「戦国自衛隊」
(ネタバレあり。見ていない方は、ご注意を)
映画「戦国自衛隊」(1979年)のすごいところは、戦車やヘリコプター等、現代の強力な兵器を持った自衛隊員が、最終的には、槍や刀の戦国武士に敗れること。
何しろ、戦闘に対する意識が全く違う。
実戦経験のない自衛隊員は、人を撃つことをためらい、死を恐れる。
殺るか殺られるかの日常を送る戦国武士は、殺人をためらわず、死を恐れない。
この違いをリアルに描ききったところが傑作たるゆえんだ。
象徴的なシーンがある。
自衛隊員と武田信玄の軍勢の戦いの中で、敵の若武者(薬師丸ひろ子)と出くわした隊員の1人(竜雷太)が攻撃をためらい、あっさりと槍で突かれる。
直後に銃で撃って相打ちになるのだけども、隊員が息絶える前に漏らす言葉が、記憶に残る。
「まだ、子どもじゃないか・・・戦国・・・時代・・・」と。
「戦国自衛隊」は、SF作家・半村良の同名小説を映画化したもの。
小隊長の伊庭が率いる陸上自衛隊員や海上自衛隊員たち二十数人が、演習地に向かう途中、戦国時代にタイムスリップ。
長尾景虎(のちの上杉謙信)とともに、天下統一を目指すストーリー。
テレビ放映で見たのは、小学校高学年くらいの頃だったと思う。
主役の伊庭を演じる千葉真一、武田勝頼役の真田広之らの迫力ある戦闘シーンが強烈に頭に焼きついた。
そして、千葉と言えばのお色気も・・・
(私は小学校高学年の頃、千葉主演の時代劇「影の軍団」が好きだった。千葉のアクションと、さりげないお色気が楽しみだった。そのせいか、千葉には、お色気が付きものというイメージがある)。
「戦国自衛隊」では、殺伐とした時代に来たせいか、一部の隊員(渡瀬恒彦ら)が「こうなったら、やりたい放題、楽しく暮らそうぜ」と村の娘たちを襲いまくるシーンがある。
これは、おそらく、戦国武士もやっていたことだと思う。
戦国武士のマインドは、物語冒頭でも描かれる。
タイムスリップ直後、伊庭ら自衛隊員と景虎(夏八木勲)が出会う。
戦国武士から見れば、自衛隊員は明らかに異常な風体。
なのに、景虎は「同族じゃあ!」と満面の笑みを見せる。
おい、同族のわけないだろう、何なんだ、そのリアクションは───とツッコミたくなるところだが、この臨機応変ぶり、適応力の高さこそ、戦国武士。
「なんか、知らんけど、強そうだし、とりあえず、仲良くしとくか」という計算が、瞬時に働いたのかもしれない。
いや、それよりも、景虎は、伊庭が自分と同じく戦闘好きの男だと、瞬時に見抜いたのかもしれない。
景虎は、戦車を興味津々で眺め、装甲車に乗って重機関銃を撃たせてもらい、大喜び。伊庭も笑顔を見せ、2人は打ち解ける。
これに対し、ほかの隊員たちは、戦国時代にタイムスリップしたという現実をなかなか受け入れられず、戸惑う。
結局、伊庭は、この時代に適応できるマインドの持ち主だった。
手を組んで一緒に戦ううちに、伊庭は、景虎に「あんたは戦国時代向きの人間だ」と気に入られ、「一緒に天下を取ろう」と誘われ、2人は友情を誓う。
すっかり、戦国時代の居心地が良くなった伊庭は、現代に帰りたがる隊員たちと心が離れていく。
信玄との戦いでは、勝頼が、ヘリコプターが低空飛行した時に飛び移り、隊員を倒してヘリを墜落させる大活躍。
装甲車は落とし穴にはまって動けなくなるなど、自衛隊員のアドバンテージである現代兵器は、多くが失われる。
この局面で、戦国武士と互角の戦闘力を発揮したのは、千葉、いや、伊庭だけ。
敵から弓矢を奪って乱射しながら、信玄の本陣に突入。
一騎打ちの末、信玄を討ち取る。
「信玄を討ち取ったぞ!」と生首を掲げて笑う伊庭は、もはや、戦国武士になりきっていた。
将軍・足利義昭は、得体の知れない人間が天下を取るかもと伊庭ら自衛隊員を警戒。
景虎に対し、伊庭らと一緒にいるなら、逆賊と見なすと脅す。
さらには、伊庭らが現代兵器の多くを失ったと知り、今なら倒せると考えた義昭は、配下の武将に討伐を命じる。
ここで、景虎は、「だったら、私がやります」と伊庭ら自衛隊員討伐を志願する。
この物語の設定では、景虎は、板挟みに悩んだけど、友情ゆえ、伊庭がほかの武将に倒されるのは、忍びないと考えて、討伐を志願したことになっている。
たぶん、実際の戦国武士のマインドだったら、友情なんか気にしないはずだ。
この物語で唯一、無理があるのは、伊庭と景虎の友情。
ただ、これは、ラストのためなのだ。
景虎は、伊庭らを襲う。
景虎と向き合った伊庭は、最期だと悟り、「景虎よ。おれは天下を取る!」と叫んで、刀で斬りかかる。
ここが、とてもいい。
銃ではなく、刀で戦うところが、戦国武士になりきった感を高めている。
景虎は、伊庭に贈られた小銃で、伊庭を撃つ。
ほかの隊員も皆殺し。
景虎は、伊庭らが潜んでいた寺を焼き払い、静かに涙を流す。
この物語は、殺伐とした戦国マインドを描きつつ、最後は、友情ドラマで締めくくる。
だから、悲しいけども、爽やかな、甘酸っぱい後味が残る。


