是非が議論されている[6][5](「#民法改正案」「#戦後の動き」「#賛否の論点」「#賛否の状況」参照)。関連して訴訟等も提議されている(「#訴訟」参照)。

なお、日本では、明治8年(1875年)2月13日の平民苗字必称義務令により、国民はみな公的に名字(姓)を持つことになったものの、夫婦同氏が法的に規定されたのは明治31年(1898年)に施行された明治民法からで、明治民法施行以前は明治9年(1876年)の太政官指令15号前段によって夫婦別氏が定められていた[7](「#歴史的経緯」参照)。過去には、日本以外にも夫婦同氏が規定されている国もあったが[8]、2014年時点で、法的に夫婦同氏と規定されている国家は日本のみとされ、日本においては夫婦別姓を選択できる選択的夫婦別姓制度の導入の可否が議論・検討されている[9][10][11](「#国際世論・状況」「#各国の状況」参照)。

用語

現代では、「氏」、「姓」、「名字」、「苗字」は、同義に扱われることが多い[12]。「夫婦別姓(氏)」については、現在の一般的な議論では「夫婦別姓」という語が用いられることが多い[13]。また、歴史学者の久武綾子は、「氏」という表記が家族主義的概念だとして「夫婦別姓」を用いる[14]。一方、法令用語としては明治民法以来「姓」ではなく「氏」(うじ)が用いられているため、弁護士や法の専門家は「夫婦別氏」(ふうふべつうじ)を用いる傾向があり[13]、法史学者の井戸田博史は、法律用語としては「氏」を使うべきとしている[15]。法務省ホームページでは、民法等の法律で「姓」や「名字」のことを「氏」(うじ)と呼んでいるとし、「選択的夫婦別姓(氏)」について「選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)」と記載している[16]。「選択的夫婦別姓(氏)」については、ほかに「夫婦別姓選択制[17]」「夫婦別氏選択制[18]」「選択的夫婦同姓[19]」「夫婦同姓別姓選択制[20]」などの表記も使用されたり、あるいは使用の提案がなされたりしている。これに対し、婚姻時に両者の姓を統一する婚姻および家族形態、またはその制度のことは「夫婦同姓」(ふうふどうせい)あるいは「夫婦同氏」(ふうふどうし/ふうふどううじ)という。なお、現行制度下の非法律婚を夫婦別姓と呼ぶことがある[21][22]が、本項では「事実婚」を用いる。

現状

国内の状況

国際結婚を除き、選択的夫婦別姓は認められておらず、その代替としては主に旧姓通称使用か事実婚が考えられる[23]。日本経済新聞は、そのため選択的夫婦制度を求める声が強まる一方、同制度導入への反対派は、これらの問題に旧姓通称使用の更なる拡大で対応するよう求めている、と報道している[24](「#賛否の論点」も参照)。

2024年の法務省調査では、結婚して姓を変えるのは、女性が圧倒的に多く、全体の約94%を占める。また、積極的に結婚しない理由として、20-30代の独身女性が「名字・姓が変わるのが嫌・面倒だから」 と約4分の1が回答している[25]。(「#男女共同参画白書」参照)

関連法令

民法および戸籍法の規定

日本では以下の民法および戸籍法により、日本人間の婚姻の場合、夫婦は同氏と定められている。

民法 第750条(夫婦の氏)
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
民法 第739条(婚姻の届出)
1 婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。
戸籍法 第74条
婚姻をしようとする者は、左の事項を届出に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 夫婦が称する氏
ニ その他法務省令で定める事項
国際結婚および婚姻挙行地の方式による婚姻

前節の夫婦を同氏とする規定は国際結婚には適用されず、国際結婚では選択的夫婦別氏が認められている。法の適用に関する通則法により外国人には民法750条が適用されず夫婦別氏になるが、戸籍法第107条に従い、戸籍法上の届け出をすれば戸籍法上同氏になる(原則別氏、例外同氏)。ただし、戸籍法上の届け出によって同氏となった場合も、戸籍実務では民法上改氏はしていないものとして扱われる[注釈 1]。戸籍上の氏と民法上の氏が食い違うほかのケースとして、離婚時、養子離縁時に旧氏に復さず婚氏、縁氏の名乗りを継続する場合(婚氏続称、縁氏続称)がある[26][27]

また、日本人間の婚姻であっても、外国で現地の方式にしたがって、夫婦が同じ氏を定めないまま結婚を挙行した場合、戸籍の届出をしておらず別氏のままであっても婚姻は有効とされる[28]

法の適用に関する通則法 第24条(婚姻の成立および方式)[29]
婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。
2. 婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による。
3. 前項の規定にかかわらず、当事者の一方の本国法に適合する方式は、有効とする。ただし、日本において婚姻が挙行された場合において、当事者の一方が日本人であるときは、この限りでない。
戸籍法 第107条[30]
2. 外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から六箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。
男女共同参画基本計画

男女共同参画社会基本法第13条に基づき、男女共同参画基本計画が2000年に定められ、5年ごとに見直されている[31]。それぞれの基本計画では、選択的夫婦別氏に関して以下のように記載されている[31][32]

計画 選択的夫婦別氏に関する記載
2000年12月 選択的夫婦別氏制度の導入について国民の意識の動向を踏まえつつ引き続き検討を進める[31][33]
2005年12月(第2次) 選択的夫婦別氏制度について、国民の議論が深まるよう引き続き務める[31][34]
2010年12月(第3次) 選択的夫婦別氏制度の導入等の民法改正について引き続き検討を進める[31][35]
2015年12月(第4次) 選択的夫婦別氏制度の導入等の民法改正等に関し、司法の判断も踏まえ、検討を進める[31][36]
2020年12月(第5次) 夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し、戸籍制度と一体となった夫婦同氏制度の歴史を踏まえ、また家族の一体感、子供への影響や最善の利益を考える視点も十分に考慮し、国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら、司法の判断も踏まえ、更なる検討を進める[31][37]

旧姓通称使用

職場・職種によっては旧姓(氏)を通称にすることが便宜上認められる。1988年に富士ゼロックスで初めて導入され、国家公務員でも2001年から認められた[38][注釈 2]。しかし、さまざまな議論がある[41][42][43]

二つの名前の管理は、企業や行政の負担が大きく[44][45][46]、職場・職業によっては戸籍姓しか認められない[41][47][48][49]。2016年の内閣府調査では旧姓使用を認める企業は全体の半数以下の49.2%である[50][注釈 3]。2021年10月の内閣府の調査では、各府省の所管している302の各種国家資格、免許のうち、旧姓使用ができるものは236だった[53][注釈 4]。(「#旧姓通称使用訴訟」も参照)

運転免許証印鑑登録証健康保険証日本国旅券は、旧姓で作ることはできない[注釈 5][41]。通称は公文書や役員登記、不動産登記、特許出願などには使えず[注釈 6][41][54][55][42][56][57]、未上場株、上場株への投資は戸籍名でしかできない[46]。親から法人を受け継いだ女性等は自分の氏を失うわけにはいかず、結婚をあきらめたり事実婚も多い[50]。2017年と2019年に政府より全国銀行協会に旧姓使用に関する協力要請があったものの、旧姓使用可能な口座は一部にとどまり、特に投資信託口座の旧姓での開設はできない[58][59]。内閣府と金融庁の調査によれば、2022年3月の時点で、全国の銀行のうち、旧姓で預金口座を開設したり、開設済みの口座を使えたりする銀行は62%で、双方に対応していない銀行は31%、いずれも未対応な信用金庫は41%、信用組合は87%[60]クレジットカードや日本国旅券と旧姓の不一致のために、海外のホテルなどの予約ができないことなどもある[42]公証役場での署名は旧姓は認められない[61]。自治体によっては、旧姓での選挙の立候補や議員活動が認められないことがある[62][63][注釈 7]。海外への留学生が旧姓を使って留学することはほぼ不可能、との指摘もある[65]

旧姓併記

旧姓通称使用における問題への対応として旧姓を併記可能とする動きがある[注釈 8][66][67][68] 。2015年から法人登記簿における役員登記において[32][69][70]、2016年、金融庁提出書類の役員欄において、2019年からマイナンバーカード、住民票[58][71]、運転免許[67]において、2021年から特許出願[72][73]において、旧姓併記が可能となった。また、日本国旅券(パスポート)は、これまでも必要な事情がある場合には旧姓を括弧書きで付記することが認められることがあった[74] が、2021年4月より、条件が緩和され、希望すれば誰でも併記可能となった[75][76]。2024年4月からは相続登記において旧姓併記を可能とした[77]。国民健康保険では通称の使用は認められない[41]が、2021年の時点で、一部の自治体では国民健康保険証への旧姓併記が可能となっている[78][79][80][32]

ペーパー離再婚

旧姓通称使用の様々な問題を回避するために、普段は旧姓を通称として用い、必要に応じて旧姓に戻り旧姓での証明書を得るなどの手続きを行った後、再び婚姻届を提出する夫婦もみられる。このような目的で離婚・再婚を行うことを「ペーパー離再婚」あるいは「ペーパー離婚」とよぶ[81][82]。また、逆に子どもが生まれるたびに婚姻届を出し、すぐに離婚届を出す事実婚夫婦[83]や、選択的夫婦別姓が導入されていないことから、数年おきにペーパー離再婚をくりかえし、夫姓婚と妻姓婚を交互に行う夫婦[84][85]などの報道もなされている。なお、これらの場合再婚相手が同じ人物であるため、民法第733条が定める女性の100日間の再婚禁止期間待婚期間)は適用されない。ペーパー離再婚における離婚期間は事実婚の状況となる[86][87]

国際世論・状況

過去には現在の日本と同様に法的に同姓を義務付けていた国家もあったが改正され、2014年現在、比較法的に見て夫婦同氏を強制する国は日本のみ、とされている[7][88][9][10]。2018年には、法務省民事局長が衆議院法務委員会において、婚姻後に夫婦のいずれかの氏を選択しなければならない夫婦同氏制を採用している国は法務省の把握している限りで日本のみ、と説明している[89]。また、選択的夫婦別姓訴訟の弁護団による2025年の調査によると、調査した95カ国のすべてで夫婦別姓が可能で、そのうち、夫婦同姓を選べず別姓を基本とする国は中国やフランスなど33カ国だった[90]。女性差別への意識が高まった1970年代以降、別姓を認める国が増え、その結果別姓を認めないのは日本のみとなったとされる[91]。(「#各国の状況」を参照)

国連女子差別撤廃委員会勧告

国際連合が1979年に採択した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」に、日本は1980年に署名し、1985年に批准した[92]。国連の女子差別撤廃委員会(CEDAW)は、日本民法の夫婦同氏が同条約に抵触する「差別的な規定」だとし、2003年、2009年、2016年、2024年、と4度にわたり改善を勧告している[93][7][94][95](「#戦後の動き」も参照)。2024年の勧告では、夫婦同姓を義務付ける民法の規定を見直し、選択的夫婦別姓を導入するよう勧告した[95][96][97]

現民法が抵触するのは同条約の以下の規定とされる[98][41][99][100]

第16条1
締結国は、婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、特に、男女の平等を基礎として次のことを確保する。
(g) 夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)。

この条約に関連しては、条約違反により権利を侵害された個人・団体が同委員会に通報できる「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書」を日本は批准しておらず、批准を求める動きがある[101][102][103]

