< いつも行ってる定食屋さんでウン十年ぶりに出会ったプラスチックケースの「3色ふりかけ」 感動した >
昔から随分通っている定食屋さんなんです。今の女将さんは2代目で、先代の女将さんの娘さん。
働き者のお婿さんが厨房に入りっぱなしで、和洋中、なんでもサクサクッと作ってくれます。
昭和の空気感満載の小さなお店。っていっても30人ぐらいは入りますけどね。
焼き魚の注文が入ると、ガーガーうるさい換気扇を回しながらなんですけど、店内は煙にまみれちゃうんですよね。換気扇ッ、音だけかよ! ってツッコミも入ったりします。
でもまあ、その店に来ている客は慣れっこなんで「すいませんねえ、きょうのサバは特に脂がのってるのよねえ」って謝って歩く女将さんに、コクンコクンとニッコリ頷いて、本格的に文句を言うような人はいませんです。
味もね、昭和の味なんです。特に旨いってメニューがあるわけでもなし、値段も普通だし、ボリュームも普通、なんですけど飽きない味。けっこう常連客もたくさんいるんです。
居心地がイイ昭和の定食屋さん。ってことになるんでしょうかね。
で、その日その定食屋さんにいつも通りに行って、しょうが焼き定食。900円。
「はい、おまちどうさまあ」
ってトレイに乗っけて女将さんがカウンターに持って来てくれます。カウンター席は板壁に向き合っていて、背中側からトレイごと置いてくれるんですね。
ま、いつも通りの配膳です。
カウンターにトレイを置きながら女将さんが小声で言いました。
「ふりかけ、要る?」
「は?」
応える方も自然、小声になっちゃいます。
「ふりかけ、あんのよ。懐かしいでしょ」
「なんで小声?」
「常連さんだけに出すことにしてんの。ただ置いておくと、1人でいっぱい使っちゃう人もいそうでしょ」
「はあ、じゃ、お願いします」
っていう小声の会話があって、持って来てくれたのが、ホントに懐かしい「丸美屋 3色ふりかけ」
のりたま、たらこ、ごましおのトリオ!
うひゃひゃ~! でした。プラスチックの入れ物自体が、たぶん昔から変わってないんじゃないかっていうフォルム。

その日は2時ごろに行ったんで、そもそも客数は少なかったんですけど食べ終わる頃には誰もいなくなってました。
女将さんが中休みの合図に暖簾をしまい込みながら、
「今、熱いお茶淹れなおしてあげるからね。どうだった、ふりかけ、お客さんも懐かしい年頃でしょ、あはは」
ってことで、誰もいないんで今度は小声じゃなくって普通のトーンで、熱い渋茶を飲みながら、ふりかけ話をちょっとしたんであります。
近所のスーパーでふりかけの安売りをやってたんで、箱買いしたんだそうでした。
「あのね、今ほら、令和の米騒動で、みんなご飯の代わりにそばだとかうどんだとかにしてるって言ってるじゃない。米がないんだからしょうがないわよね。古古米とか古古古米とかも出したけど、絶対量が少なくなっちゃったわけでしょう。うちなんかも仕入れるの大変だった時期もあったからね」
女将さんは立ったままで早口にしゃべります。
「ところがね、今年ね、ごはんが少なかったはずなのに、ふりかけの売り上げが過去最高だったらしいのよ。人気なのよ。それで、そこのスーパーの店長も卸のセールスに押される感じで大量に仕入れちゃったんだって。
最初は自分の家で食べるのに1個だけ買ったのよ。それでダンナと食べてみたらさ、懐かしいわおいしいわで、これ、お客さんたちにも喜ぶ人、いるわよねってことでね、箱買いしたの。でも出すのは常連さんたちだけにしたのよ。タダってなると悪ふざけみたいにやっちゃう人、いるからねえ」
そういう迷惑系のヤツなんか、来るの? って聞いたら、ときどき七味やらコショウやらをわざと撒き散らすヤツがいるらしいんでありました。
その店はカウンターにもテーブルにも、塩、しょう油、酢、ラー油、七味、コショウの普通の調味料と一緒に、マヨネーズも置いてあるんですが、ほとんど1本全部を皿にあけちゃって、ほとんど残して帰る客もいたそうです。
ふりかけを調味料として置いちゃったら、あっというまになくなっちゃうだろうから、小声で常連客たちだけに提供するってことだったんでした。
いくら小声で提供しても、見た目でバレちゃうでしょ、って気もしますけどね。
変なベクトルの「気はこころ」ってことなんでしょうか。
置いてあるマヨネーズは中くらいのサイズですけど、全部出しちゃって食べないっていう明らかな迷惑行為。
でもねえ、なんたってお客さんだから、マヨネーズってタダじゃないのよって文句も言えず、なんだそうです。
そんなヤツは熱々のフライパンでひっぱいたってイイんじゃないかって思いますけどねえ。そうもいかないんでしょうねえ。むむう。
閑話休題、ふりかけです。
ふりかけって、昭和のイメージですけど、いつからあるんでしょうね。もっと前からあるんでしょうか。
ちょっと調べてみますと、ふりかけって遅くとも鎌倉時代にはあったんだそうです。
米飯は弥生時代からっていうのは今は縄文時代からってことに代わっているんだそうですけど、常食になったのはいつごろなんでしょう。
ま、別に米飯じゃなくたって、粟飯でも稗飯でも、ふりかけを工夫していた可能性はあるんでしょうけどねえ。
鎌倉時代には上流階級は米飯だったとして、そのごはんの友、ふりかけってどんなものだったのか。
「田麩(でんぶ)」「楚割(すわやり)」、「花鰹(はなかつお)」っていうのが記録に遺っているんだそうです。
「楚割」っていうのは、鯛だとか鮫の身を細かく切って、塩漬けにしてから天日干ししたものだそうです。
「すわやり」っていう読み方、違うんじゃないの? って思ったんですけど、樹の幹からまっすぐ伸び出た若くて細い枝のことを「すわえ」って言うんだそうで、「すわえわり」の音変化で「すわやり」なんだそうですけど、なんかね、聞いたこともないですし、です。
「田麩」も今のピンクの甘いそぼろ、桜でんぶなんかじゃなくって、サカナの身をほぐしただけの、しょっぱいものだったんでしょうね。
現代人からしてみますと、ごはんの友っていうより、どちらかというと酒のアテって感じがしないでもないですね。
「花鰹」はあれですよね、ねこまんま。昔からあるんですねえ。でもまあニンゲンサマの食べものです。
ふりかけっていいますか、赤飯にごましおっていうのは室町時代からあるんだそうです。
ごましおの「しお」って、あれ、なんなんでしょ。ちょと不思議な存在ですよね。
なんかね、ごはんをそのままで食べるんじゃなくって、なんかひと味欲しいんだよねえっていう、日本人特有のDNAがふりかけ文化を醸成させて来ているのかもですねえ。
なんにせよ日本独自に発生発展したふりかけです。
今現在のふりかけが完成したのはいつごろなんでしょう。
これには定説があって、おそらくそれが真実なんだろうと思われます。
大正時代の初期、1913年ごろに、熊本県の薬剤師「吉丸末吉(すえきち)(1887~1973)」が「御飯の友」っていう商品を作ったのが、ふりかけの始まりってされているんですね。
大正時代、日本人はカルシウム不足だったそうで、だったら「魚を骨ごと細かくして、美味しく味付けをしてご飯にかけて食べればいいじゃないか」っていう発想を吉丸末吉が実現したのが「御飯の友」だそうです。
今は熊本県のふりかけメーカー「株式会社フタバ」が「御飯の友」を作って販売しています。100年を超える歴史的商品ですね。

