イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

『第76回NHK紅白歌合戦』に抱いた様々な違和感について

昨年のこの日はこのようなエントリーを掲載しました。

この"答え合わせ"を元日に掲載した『2025年の音楽業界における5つの注目点』、その答え合わせを記す(2025年12月31日付)で記し、その上で本日付エントリーでは2026年における注目点を掲載する予定でしたが、当初の予定を変更し今回は『第76回NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 2025年12月31日放送 以下"紅白"と表記)に対して感じたことを綴ります。

 

 

自分がネガティブな部分を人一倍目にしやすいという性質等に因るところも大きいかもしれませんが、今回の紅白についてはマイナス面が目立ったという印象です。

 

 

何より気になったのは司会陣の巧くなさでした。数秒、時には十秒近い沈黙が複数回あったこともさることながら、(台本を一字一句間違えずに進行することがデフォルトとは耳にしますが、その)台本の存在がありありとみえてしまう点等、対応力が前年から大きく下がったことを痛感しています。複数年司会を経験する有吉弘行さんの巧くなさもさることながら、何より綾瀬はるかさんを再度起用した紅白側の姿勢に疑問を抱きます。

仲野太賀さんに対する発言を面白いと捉えている方は多いかもしれませんが、名前間違いは純粋に失礼にあたるものでしょう。ともすれば紅白側がこのようなハプニングを狙って起用したのかもしれませんが、そうだとしても番組進行を遮断しかねず、また好いパフォーマンスの印象も消しかねない司会については再考を願います。実力がアナウンサー並とも評価された橋本環奈さんを下ろしたことは本当に残念です。

(司会陣については"3年縛り"というルールがあると耳にしたことがありますが、そのルールを破ってでも橋本さんを起用するか、もしくは音楽番組の司会を務める方を起用することを強く望んでいます。)

 

 

さて、司会陣に実力があれば、演出等の問題も気になりにくくなります。ゆえに今回は演出問題が際立ったと感じます。

 

たとえば演歌歌謡曲ジャンルにおけるワイプ問題。アイドルをパフォーマーに据える、芸人と共演する等は理解できても、パフォーマンス時に司会等がワイプで登場したり、果ては水森かおりさんのドミノ企画では水森さん自身がワイプ扱いとなりドミノが主役になることも。このジャンルからきちんとヒット曲が出れば、このようなバラエティ的演出に頼ることはしなくとも済むのではないでしょうか。

また前半に登場したアイドル曲は基本的に、他のテレビ番組ではみられないような極度な短尺化が行われていました。特に気になったのはM!LK「イイじゃん」において"So good"というフレーズがなかったこと。ダンサブルなアレンジによる"今日ビジュイイじゃん"が流行となったことは間違いないとして、しかしそこから"So good"へつながるいい意味での落差を楽しむことも、この曲の魅力であるはずです。

"So good"についてはたとえばMAZZELもYouTubeチャンネル(まぜべや)で語っていますが、このような楽曲の魅力を紅白側が理解しているならばあのような扱い(短尺化)はしないはずです。短尺化を行うならば他の音楽番組同様の(おそらく歌手側が用意する)短尺版を用いることを、紅白に対し強く求めます。たとえば特別企画枠や司会とゲストのやり取りを少し削るだけでも、パフォーマンス時間の確保は可能なはずです。

 

 

前半最後のVaundyさん、また後半にサプライズの形で会場に登場した(しかし実際は会場にいる方に事前にタオルが配られていたとみられる)矢沢永吉さんにおいては、観客がスタンディングで観賞していました。しかし矢沢さんのパフォーマンス時、観客席には座っている高齢女性の姿を確認しています。

おそらく観客側はその時間帯に立ち上がることを、サプライズ共々事前に説明されたのかもしれません。しかし年輩の方や足の不自由な方にとっては厳しいはずであり、まして周囲の方が全て立っているという状況には不安も覚えたのではないでしょうか。ならば事前にそのような方を最前席に据えることはできなかったのかと感じています。

またVaundyさんは「Tokimeki」の中でまたも観客を煽っています。紅白側は彼のライブパフォーマンスの再現を狙い、ライブでの人気曲(今年リリースではない作品)を披露させたと思われますが、しかしながら会場はVaundyさんの公演とは異なり様々な歌手のファンが集まる場所ゆえ、そこでの煽りはどう受け止められるのかを疑問視しています。先述したスタンディングへの違和感は、この考えに基づくところでもあります。

 

 

