人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/シェラ・デ・コブレの幽霊

アマプラで観た映画です。
1964年制作、アメリカの怪奇探偵映画です。

 

 

 

 


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【あらすじ】
建築家と心霊調査員というふたつの顔を持つ、ネルソン・オライオン。
ある日、資産家のマンドール夫婦から心霊調査の依頼を受ける。
盲目の夫・ヘンリーの亡き母親から電話がかかってくるというのだ。
オライオンはマンドール夫人ことヴィヴィアと、納骨堂へ調査に向かう。

 

【ひとこと感想】
恐怖はおいそれとコントロールできないと思い出させる、『世界一怖い映画』。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①逸話に事欠かない作品
②現象自体は普通
③「信じてはいないけど怖い」

 

 

【①逸話に事欠かない作品】
この作品につく謳い文句・エピソードといえば。

『史上最高に怖い映画』
『あまりに恐ろしい映像描写で、上映中に体調を悪化させる者が続出』

ゆえに長らくお蔵入りとなり、幻のホラー作品として語られていたが、
大阪のテレビ番組・『探偵!ナイトスクープ』で2009年に取り上げられて話題となった。

また、Jホラーの監督も少なからず影響を受けている。

 

と、盛りだくさん。
そんなん観るしかないですよね。アマプラありがとう。早急に配信再開してください。(強欲)

そんな本作の全体的な個人的所感は、『悪夢めいた』
モノクロゆえか幽霊の嘆き声か、小さい頃、こんな感じの恐ろしい夢を見たような気がしてきます。

映像自体は古さを感じず、地味にオーバーラップの演出が好きです。

墓場に並ぶ墓石を、都会のビル群に。
納骨堂のベンチに置かれた謎の薬瓶を、浜辺の人影に。

それぞれ重ねて画面転換するの、惚れ惚れとしました。

 

【②現象自体は普通】

作中で起こる心霊現象だけを羅列すると、

・死者からの電話
ポルターガイスト(ソファーの座面が魚のごとき跳ねる)
・死者の嘆き声
・幽霊の出現

などです。つまり王道です。

幽霊の造形は、『白黒ネガ反転させた顔面』
(モノクロなので分かりづらいですが、血まみれ)

レントゲン写真みたいな印象で、それが油絵から小さく浮き出たり、バーンと近づいたりします。
1967年の合成なので決して精巧ではないですが、迫力がありました。

他にも、ノーモーションで風と音の心霊現象が起こったり、

 

ヴィヴィア:「何も感じない? 何かがいる」

 

というセリフで不安感を煽ったり。

特に良かったのは、音量を絞りに絞ったBGM。


ピーリーリ―――― ア゛ア゛――――


という甲高い音と嘆き声のミックス。
それがうっすら聞こえるような気がする。気のせいか? と考えるうちに、なんとなく不安になっていくのです。

今ほど人工的な光が幅を利かせていない1960年代、これを真っ暗な映画館で喰らったら確かに怖いな、と思いました。

(加えて、盲目の人が心霊現象に遭ったらめっちゃ怖いだろうなぁと想像しました)

けれど物語は、もっと恐ろしい、根源的な恐怖を描いていたのです。

 

