イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

デジタルヒットからみえてくる日本のアイドルソング需要、そして浮かび上がる機会損失について

最新12月24日公開分のビルボードジャパンソングチャート(集計期間:12月15~21日)では、男性アイドルによる2曲がトップ10内にランクインしています。

(上記CHART insightは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています(ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています)。また、以下に紹介するCHART insightも同様に、有料会員が確認可能なものとなります。)

 

Snow Man「カリスマックス」はアルバム『音故知新』よりデジタル先行リリース(アルバムはデジタル未解禁)。最新12月24日公開分ビルボードジャパンソングチャートでは17週連続で100位以内に登場し、通算在籍週数はSnow Manにおいて4位に。上位3曲(「D.D.」(45週)、「KISSIN' MY LIPS」(24週)および「Grandeur」(21週))はルックアップやTwitter指標存在時のヒットゆえ、「カリスマックス」の動向は特筆すべきと考えます。

(ビルボードジャパンは2023年度以降、ルックアップおよびTwitter指標を廃止しています。この点についてはビルボードジャパン、新年度からルックアップ・Twitter指標を廃止…チャートポリシー変更への私見と提案を記す(2022年10月28日付)にて紹介しています。)

そして順番は前後しますが、M!LK「好きすぎて滅!」は最新12月24日公開分にて同曲最高位を更新したのみならず、総合100位以内在籍はキャリア最長を更新。そして「イイじゃん」も、「好きすぎて滅!」のヒットに伴い再浮上を果たしています。過去曲や関連曲にもヒットが伝播することが社会的ヒットの条件と考えるならば、「好きすぎて滅!」はその域に達しつつあるといえます。

 

この2曲に共通するのは、いわゆる"トンチキソング"であるということ。そしてトンチキソングといえばSTARTO ENTERTAINMENT、もっといえば旧ジャニーズ事務所所属歌手が得意とするものだと捉えています。

("頓痴気"には人をののしるという意味があるゆえその使用を躊躇ったのですが、"トンチキソング"という言葉自体はポジティブに用いられていると捉え、敢えて使用した次第です。問題があれば削除等、対応を行います。)

たとえばアイドルのトンチキソング特集 - サウンドハウス(2022年5月6日付)ではSexy ZoneHey! Say! JUMPが紹介。また愛すべき「トンチキ」の世界~ヒャダインの歌謡曲のススメ#3 - うたびと(2020年10月27日付)ではトンチキソングを定義し、コミックソングとの違いを紹介、また旧ジャニーズ事務所所属歌手以外の作品も挙げた上で、少年隊「デカメロン伝説」や近藤真彦「ギンギラギンにさりげなく」が挙げられています。

 

Snow Manは「カリスマックス」で、「ブラザービート」以来3年ぶりにビルボードジャパン年間ソングチャートにランクインを果たしています(「ブラザービート」は2022年度年間84位、「カリスマックス」は2025年度年間80位)。「ブラザービート」はコミックソングという見方も強いようですが、このようなタイプの楽曲に対するニーズが大きいことが当週の音楽チャートからも証明されたのではないでしょうか。

しかも興味深いのは、Snow Manブラザービート」においてストリーミング指標が加点されていたということ。同曲のサブスク解禁は今年まで行われませんでしたが、ストリーミング指標はYouTubeのオーディオストリーミングもカウント対象に。動画がフルバージョンでYouTubeにアップされていたこともあり尚の事、動画を音楽サブスク的な形でチェックする方の多さがストリーミング指標加点につながったと捉えています。

(なお現在ではサブスク未解禁曲がストリーミング指標を獲得することはほぼなくなっています。これはサブスク未解禁曲の減少もさることながら、サブスクの浸透に伴い加点対象となる300位の再生回数水準が上昇しているだろうことが背景にあると考えます。)

 

 

今回紹介した2曲、そしてSnow Manブラザービート」の以前の動向も踏まえれば、STARTO ENTERTAINMENT側が旧ジャニーズ事務所時代に所属していた歌手の作品も含めてデジタルアーカイブを拡充させることは必須でしょう。というよりも、それができていないことで機会損失につながっているというのが厳しくも私見です。

