拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

2025-09-01から1ヶ月間の記事一覧

亡き夫と過ごした7日間 34

こうして彼は、世界中を旅する者となった。 かつて築いた財産はもう手元にはなかったが、 不思議と金に困ることはなかった。 立ち寄る先々で、彼はただ旅の出来事を語るだけでよかった。 面白おかしく、時に静かに。 そうして話す彼の言葉に、人々は耳を傾け…

亡き夫と過ごした7日間 33

旅に出てからの彼は、毎日をただ歩いた。 名も知らぬ町を訪れ、店先で地元の人と交わす何気ない会話に耳を傾けた。 市場のざわめき、子どもたちの笑い声、どこかから流れてくる笛の音。 そんな中で、彼は少しずつ表情を変えて行った。 ある日、旅の途中で知…

亡き夫と過ごした7日間 32

結婚しても、彼の日々は殆ど変わらなかった。 早朝に目を覚まし、机に向かい、書類と数字に没頭する。 屋敷の中にはもうひとりの住人が加わっていたが、 その存在は、ごく静かで、彼の生活の流れを乱すことはなかった。 朝食には彼女の手で温かな紅茶が添え…

亡き夫と過ごした7日間 31

孤児院の礼拝堂は、午前の光に包まれていた。 子どもたちの朗読する声が、控えめに反響している。 扉の陰からそっと覗くと、 黒い簡素なドレスに身を包んだ若い女性が、子どもたちの前に立っていた。 声を荒げることなく、しかし一言一言がしっかりと届く話…

亡き夫と過ごした7日間 30

教会の扉が、ぎい、と古びた音を立てて開いた。 秋の風が石の回廊を通り抜け、かすかに香炉の残り香を揺らした。 彼は足音を忍ばせながら、ゆっくりと中へ入っていった。 祭壇の蝋燭の光が、長い影を床に落とす。 ここは、彼が幼い日々を過ごした場所。 寒さ…

亡き夫と過ごした7日間 29

見習いとして仕えてきた事務所を、彼は自らの意思で離れる決意をした。 エドマンドは止めなかった。 むしろ、穏やかな表情で言った。 「これからは君自身の目で選び、自分の責任で動く時だ。」 彼は深く頭を下げてその言葉を受け取った。 彼は21歳になった時…

亡き夫と過ごした7日間 28

印刷工場へ退職の意思を伝えると、意外にもあっさりと受け入れられた。 「真面目に働いてくれたからな」と工場長は言い、 最後の給金には、少しだけ色をつけて送り出してくれた。 こうして彼は、長く働いた印刷工場に別れを告げ、 翌週からは、エドマンド・A…

亡き夫と過ごした7日間 27

靴磨きと印刷工場の両立は確かに大変だった。 でも、彼はこんな生活を2年続けた。 そんなある日、彼の元に1通の封筒が届いた。 彼が封筒を開けた瞬間、ほんのわずかな銀貨が転がり出た。 額は大きくなかった。だが、それは確かに戻ってきた金だった。 いや、…

亡き夫と過ごした7日間 26

自分にとっての大きな前進をした彼は、 此処からどんなふうにして行くのかを考えた。 同じやり方で、様々な企業の出資者になるのは、 少し無理があるのではないかと考えた彼は、副業を始めことにした。靴磨きだ。 印刷工場へ仕事に行く前の時間と、日曜日。 …

亡き夫と過ごした7日間 25

『ゴリラの人がゴリラとして生まれ変わる前のそのまた前の生に遡る。 これは、ゴリラの前々世の話だ。』 その魂ーーー彼は、孤児だった。 産まれて間もない頃に、ある教会のドアの前に捨てられていたのだ。 彼が育ったのは、教会が運営する孤児院だった。 彼…

亡き夫と過ごした7日間 24

「この彼女は、今も何処かで元気にしてるの?」 これはあの子からの質問だ。 『いや。この人生を全うして、こっちに還って来ていたけれど、また生まれたよ。 今頃、赤ちゃんだと思うよ。』 その魂は、今回のマイナスのエネルギーが届くようになった問題で、 …

亡き夫と過ごした7日間 23

「貴女を一目見た時にね。とても素敵な人だなって思ったの。 こんな人がうちで働いてくれたら、毎日がもっと楽しくなるだろうなって。 それで勇気を出して声を掛けたのよ。 あの時、勇気を出して声を掛けて本当に良かった。」 彼女が弁当屋の奥さんからこん…

亡き夫と過ごした7日間 22

「良かったら、うちで働かない?」 彼女の耳には、こんな言葉が届いたのだ。 驚きながら、しっかりと女性を見つめてみれば、 彼女よりも、ひとまわり以上、年上であろう女性がニコニコと笑っていた。 何故だか理由は分からなかったけれど、彼女は、この女性…

亡き夫と過ごした7日間 21

『俺は今、凄く極端な話をしたけれど、普通と呼ばれる人生の中で、 とても幸せな毎日を過ごす人も実はたくさんいるんだよ。』 その魂が持った夢は、この世界で大好きな人と出会って、 幸せな家庭を築き、毎日、幸せに暮らすこと、だったそうだ。 年頃になっ…

亡き夫と過ごした7日間 20

「いやーでも、俺、同じ人生をもう一回生きるのは嫌だな。」 パソコンから顔を上げたあの子は、この人生は一回で良いし、 他の人生も全部、一回ずつで良いと笑っている。 うん。私も嫌だ。この人生をもう一度生きるとか、絶対に考えられない。 もう、二度と…

