
- はじめに:なぜ筋トレを続けるのが難しいのか
- 筋トレ初期の高揚感とその後の現実
- 快楽適応の科学的背景
- 快楽適応を乗り越える実践的な方法
- 食事の変化がもたらした予想外の効果
- 時間の使い方の変化
- メンタルヘルスへの影響
- 長期的な視点での価値発見
- 実践的なアドバイス:快楽適応を味方につける
- まとめ:継続は新たな発見の連続
はじめに:なぜ筋トレを続けるのが難しいのか
筋トレを始めて約2年が経ちました。50代になってから自宅での自重トレーニングを始めたのですが、振り返ってみると、この継続の道のりには興味深い心理的な仕組みが働いていることに気づいたんです。
それは「ヘドニック・トレッドミル」、日本語では「快楽適応」と呼ばれる現象です。これは、どんなに嬉しい変化や成果があっても、時間が経つにつれてその喜びが薄れていき、元の感情レベルに戻ってしまうという人間の心理的な特性なんです。
僕たち50代が筋トレを継続する上で、この快楽適応をどう乗り越えていくか。今日はそのお話をしたいと思います。
筋トレ初期の高揚感とその後の現実
最初の3ヶ月:驚きの変化と喜び
筋トレを始めたきっかけは、ぽっこり出たお腹を鏡で見て愕然としたことでした。「このままではいけない」という危機感と、正直に言うと「少しでもカッコよくなりたい」という気持ちが背中を押してくれたんです。
最初は帰宅後、夕食前に腕立て伏せ10回、スクワット10回、プランク30秒から始めました。特別な器具は一切使わず、リビングの一角でひっそりと。妻や息子は特に何も言いませんでしたが、僕の中では大きな決断でした。
始めてから2週間ほどで、朝起きた時の体の軽さを感じるようになりました。1ヶ月経つと、シャツを着た時の体のラインが少し変わったような気がしました。3ヶ月経った頃には、明らかにお腹周りがすっきりして、体重も3キロ減っていました。
この時の喜びは今でも覚えています。鏡を見るのが楽しくて、「やればできるじゃないか」という自信に満ち溢れていました。同僚にも「最近調子良さそうですね」と言われることが増えて、内心とても嬉しかったものです。
半年後:当たり前になった変化
ところが、半年を過ぎた頃から、その喜びが薄れ始めました。体の変化は確実に続いていたのですが、最初のような「感動」がなくなってしまったんです。
これが典型的なヘドニック・トレッドミル現象でした。体が引き締まった状態が「新しい普通」になり、それまでの変化に慣れてしまったのです。筋トレの効果は確実に出ているのに、なぜかモチベーションが下がっていく。この矛盾した感情に戸惑いました。
快楽適応の科学的背景
なぜ人間は慣れてしまうのか
心理学の研究によると、人間は良い変化にも悪い変化にも適応してしまう性質があります。これは進化の過程で獲得した能力で、常に新しい刺激に注意を向けることで生存率を高めてきた結果なんです。
つまり、筋トレの成果に慣れてしまうのは、僕たち人間の本能的な反応なんですね。これを知った時、「なんだ、当たり前のことだったのか」と少し安心しました。
50代特有の快楽適応の特徴
50代になると、若い頃とは違う形の快楽適応が起こることに気づきました。若い時なら「もっと大きな筋肉を」「もっと重いものを持ち上げたい」という欲求が新しい刺激になったでしょうが、僕たちの年代では健康維持が主目的となります。
そのため、劇的な変化よりも「現状維持」が目標になりがちで、これが快楽適応を加速させる要因になっているのかもしれません。
快楽適応を乗り越える実践的な方法
1. 目標の多様化
筋トレ開始から1年経った頃、僕は単純な「見た目の改善」から、より多角的な目標設定に変えました。
以前の目標
- お腹を引っ込める
- 体重を減らす
現在の目標
- 階段を登っても息切れしない体力の維持
- 重い荷物を持っても腰を痛めない筋力の確保
- 良質な睡眠を得るための適度な疲労感
- ストレス発散とメンタルヘルスの向上
このように目標を多様化することで、一つの成果に慣れても、別の角度から喜びを見つけられるようになりました。
2. プロセスへの注目
成果だけでなく、プロセス自体に価値を見出すことも重要です。僕の場合、記録はつけていませんが、その日の体調に合わせてトレーニングメニューを決める「今日の体との対話」を楽しむようになりました。
疲れている日は軽めのストレッチ中心に、調子の良い日は少し負荷を上げて。この柔軟性が、継続の鍵になっています。
