本作では、謎の絵師写楽は、歌麿を始めとする蔦重の耕書堂サロンの仲間全員が作ったものという設定だが、いわゆる歴史上最も有力な写楽の正体、能役者斎藤十郎兵衛であることを匂わせるという蔦重の策に思わず唸った。(歴史とそう帳尻を合わすんだ!)
また、その斎藤をあの一橋治済を演じた生田斗真が二役。それにも理由があり、瓜二つの二人を入れ替え、あの性悪の治済を幕政の中心から引きずり下ろすという大胆な企て、そしてその痛快な顛末にもしびれた。
最終回では、前半で姿を消した蔦重の幼馴染で思い人だった花魁、花の井(小芝風花)のその後の人生も見せてくれ、二人の叶わぬ恋の思いがけない回収に、蔦重とともにほっこり。素晴らしい脚本だと思った。
ラストシーンは、自分の病気までも商売に生かし、死ぬ間際までおふざけをやり切った蔦重に乾杯。臨終の床で、おふざけ仲間が「へっ、へっ、へっ」と泣きながら踊る輪の中で、最期の言葉「まだ拍子木の音聞こえねえんだけど」には参った。この男の一代記に「ブラボー!」と叫びたくなった。つまり、当時の江戸だと「べらんべえ」と叫ぶところなのだろう。
あまり期待せずに見始めたけれど、横浜流星の渾身の演技、吉原の花魁たちの優美、江戸の商人たちのしたたかさや活気に魅了され、尻上がりに面白くなっていった。オープニングのジョン・グラムの勢いと疾走感に溢れたテーマ曲(「Glorious Edo」)も今となっては”ロス”を感じるほど。
本作での生田斗真の悪役ぶりは出色で、今後この手の悪役が彼に舞い込んできそうな予感がした。
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