広島大学大学院の研究グループは、福山大学、北海道大学・大学院、北里大学との共同研究により、冬眠する哺乳類が、極端な低温環境でも筋肉の幹細胞(サテライト細胞)を死なせず保持する一方、筋形成に関わる遺伝子群の働きを大幅に抑制し、あえて再生を遅らせる仕組みを解明した。
一般に、骨格筋は長期間使われないと萎縮し、筋肉形成のための幹細胞の働きも弱まる。しかし、冬眠動物は数か月の極度の不活動・低体温でも筋肉量をほとんど失わない。理由は研究されてきたが答えは出ていない。
今回の研究では、冬眠する動物(シリアンハムスター、シマリス、ツキノワグマ等)と冬眠しない動物(マウス、ラット等)の細胞をそれぞれ4℃の低温に24~48時間さらしたところ、冬眠しない動物の細胞は大半が死滅、冬眠する哺乳類の筋肉から得た細胞はほぼ死なずに生存した。解析の結果、冬眠動物の細胞では、低温耐性機構は、フェロトーシス(鉄依存性細胞死)を抑える細胞内の抗酸化システムによるものと判明した。
さらに、低温環境を生き延びた細胞では、筋肉の形成に必要な遺伝子群が大きく抑制されており、サテライト細胞が“生存するが再生は遅らせる”という特殊な待機状態にあると分かった。実際にハムスターでの筋損傷モデルでも、冬眠中は筋再生が著しく遅延していた。
今回、冬眠動物が「細胞死は防ぐが、エネルギー消費の大きい炎症・再生反応は抑える」というエネルギー節約型の“冬眠モード”を幹細胞レベルで備えていると分かった。将来的には、臓器や細胞の低温保存技術、筋萎縮予防、人工的な冬眠・低代謝医療の開発など、ヒト医療への応用拡大が期待されるとしている。