3. ライフスタイル全体への波及効果に着目
筋トレの効果は体の変化だけではありません。食事への意識も自然と変わりました。
以前の食事パターン
- 朝食:コーヒーとトースト程度
- 昼食:コンビニ弁当や外食中心
- 夕食:妻の手料理ですが、量が多めでした
現在の食事パターン
- 朝食:卵料理と納豆でタンパク質を意識
- 昼食:コンビニ弁当をやめて、タンパク質を多く含むメニューを選択
- 夕食:適量を心がけ、タンパク質重視の内容
これらの変化も、筋トレの「副産物」として新鮮な喜びを提供してくれます。
食事の変化がもたらした予想外の効果
タンパク質を意識した食事に変えてから、予想以上の変化がありました。午後の眠気が減り、集中力が持続するようになったんです。これは筋肉のためと思って始めた食事改善でしたが、仕事のパフォーマンス向上という思わぬ恩恵を受けました。
同僚からも「最近、会議での発言が的確になりましたね」と言われることが増えました。筋トレから始まった変化が、仕事面でも評価されるようになったのです。
時間の使い方の変化
当初は夕食前にトレーニングをしていましたが、現在は夕食後2時間空けてからトレーニングをするようになりました。この変更も、快楽適応を乗り越える工夫の一つです。
夕食後の時間は、以前はテレビを見ながらぼんやり過ごしていました。しかし今では、この時間が「自分と向き合う大切な時間」に変わりました。家族がそれぞれの時間を過ごしている中で、リビングの一角で静かに体を動かす。この静寂の中でのトレーニングが、一日の締めくくりとして心地よいのです。
メンタルヘルスへの影響
筋トレを続けて1年半ほど経った頃から、明らかにストレス耐性が向上しました。職場での理不尽な出来事に対しても、以前ほど感情的になることが減ったんです。
これは筋トレによる身体的な変化が、精神的な安定をもたらしたのだと思います。「自分の体をコントロールできている」という実感が、他の困難に対する自信にもつながっているのでしょう。
長期的な視点での価値発見
健康人生設計の一部として
50代の今、筋トレは単なる趣味や一時的な健康法ではなく、長期的な健康人生設計の重要な柱になりました。10年後、20年後も自分の足で歩き、自分のことは自分でできる。そんな未来への投資として捉えるようになったのです。
この長期的な視点が、快楽適応の罠から抜け出す最も強力な武器になっています。今日の成果ではなく、将来の自分への贈り物として筋トレを続けているのです。
家族への影響
直接的に家族が筋トレに参加することはありませんが、僕の変化は確実に家族にも良い影響を与えています。妻からは「最近、機嫌が良いわね」と言われることが増えました。息子とは以前より長時間話をするようになり、関係性も改善されました。
これらの変化も、筋トレを続ける新たな動機となっています。
実践的なアドバイス:快楽適応を味方につける
1. 小さな変化を意識的に探す
毎日同じようなトレーニングでも、「今日は昨日より呼吸が楽だった」「プランクの姿勢が安定している」など、小さな変化に注意を向けることで、新鮮さを保つことができます。
2. 周期的なメニューの見直し
3ヶ月に一度程度、トレーニングメニューに小さな変化を加えています。腕立て伏せの手の位置を変えたり、スクワットの深さを調整したり。大きな変更ではありませんが、体への新しい刺激として効果的です。
3. 他の習慣との連携
筋トレ単体で考えるのではなく、読書や音楽鑑賞、散歩などの他の習慣と組み合わせることで、相乗効果を生み出しています。
まとめ:継続は新たな発見の連続

快楽適応は確かに筋トレ継続の障壁となりますが、それを理解し、適切に対処すれば味方にもなります。大切なのは、筋トレの価値を多角的に捉え、短期的な成果だけでなく長期的な視点で取り組むことです。
僕たち50代には、若い頃とは違う筋トレの楽しみ方があります。劇的な変化を求めるのではなく、日々の小さな改善と、それが生活全体にもたらす豊かさを味わうこと。これが、快楽適応を乗り越えて筋トレを継続する秘訣だと思います。
今、筋トレを始めようか迷っている方、始めたけれど継続に悩んでいる方、どちらにも言えることは、「完璧を求めず、今日できることから始める」ということです。快楽適応は人間の自然な反応ですが、それを理解して上手く付き合うことで、筋トレは一生の財産になってくれるはずです。
一緒に、健やかで充実した50代以降の人生を築いていきましょう。