三学とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 宗教 > 仏教 > 教義(数) > 三学の意味・解説 

さん‐がく【三学】

読み方:さんがく

仏道修行する者が必ず修めなければならない戒・定(じょう)・慧(え)の3種実践修行


さんがく 【三学】

仏道修行で学ぶ三つ修行部門をいう。戒学(廃悪修善)、定学精神統一)、慧学正し智慧)の三つ法然末法時の人は三学すらできない(三学無分)として浄土宗開いた

三学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/12 21:24 UTC 版)

仏教用語
三学
「戒 定 慧」と揮毫された扁額
パーリ語 tisikkhā
サンスクリット語 त्रिशिक्षा (triśikṣā)
チベット語 ལྷག་པའི་བསླབ་པ་གསུམ།
(Wylie: lhag-pa’i bslab-pa gsum)
中国語 三学
(拼音sān xué)
日本語 三学
(ローマ字: sangaku)
朝鮮語 삼학
(RR: samhak)
英語 threefold training, three trainings, three disciplines
タイ語 ไตรสิกขา
ベトナム語 tam học
テンプレートを表示

三学(さんがく, : tisikkhā)とは、釈迦によって示された、仏道を修行する者がかならず修めるべき3つの基本的な修行項目をいう[1]三勝学(さんしょうがく)とも。具体的には、戒学・定学・慧学の3つを指す[1][2]。この戒・定・慧は、修習の順番が重要である[2]

  1. 戒学(かいがく) - によって身口意(しんくい)の三業(さんごう)が清らかになり、禅定に入りやすくなる[2]
  2. 定学(じょうがく)- 禅定を修めることで、慧が得られる[2]
  3. 慧学(えがく) - 智慧(パンニャー)を修めることで煩悩が排され、解脱智見が得られる[2]

三学に解脱(vimutti)、解脱智見(vimutti-ñāṇa-dassana)を加えたものを五分法身と呼ぶ[3]

最古の修行法説

昭和期に活躍した仏教学者の中村元は、『パーリ仏典』は釈迦の死後に、釈迦が神格化されていく過程で段階的に発展・成立したとする説を唱え、『パーリ仏典』収録経典を「最古層」「古層」「新層」に分類した[4]。中村説は日本仏教学界で大きな影響力を持つに至った。

釈迦の死後、輪廻から解脱し涅槃に至るのための修行マニュアルがしだいに整備されていった過程を、中村説を踏襲する並川孝儀は以下のように推定している。

  • 最古層経典:修行法はほぼ「戒」や「定」や「慧」など後世の三学に該当する内容で占められる。
  • 古層経典:新たな修行法もみられるようになる。その代表的な修行法が七種の修行法(三十七道品)である。中でも「五根」が最も早くみられ、続いて「八正道(八聖道)」が「四諦(四聖諦)」と一体で説かれる。
  • 新層経典:新たに「四念処」「四正勤」「四神足」「五力」「七覚支」という修行法が説かれる。

並川孝儀によれば、三学は文献学的にさかのぼりうる最古の修行法で、釈迦の直説(じきせつ)の可能性があるという。また並川は最古層経典の修行法の内容がほぼ三学であることを指摘している[5]

一方『パーリ仏典』段階発展説を否定する見解もある(仏教#釈迦の修行法も参照)。中村元は最古の経典と推定されるスッタニパータに仏教の基本教義が見えないことを理由に、『パーリ仏典』の教義や戒律などの大部分は釈迦入滅後に段階的に成立したとする説を唱えたが、清水俊史は言語学的にスッタニパータが最古層の仏典であることは認めるが、スッタニパータのような韻文は大衆向けの通俗的なもので仏教の教義を体系的に網羅したものではないので中村説は前提が誤っているとし、『パーリ仏典』に見られる教義や戒律は古くから存在するもので後年に段階的に発展したものではないとしている[6]

大谷大学教授の新田智通は、スッタニパータが最古層の経典であることには同意しているが、中村元の他の分類に関しては「中村はゴータマ(釈迦)の神格化の過程を論証したのではなく、ただ自分自身の設けた判断基準にしたがって分類したに過ぎない」と辛辣に批判している[4]。また新田は、原始仏教は明らかに輪廻転生を前提とし、輪廻からの解脱をテーマとしているため、並川孝儀の学説のように「釈迦は輪廻転生を否定した」という見解を採ると教義が破綻し成立しないと説明している[7]

パーリ仏典

Tīṇimāni bhikkhave samaṇassa samaṇakaraṇīyāni. Katamāni tīṇi:
adhisīlasikkhāsamādānaṃ, adhicittasikkhāsamādānaṃ, adhipaññāsikkhāsamādānaṃ,
imāni kho bhikkhave tīṇi samaṇassa samaṇakaraṇīyāni.