国連自由権規約委員会勧告

国際連合自由権規約人権委員会は2022年に日本政府報告書の審査を行い、総括所見において、夫婦同氏を規定する民法750条が実際にはしばしば女性に夫の姓を採用することを強いていることについて懸念を表明している(総括所見14項)[104][105]

米国国務省人権状況に関する年次報告書

アメリカ合衆国国務省による世界199カ国・地域の人権状況に関する年次報告書は2015年版から日本の民法規定で選択的夫婦別姓が認められていない問題について言及を続けている[106][注釈 9]

民法改正案

選択的夫婦別姓の導入をどのように行うかについては、1994年の「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」[116]、1996年の法制審議会答申の民法改正案[117]、超党派野党や公明党などが2015年などに提示した案、自民党内の例外的に夫婦の別姓を実現させる会が2002年に提案した案などがある[118]

1996年法制審議会答申

国際連合の1975年の国際婦人年から始まる国際的な女性の権利保障の推進運動や、1985年に日本も批准した女性差別撤廃条約などを受け、1991年、日本は国内の男女平等施策を推進するための国内行動計画を策定するとともに、法制審議会において家族法の見直し作業に着手した(小委員長:加藤一郎[119][120]。法制審議会の審議は5年にわたって行われ、1992年、1995年の2回の中間報告、1994年の要綱試案の発表などを経て、1996年2月、法務大臣の諮問機関である法制審議会が、家族法の見直しを含む民法改正案要綱を法務大臣に答申した[119]。主な内容は以下の通り[119]

  • 世界の趨勢に合わせ、婚姻年齢を男女18歳に統一
  • 女性のみに課せられている再婚禁止期間の短縮
  • 選択的夫婦別氏の実現
  • 婚外子相続分差別の廃止

このうち、婚姻年齢統一は2018年に成立(2022年4月1日施行)[121]、再婚禁止期間の短縮は再婚禁止期間訴訟の最高裁違憲判決により2015年12月16日に実施[122]、婚外子の相続分差別の廃止は婚外子相続差別訴訟における最高裁の違憲判決により2013年に実現している[123][124]

答申では、選択的夫婦別氏の導入を答申する理由として、以下の3点を挙げている[125]

  • 価値観の多様化を背景にした国民の要望
  • 個人の尊厳の観点から、氏に対する人格利益を法律上保護すべき
  • 既に世界諸国で夫婦別氏が許容されており、夫婦・親子関係の本質・理念に反しない

要綱試案(1994年)

1994年に法務省民事局参事官室は、1996年の法制審議会答申へ向けた中間報告において、3つの案を「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」として提示した[116][125][注釈 10]

A案
  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。ただしこの定めをしないことも可能(原則同氏、例外別氏)。
  • 別氏夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻のいずれかの氏を、子が称する氏として定めなければならないものとする。
  • 別氏夫婦は、婚姻後、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、夫又は妻の氏を称することができるものとする。
B案
  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称することができるものとする(原則別氏、婚姻の際に特段の合意がされた場合にかぎり、同氏を称することができる)。
  • 婚姻後の別氏夫婦から同氏夫婦への転換、及び、同氏夫婦から別氏夫婦への転換はいずれも認めない。
  • 別氏夫婦の子の氏は、その出生時における父母の協議により定める。
C案
  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称するものとする。
  • 婚姻により氏を改めた夫又は妻は、相手方の同意を得て、婚姻の届出と同時に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏を自己の呼称とすることができるものとする。
  • 婚姻前の氏を自己の呼称とする夫又妻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その呼称を廃止することができるものとする。

後の1996年の法制審議会答申では、現行制度の枠組みを維持しつつ希望者に別氏を認めるA案に同氏・別氏を対等とする修正を加え、B案と折衷した要綱案が作成された[125][92][126][注釈 11]。法務省は2002年4月にも、A案と同様の案(例外的夫婦別氏案)を提示している[127]

最終答申(1996年)

1991年1月に設置された法制審議会身分法小委員会での審議を経て、法制審議会は、1996年の答申で民法改正案を法務大臣に提示した[117][125][128][注釈 12]。しかし、自民党法務部会が民法改正案の国会提出を拒み答申は実現しなかった。法制審議会答申が実現しなかったのはこれが初めて[120][注釈 13]。法務省は2001年11月[127]、2010年2月[130]にも同様の案を再提示している。2025年4月に立憲民主党が衆議院に提出した案も同様の内容[131]

  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。
  • 夫婦が各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻の氏を子が称する氏として定めなければならないものとする。

この審議に合わせ、民事行政審議会は、「別氏夫婦に関する戸籍の取り扱い」についても法務大臣に答申した。

  • 戸籍は夫婦およびその双方又は一方と氏を同じくする子ごとに編製する。
  • 氏名は、子が称する氏として定めた氏を称する者、その配偶者の順に記載する。
  • 戸籍には、現行戸籍で名を記載している欄に氏名を記載する。

超党派野党案/公明党案

法制審議会答申以来、野党は超党派でほぼ会期ごとに民法改正案を提出し続けているが、未審議のまま廃案と再提出が繰り返されている[132][133][134](「#年表」参照)。公明党も2001年に改正案を単独で提出している[135]民主党が2015年に、社民党日本共産党等と共同で参議院に提出した案は以下のような案である[136][137]

  • 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。
  • 改正法の施行前に婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、婚姻中に限り、配偶者との合意に基づき、改正法の施行の日から2年以内に別に法律で定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏に復することができる。
  • 別氏夫婦の子は、その出生の際に父母の協議で定める父又は母の氏を称するものとする。
  • ただしその協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求により、協議に代わる審判をすることができる。

2018年に、立憲民主党国民民主党無所属の会、日本共産党、自由党社民党の5野党1会派が提出した案[138]や2022年に立憲民主党、国民民主党、社民党、日本共産党、れいわ新選組の5野党が提出した案[139][140]も同様の内容である。公明党が2001年に提出した案も同様の内容である[135]。これらは法制審議会答申案とほぼ同じ内容[127]だが、さらに日弁連の提言[118]に沿っている。

家裁許可制選択的夫婦別氏案

2002年7月16日に発足した、野田聖子ら自民党一部議員による例外的に夫婦の別姓を実現させる会が提案した案。職場の事情や祖先祭祀の必要など特段の事由がある場合に、家庭裁判所による許可を得て認める、とする案。議員立法として自民党法務部会に提出されたが党内合意に至らず国会提出は見送られた[141][142][143][144][145][注釈 14]。この案は2004年にも再度議論されたが、国会提出は見送られた[149][注釈 15]

  • 職業生活上の事情、祖先の祭祀の主宰その他の理由により婚姻後も各自の婚姻前の氏を称する必要がある場合において、別氏夫婦となるための家庭裁判所の許可を得ることができる。
  • 夫婦同氏が原則とし、別氏夫婦から同氏夫婦への転換は認める。逆は認めない。
  • 別氏夫婦は、婚姻時に「子が称すべき氏」を定める[141]

その他の案

旧姓続称制度(1997年)

自民党・社会党・さきがけ政権時の1997年に自民党法務部会「家族法に関する小委員会」(座長:野中広務)で検討された案として「旧姓続称制度」[151][127][152]がある。配偶者の同意を得た上で届け出れば、社会生活上の全場面で旧姓を使えるようにするもの[151][152][153][注釈 16][注釈 17]

例外的夫婦別氏案(2002年)

2001年に法務省は法制審答申案と同様の案を再提出し見送りとなったため、翌2002年4月要綱試案A案と同様の「例外的夫婦別姓案」を提示したが、見送りとなった[127]

2022年参議院選挙では、NHK党が、この案の検討を公約にあげている[155]

通称使用の法制化案(2002年)

2002年、選択的夫婦別氏に反対する高市早苗[注釈 18]は、野田聖子らによる「家裁許可制選択的夫婦別氏案」が自民党内で検討された際に、「対案」として「通称使用の法制化」を主張した[152]。高市は2020年にも自民党法務部会に同じ案を再提出している[158][注釈 19]。この案は以下のような内容である[159]

  • 戸籍に「婚姻前の氏を通称として使用する」旨を記載する。
  • 国、地方公共団体、事業者、あらゆる公私の団体は、通称として使用するとされた婚姻前の氏を「併記」するための処置を講ずる義務を負う。

また、2025年には高市はこの私案について、2019年の住民基本台帳法改正によりこの私案における戸籍法改正は不要となったと主張している[160]

戸籍法改正による選択的夫婦別氏案(2018年)

2018年1月の国に対する訴訟で、原告は、婚氏続称制度を念頭に、「戸籍上の氏」と「民法上の氏」を分け、戸籍法の届け出により、民法上の旧氏を戸籍上の氏=本名として称せるよう戸籍法を改正すべきと主張している[161][162][163][164][165]。具体的には、戸籍法に以下の条文を加えることで、民法を改正することなく選択的夫婦別姓を実現できる、と原告らは主張している[165]

  • 婚姻により氏を変えた者で婚姻の前に称していた氏を称しようとする者は、婚姻の年月日を届出に記載して、その旨を届け出なければならない

同案に関しては、2019年に国民民主党代表の玉木雄一郎が、日本人同士の結婚時にも別氏を選択できる戸籍法改正を目指す考えを示した[166][167]

日本維新の会マニフェスト(2019年)

2019年、日本維新の会は、参議院選挙の公約(マニフェスト)に「同一戸籍・同一氏の原則を維持しながら旧姓使用にも一般的な法的効力を」を掲げた[168][169]。同党の足立康史の発案。案では戸籍に婚前氏を付記するとともに、それのみを社会生活上で名乗れる、としている[170]。同党は2025年に、立憲民主党の選択的夫婦別姓制度導入法案への対案として、同様の内容の「旧姓の通称使用を拡大する法案」を衆院に提出[171]

婚前氏続称制度(2020年)

2020年に稲田朋美[注釈 20]が提唱した私案。戸籍上は同一戸籍で、例えば筆頭者は夫でも、妻は旧氏を使うと届け出れば戸籍に明記して公的には旧氏のみを使い続けられるようにし、ファミリーネームは私的な場面で用いる[174]。稲田が2020年11月13日に衆院法務委員会において提案した案では、3カ月以内に届け出をすれば以前の氏を使えるようにする、とした[175][176][177]。案では、民法、戸籍法に以下の変更を加える[178][170]

  • 民法750条第2項「前項の規定により氏を改めた夫または妻は、婚姻の日から3か月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏を称することができる」を新設。
  • 戸籍法74条第2項「民法750条2項の規定によって婚姻前の氏を称しようとする者は、婚姻の年月日を届書に記載して、その旨を届けなければならない」を新設。

ミドルネーム案(2021年)

結婚した際に夫婦双方の姓をミドルネームとして戸籍に書き込み、家族が同一戸籍のまま、旧姓にも法的な根拠を与えるという案。自民党の森雅子が2021年3月に参議院法務委員会で提案[179]

法定旧姓案(2025年)

旧姓の使用を法制化し「法定旧姓」とし、公的証明書への旧姓の併記と単独使用のいずれも可能とする案。選択的夫婦別姓導入に反対する自民党の衛藤晟一が2025年に提案[180][181]

関連する他の民法改正論

2019年に超党派野党が衆議院に提出した「同性婚」を法制化する婚姻平等法案[182][183]は、同時に選択的夫婦別姓も認める内容で選択的夫婦別氏法案に対する新旧対照表も示されていた[182]。同案は2023年にも立憲民主党が衆議院に再度提出しており、同様に選択的夫婦別姓も認める内容だった[184][185][186]。また同性婚を求める訴訟では、2021年3月17日には札幌地裁で初の違憲判断がなされるなど議論が続いている[187][188]。(「日本における同性結婚」参照)

