日々の”楽しい”をみつけるブログ

福岡県在住。九州北部を中心に史跡を巡っています。巡った場所は、各記事に座標値として載せています。座標値をGoogle MapやWEB版地理院地図の検索窓にコピペして検索すると、ピンポイントで場所が表示されます。参考にされてください。

Fitbitと「身体の割れ窓」理論

日付 歩数 (Steps) 消費カロリー (kcal)
1. 2025年12月5日 23,471 歩 3,612 kcal
2. 2025年12月7日 21,287 歩 3,442 kcal
3. 2025年12月8日 20,850 歩 3,338 kcal

 

このデータは、私が仕事をおこなっているときに記録した「歩数」と「消費カロリー数」です。ありがたいことに、スマートウォッチは、私の身体活動における心拍数、歩数、睡眠の質、そして消費カロリーを淡々と記録し続けてくれています。でも、どれほど正確なデータが取得できたとしても、それを読み解く私の側に適切な「理論」と「解釈」がなければ、その数値は何の役にもたちません。

 

私は職業柄、身体的に高い負荷がかかる仕事を中心におこなっています。しかし、ずっと腑に落ちないことがあります。これだけの運動量があるにもかかわらず、体重が減らないどころか、太りやすい体質へと変化しているようにみられることです。

 

そこで、Fitbitの端末「Inspire3」のデータを再解釈してみました。

 

1. データが示すパラドックス:高負荷環境と停滞

まず、客観的な事実から確認します。 私の職場では、高強度の身体活動が断続的に発生します。私が常時装着(足首に装着)している「Fitbit Inspire 3」の記録によれば、繁忙時の活動量は以下の通りでした。

 

1日あたりの歩数: 約20,000歩以上

総消費カロリー: 3,000kcal超

ゾーン時間(脂肪燃焼ゾーン以上の心拍数): 十分な時間を記録

 

一般的なダイエットの熱量計算に基づけば、成人男性の基礎代謝と活動代謝を合わせても、これほどの消費カロリーがあれば、摂取カロリーがよほど過剰でない限り、体重は減少していくはずです。実際に、Fitbit上のカロリー収支計算では「アンダーカロリー(消費>摂取)」の状態が示されていました。

 

しかし、現実はデータ通りにはいきませんでした。体重は減少せず、むしろ身体の重さや疲労感の抜けにくさを感じる日々が続きました。「十分に動いている」というデータ上の事実と、「身体が絞れない」という現実の結果。この乖離を感じていました。単純な足し算引き算では説明がつかない、質的な要因が隠されていると考えられます。

2. 「ちびちび飲み」と「間食」の生理学

Fitbitは「動いた量」を正確に計測しますが、「食べたタイミング」や「質」までは自動で記録しません。そのため私は、自身の食事を摂ったタイミングや食事の内容も記録することにしました。その結果、データには表れない「隠れた要因」がわかってきました。

 

それは、甘い缶コーヒーやペットボトル飲料の「ちびちび飲み」と、仕事が終わったあとに摂取していた「甘い間食」です。

 

ここでの問題は、単純な「総摂取カロリーの増加」ではありませんでした。もちろん、それらの積み重ねも無視できませんが、より深刻なのは生理学的なメカニズム、すなわち「インスリン分泌の常態化」でした。

 

血糖値の乱高下と脂肪燃焼の阻害

食事をして血糖値が上がると、膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンは血糖値を下げる役割を持つと同時に、血中の糖分を脂肪として蓄える働きを持ちます。さらに重要なのは、インスリンが分泌されている間、身体は「脂肪合成モード」になり、脂肪の分解(燃焼)が強く抑制されるという点です。

 

私が習慣化していた「ちびちび飲み」は、以下のような悪循環を生み出していました。

 

  • 糖分の流入: 甘いコーヒーを一口飲む

 

  • インスリン追加分泌: 血糖値が上がり、インスリンが分泌される。

 

  • 脂肪燃焼の停止: たとえ仕事で激しく動いていても、インスリンが出ているため、身体はエネルギー源として体脂肪を使えず、血中の糖を優先的に使う。

 

  • 低血糖と渇望: インスリンにより血糖値が急降下すると、脳はエネルギー不足を感じ、再び甘い間食や飲み物を欲する。

 

つまり、私は3,000kcalを消費する激しい運動を行っていながら、同時に糖分を断続的に摂取し続けることで、身体のスイッチを常に「脂肪蓄積モード」に固定していたのです。これでは、どれだけ歩数を稼ごうとも、痩せるはずがありません。活動量が高いからこそ、身体は足りなくなったエネルギーをすぐに補給しようと、より強く糖質を求めていたとも考えられます。

 

3. 理論的枠組み:身体における「予測警備」

この状況は、書籍『アルゴリズムの時代』の中で紹介されている「予測警備(プレディクティブ・ポリシング)」、特に「プレッドポル(PredPol)」というアルゴリズムの事例に、よく似ています。

