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日々の中華食堂（ひびのちゅうかしょくどう）／代々木上原

代々木上原駅からすぐ（本当にすぐ）の場所にある「日々の中華食堂（ひびのちゅうかしょくどう）」。ランチのお値打ちな定食とディナーの上質な単品料理で脚光を浴びた中国料理店です。ミシュランではビブグルマンに選出。
店内には木の温もりが感じられるインテリアであり、スタバやタリーズのようにカフェっぽい雰囲気。子連れもOKで、大テーブルでワイワイ楽しそうにやっており店名を体現しています。入口すぐには中国菓子がプレゼンテーションされており、スイーツショップとしても機能している模様。鈴木公也シェフは「重慶飯店」や「センス（Sense）」、「たかせ」などで腕を磨いたそうです。
飲み物類はやや高め。ビールはそれほどでも無いのですが、割物系の飲み物は小さなグラスにほんのちょびっとしか入っていないので、切ない気持ちになりました。
気を取り直してお食事に入ります。まずは「白菜のお浸し　松前仕立て」。これが白菜かと瞠目する深みのある味わい。中国にこういう料理があるのか当店のオリジナルなのかは存じ上げませんが、いずれにせよ新感覚の白菜です。
「日々の前菜盛り合わせ」は1人前2,800円という値付けであり、中々やっとるなという感想を抱いたのですが、配膳されてびっくり、物凄まじいラインナップです。種類が多いのはもちろん、それぞれがきちんと美味しいのが素晴らしい。客単価5万円を超える中国料理店の前菜盛り合わせを余裕で超えてくるクオリティです。
「情熱的な海老マヨネーズ」はソースにパッションフルーツを用いており、なるほどそれで「情熱的」かと得心したのですが、連れは「美味しいけれど、どのあたりが情熱的なのだろう？」と首を傾げています。恐らくこれこれこういう意味だと思う、と私が親切に解説するのですが、「でもそれって結局オヤジギャグだよね」と、何故か私が滑ったみたいな感じになってつらかった。
仕切り直して「合鴨のスモークダック」。合鴨を西京味噌に漬けた上で燻製の香りで焼き上げており、西京味噌のコクと燻製の香りが絶妙に調和し、奥深い味わいに仕上がっています。
中華風のパン（？）に肉と薬味を挟み、ソースをたっぷり注いで至福のひと時。甘辛くて、ちょっとスパイシー。ほっぺたが落ちそうだ。
〆のお食事は白湯でゴハンを炊きつつ、、、
火鍋風の牛肉のしぐれ煮（？）と共に頂きます。火鍋風ではあるものの、辛味よりも旨味やコクが強く感じられ、ゴハンが進むのなんのって。白湯で炊いたゴハンは程よい甘味が感じられ、しぐれ煮との相性も抜群です。
以上を食べ、軽く飲んでお会計はひとりあたり1万円弱。「日々の」とするには高めの価格設定ですが、その価値は金額に見合っており、心地よい充足感に満ちています。次回はランチの定食も試したいな。でも事前予約制のクリスピーチキンも気になる。

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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。

本場志向で日本人の味覚に忖度しない中華料理が食べたい方へ捧ぐ書。東京の、中国人が中国人を相手にしている飲食店ばかりが取り上げられています。ある意味では中国旅行と同じ体験ができる裏技が盛りだくさん。

KINO_ （キノ）／代々木

札幌でミシュランで1ツ星を獲得し、ゴエミヨにも掲載され、食べログでは百名店にも選出された「lien（リアン）」が東京進出。店名は「KINO_ （キノ）」とアンダーバーが入るあたりが今風ですが、シェフの苗字は「キノシタ」なので実際のところは駄洒落かもしれません。場所は代々木駅から歩いてすぐ。カラ館の脇を入ったところです。
札幌の店舗とは雰囲気が大きく異なり、厨房に面したドーンと長いカウンターが印象的（写真はヒトサラ公式ページより）。テーブル席もいくつかあって、使い勝手の良い構成です。

