「55万円のランタン」の理由は“狂気の加工精度”――もはや家電ではない? バルミューダ「Sailing Lantern」の本質とは【家電で読み解く新時代|Case.21】
55万円の理由は“狂気の加工精度”
起業家であり、家電スペシャリストでもある滝田勝紀氏が、連載「家電で読み解く新時代」と題して、テクノロジーの奥に潜む“時代の空気”を紐解きます。今回取り上げるのは、ジョニー・アイブ率いるLoveFromとバルミューダが共同開発した「Sailing Lantern」。
55万円というプライスタグの裏にあるのは、華やかなブランドストーリーではなく、圧倒的なモノづくりへの執念だ。クラシックな航海用ランプというオブジェクトを、宝飾レベルの加工精度と現代のテクノロジーで再定義したプロダクト。
今回は社長である寺尾玄氏とともにプロダクト開発に世界中を伴走し続けた、バルミューダのプロダクトデザイン部 部長 島田尚樹氏の言葉とともに深く分解していく。

素材と精度の“段違い”
Sailing Lanternを理解するうえで、まず語るべきはその素材と加工だ。この製品は「家電」ではなく、むしろ「ジュエリー」の文法でつくられている。

外装フレームには、高品質な316テンレス鋼が削り出しで使われ、そこから徹底的な鏡面研磨が施される。硬度の高い金属を精密に切削し、研ぎ上げていく工程は、いわゆる量産家電ではほとんど見られない。
ひとつひとつの部品は職人の手で磨かれ、深く濡れたような光沢を放つ。要所にはステンレスに18Kのメッキが施されたアクセントパーツが組み込まれ、素材自体が装飾を兼ねている。
とりわけ異例なのがガラスである。一般的な照明機器や家電では、成形ガラスをそのまま使用するのが通常だが、このランタンでは1つのガラスを切削と研磨によって精密に形作っている。
それもデザインのためではなく、防水防塵の考え方らからステンレスのベースとぴったり組み合わさるようになっているのが特徴だ。
「ガラスは普通、削ったりしません。でもこれは削って、磨いて、透明度と金属との面合わせを上げています。見た目はもちろん、光の屈折も含めて設計しているんです」。
金属とガラスの境界線を徹底的に消し去ることで、ジュエリーのような異物感のない一体感が生まれる。精度そのものが造形の美しさを支えているのである。
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