亡き夫と過ごした7日間 19

「あ!そうだ!」 アレはどうだろうかと思った。 朝食を摂りながら、私はひとつ、思い出したのだ。 向こう側の取り組みのひとつとして、 動物に生まれ変わった魂がいると、夫はこんな話を聞かせてくれた。 「それならさ、その動物に会いに行くっていうのはど…

亡き夫と過ごした7日間 18

チーーーン 向こう側の事故によって、夫が我が家へ帰って来てから、5日目。 今朝も元気に夫がおりんを鳴らしたところから我が家の新しい朝が始まった。 夫がおりんを鳴らし終えたら、3人でコーヒーを飲むところまでが、 今の我が家での朝の流れだ。 「ゴリラ…

亡き夫と過ごした7日間 17

日が暮れて、辺りが暗くなる頃に、漸く家へと帰ることが出来た。 『ここをこんなふうにすると、ほら、こうなるんだよね。』 「あぁ!そんなやり方もあるのか!マジでお父さんって凄いわ。」 ただいまの声を掛けるのを辞めて、部屋の入り口から、 2人の様子を…

亡き夫と過ごした7日間 16

チーーーン 今朝も元気におりんを鳴らすのは、あの子でも、私でもなく、夫だ。 あれからの毎朝、夫は、何故か自分の仏壇に、手を合わせている。 「ねぇ、なんで、自分の仏壇に手を合わせるの?」 こんなふうに聞いてみたのは、夫と再会した翌朝のことだった…

亡き夫と過ごした7日間 15

長い散歩から帰って来た私は、早速、キッチンへと立つことにした。 辺りは少しずつ、暗くなり始めている。 「今日のご飯は何?」 キッチンに立てば聞こえて来るのは、こんなあの子の声だ。 今夜は、唐揚げを作ることに決めていた。 実は、昨日のうちに下ごし…

亡き夫と過ごした7日間 14

「ところで、マイナスのエネルギーの塊みたいな人たちは、今、どうしてるの?」 これは、密かにずっと疑問に思っていたことだった。 『多分、今もみんなで洗ってると思う。』 「え?マイナスのエネルギーって、洗えば落ちるの?」 『分からない。こんなこと…

亡き夫と過ごした7日間 13

目が覚めたら、既にあの子は起きていて、パソコンに向き合っていた。 「ごめん。結構、寝ちゃった。」 少しだけ眠るつもりだったのに、 朝とは呼べない時間まで眠ってしまったようだ。 『一回は起こしたんだけどさ、無反応だったから。疲れているのかなと思…

亡き夫と過ごした7日間 12

「え?なにそれ、大変じゃん!」 これは、あの子の声だ。 夫が、今こうして此処にいる理由を詳しく説明して聞かせたのだ。 『そうなんだよ。今の向こう側がどうなっているかも分からない。』 「向こう側の人たちってさ、テレパシーみたいなのとか使えないの…

亡き夫と過ごした7日間 11

「はい!どーも!ただいま!!また帰って来ちゃったよ。」 相変わらずに元気いっぱいのあの子が、車に乗り込んで来た。 時間は、深夜23時45分。 あの子が電話をくれたのは昨夜のことだった。 ーーー俺、明日、そっちに帰るよ。ーーー 夫と会話を楽しんでいた…

亡き夫と過ごした7日間 10

その夜は、腕を振るって料理を作った。 夫はもう、食べることは出来ない。でも、香りを楽しむことが出来るのだ。 だから、今夜は、夫が好きだったものばかりを準備した。 『おぉ!!凄い!豪華だね。』 とても嬉しそうに食卓を見つめた夫は、香りを楽しんで…

亡き夫と過ごした7日間 9

夫の話は、何もかもが驚く話ばかりだ。 一息吐きたくて、コーヒーへと手を伸ばせば、 夫の分のコーヒーが、一口も減っていないことに気が付いた。 「あれ?コーヒー。飲まないの?」 さっき、確かに一緒にコーヒーを飲んでいた筈だったのに。 『俺は、もう、…

亡き夫と過ごした7日間 8

例えば、動物へと生まれ変わって、 この世界の様子を客観的に観察しに来ている魂がいたり、 それから、まだ生まれ変わる予定ではなかったけれど、 どうにかしなければいけないという想いから、 急いで支度を整えて、人間として生まれ落ちた魂もいる。 『因み…

亡き夫と過ごした7日間 7

私たちは、幸せになるために、この世界に生まれて来た。 この世界へと誕生した瞬間に私たちは、 向こう側の皆からも盛大な祝福を受けるのだと言う。 【幸せになりなさい。】 その深い祈りに応えるように、私たちはこの世に産声を響かせる。 それはただの最初…

亡き夫と過ごした7日間 6

『俺は今、プラスのエネルギーの話をしたけれど、 それはマイナスのエネルギーも全く同じなんだよ。』 愚痴、不平不満、そして、陰口。 このような行動にはマイナスのエネルギーが発生し、 それらもまた伝染して行くのだと言う。 「あぁ、それ。分かるかも知…

亡き夫と過ごした7日間 5

『人はね、皆、幸せになるために、この世界に生まれて来るんだよ。』 人生は修行だ、とか、学びだ、とか、 人生に対する考え方や捉え方は様々に出来るけれど、 その大前提にあるのは、幸せになるためなのだと、夫は、こんな話を聞かせてくれた。 修行のよう…