2026年からは離婚後の共同親権が認められることになった[189][190][191]

そのほか関連した議論としては、事実婚夫婦のための連帯市民協約(PACS)に関する議論[192]や、夫婦創姓論[193]などがある。

歴史的経緯

中世以前

大和朝廷によって、古代豪族が元々持っていた氏名(うじな)が新たに下賜されるものもあった(源平藤橘)。さらに国政上の地位を示す姓(カバネ)が与えられた[注釈 21]。奈良時代に律令制が確立するとカバネは形骸化し、氏名(うじな)と同化して(せい)と呼ばれるようになる[194]。一般庶民(公民)は戸籍によって把握され、何らかの大氏族集団に属して姓を持った(百姓、ひゃくせい)。奥富孝之は、平安時代前期まではこれが重んじられた、としている[195]。坂田聡は、姓は父系継承であり、婚姻によって改姓することはなかった(夫婦別姓)としている[196]。夫婦の氏の記録としては、夫婦がすべて別氏である戸籍の記録[注釈 22]、同氏と別氏が混在する記録[注釈 23]、すべて同氏である記録[注釈 24]それぞれ存在するが、久武綾子によれば、中国や韓国と異なり同姓不婚のタブーが無く、同姓の記録は同姓の者同士の婚姻による同姓の夫婦と考えられる[199]

名字・苗字

公家が互いを区別する為に個人の邸宅の居住地に由来する呼称から、一定の家系の呼称に転化して「名字」となった。東国の豪族武士達が自分の名前に本領地の地名を冠して名乗るようになり「名字」と呼ばれた[200]。鎌倉時代の分割相続が南北朝時代には単独相続に移行し、家産家業などを継承する「家」が成立。名字は家名となり苗字として代々継承されるようになった[201]。後藤みち子は、戦国時代の公家の正妻は婚家の一員として婚家の苗字+妻の社会的呼称で呼ばれるようになり[注釈 25]、これを夫婦別氏で、夫婦同苗字(家の名)としている[202]。坂田聡は、戦国時代から近世にかけての丹波の国の史料にあった三例の実例から庶民の夫婦同苗字について述べている[注釈 26]

近世

士分の氏

井戸田博史は、近世(江戸期)になると、士分以外の者(庶民)は一部を除き姓・苗字(氏)の公称が原則として禁止されていた(1801年(享和元年)の禁令)、としている[204][注釈 27]。田中優子は、同じ人物が複数の異なる名前を名乗ることも多かった、としている[205]。坂田聡は、姓と苗字の区別が曖昧になり混同されることが多くなったとしている。一方で坂田は、官職の授与などの儀式の際に実名とのセットで姓を使う風習は江戸時代でも残っていた、としている[206]

庶民の氏

洞富雄や坂田聡や久武綾子は、庶民の使用例も指摘している[207][208]。士分以外への禁令について奥富孝之は、安易な苗字帯刀を「領主・地頭」に禁じたもの、と主張している[209]。井戸田博史は、庶民の氏には公称を許された氏と、私称している氏があったとする[204][注釈 28]。一方、久武綾子らは、庶民にとっては苗字よりも代々の襲名[注釈 29]屋号が重要だったとしている[211][212]

妻の氏

妻については、氏を持つ場合には妻はもっぱら生家の氏を名乗り、夫婦別氏だった[213][204][注釈 30]芦東山の妻の夫の幽閉赦免願書の例[注釈 31]多勢の誓詞帳の例[注釈 32]、夫婦別氏の墓標があることなどが夫婦別氏の例としてあげられる[217]。また、妻の死後実家の墓地に「帰葬」する習慣が北陸~東北に広く分布することも指摘される[218]。ただし、熊谷開作は、妻が夫の苗字を名乗った例[注釈 33]もあったとしている[219]

妻の氏に関する庶民慣習については、大藤修は史料が少ないことから不明としている[220]。井戸田博史は、役儀等の事由で庶民が氏の公称が許された場合に氏を名乗れるのは当主を中心とする男子のみで、女性には氏は無縁だった(別氏)としている[204]。一方、熊谷は、妻が氏を自ら名乗ることは少なかった、としつつ[221]、大坂の町人の未亡人が「○○家後家」と名乗る例があったとしている[222]

近代

明治維新後、明治8年に氏使用が義務化され、明治9年に太政官指令によって夫婦別氏が定められた。その後、明治31年に施行された明治民法によって始めて法的に夫婦同氏が規定された。

氏使用の義務化

1870年10月13日(明治3年9月19日)、太政官布告により平民にも氏使用が許可された[223]。これについて、奥富孝之は、この氏使用は浸透しなかった、としている[224]。同年12月、叙位任官する際には従前の姓+実名から苗字+実名での表記に改め、翌年10月には公用文書も苗字+実名で統一された。1872年(明治5年)5月、国民全員に実名と通称のどちらかを本人に選択させる方針に変更した[注釈 34][225]

1872年3月9日(明治5年2月1日)、徴税・徴兵・治安維持などのために国民の現況を把握する目的で、戸籍法(壬申戸籍)施行[226]。ここでは苗字または姓が「氏」、通称または実名が「名」として登録され、一人一名主義の原則が確立した[225][注釈 35]。同年8月24日の太政官布告は改氏・改名を禁止。久武綾子は、襲名や屋号を家名として使っていた庶民に混乱をもたらした、としている[228]。そのため、1880年(明治13年)1月7日の太政官指令では改名禁止は一部緩和されている[229]

1875年(明治8年)2月13日の太政官布告22号では、兵籍取調の必要から氏の使用を義務化した[223]。夫婦の氏の扱いについては、1875年12月の太政官布告で婚姻・縁組・離婚などの際に新しい氏を作って良いとされた[227]

夫婦別氏とする太政官指令の発令

夫婦の氏に関して、妻は夫の身分に準じるので夫家の氏を称するのが穏当だが前例が無く決し兼ねる、として内務省が太政官の判断を仰いだのに対し、1876年(明治9年)3月17日に発令した太政官指令15号において「伺の趣婦女人に嫁するも仍ほ所生の氏を用ゆ可き事/但夫の家を相続したる上は夫家の氏を称すへき事」[注釈 36]とした[223][230][231][232]。前段で、妻は「所生の氏」すなわち生家の氏を用いるべきと定めた[231]夫婦別氏制[223])。なお後段は、これに先立つ明治6年の太政官布告第28号で夫の死後子もなく養子をとることも難しい場合などやむをえない場合に妻が女戸主として家督を相続することが認められたことに対応したもので、その場合の女戸主は家督相続後夫家の氏を称する[231][注釈 37]

太政官法制局が夫婦別氏制をとった理由について、「妻は夫の身分に従うとしても、姓氏と身分は異なる」「皇后藤原氏であるのに皇后を王氏とするのはおかしい」「歴史の沿革を無視」の3点が指摘されている[233][231]。一方、この後明治民法公布直前まで、妻が夫家の氏を称するのが慣習だとする地方官庁からの伺いが多数出された[234]。増本敏子らは、太政官指令後も民間の慣例では多くの場合妻は夫の氏を称していた、としている[235]東京府では、婚姻後も生家の氏を称する妻は僅かと報告されていた[236][237][注釈 38]。熊谷開作は、同指令後、戸籍上妻の氏を記載しない例も氏を残す例もあった、としている[242]

なお、太政官指令15号による夫婦を別氏とする規定は、1891年(明治24年)の司法省指令でもそのまま残されている[243]

民法制定までの動き

明治民法の制定以前に、いくつかの民法草案や施行されなかった旧民法などが作成されている。1872年(明治5年)、司法省が作成した民法草案「皇国民法仮規則」では、姓不変の原則を規定している(夫婦別氏)[243][注釈 39]。1877年(明治10年)9月に上程された「民法草案人事編」[注釈 40]では、「妻は夫の姓を用いる」と規定した(夫氏での夫婦同氏)[注釈 41][注釈 42][注釈 43][注釈 44][注釈 45]。1888年(明治21年)に熊野敏三らによって作成された旧民法人事編草案(旧民法第一草案)では、妻が夫の氏を称する普通婚姻(原則)と夫が妻の氏を称する特例婚姻(双方の意思がある場合の特例)の規定が設けられた(いずれも夫婦同氏)[注釈 46][注釈 47][注釈 48]法律取調委員会の修正案(旧民法再調査案)では、戸主及び家族はその家の氏を称する、と規定した(夫婦同氏)[260][注釈 49]。この案では、入夫婚姻に加え第一草案では認められていなかった女戸主を認めている[261][注釈 50]。1890年(明治23年)10月、民法典(旧民法家族法が公布されるも民法典論争により施行されなかった[265][266]。この旧民法では戸主及び家族はその家の氏を称する、と規定された(夫婦同氏)[注釈 51]。原則は妻は夫家の氏を称するが、入夫婚姻の場合には夫が妻家の氏を称する[267][注釈 52][注釈 53][注釈 54]

夫婦同氏とする明治民法の制定

1898年(明治31年)に明治民法家族法部分が公布・施行され、法的に夫婦同氏が初めて規定された。

第746条
戸主及ひ家族は其の家の氏を称す
第788条
1.妻は婚姻に因りて夫の家に入る
2.入夫婚姻及ひ婿養子は妻の家に入る

すなわち、「妻は婚姻に因りて夫の家に入る」ため(788条1項)、妻が夫家の氏を名乗るのが原則である(746条)[注釈 55]。ただし、入夫婚姻および婿養子の場合は、夫が妻の家に入るため、妻家の氏を名乗る(788条2項・746条)[276][注釈 56]

当時の諸外国民法

フランスでは、1793年の革命法の氏の名乗りの自由化が混乱を招き翌年に覆されていた[注釈 57]ものが、フランス民法典が規定しなかったことから効力を保ち、氏不変の原則が確定した[278][注釈 58][注釈 59][注釈 60]。ナポレオン体制下でフランス法が適用されていたオランダでも、1829年のオランダ民法典[285]によって姓不変の原則が規定された[注釈 61]。一方イタリアは、同様にナポレオン体制下にあったものの1865年に多少独自色を加えた民法典を制定している[287][注釈 62]。また、ドイツ(神聖ローマ帝国)では、妻が夫の氏を称するのが慣習法として確立しており、領邦もそれに依っていた[289][注釈 63]。1888年(明治21年)1月にドイツ民法第一草案が完成した[291]。イギリスでは、コモンローの原則で、男性の場合は日本の中世・近世の武士のように氏名の改名自体が自由であったが、女性の場合は、1870年の既婚女性財産法により無効化されるまで、カヴァチャーの原則で妻が夫の所有物さながらとなり、〇〇夫人といった形で呼ばれるのが通常で、本人の氏名は消えたようになり、身内で呼ばれる結婚前からの個人名があっても本来の名前をどう捉えるのか、慣習法の世界で曖昧な状態であった[292]

明治民法との関連

政治学者の中村敏子は、明治民法で規定された夫婦同氏の規定について、「夫婦一体」という結婚観によって同姓を強制していた西洋の影響が大きい、としている[293]。佐藤一明、田中優子山口一男は、明治31年の民法の同氏規定は、ドイツの影響と主張している[294][205][295]。これに対し、法学者の滝沢聿代は、夫婦同氏規定についてドイツ民法が参照されたのは明治民法ではなく戦後の改正民法だと主張している[296][注釈 64]。梅謙次郎は、明文の無い場合も含めスイス[注釈 65]、オーストリア、イタリア、ドイツ[注釈 66][注釈 67]の民法では妻が夫の氏を称すると紹介しつつ、プロイセン法典(1789年)の影響は少なく[301]、日本において入夫婚姻及び婿養子縁組で妻の家に入るのは慣習だとしている[302][303][注釈 68][注釈 69]

