目次 各「その1」のみ クリックで詳細表示
(13) 第3景【鎌倉編】馬借・欠七(1/2)
(15) 第4景【現代編】個室病棟にて(1/2: 本稿)
(17) 第5景【鎌倉編】ボクの無双(1/2)
(19) 第6景【鎌倉編】被差別集落(1/4)
(23) 第7景【鎌倉編】霊感商法(1/5)
(28) 第8景【現代編】ボクシング
(29) 第9景【鎌倉編】地頭・稲田(1/2)
(31) 第10景【現代編】哲学者
(32) 第11景【鎌倉編】心霊教ふたたび
(33) 第12景【現代編】裵〔ペ〕デスク
(34) 第13景【鎌倉編】刺客
(35) 第14景【現代編】守衛
(36) 第15景【鎌倉編】大団円(1/4)
(40) 第16景 鎌倉編の後始末
(41) 終景 現代編の後始末(1/3)
新着お目汚しを避けるため、日付をさかのぼって公開しています。体裁にこだわらず頭の中にあるものをダンブしている、という意味です。 あとからどんどん手を入れる予定です。前回はこちら。
場面変わって現代日本。病院の個室。ベッドにあお向けの猪飼道大。頭に少し包帯が残り、鼻にチューブが入っている。
ベッドの傍らに妻の尾藤真琴と、真琴の母親すなわち道大の義母の尾藤伊佐子がいる。見舞いに来た出版社「秘密結社」の裵〔ペ〕デスクを、ちょうど迎え入れたところである。
真琴「お忙しい中、お見舞いありがとうございます」
伊佐子「道大がお世話になっております」
伊佐子は、50代の品のよさそうな女性である。ただし、もう少しすると "この母にしてこの娘あり" 的な地金が見えてくる予定。
裵「こちらこそ、もう少し早く見舞いに来ようと思っていたのですが、申し訳ない」
伊佐子「いえ、事故直後はどうしても取り散らかしておりましたので。お恥ずかしながら、ようやく家族一同、落ち着きを取り戻しかけたところです」
真琴「それに、お医者さまによると容体は安定しているとのことですから、どうかお気遣いなく」
伊佐子「CTやMRIによると、脳に外傷は見られなかったそうです」
真琴「医学的なことはわかりませんが、脳波は眠っているときと変わらないそうで…おおかたナーロッパの勇者に転生して無双している夢でも見てるんじゃないかと話しているところです」
裵「(ちょっと絶句するが、表情をつくろって) それは、不幸中の幸いと言うか何と言うか⋯」
裵に、道大が鎌倉時代に転生していることがわかるわけないが、読者の代弁として。
真琴「そんなで、うちの家族の大人4人が、私と母と道大の両親ですけど、交代で様子を見にくるようにしています。私の父は早くに亡くなりました。今はちょうど母との交代のタイミングでした」
伊佐子「幸いこの病院は、看護師さんのケアが手厚いですが、面会可能な時間はやはり誰か付き添っていたいですので」
裵「ごもっともです」
真琴「私の大学の授業は、動画配信に切り替えてもらって、面会時間外に収録して配信することにしました。それから聡己〔さとみ〕と結衣〔ゆい〕が、学校に行ってくれるようになったことが、ありがたかったです。聡己は長男で、結衣は長女です」
裵「ジェンダーフリーなお名前ですね」
真琴「わざと狙ったわけじゃなくて…可笑しいんですよ。私が聡己を身ごもったとき、ダンナったら "哲人王" と書いて "さとみ" と読ませるんだって」
裵「哲学の哲は人名で "さと" と読ませられるんでしたか。"王" は王子と書いて "みこ" の "み" ですね」
真琴「デスクはいつも頭の回転が速いですね。私、思わず "かわいそう!" って言っちゃったら、ムッとした顔をして "じゃ、漢字を変えよう" って。それで "己〔おのれ〕に聡〔さと〕い"、自分のことをよくわかってほしい、で双方納得したんです」
裵「なんと言うか、道大くんらしい」
真琴「それでおしまいかと思ったら、今度は娘のときに、唯物論の ”唯”、唯心論の ”唯”、唯我論の ”唯”、唯識の ”唯” がいい、なんて言いだして…」
裵「唯ちゃんだったら普通にいるし許容範囲のような」
真琴「私は "重たいからやめて" って抵抗して、けっきょく "衣を結ぶ" が中島みゆきさんの『糸』の歌詞みたいでいいんじゃない、ということで折り合ったんです」
伊佐子「ちなみに真琴の "琴" は、亡くなった父親が、私の夫ですけど、子どものとき横綱の先代の琴桜の、今の大関琴桜のお祖父さんですけど、その琴桜という四股名がとっても奇麗な名前に思えたから、将来もし娘が生まれたら "琴桜" という名前をつけようと思ったんですって」
真琴「よけいなこと言わないでよ、お母さん!」
伊佐子「(ニヤリと笑って) あんたのだって、十分よけいなことだと思うよ」
(この項続く)
※ リアル作者による注
京都精華大学の あかたちかこ 先生は大学の正規の授業をYouTubeで配信しておられ、精華大の学生さんはこれを視聴して単位が取れ学外の一般の視聴者も視聴できることを、前作『学校なくなっちゃった』中で述べました。
あかた先生の授業は、今期 (2025年度下期) もYouTubeで新たに配信されています。面白いので、興味を持たれた方には視聴をお勧めします。
追記:
続きです。
弊ブログはアフィリエイト広告を利用しています