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将来宇宙輸送システム、米国での打ち上げ実証を断念–自社エンジンに切替、再使用ロケット開発に遅れか

2025.12.24 07:00

藤井 涼(編集部)

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 将来宇宙輸送システム(以下ISC)は12月23日、2025年度内を想定していた米国での「ASCA 1.0」離着陸試験を中止したことを発表した。米国政府の閉鎖により、当初予定していた期間内に米連邦航空局(FAA)から許可を得られる見通しが立たないため。自社開発のロケットエンジンに切り替えて、SBIRフェーズ3基金の条件となる2027年度中の打ち上げを目指す。

 ISCは2022年の創業以来、日本発の再使用型ロケット開発プロジェクト「ASCA(アスカ)ミッション」の実現に向けて開発を進めてきた。ASCA 1.0はその初期フェーズにあたる技術実証機で、開発スピードを早めるために米ロケットエンジン開発企業「Ursa Major Technologies」のエンジンを購入して、米国内で離着陸試験をする予定だった。

 ASCA 1.0ミッションの中止により、再使用型の技術開発は当初より遅れる可能性があるが、同社では衛星の軌道投入に関する技術開発を優先する。まずは国内で開発する自社ロケットエンジンを使って、使い捨て型の人工衛星打ち上げ用ロケットの開発を進めるという。

浮き彫りになった米国の政治リスク

 「一番難易度の高いロケットエンジンを自社で開発していると、それだけで5〜10年かかってしまう。米国で実績のあるエンジンが使えればかなりの期間短縮になり、エンジン以外の再使用に向けた技術課題に専念できると思っていた」と、ISC代表取締役の畑田康二郎氏は振り返る。しかし、米国との連携は政治リスクなどの不確実性も伴うことか浮き彫りになったという。

ISC代表取締役の畑田康二郎氏

 同社によれば、米国への貨物輸出許可は7月に得ていたが、米国政府の閉鎖により、飛行試験のための許可をFAAから2025年度内に得られる見通しが立たなくなってしまったほか、機微情報にアクセスするための技術援助協定(TAA)の追加申請も難しくなった。また、トランプ関税で新たに1億円が科される可能性が生じ、対応により追加の弁護士費用も発生することが明らかになったという。

 これらの「技術開発以外の困難な状況が顕在化した」(畑田氏)ことから、米国での実証を中止せざるを得ないと判断したという。あわせて、米国法人の体制も大幅に縮小し、代表を除く10名の従業員との雇用契約を12月をもって終了することを決めた。

畑田氏「大きく後退したとは思っていない」

 米国製エンジンの使用は断念した一方で、国内では液体メタン燃料によるエンジン開発に関して一定の成果を得られていることや、協定を結ぶ荏原製作所よりロケットエンジン用電動ターボポンプの実液試験を完了したという報告を受けたことなどを踏まえて、国産ロケットエンジンに切り替える。再使用技術獲得のため、2026年中に小規模な離着陸試験を国内で実施する予定だ。

 同社では、アジャイル型手法を軸にした独自の研究・開発プラットフォーム「P4SD(Platform for Space Development)」を運用している。設計から試験結果まで開発に関わる全てをデータ化し、クラウド上で一元管理してきたという。当初からアジャイル型の開発を選んでいたことで、今回のようなエンジンのインターフェース切り替えにも素早く対応できていると畑田氏は説明する。

 創業時より実現を目指していた再使用型ロケットの技術開発が遅れる可能性があることについては、「仮に離着陸実証を優先したとしても、いきなり初回から成功とはいかないだろう。同様に重要な技術である衛星分離と軌道投入にチャレンジしつつ、機体を着水させるところの落下データをしっかり取得できれば、将来的な再使用に向けた技術的課題を明らかにできると思っている。順番が入れ替わることで再使用が大きく後退したとは思っていない」と述べた。

 ただし、SBIRフェーズ3基金のステージゲート審査が2026年3月に迫っており、残り短い期間で審査を通過できる状態まで間に合わせられるかが最重要課題となる。仮に審査を通過できなかった場合には、別の資金調達を模索する必要があり、同社の今後の開発スケジュールに大きく影響を与えそうだ。

【編集部注:12月24日】タイトル及び本文に当初「再使用ロケット開発は先送り」と記載しましたが「再使用ロケット開発に遅れの可能性」に修正しました。

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