比丘たちよ、これら三つの、沙門のための沙門がすべき事がある。いかなる三か。
増上学の受戒、増上学の受戒、増上学の受戒である。
比丘たちよ、これら三つが、沙門のための沙門がすべき事である。

Tisso imā bhikkhave sikkhā. Katamā tisso? Adhisīlasikkhā adhicittasikkhā adhipaññāsikkhā.

比丘たちよ、これら三つの学(sikkhā)がある。いかなる三か。
増上戒学、増上心学、増上慧学である。

それぞれを修めたならば、激しい欲(chando)は起こらず、三毒(rāgo, doso, moho)は消えてしまうと釈迦は説く[8]。三学を修習しない者は、真の比丘ではないと釈迦は説いている[1]。また釈迦は、農夫らが予め田畑を耕してから種を捲くように、比丘たちはまず三学を修習するよう説いている[8]

八正道との関係

三学と八正道は、以下のように隣接関係にある[9]

分類 要素
[10] (梵: śīla, 巴: sīla) 3. 正語
4. 正業
5. 正命
[10] (サマーディ, 梵/巴: samādhi) 6. 正精進
7. 正念
8. 正定
般若 (パンニャー, 梵: prajñā, 巴: paññā) 1. 正見
2. 正思惟

象跡喩小経においては、三学に沿った16段階の修行道が説かれている[2]

漢訳仏典・サンスクリット仏典

釈迦が最晩年に生涯をふりかえり、スバッダに語ったでも、三学に相当する修行法が説かれている。

我年二十九、出家求善道。
須跋我成仏、今已五十年。
戒定智慧行、独処而思惟。
今説法之要、此外無沙門。

私は29歳で、良き道を求めて出家した。
スバッダよ。私がブッダとなってすでに50年がたった。
私は戒定慧の行を実践し、ひとり、深く考えてきた。
いま説いた法のかなめが、求道者のありかたのすべてである。

漢訳仏典『長阿含経』巻四(『大正大蔵経』1巻p.25中段)

上記の偈に対応するサンスクリット仏典<

Avadānaśataka(AVŚ)

ekānnatriṃśatko vayasā subhadra
yat prāvrajaṃ kiṃkuśalaṃ gaveṣī
pañcāśad varṣāṇi samādhikāni
yasmād ahaṃ pravrajitaḥ subhadra(AVŚ_40.1)
śīlaṃ samādhiś caraṇaṃ ca vidyā
caikāgratā cetaso bhāvitā me
āryasya dharmasya pradeśavaktā
ito bahir vai śramaṇo 'sti nānyaḥ (AVŚ_40.2)

脚注

  1. ^ a b c 崔 鍾男「戒・定・慧 三学の修行方法」『印度學佛教學研究』第54巻第1号、2005年、436-432頁、NAID 110004026844 
  2. ^ a b c d e f ターナヴットー ビック「ニカーヤにおける八聖道と三学系統の修行道」『インド哲学仏教学研究』第4巻、1996年、3-15頁、 NAID 120006908941 
  3. ^ 雑阿含経 638
  4. ^ a b 桂ほか 2013, p. 85.
  5. ^ 並川孝儀「初期韻文経典にみる修行に関する説示 : 三十七道品と三界」(小野田俊蔵教授 本庄良文教授古稀記念号)佛教大学仏教学会紀要 28 1-21, 2023-03-25 p.14
  6. ^ 清水俊史『上座部仏教における聖典論の研究』(大蔵出版、2021)p40-50
  7. ^ 新田智通「仏教における輪廻説の再検討 パーリ文献によりながら(中編)」2019年
  8. ^ a b パーリ仏典, 増支部三集沙門品, Sri Lanka Tripitaka Project
  9. ^ Prebish, Charles (2000), “From Monastic Ethics to Modern Society”, in Keown, Damien, Contemporary Buddhist Ethics, Routledge Curzon 
  10. ^ a b Harvey 2013, p. 83-84.

参考文献

関連項目


「三学」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



三学と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「三学」の関連用語

三学のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



三学のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
中経出版中経出版
Copyright (C) 2026 Chukei Publishing Company. All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの三学 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2026 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2026 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2026 GRAS Group, Inc.RSS