宮本常一の仕事、20年かけ次代へ 周防大島の出版社
「忘れられた日本人」で知られる山口県周防大島出身の民俗学者、宮本常一(1907~81)が書いた故郷に関わりのある文章を中心に再編集した「宮本常一ふるさと選書」の刊行が没後40年を機に始まった。宮本常一記念館が編集、みずのわ出版(周防大島町西安下庄)が版元となって今年から20年計画で毎年1冊ずつ出していく予定だ。
関西の地方紙記者や出版社の編集者を経て、97年に創業したみずのわ出版を1人で切り盛りする柳原一徳(いっとく)代表(51)は神戸市生まれ。2011年に拠点を神戸から母の実家があった周防大島に移し、みかんを栽培しながら人文社会分野の出版を続けてきた。
「周防大島が生んだ大事な人」と位置づける宮本の聞き書きを中心とした文章を、小中学生にも読める形で伝えようと選書を企画した。3月末に出した第1集は「古老の人生を聞く」。島外の旅や暮らしをつづった「世間師(しょけんし)」、漁師として長崎・対馬に移り住んだ「梶田富五郎翁」と「ふるさと大島」、「奇兵隊士の話」の4編を収録した。
柳原さんと解説を執筆する高木泰伸・宮本常一記念館学芸員(39)、宮本に薫陶を受けた監修の森本孝・元日本観光文化研究所員(75)の3人で再読。初出の原稿と著作集を読み比べ用語の使い方について吟味したほか、ルビをつけ、第1集では写真や図版など約40点を新たに掲載した。
柳原さんは「第1集には宮本の思想の核が表現されている作品を選んだ。自身の記憶や地元の日常を描いた宮本の記録は周防大島の財産。地域の人に長く読んでもらうため、毎年刊行することにした」と話す。
戦後史を専門とする高木学芸員は「第1集の収録作が執筆された1960年前後から振り返る生活史の記録として貴重だ。宮本の活動は移住などふるさと回帰の源流にもなっている」と指摘する。
「古老の人生を聞く」は85ページ、1320円(税込み)。第2集は来年4月に刊行予定。




































