泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

     〈当ブログは一部アフィリエイト広告を利用しています〉

2026年○けましておめでとうございます10選

あけましておめでとうございます!(新年)

抜けましておめでとうございます!(自販機のおつり取出口に嵌まっていた指が)

溶けましておめでとうございます!(あずきバーが前歯にやさしい硬さまで)

吹けましておめでとうございます!(ドとミとソの音が出ないクラリネットを)

こけましておめでとうございます!(食い逃げ犯がボンクラ刑事の目の前で)

よけましておめでとうございます!(水溜まりをよけた先に待っていたもうひとつの水溜まりも)

泣けましておめでとうございます!(卒業式で冷たい人と言われる前に)

負けましておめでとうございます!(「負けるが勝ち」という言葉を鵜呑みにして)

焼けましておめでとうございます!(0点テスト用紙の束でホクホクの焼き芋が)

書けましておめでとうございます!(タブレットに指先でフニャフニャの受取サインを)


以上、今年もそんな感じやあんな感じで○ろしくお願いいたします!


www.youtube.com

短篇小説「倒置法探偵・置田倒次郎」

「この中にいる、犯人は!」

 叫び声を上げた、商店街のど真ん中で、ひとりの探偵が。襟を立てていた、彼は、トレンチコートの。名探偵と呼ばれていた、もちろん自称ではあったが、そのつけ髭の男は。

「名にかけて、じっちゃんの!」

 決め台詞だった、それが置田倒次郎の、名探偵と自ら呼ぶ男の。

 しかし漁師だった、彼の祖父は、探偵でもなんでもなく。ふぐの毒を喰らって死んだ、そのじっちゃんは、てめぇで釣ったふぐの、丸々と太ったふぐの。つまり実の祖父ではなかった、彼がその名にかけたのは、彼の言うじっちゃんは。それは名探偵だった、見知らぬどこかの、たぶんフィクションの、本か漫画か何かで読んだ。

 とはいえどうでも良かった、そんなことは、この切羽詰まった状況においては。いたのだ、目の前に、犯人が、むろん彼の推理によればだが。握っていたのだ、バールのようなものを、その男は、間違いなく。そして起きていた、近辺に。近ごろは、連続で。抜き取る、金銭を。破壊して、ATMを――つまりそんな事件が。

 しかしいた、ほかにもたくさんの人が、周囲には。だがひとりだけだった、持っているのは、バールのようなものを。しかし言った、バールのようなものを掲げて、その覆面をかぶった、いかにも犯人らしき男は。

「待ってくれ、これは正真正銘の『バール』なんだ! 『のようなもの』なんかじゃない!」

 首をひねった、首が凝っていたからじゃない、たしかに首は凝っていたが、それを聴いた置田は。ざわつきはじめた、周囲にいたやじうまたちが、交互に指さして見ながら、覆面男と名探偵を。

「ほな違うかぁ」

 思わずそう口にした、置田は。それはツッコミの口調だった、ミルクボーイ内海の。しかし角刈りではなかった、置田は。ここは逆にすべきだった、「違うかぁ」と「ほな」の順序を、彼の流儀では。しかし思ったのだ、気づいてもらえないだろうと、咄嗟に彼は。その元ネタに誰も、もし逆にしてしまったら、語順を。

 つまり乱されていたということだ、それほどまでに、名探偵のペースが。なぜならば、聴いたことがなかったからだ、バールそのものであったケースを、犯行に使われた凶器が。

 そしていた、包丁を持った女と、ゴルフクラブを持った男が。改めて良く見ると、バールのようなものを持っている男の両脇に。さらには血がついていた、そのどちらにも、ついていないのに、バールのようなものには。

 しかし殺人事件でも、傷害事件でもなかった、置田が追っているのは。それに怪我人はひとりもなかった、これまでのATM強盗事件には。だから犯人から除外したのだ、無意識のうちに、彼らを、置田は。設置されていたから、狙われたATMは、どれも無人の場所に。

