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「なぜ歌と踊りは「自然」ではなくなったのか? ―一八世紀フランス演技論とキケロ『弁論家について』」勉強会報告

2022, 日仏演劇協会会報 復刊10号

Abstract

本発表は執筆中の『西洋演技論史序説 歌と踊りのない演劇はなぜ生まれたのか?(仮)』の一部を紹介 するものであり、リアリズム演技論をその原理から問いなおすことを企図している。西洋近代演技論にお いて「自然」という概念は歌や踊りといった音楽性の排除を促す機能を持っていた。「自然な」演技とは、 歌唱的・舞踊的要素を排除した演技のことだった。だが歌や踊りもヒトという生き物にとって「自然な」 営みである。ではなぜこの概念がそのような機能を持つに至ったのか。それはこの概念がキケロの「弁論の自然本性(natura orationis)」という概念に由来するためである、と いうのが本発表で提示した一つの回答である。