戦後の動き

改正民法・戸籍法の制定

戦後、1946年7月より、内閣臨時法制審査調査会と司法省司法法制審議会で民法の改正の審議が開始され、1947年12月、改正民法が成立し、翌年1月施行。夫あるいは妻の氏での夫婦同氏が規定された[307]。婚姻に関しては、夫氏での同氏婚とする案と「氏は社会の慣習に委ねる」案があったが、最終案では夫または妻の氏を称する夫婦同氏とする案となった[307][注釈 70][注釈 71][注釈 72][注釈 73][注釈 74][注釈 75]。また、家制度(戸主の制度)は廃止され、それに伴い婿養子や入夫婚姻の制度も廃止された[注釈 76]。なお、これらの改正は急いで行われたことから、この家族法改正に関しては、1947年10月にこの家族法部分を可及的速やかに将来更に改正する必要があるとする国会付帯決議がなされている[32]。(「#関連法令」参照)

同民法施行と同時に改正戸籍法も施行。戸籍は戸主と家族を記載する家の登録から、個人の登録に変わった。戸籍の編成基準は一組の夫婦と氏を同じくする子(戸籍法6条)とされた[314][注釈 77][注釈 78]

1980年代までの動き

1954年7月、早急に制定された改正親族法の再検討のため民法部会を設置。1955-1959年公表の「法制審議会民法部会身分法小委員会における親族編の仮決定及び留保事項」では「夫婦異姓を認むべきか」が挙げられた[317][注釈 79]

1960年代には、選択的夫婦別氏への支持や立法論が出てきた[307]

1974年には「結婚改姓に反対する会」が結成され[319]、1975年には参議院に選択的夫婦別氏を求める請願が提出される[320][314]

1976年には、女性の地位向上の観点から、離婚時に妻が婚姻時の氏を保持できない民法規定が見直され、選択可能にする婚氏続称制度が導入された[125][注釈 80]

1984年、戸籍法が改正され、外国人の称する氏への変更を簡易に認める規定が設けられ、国際結婚では選択的夫婦別氏が実現した[319]。同年には、「夫婦別氏をすすめる会」(現、夫婦別姓選択制をすすめる会)が東京で結成された[321]

1985年には日本政府が女性差別撤廃条約を批准。これに応じて政府の婦人問題企画推進本部は、社会情勢の変化に対応して婚姻・親子の法制の見直しを検討するとした[307]

1987年には、養子離縁時の縁氏続称が認められた[322][323]

1988年には、国立大学の女性教授が通称として旧姓を使用する権利を求めて訴訟[324](1993年東京地裁棄却、1998年和解、「#国立大学女性教授旧姓通称使用訴訟」参照)。同年、在日韓国朝鮮人氏名の日本語読みに関する最高裁判決で、氏名は社会的には他人から識別し特定する機能を有するが、個人から見れば人格の象徴で人格権の一内容を構成するもの、との指摘がなされた[325]

1989年、岐阜県各務原市の夫婦が、別氏の婚姻届不受理への不服申し立てを家裁に行い、却下された。同年、法務大臣諮問機関である婦人問題有識者会議において、選択的夫婦別氏問題が取り上げられた[197]

1990年代から2010年代まで

1991年には法制審議会が「民法の婚姻・離婚制度の見直し審議」を開始した[7]。1996年には法制審議会が選択的夫婦別氏制度を含む「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申した[7]。しかし、自民党内の反対・慎重論によって同年5月に国会上程が見送りとなった[326]

1992年の時点では多くの選択的夫婦別氏制推進団体の存在が報告されている[307][327]

1997年にも自民党法務部会「家族法に関する小委員会」(座長:野中広務)で「旧姓続称制度」が検討されたが見送られた[151][127][152]。また、この頃より「選択的夫婦別姓制度」とする民法改正案が議員立法により提出されるようになった[307]

その後も、1999年の男女共同参画社会基本法の成立および男女共同参画局の設立により選択的夫婦別姓問題は中心的課題と位置づけられた[328]。一方で、山口智美は、これらの運動が、日本会議神道政治連盟などの反発を呼び起こしたとの主張している[328][329][330]

2001年11月に法務省は選択的夫婦別氏案を再提示したが見送られた。2002年4月には、法務省は例外的夫婦別氏案を提示、意見一致せず見送りとなった[127]。同年7月には、自民党内の選択的夫婦別姓制度を求める議員ら(野田聖子ら例外的に夫婦の別姓を実現させる会)が法案の国会提出を模索し、党内反対派に譲歩し、家裁の許可を要件とすることを盛り込んだ例外的夫婦別氏制を議員立法で自民党法務部会に提出。しかし党内合意に至らず国会提出は見送られた。その後、2010年代までは党内の議論は停滞した[142][145][331]

一方、立憲民主党国民民主党社民党共産党などは、法制審答申以来、超党派で会期ごとに民法改正案を国会に提出し続けている[132][133][134]。2001年には公明党も参議院に選択的夫婦別氏案を提出した[6][135]。(「#超党派野党案/公明党案」を参照)

2003年(平成15年)国際連合女子差別撤廃委員会が、婚姻最低年齢、離婚届後の女性の再婚禁止期間の男女差、非嫡出子の扱いと共に「夫婦の氏の選択などに関する、差別的な法規定を依然として含んでいることに懸念を表明する」と日本に勧告[332]。その後も2009年、2016年に勧告[333][334][335]。これに対し、日本国政府は2008年4月に選択的夫婦別氏について、国民の議論が深まるよう努めていると報告したが[336]、2009年8月に再度、委員会は委員会は依然差別的な法規定が撤廃されていないことについて懸念を有すると勧告したほか、「本条約の批准による締約国の義務は、世論調査の結果のみに依拠するのではなく、本条約は締約国の国内法体制の一部であることから、本条約の規定に沿うように国内法を整備するという義務に基づくべき」と勧告した[93][335]。政府は2014年8月にも国連に報告書を提出したが[337]、2016年に委員会は再度批判的勧告を出した[333][334]。(「#国連女子差別撤廃委員会勧告」を参照)

一方、2010年に、民主党社民党国民新党の連立政権で法案提出が議論され、同年2月には1996年の法制審議会答申に沿った改正案が法務省政策会議で示された[130]。しかし連立政権を組んだ国民新党の反対や党内からの異論があり法案提出に至らなかった[145][92]

また、多くの訴訟が起きている。2006年に別氏婚姻届不受理取り消しの申立てが却下。2011年に国に対し選択的夫婦別氏の導入を求める訴訟提議、2015年に最高裁は棄却。その後も同様の訴訟が4件提議されている。(「#選択的夫婦別氏訴訟」を参照)

2016年には、結婚後に職場で旧氏の通称使用を認めないのは人格権の侵害だとして、女性教諭が勤務先の学校法人を東京地裁に提訴、同年棄却[338][339]。2017年に和解した[340](「#女性教諭旧姓通称使用訴訟」を参照)。

2018年以降、地方議会から国へ選択的夫婦別氏法制化を求める意見書を可決する動きが広がり、三重県議会[341]、東京都議会[342][343]、大阪府議会[344]等で意見書が可決された[345][346][347]。(「#地方自治体議会」を参照)

2019年の参議院選挙では、選択的夫婦別氏の是非が争点に挙げられた[348][349][350]

2020年代以降

立法府の動き

2020年2月から3月にかけて、与野党超党派議員や自民党女性議員による選択的夫婦別姓導入に関する勉強会の開催が報じられた[351][331]。2020年11月11日、政府は第5次男女共同参画会議の策定に向けた答申の中で、選択的夫婦別姓について「国会の議論の動向を注視しながら検討を進める」と記述[352][353]。同月13日、衆議院法務委員会において自民党の稲田朋美が、結婚後も旧姓の使用を続けられる制度を提案[175]。24日には自民党で賛成派議員を中心に「氏の継承と選択的夫婦別氏制度に関する有志勉強会」が設立された[354]。一方、25日には自民党内で反対派議員を中心に「『絆』を紡ぐ会」設立[355]。同月26日、自民党の女性活躍推進特別委員会委員長の森雅子らは、この問題への対応を求める提言を首相の菅義偉に提出[356]。同年12月1日には、自民党女性活躍推進特別委員会で選択的夫婦別氏の検討を開始した[357]。しかし同月25日に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画では、「夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し、司法の判断も踏まえ、さらなる検討を進める」とされ、「選択的夫婦別姓」という文言は削除された[358]。2021年3月、自民党内選択的夫婦別姓賛成派議員が、「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」を発足[359]。同年4月、自民党内の選択的夫婦別姓慎重(反対)派が、議員連盟「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」を発足[360]。これらの動きと並行して、同月、自民党は選択的夫婦別姓について議論する「氏制度のあり方に関するワーキングチーム」(座長・石原伸晃)を発足させた[361][362][363]。 同年9月の自民党総裁選[364]、同年10月の衆議院選挙[365]、2024年9月の自民総裁選[366]、同年10月の衆議院選挙[367]、では、争点の一つとして選択的夫婦別姓が挙げられた。 2025年の第217回国会では、選択的夫婦別姓制度が焦点の一つ、と報道された[368]。さらに、同年参議院選挙の重要な争点として選択的夫婦別姓制度が挙げられている[369]

裁判の動き

2021年6月、事実婚夫婦による4件の選択的夫婦別氏を求めた家事審判、最高裁が却下[370][371]。同月、ソフトウエア開発会社社長らによる訴訟、および東京の再婚・連れ子の弁護士夫妻による訴訟について上告棄却[371][372][373]。2022年3月、東京都と広島県の事実婚の男女7人による訴訟について棄却、最高裁[374][375]。同月、残る東京都の訴訟についても棄却、最高裁[376]

2022年7月、米国で認められたとされる婚姻の別姓での婚姻届の不受理に対し家事審判申し立て[377][378]

2024年3月、男女12人、選択的夫婦別姓を求める提訴、東京、札幌両地裁[379]。(「#選択的夫婦別氏訴訟」を参照)

地方自治体の動き

2020年以降も、神奈川県議会[380]や埼玉県議会[381]、香川県議会[382]など、地方議会から制度の法制化を求める意見書を可決する動きが継続している[383][384][385][386][387]。2024年3月19日には、香川県内の全議会(県議会・市町議会)が法制化や議論の活性化を国に求める意見書を採択した[388][389][390]。(「#地方自治体議会」を参照)

またこれに加え、性的少数者(LGBTQ)のパートナー関係を公的に認める自治体の「パートナーシップ制度」において、異性の事実婚夫婦も対象に含める動きが広がっている[391][注釈 81]

経済界の動き

2024年3月、経団連や経済同友会など経済団体の代表者や経営者有志、全国女性税理士連盟会長らが、首相の岸田文雄らに宛てた選択的夫婦別姓制度の導入を求める要望書を矢田稚子(首相補佐官・首相の代理として)、門山宏哲(法務副大臣)らに提出した[392][393]

国際的な動き

2024年10月29日、国連女性差別撤廃委員会が日本に対し、夫婦同姓を義務付ける民法の規定を見直し選択的夫婦別姓を導入するよう勧告した[95]