ふりかけの始まりはごはんの味変っていうんじゃなくって、栄養補助っていう役割だったんですね。
「御飯の友」が全国的に浸透していくなか、10年ちょっと遅れて1925年に登場してきたのが丸美屋の「是はうまい」
イシモチっていう魚と昆布を粉末にして調理したふりかけだったんですが、当時はふりかけっていう名前は使っていなかったみたいです。
そして太平洋戦争後の1960年になって丸美屋は「是はうまい」に甘く加工したたまごを加えた「のりたま」を発表します。
でました! これです、昭和世代がふりかけといえばコレ! っていうのがこの「のりたま」でしょねえ。

発売するとたちまち人気商品になったようです。さらに1963年からは当時人気だったテレビアニメ「エイトマン」のシールを「のりたま」に入れたんですね。
すると子どもたちに圧倒的に支持されて「のりたま」は大衆食材として定着したんですねえ。
3色パックの発売は1968年から。
発売開始から全国制覇を果たした「のりたま」だったわけですが、ふりかけといえば魚粉でしょ、っていう常識を覆した画期的な商品なんですね。
たまご味の顆粒ときざみ海苔っていう組み合わせ。旅館の朝食のような高級感を家庭で手軽に味わえないかっていう工夫をしたのは、丸美屋の創業者「阿部末吉(すえきち)(1902~1984)」
あれ? ですよね。
「御飯の友」の開発者は「吉丸末吉」
そして「のりたま」の開発者は「阿部末吉」
ふりかけは2人の「すえきっつぁん」のおかげで食卓を賑わしてくれているんですねえ。
「すえきっつぁん」エライ!
「のりたま」以来、いろんなふりかけが登場して来ていますけど、のりたまの牙城を崩すような商品は出てきていないみたいです。
ちなみに、農林水産省が推している「3つの「み」がつくふりかけ」っていうのがあります。
みずな、みそ、セサミと3つ「み」がつく食材を使って、炒めて作るふりかけ。
ま、旨いでしょうけど「のりたま」あるいは3色パックにせまれるかどうか。ね。興味ある方は是非お試しあれえ~。
そうそう、最後に、米が少なかった時期にふりかけが過去最高の売り上げをあげたっていう件なんですけど、ふりかけって、ずいぶん前から物価高になると売り上げが伸びる傾向があったんだそうです。
なんでかって考えてみれば、諸物価が高騰すればわたしたち庶民は節約モードの生活になりますよね。
そうなるとふりかけのレーゾンデートルがごはんのちょい足し的存在から、いっぱしのおかず扱いになるってことなんじゃないでしょうか。
さらに言えば、今回の令和の米騒動って、米がスーパーに並んでないよっていうニュースが流れると、すっかり忘れ去られていた日本人としてのDNAが呼び覚まされて、普段、そんなに米を食べていない世帯も米を求めて走り回った結果、米不足に拍車がかかる、ってことだったんじゃないでしょうかね。
農水大臣がアンポンタンだったから、ばっかりじゃないでしょねえ。
古古米大臣からお米券大臣にころころ代わっていますけど、食料自給率全体の問題も考えてお仕事していただきたいですね。
最後に、ふりかけの活躍を酒のアテにってことで、よくやっているのをご紹介させていただきます。
油揚げをフライパンで焦げ目が付くぐらいに焼きます。
カリカリになったら適当な大きさにきざんで、のりたまを散らします。ザッツイット!
お好みで醤油をかけてもいいかもです。
も1つ。
しょう油マヨネーズチーズのりたまオムレツ!
むっふっふ。レシピらしきものは、ないのであります。蒸留酒に合います。
ポケモン世代って、エイトマン知ってますかね? 知らないよねえ。。。ま、イイんですけどねえ。
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