狂った秋祭からもう1週間が経ってしまった。時間が経つのが早すぎやしませんか? 翌日から風邪気味となったが、ようやく体調も回復傾向。あの過酷な状況下で1日12バンドも観たことになるのだから、そりゃあ疲れますわな。このところ、「疲れる、疲れた」とつぶやきがちで、周りを不快にさせている僕である。すまん。10月13日、さいたまスーパーアリーナで開催のLOUD PARK 25に行ってきた。
前回開催は2023年3月のこと。コロナ禍明け、約6年ぶりの宴の復活で注目を集めたうえに、ヘッドライナーはPANTERAである。他の出演者も文句のつけようのない粒揃い。東京会場は幕張メッセだという。遠いなあ。交通費も結構な額になる。ならば、思い切った行動に出よう。実家の地の利をいかして、大阪会場で観ることにした。東京と比べてバンド数は少ないうえに、周りになんにもないインテックス大阪だ。ホスピタリティうんぬんは端から期待せず、出演アクトを熱い視線で見守るのみ。友人との奇跡的な再会も楽しみ、忘れられない一日となった。
で、今回の2年ぶりのラウドパークである。会場がさいたまスーパーアリーナというのは、まあ許す。というのも、個人的に、幕張メッセにはあまり良い思い出がないからだ。コンクリートむき出しの床も足腰に悪いですしね。似たような大会場だが、さいたまのほうが駅近で、建築物としてまっとうに思える。通路に軽食を出す売店があるのも利点だ。
前回、変則的に大阪での参加となったとはいえ、僕はこのメタル祭の皆勤賞なのである。そして、これをささやかな誇りとしている。生活をやりくりしながら、年に一度の轟音見本市を観続けてきたことは確実に心の栄養となっている。各人が胸に感慨を宿して、好きなように過ごすフェスティバル。僕はそんなふうにこの宴を位置づけてきた。
出演アーティストが発表されるたびに、今回は新機軸だと感じてはいた。大御所やレジェンドの安定感に頼るというよりは、今の時代の要請に応じた格好なのかな。若い日本のバンドの数が目立つのも、とても良いことだ。どうやら、PARKWAY DRIVEとBULLET FOR MY VALENTINEのダブル・ヘッドライナーということになるらしい。前者は個人的にまだ観ぬ怪物、後者はお馴染みの大好物。70年代や80年代の音楽を偏愛する人からすれば何のことやら、であるが、それなりに納得の二大看板といえよう。歌モノ(文化系)というよりは、メタルコア(体育会系)の匂いがするイベントだ。ある種の物足りなさ、寂しさも感じるけれども、それは、うん、まあね……。
物販レーンが優先されるなどのVIP待遇GOLDチケットには目もくれず、できるだけ安価な券種を買い求める。今回は自由席20,000円と指定席22,000円が勝負の分かれ目となっていると判断した。両者ともに後方スタンディング・エリアの利用が確約されている。自由か指定か、差額はたったの2,000円。経験上、さいたまスーパーアリーナの演奏中の暗がりで座席を確保するのは苦労が大きい。ここで、お得意のクリエイティブマン会員先行を利用しない手はない。無事に指定席の購入を済ませたわけだが、僕は214ゲートの前から2列目(前列はすべて空席のため、実質1列目)を引き当てた。しもてから斜め60度くらいの角度でステージを眺める感じ。贅沢は言えない。じゅうぶん、じゅうぶん。
開催の数日前に場内マップが公開された。今回はメインとなるULTIMATE STAGEとサブ的なEXTREME STAGEの2ステージ制らしい。うん……。とても嫌な予感のする舞台配置だ。同一会場内に2つのステージがあれば問題ないのだが、それなりの距離を歩いて、“隣の会場”まで移動する方式なのだ。これは疲れる。過去のラウドパークにも採用されたことがあるシステムだが、観客の不満が爆発したのだろう、以降あまりお目にかかったことがない運営である。「指定席購入者用自由席エリア」という、聞いたこともない一角の存在も気になる。
僕は前方で暴れ回るというよりは、できる限り多くのバンドを、じっくり観覧(≒見物)したいタイプなのだ。このステージプランだと、各バンドの頭か尻尾の1、2曲は諦めて、隣のステージに移動せねばならない。自由席の人など、気が気でないだろう。よほど体力に自信がある人ならよいが、長丁場のラウドパークを生き抜くためには、適切な休憩環境が必要だ。
自分の身を守り、音楽に集中するため、グッズ購入は早々に諦めた。BULLET FOR MY VALENTINEのハート形のデスメタル・ロゴのやつがいいかなとも思ったが、「開場後にまだ残っていればラッキー」ぐらいの思いで家を出た。僕は過去に、お目当てのグッズ(当時は安価だったし、ピンとくるものいくつもあった)を手に入れるために始発で出発したことが幾度もある。あれは若かったからできたことだ。本格的な馬鹿だ。睡眠不足で一日中爆音を浴びて、良いことなんてひとつもなかった。
開演の10:30ギリギリを狙って会場入りするつもりだったが、オープニング・アクトの出番は10:00らしい。そんなこともあって、開場の9:30を目指して、いざ、さいたま新都心。入場待機列でペットボトルが没収されていく。水ぐらいいいじゃないか、死んでしまうじゃないか、と思ったところで容赦ない。飲み物は中で買えということなのだろう。手持ちの飲料をゴクゴク飲み干しては、係員が広げるビニル袋にポイポイ投げ込むお客さんたちである。
さいたまスーパーアリーナの場内に入った。そうそう、この感じ。認めたくはないが、故郷に帰ってきた心境。無機質な廊下をズンズン進めば、レコード会社各社のブースが……あんまりないなぁ……。昔は何社も机を並べて、サンプラーCD、ステッカー、ピックなどを配っていたものだよ。おじさんはこの時点でとても寂しい。愛する「トゥルーパー」社が奮闘している光景はうれしかったが。
そういえば、以前は入口で配布していた、タイムテーブルの小さい紙(遠足のしおりのようなもの)も消えてしまった。さらに言えば、いつの頃からか、ホットパンツをはいたキャンペーンガールのおねえさん達もいなくなった。別に必要ないといえば必要ないが、経費削減があからさまなのは、なんだかなぁ。賑やかであること、おもてなしの心があることはフェスの必須条件だと思うのだが、どうか。
一応、開場後のグッズ列とやらを覗いてみるが、はい諦めました。さようならBFMV(ここからなぜか略称)のハート型デスメタル・ロゴ。僕はもう、フェスで売られるグッズとはご縁のない世界に来てしまったようだ。場内はまだ空いている。気を取り直して、お腹に何か入れておこう。僕のポリシーとして、食事とトイレだけは行ける時に行っておく、というのがある。そして、この信念が今回のラウドパークにおいて効力を発揮するとは夢にも思わなかった。朝イチのロッテリア、エビバーガー単品600円を頬張る。この時は気づいていなかった。シャッターの開いている売店が極端に少ないことに。
~後編へ続く~