
- 1.名曲「丸の内サディスティック」の魅力と認知度のギャップ
- 2.【Aメロ解釈】上京したての苦悩と「リッケン620」への憧れ
- 3.【サビ解説1】音楽用語「マーシャル」「ラット」に込められた衝動
- 4.【サビ解説2】「ベンジー」の正体と「ピザ屋の彼女」の意味
- 5.【深堀り考察】「僧」や「警官ごっこ」に隠されたもう一つのメッセージ
- 6.まとめ
1.名曲「丸の内サディスティック」の魅力と認知度のギャップ

椎名林檎さんの代表曲『丸の内サディスティック』は、リリースから長い年月が経っても愛され続ける名曲です。
この曲は、1999年に発売されたファーストアルバム『無罪モラトリアム』に収録された一曲であり、実はシングルとして発売されたわけではありません。
それにもかかわらず、カラオケの人気ランキングでは常に上位に入り、多くのアーティストにカバーされるなど、日本を代表する楽曲の一つとなっています。
しかし、多くの人がこの曲のメロディや雰囲気を楽しんでいる一方で、歌詞に登場する独特な用語の意味を正しく理解している人は意外と少ないのが現状です。

最近の調査によると、現役大学生の92%がこの楽曲を知っているものの、歌詞に登場する「ベンジー」という言葉の意味を理解しているのは、わずか11%に過ぎないというデータがあります。
歌詞の中には、音楽用語や特定の人物へのオマージュ、さらには少し刺激的な言葉遊びがふんだんに散りばめられています。
意味がわからなくても十分に格好いい曲ですが、歌詞に込められたメッセージや用語の背景を知ることで、この曲の世界観をより深く楽しむことができるはずです。
この記事では、歌詞の謎を一つひとつ紐解いていきましょう。
2.【Aメロ解釈】上京したての苦悩と「リッケン620」への憧れ

物語の始まりであるAメロ部分の歌詞には、夢を抱いて上京してきた主人公の切実な現状が描かれています。
「報酬は入社後並行線で」というフレーズからは、会社に入っても給料が上がらず、生活が楽にならない様子が読み取れます。
また、「東京は愛せど何も無い」という言葉は、憧れて出てきた東京の街に対する愛着と、そこで何も掴めていない自分への虚無感が入り混じった、上京したての若者特有の感情を表していると言えるでしょう。
これは、福岡から上京し、デビューまで苦労を重ねた椎名林檎さん自身の当時の姿が投影されているとも考えられます。

そして、このパートで特に印象的なのが「リッケン620頂戴」というフレーズです。
「リッケン620」とは、「リッケンバッカー」という楽器メーカーが製造しているギターのモデル名のことです。
続く歌詞に「19万も持って居ない」とある通り、当時の価格でおよそ19万円ほどする高価なギターでした。
楽器店が多いことで有名な「御茶ノ水」を舞台に、欲しいギターがあるけれどお金がなくて買えないという、貧しくも音楽への情熱を持った若者の姿が鮮明に浮かび上がってきます。
単なる物欲の話ではなく、音楽で成功したいという強い渇望が表現されているのです。
3.【サビ解説1】音楽用語「マーシャル」「ラット」に込められた衝動

サビに入ると、専門的な音楽用語が次々と登場し、主人公の感情の高ぶりが表現されます。
まず「マーシャルの匂いで飛んじゃって大変さ」という歌詞ですが、「マーシャル」とは、ロックバンドなどが使用する大型のギターアンプのメーカー名です。
アンプ自体から匂いがするわけではありませんが、ここでは大音量で音楽を鳴らした時の高揚感や、ライブハウスの熱気などを「匂い」として表現し、それによって「飛んじゃう(トリップする)」ほど夢中になっている状態を描いていると解釈できます。
音楽に没頭することで、現実の辛さを忘れて絶頂感に浸っている様子が伝わってきます。