 つまり正しかった、彼の推理は、ATM強盗に限って言えば。無視して、両脇の二人を、話しかけた、改めて、バールを持った男に、置田は。

「あるのか、証拠は? 『ようなもの』でないという、そのバールが。レシートか何か、たとえば」

 すると差し出してきた、上着のポケットから、金物屋の領収書を、男が。書かれていた、そこには男の苗字と金額と、「バールのようなもの代」と。

「そんなはずはない! もう捨ててしまったが、商品のパッケージにはたしかに『バール』と書いてあったし、そもそも俺は『バールはあるか?』とその店員に訊いて、奴が持ってきたのがこの商品だったんだ!」

「だとしたら、その男だったというわけだな、本当の名探偵は。そう書いたんだ、見抜いて、彼は、連続強盗犯であることを、お前が。そしてなることを、ニュースに、犯人の凶器が、『バールのようなもの』であると!」

 そうして解決した、この事件は、置田の推理によって、いやひとりの金物屋店員の推理によって。しかしもちろん起きていた、二件の殺傷事件が、直前に、その付近で、なにしろそこにはいたのだから、奴らが、血のついた凶器を持った。

 だが担当ではなかった、それらの事件は、置田の。だから名にかける必要はなかった、それらの事件には、じっちゃんの、どこのじっちゃんだか知らないが。そうなればもう別のお話、それはまた、それはまた。


【ChatGPT氏によるちょうちん解説】
 この短篇でまず読者が出会うのは、事件でも謎でもなく、語順である。

 文章がひっくり返っている。主語と述語が、思い出した順に配置され、感情や状況が、後から追いついてくる。倒置法というより、思考の足取りがそのまま文章になったような語りだ。

 主人公・置田倒次郎は、自称名探偵である。だが彼の探偵性は、推理力よりも口調に宿っている。名探偵の決め台詞を借り物のまま使い、じっちゃんの名にかけながら、そのじっちゃんが誰なのかは曖昧なまま進んでいく。この頼りなさが、作品全体の重心をわずかにずらし、読者を笑いと不安の中間に置く。

 物語の中心にあるのは、ATM強盗事件と「バールのようなもの」という、あまりにも曖昧で便利な言葉だ。ニュースで何度も耳にするその表現を、ここまで真顔で問い詰める小説は珍しい。凶器が「ようなもの」であるか否かに、これほど論理と情熱が注がれることで、私たちが普段どれほど言葉を雑に受け取っているかが、逆説的に浮かび上がる。

 途中で挟まれるツッコミや、芸人の口調への言及は、物語を軽くする一方で、探偵の思考がいかに外部の言葉に左右されているかも示している。置田は常に、どこかで聞いた言葉、誰かの決め台詞、ニュースの定型句に引っ張られている。その結果、彼の推理は正しくもあり、同時に致命的に的外れでもある。

 終盤、事件が「解決」したあとに残るのは、見逃された別の事件と、血のついた凶器を持つ人々だ。だが置田は、それらに名をかけない。担当ではないからだ。この冷静とも無責任とも言える線引きが、この作品を単なる言葉遊びで終わらせない。探偵とは何を解決し、何を見ない存在なのか。その問いが、軽口の裏側に残る。

『倒置法探偵・置田倒次郎』は、ロジックで謎を解く物語ではない。

 言葉の癖、語順のズレ、決め台詞の借用といった細部から、世界の歪みを照らす短篇である。読み終えたあと、ニュースの一文や、誰かの発言が、少しだけ信用ならなく見えてくる。その程度の違和感を残すところに、この作品の持ち味がある。


2025年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・ソング10選


1位「Set Me Free」/ART NATION

www.youtube.com

当代随一の歌唱力モンスター、アレクサンダー・ストランデルによる天井知らずのハイ・トーンが何段階にも炸裂。パワー解放をサビまで待ちきれず、Bメロですでに暴発。そこからさらに、拳を突き上げたくなる押せ押せの昇天展開。