年表

1980年代まで

年月日 出来事
1946年07月 内閣臨時法制調査会および司法省司法法制審議会において民法改正審議開始[307]
1947年05月03日 日本国憲法施行[307]
1948年01月01日 改正民法、改正戸籍法施行[394]
1955年07月05日 法制審議会民法部会、夫婦異氏を認める案を論議[6]
1959年 パスポート、別名併記を一部認める[395]
6月29日-30日 法制審議会民法部会、夫婦異氏の問題はなお検討の必要があるとする[6]
1975年 国際婦人年[394]
9月26日 選択的夫婦別氏制を求める初めての請願が参議院に提出される[320][314]
1976年06月15日 民法改正、離婚時の婚氏続称可能に[396][397]
1979年12月18日 国連、女子差別撤廃条約、採択[398]
1980年07月17日 国連女性差別撤廃条約、日本国署名[398]
1981年09月03日 国連、女子差別撤廃条約、発効[398]
1984年05月17日 男女雇用機会均等法、制定[399]
1984年05月25日 国籍法改正、国際結婚の際に外国氏への改氏可能に[400]
1985年06月25日 国連女性差別撤廃条約、日本国批准[398]
1986年04月01日 男女雇用機会均等法、施行[401]
1987年09月26日 民法改正、養子離縁時の縁氏続称可能に[322][323]
1988年02月16日 最高裁、NHK日本語読み訴訟判決判示「氏名は個人の人格の象徴」[394]
5月09日 事実婚夫婦、住民票続柄記載差別訴訟、東京地裁(1991年敗訴、2005年最高裁棄却)[402]
1988年11月28日 国立大学女性教授通称使用を求める訴訟、東京地裁[注釈 82][403]
12月0000 富士ゼロックス、旧姓通称使用実施[38]
1989年01月20日 東京弁護士会が「選択的夫婦別姓採用に関する意見書」を法務省に提出[404]
5月12日 岐阜県各務原市の夫婦、別姓婚姻届不受理処分の取り消しを求める不服申立を提出[405]
6月23日 別姓婚姻届不受理処分の取り消しを求める不服申立を岐阜家裁、却下[406]

1990年代

年月日 出来事
1991年01月29日 法制審議会、婚姻・離婚制度全般の改正に関する論議を開始[394]
5月30日 婦人問題企画推進本部、2000年に向けての新国内行動計画第一次改訂において、夫婦の氏の法制の見直しを掲げる[394]
1992年10月14日 東京都江東区議会、選択的夫婦別氏導入を求める請願を可決[307][347]
12月01日 法務相民事局参事官室「婚姻及び離婚制度の見直し審議に関する中間報告(論点整理)」、夫婦同氏制度と別氏を許容する制度との対比[6]
12月04日 東京都新宿区議会、選択的夫婦別氏を求める趣旨の請願、可決[307][347]
1993年09月20日 埼玉県大宮市(現さいたま市)議会、選択的夫婦別氏を求める請願可決[307][347]
11月19日 国立大学女性教授旧姓通称使用訴訟、東京地裁、棄却[407]
1994年07月12日 法務省民事局参事官室「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」A案B案C案の3案が俎上に[6]
1995年08月26日 法制審議会民法部会、子の氏は婚姻時に統一するA案を軸にまとまる[408]
9月12日 法務省民事局参事官室「婚姻制度の見直し審議に関する中間報告」[128]
1996年01月16日 法制審議会民法部会、「民法改正要綱案」決定[409]
2月26日 法制審議会、民法の一部を改正する法律案要綱[410]を法相に答申。
3月22日 徳島県議会、選択的夫婦別氏に反対する意見書を提出[411]
6月18日 長尾立子法務大臣、法案提出を断念。埼玉県新座市、市職員の旧姓使用を4月に遡って実施[412]
6月20日 茨城県議会、選択的夫婦別氏に反対する意見書提出[411]
7月12日 千葉県議会、選択的夫婦別氏に反対する意見書提出[411]
10月25日 日本弁護士連合会、選択的夫婦別氏並びに非嫡出子差別撤廃を求める決議[413]
1997年03月13日 民主党、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案提出[6]
3月14日 長崎県議会、選択的夫婦別氏に反対する意見書提出[411]
3月27日 法学者260人「選択的夫婦別姓制度の導入と婚外子相続分の平等化の実現を求めるアピール」[307]
6月05日 社民さきがけ、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[6]
6月06日 平成会、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[6]
9月29日 熊本県議会、選択的夫婦別氏に反対する意見書を提出[411]
1998年03月27日 国立大学女性教授旧姓通称使用訴訟、東京高裁、和解成立[394]
6月08日 超党派野党(平和・改革、共産、社民、さきがけ)、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[132][6]
7月25日 政府、女子差別撤廃条約実施状況第4回報告、選択的夫婦別氏を「引き続き検討」[414]
1999年06月23日 男女共同参画社会基本法施行[394]
12月10日 超党派野党(民主、共産、社民、さきがけ)、衆参両議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[132][6]

2000年代

年月日 出来事
2000年01月20日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[6]
9月26日 男女共同参画審議会答申において、夫婦同氏制など家族に関する法制の見直しを提言[394]
10月31日 超党派野党(民主、共産、社民、無所属の会)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[132][6]
2001年03月29日 女性取締役通称使用訴訟、人格権侵害として慰謝料を認める。大阪地裁[415]
5月08日 民主党、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案提出[6][416]
5月10日 超党派野党(民主、共産、社民、さきがけ)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案提出[132][6]
7月03日 千葉県議会、「民法改正法案の採択を求める意見書」を提出[411]
6月20日 公明党、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[6][135]
10月01日 国家公務員の旧姓使用が可能に[417]
10月11日 内閣府男女共同参画会議基本問題専門調査会、「選択的夫婦別姓制度に関する審議の中間まとめ」発表[417]
10月11日 愛知県議会、「選択的夫婦別姓制度導入の検討についての意見書」を可決[418]
11月13日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案提出[6]
11月13日 自民党法務部会に法務省「選択的夫婦別氏制」民法改正試案および反対議員作成の通称使用を認める戸籍法改正案が提示[6]
2002年04月10日 自民党法務部会に例外的夫婦別氏制度の法務省試案が提示[6]
7月24日 自民党法務部会に例外的に夫婦の別姓を実現させる会が法案を提示[142][143][144][145][6]
9月13日 政府、女子差別撤廃条約実施状況第5回報告、選択的夫婦別氏「制度の導入に向けて努力」[419]
2003年05月27日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[6]
7月08日 女子差別撤廃条約実施状況第4回・第5回報告に対する国連女子差別撤廃委員会最終コメント、「夫婦の氏の選択などに関する、差別的な規定を依然として含んでいることに懸念を表明する」[420]
2004年03月11日 自民党、職業上の理由などで必要な場合に家庭裁判所の許可を得て別姓を認める改正案の国会提出を見送る[421][422]
5月14日 超党派野党(民主、共産、社民)、衆参両議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[132][6]
2005年03月30日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[132][6]
2006年03月20日 パスポートに旧姓を併記し得る基準が緩和され、学者や記者だけでなく、「職場で旧姓使用が認められており、業務により渡航する者」も可能となる[423]
4月25日 別姓婚姻届不受理処分の撤回を求める不服申立て、東京家裁、却下[424][425]
5月31日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[426][132]
6月08日 超党派野党(民主、共産、社民)、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[132]
2007年05月18日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[6]
2008年04月22日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に民法改正案提出[427][132][6]
4月30日 政府、女子差別撤廃条約実施状況第6回報告、「選択的夫婦別氏制度について、国民の議論が深まるよう引き続き努めている」[336]
2009年04月24日 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に民法改正案を提出[132]
8月07日 女子差別撤廃条約実施状況第6回報告に対する国連女子差別撤廃委員会最終見解、「夫婦の氏の選択に関する差別的な法規定が撤廃されていないことについて懸念を有する」[428]

2010年代

年月日 出来事
2010年02月05日 創生「日本」(会長・安倍晋三)、夫婦別姓反対の運動方針を採択[394]
2月19日 法務省政策会議で、選択的夫婦別氏の導入を盛り込んだ民法改正案が提示[130]
3月24日 岩手県議会、「夫婦別姓制度の導入及び婚外子相続差別の撤廃のための民法の一部改正を求める意見書」を提出[429]
2011年02月14日 男女5人、違憲を争い選択的夫婦別氏を求める国家賠償提訴、東京地裁[430][431]
2月24日 別姓婚姻届3度提出、不受理処分の撤回を求め、却下、東京地裁[432][431]
2013年05月29日 男女5人、違憲を争い損害賠償請求、棄却、東京地裁[433][434]
6月03日 旧姓通称使用訴訟、元教諭と神奈川県の和解成立[394]
9月10日 別姓婚姻届訴訟、却下、最高裁[394]
12月04日 非嫡出子の相続分が嫡出子の半分とする規定を削除する法改正成立[13]
2014年03月28日 男女5人、控訴棄却、東京高裁[435]
6月23日 日本学術会議が、提言「男女共同参画社会の形成に向けた民法改正」において選択的夫婦別氏制導入を提案[7][436]
9月05日 第2次安倍改造内閣松島みどり法務大臣は就任直後の会見で、旧姓使用など現実的な運用の改善を検討する意向[437][145]
2015年02月15日 改正商業登記規則が施行され、役員登記において旧姓の併記を行うことが認められた[438]
2月18日 事実婚の夫婦合わせて5人が「夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法違反」として、日本国政府に対し損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷は、審理を大法廷に回付し、憲法判断される[439]
6月12日 超党派野党(民主、共産、社民、および無ク・無所属議員)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[440][441]
12月16日 事実婚の夫婦合わせて5人が「夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法違反」として、日本国政府に対し損害賠償を求めた訴訟で、最高裁判所大法廷、棄却[442]。ただし裁判官15人のうち、5人は違憲判断[443][444][445][446][447]
12月25日 第4次男女共同参画基本計画決定。法改正について「司法の判断を踏まえ、検討を進める」[71]
2016年03月07日 国連女性差別撤廃委員会が日本に対し、「過去の勧告が十分に実行されていない」「実際には女性に夫の姓を強制している」として、民法改正を求める再度の勧告[333]
5月12日 超党派野党(民進、共産、社民、生活)、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[448][134]
6月03日 東京都町田市の女性教諭が旧姓使用を求め勤務先の学校法人を提訴[338]
10月11日 町田市の女性教諭による旧姓使用を求める裁判で、東京地裁は棄却[注釈 83][339]
2017年03月17日 町田市の女性教諭による旧姓使用を求める裁判で和解成立。旧姓使用を認める内容[340]
3月30日 総務省、「職員が旧姓を使用しやすい職場環境づくりの推進について」事務連絡[71]
6月06日 「女性活躍加速のための重点方針2017」、マイナンバーカード、旅券、銀行口座への旧姓使用拡大を明記[71]
7月03日 最高裁、裁判所職員の旧姓使用に関する通達。9月1日より可能に[71]
7月05日 男女共同参画局、全国銀行協会に対し銀行口座等の旧姓使用の協力を要請[71]
7月28日 特許庁、全職員の旧姓使用に関する通達。9月1日より可能に[71]
8月31日 国の行政機関における職員旧姓使用に関する各府省庁官房長等申し合わせ[71]
2018年01月09日 ソフトウエア開発会社社長ら男女4人、国際結婚と異なり日本人同士の結婚で夫婦別氏が選択できないのは「法の下の平等」を定めた憲法に反するとして国家賠償提訴[449]
3月14日 東京と広島の事実婚のカップル4組が、東京家裁、同立川支部、および広島家裁に別姓の婚姻届の受理を求める審判の申し立て[450][451]
5月10日 東京と広島の事実婚当事者らが、同3か所に、別姓の婚姻届が受理されず法律婚ができないのは違憲だとして、国家賠償提訴[452][453]
6月14日 超党派野党(立憲、国民、無所属の会、共産、自由、社民)、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[133][454][454][455]
6月18日 映画監督と映画プロデューサーの夫婦、国外で別氏で結婚した夫婦であることの確認を求め、東京地裁に国家賠償提訴[456]
6月19日 超党派野党(立憲、共産、希望の会(自由・社民)、沖縄の風)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案提出[457]
8月10日 東京の再婚・連れ子の弁護士夫妻が、連れ子再婚を想定しない現行法について東京地裁に国家賠償提訴[458]
2019年03月15日 三重県議会、選択的夫婦別氏の法制化を求める意見書を可決[341]
3月25日 ソフトウエア開発会社社長ら男女4人による選択的夫婦別姓を求める訴訟棄却、東京地裁[459]
4月01日 京都府の弁護士による役員登記に関する審査請求、棄却、京都地方法務局[460]
6月03日 超党派野党(立憲、共産、社民)、衆議院に同性婚および選択的夫婦別姓を認める民法改正案提出[182]
6月18日 「女性活躍加速のための重点方針2019」国家資格等における旧姓使用拡大を明記[71]
6月19日 東京都議会「選択的夫婦別姓の法制化を求める請願」可決[342]。国への意見書提出は見送り[461]
7月21日 参議院選挙で選択的夫婦別氏が争点の一つに[348][349][350]
9月14日 第1次選択的夫婦別姓訴訟の原告、死去[71]
9月30日 再婚・連れ子の弁護士夫妻による訴訟、棄却、東京地裁[462]
10月02日 東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、東京地裁における事実婚当事者3名による訴訟、棄却、東京地裁[463]
10月25日 大阪府議会、選択的夫婦別姓制度の法制化に関する意見書、可決[344]
11月05日 住民票、マイナンバーカードへの旧姓併記開始[71]
11月14日 東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、東京地裁立川支部における事実婚当事者6名による訴訟、棄却[464]
11月19日 東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、広島地裁における訴訟、棄却[465]
12月01日 運転免許証への旧姓併記開始[71]