【③「信じてはいないけど怖い」】

ネタバレしますと。

マンドール家に取り憑いていたと思われたヘンリーの亡き母上、無関係でした。

家に現れた白黒ネガ反転幽霊は、かつてオライオンが手がけた事件――シェラ・デ・コブレという土地で起こった殺人事件の被害者。

『死者の電話』は、マンドール家の(やたら圧が強い)家政婦・パウリナの仕業でした。
その目的は、ヘンリーを怯えさせて、屋敷と土地を売らせること。

このふたつの事実を繋ぐのが、妻・ヴィヴィアの存在です。

実はパウリナはヴィヴィアの実母でした。

この親子は、かつてシェラ・デ・コブレで、『アワヤスリカ』という幻覚剤を用いたオカルト詐欺を働いていた。

その幻覚剤の過剰投与で亡くなったのが、タイトルにもなった『シェラ・デ・コブレの幽霊』の、元となった女性教師。

彼女は殺された恨みを抱いて、パウリナ・ヴィヴィア親子の前に出現していたわけです。

つまりまとめると。

『偽オカルト事件に、モノホンの幽霊が絡んできた』

ってコトです。

このパウリナさんがまたやべぇ人で。
通りすがりの旅行者(?)に幻覚剤をかけてラリらせ、金をむしり取る。
さらには娘にも幻覚剤を飲ませる。

現代の分かりやすい言葉を使うと、『毒親』です。

ヴィヴィアはそんな母親から逃げました。

そしてヘンリーと結婚し、自分の家庭を作り、出張もこなすキャリアウーマンにもなりました。

けれど母親のパウリナに再び見つかり、挙句に、夫を騙して家を奪い取れと命じられ――言うことを聞いてしまいました。
ヴィヴィアの行動について、当然の疑問が生じます。

 

ヘンリー:「何故断らなかったのか?」

 

嫌なら拒絶しろとヘンリーは妻に言います。
けれどオライオンは、短く返します。

 

オライオン:「恐れる人はいませんか?」

 

そう、ヴィヴィアは理由を告げていたのです。

 

ヴィヴィア:「死を引き伸ばせると思った」

 

これらのセリフこそ、
この恐怖映画の根幹なのでしょう。

 

 

ヴィヴィア:「幽霊を信じてないけど怖い」

 

これは調査開始時、ヴィヴィアが言った言葉です。

信じていない。けれど、怖いものは怖い。

母親のことは愛していない。捨てることさえできる。

けれど、怖いものは怖い。
言うことを聞かなかったら命の危機さえ感じるほどに。

だから夫を騙す手伝いを断れなかった、という。


だからこそ、彼女は笑った。
シェラ・デ・コブレの幽霊相手に怯え、許しを乞う(けれど決して償わない。罪を認める以外の道があると叫ぶ)母親の姿に。

けれど、母親が幽霊に殺される寸前、

 

ヴィヴィア:「ママ――!!」

 

小さい子のように叫んだ。母親を呼んだ。
そのあと、涙も出さず、真顔になって自首を選んだ。

けれど、車で警察に向かう途中で、……。

 

【まとめ:監督の名前で驚いた】
監督のジョセフ・ステファノが、 『サイコ』 の脚本の人だと知って納得しました。

あの作品も『母親というもの』の恐怖をこれでもかと描いていた。
(そもそもヘンリーが死者の電話をとても恐れたのは、「相手が母親だったから」でしょうし)

 

〝信じない方には関係ない話です〟

 

という言葉も出てきたように。
幽霊も『母親の影響力』も、信じない(=ピンと来ない)方には、本当に関係ない話なんでしょう。

 

「人は皆呪われている」
「生きるものすべて呪いから逃れられない」

 

そんな言葉も重く響いた、『世界一怖い(ものを描いた)映画』でした。

 

【余談:とはいえ、ほっこりシーンもある】

①オライオンさんちの家政婦、メリー・フィンチさんとのすっとぼけたやりとり。
昔のシリーズものの探偵ドラマみたいでした☺️

②オライオンさんの浜辺のナンパシーン。
まじであれ何?🤔

 

 

次回は6月2日 6月9日月曜日、
1998年制作、アメリカのSFコメディ、
トゥルーマン・ショー』の話をします。

( ;ω;)<もう1週間、原稿のためお休みいただきます……

 

今月は13日の金曜日があるのでジェイソンの話もします!

 

 

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【わたしのたまごだったセカイ】

声優志望の高校生が直面する、
『夢を叶えることのリアル』を描いた
痛くて苦しい青春もの(ホラー要素あり)です。

本日、完結しました!
ご興味ある方、お読みくださいますと嬉しいです🐣

今週はとうとうジョジョマガジンの発売! 他にもいろいろある! 情緒が忙しい!

よろしくお願いします!

 

 

 

鳥谷綾斗