読書感想文「役所のしくみ」久保田章市 (著)

 地方自治法の教科書であり、地方行政の外側から地方役場に飛び込んだ良書のルポだ。
 何より、実例に基づいていてわかりやすいし、ストレートな表現が面白い。市長を3期つとめた本人が気取らず、正直に書いている。本人自身が書いているのがわかる。とは言え、このわかりやすさとは、地方自治の現場や市町村役場にいる人にとってのわかりやすさなのが、厄介でもある。これから、市町村役場の職員を目指す人にとってはイメージしにくいことも多いはずだ。やはり、首長を目指す人にとっての教科書、と言っておくのがいいだろう。
 久保田前市長は問う、「政策と施策の違いはわかりますか?」。政策をつくるのは、市長及び議会。施策を考えるのは自治体職員。つまり、行政課題に対する方針や方策が政策。この政策の実現のための具体的な対策が施策となる。案外、わかりにくいものだし、概念的だったりする。実際は明確じゃなかったり、アウトプットやアウトカムとも関わっていたりする。
 また、久保田前市長の独特の表現の「ポツンと自治体」が面白い。通勤時間40分程度に人口20万人以上の大きな都市がないことをいう。大きな都市があれば、通勤者を相手に徹底した子育て支援に取り組むことができる。しかし、「ポツンと自治体」は、まず「働く場」の確保が最優先!だ、という。実にごもっともだ。
 さらに、久保田前市長は、首長に勉強してもらいたい3つとして、1)郷土の歴史・文化・実物、2)人生論や組織経営、3)新しい知識や施策のヒントを提唱している。さすが、いかにも大学教授として中小企業経営を専門とされた方らしい。
 やはり、首長、特に市長をめざす方にとっての「役所のしくみ」だ。きっと、久保田塾を開講すると人気になるだろう。