2020年代

年月日 出来事
2020年01月22日 衆院代表質問で国民民主党代表の玉木雄一郎が選択的夫婦別氏の導入を求めたところ、自民党の女性議員から、それなら結婚しなくていい、との趣旨のヤジが飛び、波紋[466][467]
2月14日 選択的夫婦別氏を考える超党派国会議員勉強会に与野党議員約40人が出席[351]
2月26日 ソフトウエア開発会社社長ら男女4人による訴訟、棄却、東京高裁[468]
2月27日 選択的夫婦別氏を求める超党派集会に野党4党首、公明党副代表出席[469]
3月06日 自民党女性議員による議連「女性議員飛躍の会」、選択的夫婦別氏に関する勉強会[331]
3月23日 滋賀県議会、「選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書」を可決[470]
3月25日 神奈川県議会、自民党会派提案の選択的夫婦別氏の議論を求める意見書、可決[380]
3月26日 再婚・連れ子の弁護士夫妻による訴訟、棄却、東京高裁[471]
6月19日 自民党幹事長代行の稲田朋美が選択的夫婦別氏に理解を示したことをきっかけに、自民党筆頭副幹事長の高鳥修一らは稲田が会長を務める伝統と創造の会から離反し、保守団結の会を発足させた[472]
7月01日 「女性活躍加速のための重点方針2020」で、地方議会における旧姓使用の調査実施を明記[71]
9月16日 東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、広島高裁における訴訟、棄却[473]
10月08日 自民党政調会長の下村博文が、選択的夫婦別氏について「議論していかなければいけない重要なテーマだ」と表明[474]
10月09日 男女共同参画担当相の橋本聖子が、選択的夫婦別氏導入に向けた議論に取り組む姿勢を表明[475]
10月09日 公明党の女性委員会(委員長:公明党副代表の古屋範子)が、首相の菅義偉に選択的夫婦別氏導入などの内容を含む提言「真の男女共同参画社会の実現へ すべての女性が安心して希望を持って生きられる社会をめざして」を申し入れ[476]
10月20日 東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、東京地裁の事件の控訴審で、東京高裁が控訴を棄却[477]
10月23日 東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、東京地裁立川支部の事件の控訴審で、東京高裁が控訴を棄却[478][479]
11月06日 首相の菅義偉は、以前に選択的夫婦別氏を推進する立場で議員活動をしていたことを認めつつ、そのように主張してきたことに「責任がある」と述べた[480]
11月11日 政府、第5次男女共同参画会議の策定に向けた答申の中で、選択的夫婦別氏に関し「国会の議論の動向を注視しながら検討を進める」と記載[352][353]
11月13日 男女共同参画担当相の橋本聖子、男女共同参画会議の答申に対し「深刻な少子高齢化を食い止めるために、非常に重要で配慮すべき」と表明[481]
11月13日 自民党の稲田朋美が衆議院法務委員会で、結婚後も旧姓使用を続けられる制度の新設を提案[175]
11月24日 自民党有志議員、選択的夫婦別氏制導入に向けた「氏の継承と選択的夫婦別氏制度に関する有志勉強会」立ち上げ[354][482]
11月25日 自民党の選択的夫婦別氏制反対派議員を中心に「『絆』を紡ぐ会」立ち上げ[355]
11月26日 自民党の保守系議員による「保守団結の会」、選択的夫婦別氏に関する勉強会[483]
11月26日 自民党女性活躍推進特別委員会委員長の森雅子ら、選択的夫婦別氏をめぐり「真正面から対応していくこと」を求める提言を首相の菅義偉に提出[356]
12月01日 自民党女性活躍推進特別委員会、選択的夫婦別氏制の検討開始[357]
12月09日 事実婚夫婦による3件の選択的夫婦別氏を求めた家事審判で最高裁大法廷回付、決定[484]
2021年01月29日 法学者や弁護士ら1022人、選択的夫婦別氏の早期実現を求める共同声明[485][486][487]
1月30日 高市早苗元男女共同参画担当ら反対派国会議員50名、47都道府県議会議長のうち自民党所属の約40名に選択的夫婦別姓制度導入に賛同する意見書を採択しないように求める文書を送付し波紋[488][489][490]
3月17日 同性婚訴訟、違憲判断、札幌地裁[188]
3月19日 滋賀県議会、選択的夫婦別姓を求める意見書、可決[491]。岡山県議会、選択的夫婦別姓反対の意見書、可決[492]
3月25日 自民党内の選択的夫婦別氏推進派議員による「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」が発足[359]
3月25日 岩手県議会、選択的夫婦別姓を求める意見書、可決[493]
4月01日 自民党内の選択的夫婦別氏慎重(反対)派議員による「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」が発足[494]
4月02日 自民党、「氏制度のあり方に関するワーキングチーム(WT)」(座長:石原伸晃)、会合[361][362][363]
4月21日 国外で別氏で結婚した夫婦であることの確認を求める訴訟、請求は棄却するも原告夫婦の婚姻関係を有効とする判決、東京地裁[495][496]
6月07日 東京都議会、選択的夫婦別姓について議論を求める意見書、可決[343]
6月23日 事実婚夫婦による4件の選択的夫婦別氏を求めた家事審判のうち3件で特別抗告を棄却、申し立て却下の原審確定、最高裁[370]
6月24日 ソフトウエア開発会社社長ら男女4人による訴訟、上告棄却、最高裁[372][373]
6月25日 事実婚夫婦による4件の選択的夫婦別氏を求めた家事審判のうち残る1件、特別抗告、棄却、最高裁[371]
6月25日 東京の再婚・連れ子の弁護士夫妻による訴訟、上告棄却、最高裁[371]
7月02日 埼玉県議会、選択的夫婦別姓について議論を求める意見書、可決[497]
7月02日 北海道議会、選択的夫婦別姓について議論を求める意見書、可決[497]
9月29日 自民党総裁選挙、選択的夫婦別姓が争点の一つに[364]
10月01日 特許出願における発明者氏名の旧氏併記が可能に[72]
10月08日 香川県議会、選択的夫婦別姓について議論を求める意見書、可決[382]
10月21日 愛知県議会、選択的夫婦別姓について議論を求める意見書、可決[498]
10月31日 衆議院選挙で選択的夫婦別氏が争点の一つに[365]
12月16日 自民党「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」総会[499]
2022年03月22日 立川と広島の事実婚の男女7人による訴訟、棄却、最高裁第三小法廷[374][375]
3月24日 東京都の事実婚男女による訴訟、棄却、最高裁第一小法廷[376]
6月08日 超党派野党(立憲、国民、社民、共産、れいわ)、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[500][139]
7月04日 映画監督と映画プロデューサーの夫婦、米国で認められたとされる婚姻の別姓での婚姻届の不受理に対し家事審判申し立て、東京地裁[377][378]
8月30日 選択的夫婦別姓制度に関する政府の世論調査の質問変更に関する問題、野党が法務省へヒアリング[501]
10月27日 自民党「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」会合[502]
2023年03月06日 立憲民主党、衆議院に同性婚および選択的夫婦別姓を認める民法改正案を提出[186]
3月08日 選択的夫婦別姓を求める院内集会、与野党国会議員(公明、立憲、国民、維新、共産、れいわ)が参加[503]
3月09日 自民党「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」総会。党内議論の再開を求める決議。野田聖子元総務相や岩屋毅元防衛相、小渕優子党組織運動本部長ら出席[504][505]
5月14日 選択的夫婦別姓に関する超党派国会議員勉強会。自民、立憲民主、共産など8党の国会議員が呼びかけ[506][507]
7月07日 岩手県議会、選択的夫婦別姓を求める意見書、可決[508]
2024年01月17日 日本経済団体連合会(経団連)、選択的夫婦別姓の導入を政府に要望[509]
3月08日 男女12人、選択的夫婦別姓を求める訴訟提議、東京・札幌地裁[379]
3月08日 経団連、経済同友会、新経済連盟、全国女性税理士連盟、日本跡取り娘共育協会、選択的夫婦別姓の早期実現を求めるビジネスリーダー有志の会、および一般社団法人「あすには」が、選択的夫婦別姓を求める要望書を政府に提出[510][511][512][513][514]
3月13日 選択的夫婦別姓制度の実現を求める集会、与野党議員が参加[515][516]
3月19日 香川県内全議会(県議会・市町議会)、法制化や議論の活性化を国に求める意見書を採択。全国初[388][389][390]
4月01日 相続登記において旧姓併記可能に[77]
5月09日 選択的夫婦別姓に賛成する自民党の議員連盟、総会。経団連と会合[517]
6月10日 経団連、選択的夫婦別姓を求める提言[518]
6月19日 「選択的夫婦別姓」の導入に慎重な立場の議員でつくる自民党の議員連盟、会合[519]
6月21日 選択的夫婦別姓に賛成する自民党の議員連盟、国会内で会合。経団連から提言受け取り[520]
6月25日 自民党茂木敏充幹事長、選択的夫婦別姓に関する党内の作業チームによる検討再開の方針[521]
6月28日 経団連、選択的夫婦別姓制度を求める提言書を小泉龍司法相、上川陽子外相、加藤鮎子こども政策相に提出[522]
7月03日 徳島県議会、選択的夫婦別姓の議論を求める意見書を可決[523]
7月04日 岩手県議会、選択的夫婦別姓の導入を求める意見書を可決[524]
7月10日 経団連、選択的夫婦別姓制度を求める提言書を渡海紀三朗(自民党政調会長)に提出[525]
7月18日 自民党「氏制度のあり方に関する検討ワーキングチーム」(座長:逢沢一郎)会合[526]
8月29日 自民党「氏制度のあり方に関する検討ワーキングチーム」会合[527]
9月27日 自民党総裁選で選択的夫婦別姓が争点の一つに[366]
10月17日 国連女性差別撤廃委員会、日本女性政策対面審査[528]
10月27日 衆議院選挙で選択的夫婦別姓が争点の一つに[367]
10月29日 国連女性差別撤廃委員会、日本に対し選択的夫婦別姓の導入を勧告[95]
12月06日 長野県議会、選択的夫婦別姓導入を求める意見書、可決[529]
2025年01月16日 映画監督と映画プロデューサーの夫婦による米国で認められたとされる婚姻の別姓での婚姻届の不受理に対する家事審判申し立て、却下。東京地裁[530]
1月28日 公明党、選択的夫婦別姓制度導入を推進するプロジェクトチーム、初会合[531]
2月12日 自民党、「氏制度のあり方に関する検討ワーキングチーム」会合[532]
2月26日 選択的夫婦別姓を求める院内集会。与野党議員参加[533][534]
3月06日 自民党、「氏制度のあり方に関する検討ワーキングチーム」選択的夫婦別姓に関して経団連にヒアリング[535][536]
3月11日 自民党、「氏制度のあり方に関する検討ワーキングチーム」会合[537]
3月12日 選択的夫婦別姓に反対する超党派議員集会。与野党議員参加[538]
3月14日 自民党、「氏制度のあり方に関する検討ワーキングチーム」会合[539]
4月30日 立憲民主党、衆議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案提出[131]
5月19日 日本維新の会、「旧姓の通称使用を拡大する法案」を衆院に提出[171]
5月22日 自民党、「氏制度のあり方に関する検討ワーキングチーム」会合[540]
5月28日 国民民主党、衆議院に選択的夫婦別姓を認める民法改正案提出[541]
7月20日 参議院選挙で選択的夫婦別姓制度が争点[369]
2026年02月8日 衆議院選挙で選択的夫婦別姓制度が争点[542]

