虎の孤独を超える、殺し屋サムライの生き様とアラン・ドロンの渋さを堪能せよ。

フランス映画「サムライ」

 

 

渋い。渋過ぎる映画だ。

 

「侍の孤独は他の誰の孤独よりも深い。同等の深いものがあるとすれば、森にいる虎の孤独だろう ――『武士道』より」冒頭でキャプションが入る。視聴者に森の虎以上の孤独をとくとご覧あれ、と紹介されるサムライ、実は新渡戸稲造の『武士道』からではなく、監督の創作文だという。ちょっと侍の意味合い間違えてる?ではあるけれど、いいんす。原題『LE SAMOURAI』。日本の侍を完璧仕事人のヒットマン、ジェフ・コステロに見立て、一匹狼の殺し屋の孤独を描く。

 

カナリヤの鳴き声と途切れ途切れに通る車の音。暗い室内のロングカットから、ふと煙草の煙が見え、ベッドで横になって煙草を燻らせる男に気付く。ジェフ・コステロの隠れ家。かっこいい始まり。カラー作品だけど、モノクロ映画のような雰囲気がある。

 

ジェフ・コステロを演じるアラン・ドロンのかっこよさがこれでもかと山盛り。本作でのドロンは渋さに比重が寄っていて、シビれる。トレンチコートにシャポーの出で立ちで街に溶け込む。でもかっこよすぎて目を引くので目立って無理。コートの襟を立てて顔を隠してターゲットの元へ。仕事に出掛ける前の身支度でシャポーのつばをシュッ、シュッと指先で整える姿が粋。

 

高級ナイトクラブで危なげなくターゲットを仕留め終わり店を出ようとした時、クラブのショーに出演しているピアニスト、ヴァレリー(カティ・ロジェ)とばったり出くわし顔を真面に見られてしまう。

ショートカットがお似合いのヴァレリー。登場人物の中で唯一無垢でクリーンな雰囲気を纏う人。キーパーソンに相応しい華がありながら、静かな落ち着いた人物像に釘付け。素敵。

 

店を足早に出たコステロ。恋人にアリバイを頼んであるし、念のためもうひとつのアリバイも作っておいた。だのに、警察の一斉捜査で参考人のひとりとして普通に警察に連行されるのが意外な展開。

 

ナイトクラブの従業員達から面通しを受けるコステロだが、シャポーの効果か、意見が分かれる。顔をばっちり見ていたはずのヴァレリーは「絶対に彼ではないと思うわ」と証言。逮捕出来ず、がっくりする刑事(フランソワ・ペリエ:右)。

 

コステロは放免されるが、刑事は怪しいとみて部下に尾行させる。仕事が成功したのに警察からの疑いが晴れていないと、殺しの依頼人の仲介者から殺されそうになり、自分を殺そうとする依頼人を探してケリをつけに行くコステロ。警察、依頼人が絡み、サムライはどう落とし前をつけるのか。渋い決断をとくとご覧あれ!