 

プレッドポルは、過去の犯罪データを分析し、未来に犯罪が起きる可能性が高い場所を地図上で予測するシステムです。このシステムは、未来を予言するわけではなく、あくまで「リスクの所在」を確率的に示すものです。

 

ここで大事なのが、犯罪学における「割れ窓理論(ブロークン・ウィンドウズ理論)」との関連性です。建物の窓が割れたまま放置されていると、その地域では管理が行き届いていないというシグナルとなり、やがてゴミのポイ捨てが増え、最終的には重大な犯罪が発生する土壌となる、という考え方です。ニューヨーク市警がかつて地下鉄の落書きや、無賃乗車といった軽犯罪を徹底的に取り締まることで、凶悪犯罪を減少させた事例がとても有名です。

 

身体への適用

私の身体管理において、「甘いコーヒーのちびちび飲み」は、まさにこの「割れ窓(軽微な秩序の乱れ)」でした。

 

  • 割れ窓: 甘い飲み物や間食の摂取。一回あたりのダメージは「軽いもの」であり、総カロリーへの影響もほとんどないようにみえます。500mlの、甘いコーヒー飲料のカロリー数はおおくて250kcalと、そんなに高くないです。

 

  • 重大犯罪: 肥満、糖尿病、メタボリックシンドローム。これらはある日突然発生するのではなく、環境要因の積み重ねによって引き起こされる。

 

  • アルゴリズム(Fitbit)の役割: デバイスが示す「心拍数の推移」や「睡眠スコアの低下」といったデータは、都市における「犯罪発生リスクマップの赤い四角」です。

 

Fitbitのデータは、それ自体が病気を診断するわけではありません。しかし、高い活動量にもかかわらず身体的パフォーマンスが上がらないというデータ上の異常値は、「このエリア(生活習慣)にリスクが潜んでいる」ということを知らせてくれるものでした。

4. 解決策:ケンタウロス的アプローチの実践

書籍『アルゴリズムの時代』では、機械と人間が協力してチェスを行う「ケンタウロス・チェス」が、人間単独やAI単独よりも強いパフォーマンスを発揮することが紹介されています。機械は膨大な計算と予測を担当し、人間は大局的な戦略と文脈理解を担当します。

 

この「ケンタウロス・モデル」を、私自身の生活にも応用できないでしょうか。

 

機械(Fitbit)の役割

機械には「客観的な事実の提示」を任せます。 「今日は20,000歩歩いた」「消費カロリーは3,000kcalを超えている」「安静時心拍数が通常より高い」といったデータを淡々と収集してもらいます。感情や希望的観測を排除した、冷徹な数字こそが、客観的な現状認識の起点となります。

 

人間(私)の役割

私は、そのデータに対して「文脈」を与え、「戦略的介入」を行います。 機械が「消費カロリーは十分だ」と示しても、人間である私は「しかし、インスリンの影響で脂肪燃焼効率は落ちているはずだ」と生理学的な知識を用いて解釈を修正します。

 

具体的には、以下のような行動の修正をおこないました。

 

  • 「割れ窓」の修復: 甘いコーヒー飲料を撤廃し、ブラックコーヒーまたはお茶に変更しました。これにより、断続的なインスリン分泌を断ち切ります。

 

  • 間食の時間見直し: お腹が空いたときの間食をきょくりょくやめて、どうしても糖分が必要な場合は、活動量がピークになる直前に限定して摂取するようルール化しました。

 

  • データの再監視: 修正後、Fitbitのデータがどう変化するかを観察します。体重の変化だけでなく、睡眠の質、日中の眠気や疲労感の質、ストレススコアが変わったかどうかを、主観と客観の両面から評価します。

5. 結論

この修正の結果、活動量はそのままに、体調と体重のコントロールが可能となりました。大事なのは、単に「甘いものをやめた」という行動の結果だけではなく「データを基に、隠れたリスク(割れ窓)を発見し、意図的に介入した」というプロセスそのものであったと考えます。

体重の推移

アルゴリズムやデータは、私たちに「正解」を教えてくれる存在ではないと考えます。それらはあくまで、私たちが気づかないパターンやリスクを検知してくれる道具であり、地図上の「警告灯」です。

 

書籍『アルゴリズムの時代』が示しているように、完璧なアルゴリズムはありません。Fitbitもまた、私が何を飲んでいるかまでは検知できませんでしたが、機械の欠点(データの死角)を人間が補い、人間の欠点(認知バイアスや甘え)を機械のデータが補うことで、人間は、より良い意思決定を行うことができると考えます。

 

機械の眼と人間の知恵を組み合わせていくことで、自分自身の身体をより適切に管理できるようになるのではないかと考え、継続して、心身機能の管理をおこなっていっています。