訴訟

選択的夫婦別姓制度導入をめぐっては、1989年、2006年に家裁への不服申し立て[317][425]、2011年に国家賠償訴訟が提議され、訴えは退けられた[443]。2018年1月に戸籍法規定に関する国家賠償訴訟、同年5月に事実婚夫婦による国家賠償訴訟、同年6月に、外国で結婚した日本人別氏夫婦による婚姻を確認する訴訟、同年8月に再婚同士でそれぞれ連れ子のいる夫婦の国家賠償訴訟[543]がおきたが、いずれも最高裁で棄却された[371]。その後、2024年3月に新たに選択的夫婦別姓を求める訴訟が起きている[544]

また、通称として旧姓を使用する権利を求めた民事裁判として、国立大学教授夫婦別姓通称使用訴訟(1993年東京地裁判決)、女性取締役通称使用訴訟(2001年3月判決)、神奈川元高校男性教諭通称使用訴訟(2013年横浜地裁和解)、女性教諭通称使用訴訟(2016年東京地裁判決)がある。また、他にも旧姓での役員登記に関する審査請求(2019年裁決)がある。

選択的夫婦別氏訴訟

1989年家事審判

1989年5月12日、岐阜県各務原市の夫婦が、市が別氏の婚姻届を受理しなかったのは基本的人権の侵害であり違憲だとして、岐阜家庭裁判所不服申立書を提出[545]。同家裁は同年6月23日、「夫婦の同姓は一体感を高める上で役立ち、第三者に夫婦であることを示すためには必要」として、申立て却下[317][92][405][406][425][32]

2006年家事審判

2006年4月25日、東京家裁は、別姓婚姻届不受理取り消しの申立てに対し「立法政策の問題であることは確定した解釈」だとして却下[425][546][32]

2011年訴訟

2011年(平成23年)2月に、元高校教師らが、民法750条の夫婦同氏規定が憲法13条14条1項24条1項及び2項に違反するとして訴えた[547][548][549][注釈 84]

2015年(平成27年)12月16日、最高裁判所大法廷は「名字が改められることでアイデンティティが失われるという見方もあるが、旧姓の通称使用で緩和されており、日本国憲法に違反しない」「我が国に定着した家族の呼称として意義があり、呼称を1つに定めることには合理性が認められる」として、現在の民法規定を合憲とし訴えを棄却[551][552][553]。男性裁判官10名[注釈 85]が合憲とした一方、女性裁判官の3名全員を含む5名[注釈 86]が違憲として反対した。反対意見を出した山浦善樹裁判官は、立法の不作為を理由に国の損害賠償責任も認めた[443][554]。多数意見は氏の変更で「仕事上の不利益」「アイデンティティーの喪失感」などが生じることは一定程度認めており、裁判長寺田逸郎は補足意見で「人々のつながりが多様化するにつれて、窮屈に受け止める傾向が出てくる」と指摘[552]。選択的夫婦別氏が「合理性がないと断ずるものではない」とするとともに「制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」として立法に委ねた[555][556]

2018年1月訴訟

2018年1月9日、ソフトウエア開発会社サイボウズ社長の青野慶久、女性1名、事実婚の男女の計4名[557]が、戸籍法上国際結婚では同氏か別氏かを選べるのに、日本人同士では選べないのは憲法上の「法の下の平等」に反すると提訴[449][558][559][560][161][561][562][注釈 87]

2019年3月25日、東京地裁は原告の請求を棄却[564][459][565]。2020年2月26日、東京高裁が原告の控訴を棄却[468]。2021年6月24日、最高裁が原告の上告を棄却した[372][373]

2018年3月家事審判

2018年3月、東京都と広島県の事実婚のカップル4組は、婚姻届の「婚姻後の夫婦の氏」の欄で双方の氏の欄にチェックを記入して役所に提出し不受理となったため、東京家裁、同立川支部、広島家裁の3カ所で、受理を求める家事審判を申し立てた[453][452][450][451][566][567]。2019年3月28日、東京家裁と立川支部は申し立てを却下[568]。2020年12月9日、これらのうち3件の特別抗告審のそれぞれについて最高裁大法廷への回付が決定[484][569]。2021年6月23日、最高裁大法廷は抗告を棄却し、申し立てを却下した原審が確定した[370][570]。決定は15人の裁判官の内11人[注釈 88]の多数意見。4人[注釈 89]は違憲判断だった[571]。同月25日、残る1組についても特別抗告を棄却する決定[371][572]。これに対し、同年7月26日、世田谷区の事実婚夫婦が再審申し立てを行った[573]が、同年9月17日、最高裁第三小法廷、棄却[574]

この決定に関連して、2021年10月の最高裁裁判官の国民審査において、この最高裁決定において夫婦別姓を認めない民法の規定を「合憲」とした裁判官の罷免を求める率が他の裁判官よりも高かった、と報道されている[575][576][577]

2018年5月訴訟

2018年5月10日、夫婦別氏の婚姻届が受理されず法律婚ができないのは違憲だとして、前節3月の家事審判原告の一部を含む事実婚当事者が国に損害賠償を求め、同3か所の地裁で提訴[452][453][578][注釈 90]

この訴訟では、同氏を選べば法律婚ができるが、別氏を選ぶとできないのは「信条」によるカップル間の差別であり、憲法14条違反だとして、民法・戸籍法の違憲性を主張[452][580][567]。また、法律婚に限定された法益権利・利益(共同親権相続権、税法上の優遇措置、不妊治療など)が与えられず、夫婦として社会的承認も得られないなど差別がある、両性の実質平等が保たれていないことが憲法第24条国際人権規約自由権規約)と女性差別撤廃条約に違反していることも問う、と主張[567]。原告は異なるが、弁護団は2011年訴訟と同じ弁護士が中心となって担当した[581]

2019年10月2日、東京地裁は請求を棄却[463][582]。11月14日、立川支部[464][583]、19日広島地裁も請求棄却[465][584][582][583]。2020年9月16日、広島高裁が広島の事件の原告控訴を棄却[473]、同26日に原告が上告[585]。同年10月20日、東京地裁判決に対する控訴審で東京高裁が控訴を棄却[477]。同23日、同立川支部の事件の控訴審で東京高裁が控訴棄却[478]。いずれの原告も最高裁へ上告[479]。2022年3月22日、これらのうち立川と広島の2事件について、最高裁、棄却[374][375][376]。賠償請求の棄却については5名の裁判官の判断が全員一致した一方、夫婦別姓を認めない民法の現規定について5名の裁判官のうち2名が「違憲」判断とした[374][375][注釈 91]。同月24日、残る東京都の事実婚男女2名の事件についても請求棄却[376][586]

最高裁での棄却後、同訴訟弁護団は2023年秋を目途に第3次訴訟を準備中と報道され[587][503]、2024年3月、第3次訴訟が提議されることになった[588][379]

2018年6月訴訟

2018年6月18日、1997年にアメリカ合衆国ニューヨーク市で適法に成立した夫婦別氏婚が日本の戸籍に反映されないのは立法の不備であり憲法24条違反に違反するとして、映画監督の想田和弘と舞踏家で映画プロデューサーの柏木規与子の夫妻が、国を相手取り婚姻関係の確認と慰謝料を求めて東京地方裁判所に提訴[589][456][590][注釈 92]。2021年4月21日、東京地裁は請求を棄却[495]した一方で、原告夫婦が別姓のまま婚姻関係にあることについては認める判決[496]。原告は控訴せず判決は確定[592]。2022年6月13日、夫妻は戸籍への記載を求め婚姻届を東京都千代田区役所に提出したが、区は受理しなかった[593]。これに対し夫妻は2022年7月に東京家裁に不服申し立てを行った[593][594][377][378](「#2022年7月家事審判」を参照)。

2018年8月訴訟

2018年8月10日、東京都文京区の弁護士と女性が、民法750条の夫婦同氏強制は初婚しか想定しておらず、立法府の法改正懈怠により精神的苦痛を受けたとして、国に損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。原告夫婦双方に元配偶者との間の子(連れ子)がいるが、現民法は子どもへの影響等を想定しておらず法改正が必要と主張[458]。これに対し、2019年9月30日、東京地裁は、最高裁大法廷判決以後の議論の高まりは認めながらも、憲法違反といえるような事情の変化は認められないとして棄却[595][462]。同10月11日、東京高裁に控訴[596]。2020年3月26日、同棄却[471]。原告は上告の方針[597]。2021年6月25日、最高裁で上告が棄却され、敗訴が確定[371]

2022年7月家事審判

2018年6月訴訟原告でもあった映画監督の想田和弘と舞踏家で映画プロデューサーの柏木規与子の夫妻(「#2018年6月訴訟」を参照)は2022年6月に、米国の婚姻証書を添え、戸籍への登録のために必要な婚姻届を改めて同区に提出したものの受理されなかったため[注釈 93]、2022年7月4日、別姓での婚姻届の受理を認めるよう求め、東京家庭裁判所に審判を申し立てた[377][378]。前の裁判において、東京地方裁判所が「結婚は日本でも有効に成立している」と認めた一方「戸籍については家庭裁判所に申し立てるほうが適切だ」としたことを受けたもの[377][378]。2025年1月16日、東京家庭裁判所は受理を認めず。原告は東京高等裁判所に即時抗告予定と報道されている[530]

