
著者:ジェーン・スー
新潮社 新潮新書
ほとんどの人間はある日急に要介護状態になるわけじゃない。
その前段階、衰え始めて今までできた事が段々出来なくなる時期が来て(それが介護未満)これが結構長く困難で、やがて要介護者になっていくんですな。
年は取りたくないよね。(しみじみ)
あたしの母は数年前に亡くなったんですが、父は元気でまだ介護が必要な年齢でもないので敵が間近に迫ってるわけではありませんが、最近この本がやたらオススメに上がってくるので読んでみた次第です。
親が老いて出来ない事が増えていく時期に子どもはどう向き合えばいいのでしょうか。
しかも離れて暮らしていたら。
今の仕事を辞める事や一緒に暮らす事は作者の選択肢にはありません。
これはちょっと介護レポートみたいになっています。
父親は現在87歳ですが、82歳から始まった介護未満の状況を多忙な作者がどう遠隔サポートしたかという内容です。
親ひとり子ひとりだから愛情はある。
でも仕事があるし一緒には暮らせない。
じゃあ自分にできる事は何なのか。
トライアルアンドエラーで様々な方法を試しては失敗を繰り返し、最終的に解決策にたどり着くプロセスが書かれています。
作者の父親は高齢男性にはアルアルの、料理もできない、後片付けもできない、買い物もできない、家事全般はなんもできない生活力ゼロの人でしてね。
母親が早くに亡くなった後、父親には複数の女性の影があったようですが、まあ父の人生だし女手があれば助かるからと見て見ぬ振りをしていたらしいのです。
ところが女性の方も高齢になり入院でもされたんじゃないかと思うんですが、父上は82歳にしてひとり暮らしすることになりまして。
こりゃあアカンよ!困った!
自分は仕事が忙しく側にはいられませんし。
こんな場合に頼れる福祉があるの?つっても、高齢とは言え肉体的にも精神的にも元気は元気だから要介護認定はされません。
仮に要支援認定されたとしても、この父上じゃデイサービスとか無理。
エラソーに怒鳴ったりして出禁になりそうですやん。
「男は仕事。家事は女の仕事」という時代を生き抜いてきた高齢男性。
日常的な家事はすべて妻に頼ってきましたから、妻に先立たれ独居老人になると生活の維持が困難になります。
もう久し振りに家へ行って見たら、チョー汚部屋。
それを片付ける作者の苦労話が延々と続きますが、父上に相談せず勝手に捨てちゃうとトラブルになる事必至なのが問題でして。
そしてなんでか娘が汗だくで片付けてる側で手伝いもせずにテレビを観てる父上。
ちっとは手伝えや。
と思ったけど、父親を非難しても関係がこじれるだけで何の解決にもならないんでしょうね。
怒りを抑え、年寄りを怒っても時間の無駄とばかり常に冷静なのには感心致します。
何度か作者のラジオを聞いた事がありますが、独善的で強い口調があたしはチョット好きになれませんでしたが。
ラジオのトーク同様の押し付けがましさで、父親の生活を立て直すために今の父ができる事は何かできない事は何かを見極め、必要な支援サービスを調べかかる費用を計算し戦略を立てます。
娘が望むゴールは「父が精神的・肉体的に健やかなひとり暮らしを1日でも長く続ける事」です。
「こんな事ばかりなぜ私ひとりがやらねばならぬのか」と孤独になったり、時にはなんでもかんでも任せっきりの父に腹を立てたりもします。
怒涛のような家の片付けから始まり時あたかもコロナ禍でして、ワクチン接種とか、年寄りは重症化するリスクが高いから会いに行かぬようにするとか、そう言えばあったよね。あんな事こんな事(遠い目)
老いた親とは気持ちのぶつかりあいは意味をなさないから、相手をうまく懐柔しつつビジネスライクに接するというのは参考になりました。
輪をかけて爺さんになってゆく父上の食生活の心配。
ウーバーを使ってみたり(作者が父上の好きそうなものを注文して届けてもらう)冷凍食品の食べ方を教えたり、これが女親だったらこうも苦労せずに済んだのにと思ってしまった。
皿にラップをかけるなんて簡単な事さえ指先の皮脂と筋力が減った老人には難しいらしいのです。
足裏を鍛えるシックスパッドのやつとか、思いついたモノはどんどん送り、離れていても至れり尽くせりではないですか。
でも自費のホームヘルパーを週3で頼むとか、金で解決できることは金で解決すればいいけど、一般家庭には無理でしょう。
いったいどこまでが子どもの責任なのだろう。
介護制度は進んだのかもしれないけど子どもの負担も大きい。
誰だって働いているのだから、仕事をしながらどこまで親をサポートするべきなのでしょうか。
介護前でこれだけ面倒なのには呆然としてしまいましたよ。