木下雄介シェフは札幌出身。日本各地のヒルトン系のレストランで腕を磨き、「ヒルトン小田原リゾート＆スパ（Hilton Odawara Resort & Spa）」では料理長も務めました。2012年に「lien（リアン）」を開業したのち、10周年の節目に東京進出という乾坤一擲の大勝負へ出ました。
ワインにつき、泡白赤のワインセットのほか、各皿に合わせたペアリングも用意されており、飲む量も自由自在。自由度の高い構成です。というか泡白赤のワインセットの泡はシャンパーニュであり、それを含めて5千円かそこらというのはお値打ちだと思います。
アミューズが豪華。リッチな味わいの甘海老に旨味抜群のリエット、プリンのような独特の食感を奏でるキッシュと、もうこれだけでガッツリ飲めてしまいそうなほど愛くるしい味わいです。
メジマグロ。表面を軽く炙って香りを立てつつ、ハーブ類のオシャレな味わいで全体を整えます。ほどよく苦味もきいて大人の味わいです。
春巻き風のひと品。サクラマスと菜の花をライスペーパーで巻き込んで揚げており、マヨネーズ（？）をたっぷりつけて至福のひととき。春巻き考えた奴って天才だよな。どうやったって美味しいもんな。
スープは春キャベツ主体。瑞々しい甘味が心地よく、また、奥に潜んだブルーチーズの塩味もピリっと心地よいアクセント。
貝特集はホッキガイ・ホタテ・アワビの三種の神器であり、いずれも調理法は変えています。それぞれの食感と味わいの有意差を楽しむひと皿であり、磯の風味のきいたソース（？）が上上手に全体をまとめ上げます。
スペシャリテのイカ飯。シェフの郷土料理をフランス料理風にアレンジしたものであり、ヤリイカの中にウニのリゾットを詰めて蒸し上げます。本体そのものの美味しさはもちろんのこと、バターたっぷりのソースがバリ旨い。アンチョビの代わりに塩辛を用いているのも面白い。
パンも深みがあってとても美味しい。穀物の複雑な旨味が噛みしめるほどに滲み出てくるタイプであり、先のソースをたっぷりつけて艶っぽい味わいです。
メインは蝦夷鹿のカツ。ドッシリと存在感のある肉の旨味をジュワっとディープフライしており、存在感抜群のひと皿です。行者ニンニクの風味が食欲をそそり、また、インカのめざめのジットリとした甘さも見逃せない美味しさです。
お口直しに日本酒の氷菓。みむろ杉を用いているのですが、これが日本酒かと驚くエレガントな味わいです。
メインのデザートは北海道マンらしく〆パフェで。そのへんの〆パフェ屋とはダンチの美味しさであり、スイーツ屋としてスピンオフしても大成功を収めそうなクオリティの高さです。これはイカ飯に次いで第二のスペシャリテと言えるでしょう。
最後のお茶菓子まで手抜き無し。ごちそうさまでした。

「lien（リアン）」時代はランチにお邪魔し、その料理センスをビンビンに感じてディナーにも是非お邪魔したいと切望していたのですが、いやはや素晴らしい食体験でした。シェフもマダムも感じよく、とても居心地の良いひと時。

なぜかネットでは「イノベーティブ」「フュージョン」に分類されていますが、むしろクラシックな料理に私は感じました。いずれにせよ、ジャンル分けなど無力化するほどのレベルの高さなので、安心して予約を入れましょう。私が保証します。

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サン フォコン（Saint FAUCON）／代々木上原

代々木上原駅目の前の「サン フォコン（Saint FAUCON）」。東京ジビエ界隈の旗手であり、食べログでは百名店に選出されています。以前は西原に店を構えていましたが、2018年に当地に移転しました。
店内は厨房に面したカウンター席が6席ほどに、奥に半個室風のテーブル席。程よく照明が暗く旨いもの喰わせる感に溢れた雰囲気です。

千葉貴大シェフは青森県出身で、上京後は都内のフランス料理店で腕を磨いたのち渡仏。星付きレストランを中心に経験を積み、帰国後に当店を開業。
ワインは実に良心的で、料理に合わせたペアリングは100ミリリットルが5杯出て7千円ポッキリ。しかも最初はシャンパーニュと気前が良い。もうこの時点でこの店は大好きだ愛してる。
まずは「スパゲッティーカルボナーラ」。え？どこが？と思いきや、キジの肉をスパゲッティで巻き寿司のように巻いてカットした上で、チーズとコショウを散らします。ありそうで無い料理であり、大英博物館に展示したいくらいです。
続いて鹿のレバーのパテ。ネットリと濃厚な味覚であり、周囲を覆うクッキーが期待以上にカリっとしておりとても美味しい。序盤の酒のお供として最高の演出です。
ホワイトアスパラ。ソースはオランデージソースなのですが、ところどころオレンジの風味も香ってお洒落です。キャラメリゼしたヘーゼルナッツやマガモのベーコン（？）なども意欲的な組み合わせ。
パンはごくごくシンプルなものですが、噛みしめる度に穀物の風味が滲み出て来てしみじみ美味しい。もちろんおかわりもお持ちしてくれ、その都度温めてお出し頂きます。
お魚も出ます。カリッと香ばしく焼き上げたマダイであり、お魚そのものの味わいをストレートに楽しみます。付け合わせのリゾットはマダイとクジャクのエキスを用いているそうで、慎み深い味わいです。え？クジャク！？
クジャクのパイがやって来ました。私はフランス料理愛好家としてジビエに接する機会は多い方ですが、クジャクを食べるのは初めてかもしれません。これが結構、いやかなり旨い。山椒の風味もきいていてハイカラな味覚です。
メインはイノシシ。いわゆるウリボウサイズで綺麗な味わいであり、ミルキーなニュアンスさえ感じられます。それでいて歯ごたえはしっかりしており、屈託のない味わいです。
デザートはイチゴとマスカルポーネ。派手派手なビジュながら不思議とまとまりがあり、美的センスに溢れたプレゼンテーションです。もちろんお味も確かなものであり、アシェットデセールの大家に比肩するクオリティ。
お茶菓子のカヌレにはタヌキの脂を用いているそうで、最後の最後までジビエ尽くし。ごちそうさまでした。