好評を博したパフォーマンスは音楽チャートでもきちんと反映される傾向にあります。その音楽チャートで2025年も大活躍したMrs. GREEN APPLEが、紅白のオープニングメドレー冒頭曲および白組トリを務め、また大森元貴さんは『あんぱん』スペシャルステージで「見上げてごらん夜の星を」を披露しています。その歌声が坂本九さんを思わせるところにも好感を抱いた次第です。

しかしながら当初大トリとみられていたMrs. GREEN APPLEは、後に出場が発表された松田聖子さんがその役割を果たす形に変更されています。紅白にてMrs. GREEN APPLEが登場した際、大トリと紹介されなかったのはそれが理由です。

松田聖子さんがデビュー45周年を迎え、紅白に復帰したことの意味は大きいとは考えます。しかしながら紅組白組としての出場歌手ではなく特別企画の方が大トリを担うこと、またパフォーマンス前に集中したかったのかもしれませんがメッセージを司会が代読し本人自ら語るわけではなかったこと等、不自然さは否めません。先に不自然な短尺化を記しましたが、ベテランや特別企画を優先しすぎる姿勢にも疑問を抱いています。

 

 

さて、福山雅治さんの紹介時に、楽曲制作の背景として戦争が採り上げられました。戦争は起きてはなりません。原爆の使用などもってのほかです。一方でその原爆問題に際し、aespaのメンバーを執拗に誹謗中傷する状況が続いたことを心から残念に思います。結果的にそのメンバーの方は体調不良として辞退したわけですが、強い違和感を抱き続けています。

そのメンバーによる行動を快く思わない方はいるでしょう。国際的に活躍する方ならばその写真が持つ意味を考えて発信することは必要だったと考えますが、一方で当時における日本の立ち位置が他のアジアの国々からどう思われていたかについても知ることも重要なはずです。それを理解しようとすれば、掛ける言葉に刃を含めないはずです。

同時に、NHK側がこの件についてどこまで責任を持って対応していたのかがみえてこないというのも私見であり、ともすれば病欠という事態に胸を撫で下ろしたのではとすら感じてしまいます。NHKは以前から問題を起こした方を起用しないことを徹底しながら、その点への理由を十分行ってはいませんでした。今回aespaを起用した段階でその態度は変わったものと期待したのですが、あまりにも残念な結末です。

エンタテインメント業界への願いは今後も記す予定ですが、反省ではなく半永久的な後悔だけを、それも誹謗中傷を是として行うことは、結果的にその組織や集団全体が熟考できないということを示すに十分でしょう。また、誹謗中傷者に対する日本の司法判断は未だ軽すぎるとも感じます。2026年は卑怯な態度ではなく対話でやわらかく変えていくこと、それを都合よく放棄する者にきちんと省みる環境を用意することを願います。

 

なお、昨日の朝には"ラッパー逮捕"という不穏な文言がXでトレンド入りしていましたが、この発言を笑いながらバラエティ特番で発信した方が紅白の司会を務めたことは音楽業界に対し失礼であるのみならず、これもまた反省ではなく後悔を求める(そしてそれを楽しむ)やり方にほかなりません。このような人の起用を紅白は止めるべきです。

たとえば薬物使用による逮捕は、薬物依存という問題が背景にあります。ならば依存症という病気を知ること等が大事になるのですが、お笑い業界にはその意識をブラッシュアップしようとする姿勢が足りていないと感じ続けています。

 

 

 

今回の自分の見方はかなり厳しすぎるものかもしれませんが、しかしながらまず何より司会陣の変更は必要と考えます。たとえば、他局ですが朝の情報番組を担当する山里亮太さんが務めてもいいのかもしれません。話術の巧みさのみならず、お笑い業界の方ですが"何を喋ったらアウトか(時代にそぐわないか)"を理解できているはずです。

 

またNHKは、星野源さんのパフォーマンス会場について司会(の台本)、およびテロップでもニンテンドーミュージアムの名を出しませんでしたが、それでは場所を提供した側に失礼ではないかと感じています。商品名を言わないことを徹底するとしても最低限の礼節は重んじることを強く願います。任天堂のゲームサウンドを用いた「創造」を選曲した以上、尚の事です。

 

最後に。往年の大ヒット曲を披露する歌手を今後起用するならば、声量が当時と変わらない、原キーで披露できる、さらには歌い方の癖を乗せていない方をもっと観てみたいという思いを抱いたことを記しておきます。

 

 

今年の紅白が改善することを、心から願います。