2024年3月訴訟

2024年3月、夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定は憲法違反だとして、30~60代の男女計12人が、別姓のまま婚姻できる地位の確認や損害賠償を求め、提訴。東京、札幌の両地裁[379][588][544]

旧姓通称使用訴訟

国立大学女性教授旧姓通称使用訴訟

1988年、国立大学の女性教授が通称として旧姓を使用する権利を求め、訴訟を起こした[324][32]。1993年に東京地裁は判決で、通称名も「人が個人として尊重される基礎となる法的保護の対象たる名称として、その個人の人格の象徴となりうる可能性を有する」が、同一性を把握する手段として戸籍名の使用は合理性があり、通称名が国民生活に根づいていない、また大学は業績の公表などで通称使用を配慮しており、違法性はないとして棄却[598][599][600]。控訴の後、1998年、東京高裁にて旧姓使用を認める和解が成立した[601]。国は研究報告や論文などで通称使用を認め、2001年には公務員の通称使用が認められた[324]

女性取締役旧姓通称使用訴訟

2001年3月29日、被告の会社が女性取締役に対し夫が当該会社を退職したことに伴い支障がなくなったことを理由に婚姻氏を名乗ることを命じたのは人格権の違法な侵害だったとして、精神的苦痛に対する慰謝料が認められた。大阪地裁[415][602][32]

男性元高校教諭旧姓通称使用訴訟

2012年4月、男性元高校教諭が教員異動の新聞発表に際して旧姓の通称が認められず、精神的苦痛を被ったとして神奈川県を提訴(横浜地裁)。2013年1月、神奈川県は旧姓使用取扱要綱を改正し、同年6月に和解が成立[603][604][415][32]

女性教諭旧姓通称使用訴訟

2016年には、結婚後に職場で旧姓の通称使用を認めないのは人格権の侵害だとして、女性教諭が勤務先の学校法人を東京地裁に提訴[338]。東京地裁は同年に「旧姓を戸籍姓と同じように使うことが社会に根付いているとまではいえず、職場で戸籍姓の使用を求めることは違法ではない」として請求を棄却[339][605]。その後控訴審で高裁より和解勧告が出され、2017年に学校側が、時間割などの文書や日常的な呼び方で旧姓の使用を全面的に認める形で和解が成立[340]

京都府弁護士役員登記審査請求

2018年に京都府の弁護士が、京都地方法務局に対し、旧姓での役員登記申請を却下したのはプライバシー権の侵害だとして却下処分の取り消しを求めた審査請求で、同局は2019年、却下は適法として請求を棄却[460][606]

事実婚相続訴訟

仕事の都合などからそれぞれの姓を保持するために事実婚とした事実婚の妻と死別した夫が、妻の肉親から遺産や財産分与の返還を求められた訴訟で、2026年1月16日に事実婚の夫に遺産相続を認めない判決。大阪高裁[607]

賛否の論点

現況の民法に対し、アイデンティティ喪失、間接差別、改氏の不利益[608]などの理由から、別氏のままの婚姻を選択できる制度の導入が検討され、訴訟も起きている[7][6][5][125]。一方で、親と子が異なる氏となるのは問題とする主張[609][610][611]や、旧姓の通称使用拡大で十分との主張[612]などの反対論・消極論がある。

議論状況分析

我妻栄は、1961年の著作で、民法750条の夫婦同氏規定には以下の2つの批判があるとした[613]

  • 妻が改氏することが多い一方で改氏しない側が戸籍筆頭者となるのは、夫婦の平等の理想の向上に害がある。
  • 知名度が高い場合などの妻の改氏は妻にとっても社会的に不利である。

法務委員会調査室の内田亜也子は、2010年の論考で、選択的夫婦別姓について、戦後個人の価値観が多様化し賛成論が広がってきたとしている。反対論は、

  • 夫婦とその未成年の子からなる集団を『家族』とし、その構成員の氏が同一であることが望ましいという考え方に基づいている

と解釈している。一方、賛成論は、

  • これからの家族法は、家族を構成する個人相互の関係として規律するべき
  • 家族法の個人主義化は行き過ぎだが、現行家族法の公序の組替えが必要
  • 個人としての独立性を示すとともに、家族の一体性をも示したいという要請にも配慮する形で導入すればよい

の3つに分けられる、としている[6]

社会学者の阪井裕一郎は2011年の論考で、「同姓原則論者」の中にも男女平等の観点から創姓や複合姓を提唱する論者やフェミニストもいる一方、「家名の継承」等の理由から「選択的夫婦別姓法制化」を求める保守層もおり、選択的夫婦別姓をめぐる論争は、「同姓=家族主義、保守」/「選択的夫婦別姓=個人主義、リベラル」のような二項対立ではない、としている。その上で阪井は、議論は

  • 夫婦同姓原則論(複合姓論、創姓論の導入を主張しつつ法制化に反対する論を含む)
  • 選択的夫婦別姓法制化賛成論(家名の継承などの理由による賛成も含む一般的な賛成論)
  • 法律婚批判、戸籍制度廃止(届からの自由を求める論。法制化には反対)
  • 選択的夫婦別姓法制化賛成、戸籍制度廃止(届からの自由への次善策としての賛成論)

に類型化できる、としている[614]

各論

人権・多様性

選択的夫婦別姓への積極・賛成論 消極・反対論
個人の尊重・人格権・自己決定権・アイデンティティー 日本学術会議は、夫婦同氏の強制は人格権の侵害であり、個人の尊厳の尊重と婚姻関係における男女平等を実現するために選択的夫婦別氏制度を導入すべき、としている[7]日本学術会議水野紀子(法学者)は、同氏強要は個人の尊厳・両性の平等を定める憲法第14条憲法第24条に抵触する[7][615]、と主張。日本弁護士連合会は、一方の氏の変更を強要する夫婦同氏制は、憲法第13条で保証された人格権を尊重していないと主張[41]。2011年訴訟の原告団も、婚姻に当たりの氏変更を強制する民法750条は、憲法13条が保障する人格権のうちの氏名権を侵害する、と主張した[616]。日本学術会議や二宮周平(法学者)は、民法2条の解釈基準と矛盾をきたす、としている[7][617]

佐々木くみ(東北学院大学・法学者)は、民法750条における婚姻時の氏の変更という要件は、憲法第13条人格権としての「氏の変更を強制されない自由」と憲法第24条で保障される「婚姻の自由」の双方の自由を同時に満たすことができず、十分な合理性も認められず憲法第24条に違反する、としている[434][618][619]

宮内義彦オリックス元会長・社長・グループCEO)らは、現制度のように法律婚が強制力を持つ社会は窮屈で非寛容である[620][621]、と主張している。

吉田晋(朝日新聞記者)は、利便性や不利益のみにではなく、姓を人格の象徴と考える人たちの「個人の尊厳」が問われている、としている[622]

山田昌弘(社会学者)は選択肢が広がることはよいと主張[623]。また、反対論は感情論に過ぎないと批判した[624]

福岡県弁護士会は、「選択制」であるから、別氏にすると家庭が崩壊すると思う人は同氏を選択すればよいとしている[625][626]

朝日新聞は社説で、選択的夫婦別姓反対を叫ぶ人たちには、他人への寛容さが欠けている。それは、自分なりの生き方を選ぶ少数者に対する差別や偏見にさえつながりかねない、と主張している[627]

林美子(ジャーナリスト)は、個人の尊厳やアイデンティティーは大切であり、違う立場や考え方や感じ方の人を認めようとしないのは全体主義への下り坂だ、と反対論者を批判している[628]

青野慶久(ソフトウエア開発会社サイボウズ社長)は、現状の通称使用では人格が分離したような感覚を受け、精神的苦痛が大きいとしている[629]

松浦千誉(拓殖大学教授)は、1976年に、「夫や妻という個人が全面に出てきた時、(選択的)夫婦別姓は当然のこととして受けれられるだろう」「現在を女にとって独立の人格の権利・義務の過渡期としてとらえる時、別姓でも同姓でも選べる道を開いておく制度が望ましい」と述べている[630][631]

山田卓生(法学者)は、1984年に、「氏不変の原則と自己決定権から『別姓を原則として改姓したいものは改姓してもよい』とする方がよりスッキリする」と述べている[632][631]

立石直子(法学者)は、1960年代、1970年代の民法改正を通じて導入された婚氏続称制度、縁氏続称制度と比較したとき、婚氏ならば制限なく、離婚や離縁において縁氏ならば7年以上の実績によりその続称が保障されるのに対し、婚姻前の氏については、少なくとも16年以上の使用実績があるにもかかわらず制度保障がないことは整合性を欠く、としている[323]

稲田朋美(政治家)は、選択的夫婦別姓に反対していた2010年の時点では、選択的夫婦別氏運動は一部の革新的左翼運動等に利用されていると主張。一部の法案における子の姓の選択が婚姻届提出時であることについて、年齢や健康上の事情により子が授からない場合に選択させることは人権侵害、と主張。また、改氏する者の不利益は改善されず、別氏の間接強制になりえる、とも主張していた[633]。ただし、2018年に「通称使用で2つも姓を用いるのは混乱を招く」「高齢者同士の結婚も多い」とし立場を転じている[173]

宮崎哲弥(評論家)は、1996年の著書において、夫婦同姓の強制は人格権侵害というが、親の姓の使用強制や親による子の命名も同様に人格権の侵害に当たるはず、と主張し、人格権を根拠にするならば姓氏全廃を主張しないとおかしい、と主張している[634]

多様性・多様な価値観

日本学術会議は日本社会は1980年代後半以降、国際的な男女平等の潮流と女性の経済的自立の傾向から、家族観、婚姻観、男女の生き方や役割観に変化があり、社会における男女の働き方、家族形態は多様化し、夫婦同氏制を支える立法事実は変化している、としている[7]

出口治明ライフネット生命保険会長兼CEO)らは、多様な価値観を認めることが現代の日本では求められている、としている[621][635][636]

宮崎裕子(最高裁判所判事)は、最高裁判所判事として初めて結婚前の旧姓を使い始めたことについて「選択的夫婦別姓なら全く問題ない。価値観が多様化する中、可能な限り選択肢を用意することが非常に重要」としている[637]

佐藤莉乃(公益財団法人せんだい男女共同参画財団)は多様な家族の形を尊重すべき[638]と主張。

日本経済新聞は、別姓強制ではなく希望する人には認めようとするもので、多様性を認める発想こそ社会に必要と主張[639]

青野慶久は、氏名制度はもっと多様化していくべき、としている[640]

プライバシー論

井戸田博史は、婚姻により強制的に氏を変更させられ新たな氏を世間に公表させられることはプライバシー侵害と主張[148]

ジョン・C.マーハ(地域研究学者)は、夫婦同姓は強制的に婚姻状態の公表につながり女性のプライバシー権が侵害され人権問題にもなる、としている[641]

西日本新聞は、他人へ離婚や再婚を宣言することを忌避し事実婚を選択した例を紹介[642]

2018年1月に選択的夫婦別姓を認めない戸籍法を国に訴えた裁判で原告は、夫婦別氏の選択を認めない現行法はプライバシー権を侵害している、と主張[165]