以上のコース料理が11,000円で、ワインのペアリング7,000円にサービス料が10%付いてお会計は20,000円を切りました。これは紛う方なき神現場。とみに高級化が進むジビエ界隈ですが、このクオリティをこの価格で提供してくれることには感謝しかありません。ちなみに常連客にはカラスを出したりもするとのこと。季節ひいては個体ごとに全く味わいの異なる食材だけに、何度も通い続ける意義のあるお店です。オススメ！

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ピジョン（Pigeon）／代々木上原

クラシックなフレンチで名を馳せた「ピジョン（Pigeon）」が早稲田から代々木上原へと移転。駅から歩いて5分ほどで、私の大嫌いなカフェ「和のかし 巡（ワノカシ メグリ）」のすぐ近くです。話は逸れますが、「和のかし 巡（ワノカシ メグリ）」のグーグルマップの口コミは読み応えがあり、純粋に読み物として楽しいです。
テイクアウトやオンライン注文、同業者への卸などのビジネスも手掛けているようで、レストランとしては席数をかなり絞った上でシェフのワンオペ営業です。子連れもOKで、簡単に貸し切りに応じてくれるので、複数世帯が集う場合に便利でしょう。

広瀬シェフは「シェ・イノ」出身で、フランスで長くを過ごし帰国後も名だたる名店で経験を積んだそうで、かなりイカれたフレンチ大好きマンです。超ハイテンションなフランス料理ヲタクとも言える芸風であり、その偏執さには狂気すら感じます。
客数に比べてかなりのグラスワインが開いているので、ペアリングでお願いするのが良いでしょう。飲みたい量を告げれば杯数を自由自在に組み立ててくれます。インポーターにも出資しているようで、その繋がりからか提供価格も良心的です。
まずは赤ピーマンのムース。たっぷりのウニを乗せ、比内地鶏のエキスのジュレで旨味を補強します。どう考えたって旨い料理であり、泡と合わせて食べるにピッタリ。
ハタを熟成させ、ガスパチョと共に楽しみます。なるほど「インスタ萎えの店」と揶揄されるだけあって全く映えませんが、その味覚は最強クラス。ハタが旨いのは当然として、このガスパチョのレベルは相当に高いように感じました。
パンは自家製で、ゲストの来店時刻に合わせて焼き上げてくれています。素朴な外観ですが滋味あふれる味わいで、噛みしめるごとに穀物の深みが感じられます。
ロワール産のホワイトアスパラガス。合わせるソースは王道のベアルネーズ（マヨネーズみたいな感じ）であり、表面をバっと炙ってグラタン仕立てに。どストレートな味わいで素直に美味しい。ややもするとスパゲティ・ミートソースのようにすら感じてしまう、万人受けする味わいです。
お魚はヒラスズキ。ソースに岩海苔を起用し磯の風味が程よいアクセントとなっています。お魚そのものもムチムチとした歯触りで美味。
春子鯛をウロコ焼きで。春子鯛を鮨屋以外で食べるのは初めてかもしれません。旨味がギュギュっと詰まっており、塩気もつよつよで日本酒が欲しくなります。
ホワイトアスパラガス再登板。インスタ萎えの真骨頂とも言えるごくごくシンプルなバターのソースであり、素材の美味しさが活きています。ここまで極太のホワイトアスパラガスを1日に2本も食べた日本人は、おそらく我々だけであろう。
比内地鶏のレバーに土台はフレンチトースト。フレンチトーストといってもギャルが食べるような生っちょろいものではなく、濃厚ソースの旨味をダクダク吸った味濃いめ品。レバーも焼鳥屋で食べるそれとは次元の異なるボリューム感です。
メインは有名漁師のムッシュ松野から取っている蝦夷鹿。当店はシャルキュトリも兼ねているので肉類の取り扱いはお手の物。舌がザラつくほど鉄分が感じられ、濃厚な赤ワインが進む進む。ソースも負けじとパワフルで、それでいて全体のバランスの取れた逸品です。
デザートは全てシェフの手作りで、ランチもディナーも営業してその合間にこれらを全て作り切る仕事量には脱帽。毎日こんなに作っていますがテイクアウト客もいるのでキレイに全部はけるそうです。
私はスフレフロマージュにクラシックなガトーショコラを。いずれもメインディッシュに勝るとも劣らない骨太な甘味であり、見栄えばかりが強調される昨今のスイーツ事情に一石を投じる力強さです。
ハーブティーでフィニッシュ。ごちそうさまでした。

以上、さんざん飲み食いしてお会計はひとりあたり2万円といったところ。料理とワインの質および量を考えれば実に良心的な支払金額です。料理は全てがクラシックで茶色い料理がほとんどですが、伝統的なフランス料理を腹いっぱい楽しむにはうってつけのお店。王道中の王道を歩み続ければ唯一無二の存在になるという、興味深いお店でした。

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