次に登場する「ラット」という言葉は、ネズミのことではなく、ギターの音を歪ませるためのエフェクター(音響機器)の商品名「RAT」を指しています。
歌詞の中で「ラット1つを商売道具にしている」と歌われていることから、この主人公がミュージシャン、あるいはそれを目指して活動している人物であることがわかります。
この「ラット」は、椎名林檎さんが敬愛する「ニルヴァーナ」のカート・コバーンや、後述する「ベンジー」も愛用していた機材として知られています。
たった一つの機材を武器に東京で戦おうとする、ハングリーで力強い意志を感じさせるフレーズです。
4.【サビ解説2】「ベンジー」の正体と「ピザ屋の彼女」の意味

この曲の最大の謎とも言えるキーワードが「ベンジー」です。
結論から言うと、ベンジーとはロックバンド「BLANKEY JET CITY(ブランキー・ジェット・シティ)」のボーカル&ギター、浅井健一さんの愛称です。
椎名林檎さんは浅井健一さんの熱狂的なファンであり、この曲はいわば彼へのラブレターのような側面を持っています。
歌詞に出てくる「ベンジーが肺に映ってトリップ」という表現は、彼への憧れが強すぎて、その存在が自分の身体(肺)に入り込んでくるような感覚や、彼の音楽に心酔している状態を表していると考えられます。

また、2番のサビに登場する「ピザ屋の彼女になってみたい」という不思議なフレーズも、実はBLANKEY JET CITYに関連しています。
これは彼らの楽曲『ピンクの若いブタ』の歌詞に登場する設定を引用したものです。
つまり、単にピザ屋で働きたいわけではなく、浅井健一さんが描く歌詞の世界の登場人物になりたいという深い憧れを示しているのです。
さらに「あたしをグレッチで殴って」という衝撃的な歌詞の「グレッチ」は、浅井健一さんが愛用しているギターのメーカー名です。
大好きな人の愛用するギターで殴られたいと思うほど、彼に対して激しい愛情と衝動を抱いていることがわかります。
5.【深堀り考察】「僧」や「警官ごっこ」に隠されたもう一つのメッセージ

『丸の内サディスティック』の歌詞には、さらに深いダブルミーニング(二重の意味)が隠されています。
「将来僧に成って結婚して欲しい」という歌詞の「僧」は、一見するとお坊さんのことですが、実は椎名林檎さんが影響を受けたニルヴァーナのカート・コバーンを指しているという説が有力です。
カート・コバーンは仏教に改宗した経験があることや、彼が患っていた「躁(そう)鬱」の「躁」とかけているとも解釈されています。
つまり、日本の「ベンジー」と海外の「カート・コバーン」という二人のロックスターへの想いが交錯しているのです。

また、「最近は銀座で警官ごっこ」という歌詞は、ローリング・ストーンズの『Cops and Robbers』という曲からの引用であり、夜の仕事や刺激的な生活を連想させる「ごっこ遊び」を示唆しています。
歌詞全体を通して、「肺(High)」や「映って(鬱って)」のように、言葉の響きに精神的な高揚と落ち込みの意味を重ねている部分も見受けられます。
これらは単なる言葉遊びにとどまらず、音楽(ロックンロール)こそが、お金では買えない最高の「ぶっ飛び方(生きる活力)」であるという、椎名林檎さんの強い信念と美学が込められているのです。
6.まとめ

この記事では、椎名林檎さんの名曲『丸の内サディスティック』の歌詞に込められた意味について解説しました。
①上京の物語
東京で成功を夢見るも、お金がなく欲しいギター(リッケン620)も買えない若者の現実が描かれています。
②音楽用語の謎
「マーシャル」や「ラット」はロックに必要な機材であり、音楽に没頭して日常を忘れる様子を表現しています。
③ベンジーの正体
ベンジーとは「BLANKEY JET CITY」の浅井健一さんのことであり、歌詞全体が彼への強烈なリスペクトと憧れで構成されています。
④深い言葉遊び
「僧」がカート・コバーンを指していたり、同音異義語を巧みに使ったりと、聴き手が想像を膨らませられる仕掛けが満載です。
一見難解に見える歌詞ですが、一つひとつの言葉の意味を知ると、音楽への情熱や切実な想いが痛いほど伝わってきます。
次にこの曲を聴くときは、ぜひこれらの背景を思い浮かべながら楽しんでみてください。
参考:







































































