抗酸化物質はなぜ効く?活性酸素を無害化する「電子の身代わり」メカニズム
活性酸素は「電子ドロボー」
これまでの記事で、活性酸素が「体のサビ」の原因だとお伝えしてきました。では、なぜ活性酸素はそれほどまでに有害なのでしょうか?
それは、多くの活性酸素が「ラジカル」という、非常に不安定で攻撃的な状態にあるからです。
物質の安定には「電子」がペア(対)になっている必要があります。しかし、ラジカルはペアのいない電子(不対電子)を持っており、いわば「電子が足りなくてイライラしている状態」です。
この不安定なラジカルは、安定するために、周囲にある正常な分子(細胞膜の脂質、タンパク質、さらには体の設計図であるDNA)から、無理やり電子を奪い取ろうとします。
電子を奪われた分子もまた不安定なラジカルとなり、別の分子を攻撃し始めます。この「電子ドロボー」の連鎖が「酸化ストレス」であり、細胞を傷つけ、老化や病気の原因となるのです。
<主な活性酸素(荒くれ者たち)>
- スーパーオキシドアニオン(O₂⁻•)
- ヒドロキシルラジカル(•OH) ※最も危険
- 過酸化水素(H₂O₂) ※ラジカルではないが仲間
- 一重項酸素(¹O₂)
抗酸化物質は「身代わりヒーロー」
この危険な「電子ドロボー(活性酸素)」から体を守るのが、「抗酸化物質」です。
抗酸化物質のメカニズムは、一言で言えば「自ら電子を差し出す身代わり」になることです。
電子ドロボーが正常な細胞を攻撃する前に、抗酸化物質が「どうぞ、私の電子を使ってください」と、自らの電子を差し出します。電子を受け取った活性酸素は満足して安定し、攻撃性のない無害な物質(水など)に変わります。
例:最強の敵「ヒドロキシルラジカル(•OH)」の場合
ヒドロキシルラジカルは、活性酸素の中で最も攻撃力が高く、DNAなども瞬時に傷つける猛毒です。抗酸化物質は、この最強の敵に「水素原子(電子を含む)」を与えて、無害な「水(H₂O)」に変えてしまいます。
(イメージ: 危険な•OH + 抗酸化物質 → 安全な H₂O + 仕事後の抗酸化物質 )
また、抗酸化物質の中には、ヒドロキシルラジカルが発生する原因(体内の鉄イオンと過酸化水素の反応)を邪魔して、そもそも発生させないようにする働きを持つものもあります。
電子を失った抗酸化物質はどうなる?
「では、電子をあげてしまった抗酸化物質は、新たな電子ドロボーになって危ないのでは?」と疑問に思うかもしれません。
大丈夫です。そこには2つの重要な仕組みがあります。
1. 攻撃性が低い
電子を失った抗酸化物質(抗酸化ラジカル)も不安定にはなりますが、元の活性酸素に比べて反応性が非常に低く、おとなしい性質をしています。そのため、他の細胞を傷つけることはほとんどありません。
2. 「抗酸化ネットワーク」で再生される
さらに素晴らしいことに、抗酸化物質はチームで働いています。これを「抗酸化ネットワーク」と呼びます。
例えば、細胞膜(脂質)を守るために電子を失ったビタミンEは、ビタミンCから電子をもらって復活(再生)します。そのビタミンCもまた、体内の別の物質によって再生されます。
このように、仲間同士で電子をパスし合い、チーム全体でリサイクルしながら体を守っているのです。
体を守る抗酸化チームの仲間たち
私たちの体には、大きく分けて2種類の抗酸化物質があります。
体内で作られる「抗酸化酵素」
もともと体に備わっている防御システムです。
- SOD (スーパーオキシドディスムターゼ):スーパーオキシドを分解。
- カタラーゼ/グルタチオンペルオキシダーゼ:過酸化水素を水に分解。
食事から摂る「抗酸化物質」
体内の酵素だけでは間に合わない分を、外から補給します。
まとめ
抗酸化物質は、自らの電子を「身代わり」として活性酸素に差し出すことで、活性酸素を無害化します。そして、仲間同士で助け合い(再生し合い)ながら、細胞の酸化(サビ)を防ぎ、私たちの健康を守ってくれているのです。
今日の一句
抗酸化 活性酸素を 無害化す
ストレス多き 人の守り手