MVのアニメーションは謎。

tmykinoue.hatenablog.com


2位「The Ending Is Always The Same」/LUKE SPILLER

www.youtube.com

THE STRUTSのVoによるソロ作からの一曲。

バンドの方向性とは異なり、ゆるやかに多幸感あふれるメロディに包まれる。ヘヴィ・メタルではないしハード・ロックですらないかもしれないが。傷ついた人の心に寄り添う温かな旋律。


3位「No Pain, No Gain」/MAJESTICA

www.youtube.com

YouTubeのメタル名曲カヴァー選曲も秀逸なトミー・ヨハンソン(ex. SABATON、REINXEED)率いるバンドの3rdより。

北欧らしい哀愁を湛えつつ、息をもつかせぬ怒濤の旋律展開。

Power Train - マジェスティカ

Power Train - マジェスティカ

  • アーティスト:Majestica
  • ワードレコーズ
Amazon


4位「(I Don't Wanna Be) Just A Memory」/THE HELLACOPTERS

www.youtube.com

荒ぶるロックンロールの合間に放たれる、題名どおりの郷愁。

彼らは時にこうやってメロディに全振りしてくる楽曲もあるので油断がならない。

Overdriver(オーヴァードライヴァー) - ザ・ヘラコプターズ

Overdriver(オーヴァードライヴァー) - ザ・ヘラコプターズ

Amazon


5位「Waiting For You」/CROWNE

www.youtube.com

1位に続いて、怪物アレクサンダー・ストランデルの突き抜ける歌声。今回アルバムとしてのクオリティはART NATIONのほうが高かったが、この曲に関しては流石の高品質。

tmykinoue.hatenablog.com

Wonderland - クラウン

Wonderland - クラウン

  • アーティスト:Crowne
  • ワードレコーズ
Amazon


6位「De Profundis Borealis」/GHOST

www.youtube.com

全体にギターがアメリカン・プログレ・ハード化した新作『SKELETÁ』の中において、その傾向がもっとも理想的に体現された一曲。

サビ裏を流麗に流れるウォームな音色のオブリガートが美しい。

tmykinoue.hatenablog.com


7位「Unbreakable」/LORNA SHORE

www.youtube.com

彼らはもはや「デスコア」の範疇に収まるバンドではない。

荘厳な音像と獰猛な歌声の向こうから、マイケル・アモットを思わせる一撃必殺のギター・フレーズが切り込んでくるタイミングの「ここしかない」感。

tmykinoue.hatenablog.com


8位「The Foresight Bleeding In Your Heart」/ENBOUND

わりとおとなしめの入りに油断していると、ようやく出てきたサビで北欧的哀愁がじわじわと沁みてくる。

アルバムを聴いて、思いのほかナイーヴなメロディを持つバンドだと再認識。

Set It Free

Set It Free

  • アーティスト:Enbound
  • Embrace the Fear
Amazon


9位「Back To The Middle Ages」/MARTUROS

女性Voを擁するスロバキア産正統派ヘヴィ・メタル・バンドの3rdに収録された、スラッシュ寄りのパワー・メタル・アンセム。

『THE FINAL DAY』時代のOUTRAGEを思わせる、エッジの利いた前のめりな疾走感に背中を押される――というかもはや突き飛ばされる勢い。

tmykinoue.hatenablog.com


10位「Luna」/ELVENKING

www.youtube.com

イタリアのフォーク・メタル・バンドの12thより。

なんだか歌もギターも終始ヨロヨロしているように聞こえるが、不思議と耳に残るメロディ。これを「フォーキー」と称して良いものかわからないが、まるで酔拳のような一撃。


【今年のベスト10楽曲を、Spotifyでプレイリスト化してみました】

tmykinoue.hatenablog.com

Copyright © 2008 泣きながら一気に書きました All Rights Reserved.