結果的に毎回同じ結論となるのですが、しかしながらトンチキソングのニーズが日本で引き続き高いことを踏まえれば、STARTO ENTERTAINMENT側に機会損失が生まれていると考えるのは自然なことでしょう。またM!LK「好きすぎて滅!」ではトンチキソングの側面以外にも、たとえば哀愁漂うラテンテイストの音使いやアウトロ等からSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品の色合いを感じるに十分ゆえ、尚の事なのです。

 

 

これに似た感覚をJuice=Juiceそしてハロー!プロジェクトに対し、抱いています。

Juice=Juice「盛れ!ミ・アモーレ」はフィジカルシングル「四の五の言わず颯と別れてあげた」とのダブルAサイドとしてリリース。フィジカルセールス指標は「四の五の言わず颯と別れてあげた」に加点される一方、「盛れ!ミ・アモーレ」はTHE FIRST TAKEでの披露も相まって動画再生指標(上記CHART insightでは赤で表示)が急浮上、またダウンロード(紫)も高位置をキープし、今月には2週連続で総合100位以内に登場しています。

しかしながら「盛れ!ミ・アモーレ」には、先述した曲において好調なストリーミング指標(青)が加点されていません。これは同曲のみならず、ハロー!プロジェクトが所属歌手の多くにおいてサブスク解禁を行っていないことが背景にあるのですが、そのハロー!プロジェクトは今週に入りJuice=Juice「盛れ!ミ・アモーレ」に関する一部音源をサブスク解禁しています。

今回解禁されたのはライブバージョン、そしてTHE FIRST TAKE版となり、オリジナルバージョンではありません。ビルボードジャパンは米ビルボードと異なり、バージョン違いは基本的にオリジナルバージョンに合算しない形を採ります。またTHE FIRST TAKEの動画はTHE FIRST TAKE版の音源がリリースされればそちらに紐づけられるようになることから、オリジナルバージョンの勢いは後退する可能性が高いと考えられるのです。

 

ハロー!プロジェクトがJuice=Juiceのサブスク解禁に至ったのは、「盛れ!ミ・アモーレ」の好評、またそのことのチャートでの可視化が背景にあることは間違いないでしょう。しかしながらオリジナルバージョンを解禁しなかったのは、ともすれば"オリジナルバージョンは買ってください"という姿勢の表れではないかと捉えています。

そのような動きに対し、コアファンとみられる方からはオリジナルバージョンのサブスク未解禁に賛同する姿勢がみられます。その理由は利益面を踏まえ、またフィジカルセールスが減りかねないことを恐れて、との模様です。しかし前者においては売上高こそフィジカルが大きいとして利益面ではそこまで差は開かないでしょう。またフィジカルにおける廃盤の概念がないデジタルは、僅かでも着実に利益を上げ続けると考えます。

また、2025年度のビルボードジャパンTop Singles Salesチャート(ソングチャートにおけるフィジカルセールス指標の基となるチャート)での週間10万枚以上売上曲リストをみると、サブスクヒットを輩出したKAWAII LAB.所属歌手、またM!LKのフィジカルセールスが伸びている状況です。ネットのバズがライト層のコアファン化につながり、フィジカルセールス購入へ至らせるという流れもみえるゆえ、サブスク解禁はやはり重要です。

(上記表において、FRUITS ZIPPERについては作品推移を確認可能です。またCUTIE STREETは「キューにストップできません!」の前作となる「かわいいだけじゃだめですか?」が初週61,384枚(2024年11月20日公開分)、M!LKは「アオノオト」の前作となる「エビバディグッジョブ!」が初週71,036枚(2024年10月30日公開分)を、それぞれ記録しています。)

 

来週以降の動向をみない限り、機会損失と考えるのは違うかもしれません。Juice=Juiceがはじめてサブスク解禁を実行したことに安堵する一方、しかしオリジナルバージョンそしてアーカイブの未解禁は歌手、もっといえばハロー!プロジェクトに対し高まる(再)評価の機運につながりにくいのではというのが、自分の見方です。

ハロー!プロジェクトにおけるサブスク解禁の効果は、最近ではBuono!初恋サイダー」にて可視化されています。たとえば紅白出場を目指すならば音楽チャートでのヒットは必須であり、ならば尚の事サブスクでの全面解禁に踏み切ることを願うばかりです。