こんにちは。皆さんは最近、いつ「失敗」しましたか?
仕事でミスをして上司に詰められた時、あるいは渾身の企画がスルーされた時、私たちはこの世の終わりのような顔をしてしまいがちです。しかし、日本一の富豪であり、世界中にフリースとヒートテックを浸透させたユニクロ(ファーストリテーリング)の柳井正氏は、自著のタイトルにこう冠しました。
『一勝九敗』
……いやいや、負けすぎでしょう。プロ野球なら即刻クビ、受験なら浪人確定の勝率です。しかし、柳井氏は「10回新しいことを始めれば9回は失敗する」と断言します。大切なのは、その9回の負けから何を学び、唯一の「1勝」をいかに爆発させるか。
今回は、要約動画と書籍の内容から、現代のビジネスパーソンが生き抜くための「泥臭くも最強の生存戦略」を、4つのポイントで深掘りしていきます。これを読めば、明日からの失敗が少しだけ怖くなくなる……かもしれません。
「他業種の常識」は、自業界の「最強の武器」になる
まず最初のポイントは、「自分のビジネスに他業種の常識・良さを持ってくる」という発想です。
私たちはつい、自分のいる業界のルールに縛られがちです。「アパレル業界はこういうものだ」「メーカーならこうあるべきだ」といった、いわゆる「業界の常識」という名の呪いです。
しかし、柳井氏がユニクロのモデルを構築する際、参考にしたのは同業の服屋ではありませんでした。彼が注目したのは、アメリカの大学の生協や、セルフサービスのスーパーマーケットだったのです。
当時の日本の服屋といえば、店員がぴったり後ろについてきて「こちら、今シーズンの新作でして~」「お客様、お似合いですよ(棒読み)」と声をかけてくるのが当たり前。内向的な人間にとっては、ある種の修行のような空間でした。
そこで柳井氏は考えました。 「野菜や果物を選ぶみたいに、もっと気軽に、自分のペースで服を選べてもいいんじゃないか?」
これが、倉庫のような広い店舗にカゴを持って入り、好きな服を放り込んでレジに持っていく「セルフサービス方式」の原点です。アパレルに「スーパーマーケットの論理」を持ち込んだ瞬間、ユニクロという全く新しい業態が誕生したのです。
【ここから学ぶユーモアのヒント】
もしあなたが今、会議で行き詰まっているなら、一度「もしこのプロジェクトが、ラーメン屋のシステムだったら?」とか「もしこれを、アイドルグループの運営方式でやったら?」と考えてみてください。 「煮卵(オプション)を付ける感覚で、このサービスを有料化できないか?」 「総選挙形式で、次の新商品の色を決めようか?」 案外、業界の壁をぶち破るヒントは、あなたが昨日行ったコンビニや、週末の趣味の中に転がっているものです。
計画は「机上の空論」。仮説を立てたら、さっさと動け!
2つ目のポイントは、「あらゆる計画は机上の空論である」という冷徹な事実です。
多くの企業では、新しいプロジェクトを始める前に、分厚い企画書を作成し、何度も会議を重ね、リスクをこれでもかと洗い出します。しかし、柳井氏に言わせれば、そんなものは時間の無駄。どうせやってみるまで、上手くいくかどうかなんて誰にも分からないからです。
柳井氏のスタイルは、極めてシンプルです。
「仮説を立てる」→「即実行する」→「ダメなら修正する」
このサイクルを、超高速で回します。
「完璧な計画」を求めて3ヶ月悩むよりも、60点の仮説で今日から走り始める。走りながら壁にぶつかったら、その場で右に曲がるか左に曲がるかを決める。これが柳井流の「スピード経営」です。
私たちは、準備万端でないと不安になります。しかし、戦場で「弾が飛んできてから、どの防護服を着るか検討します」と言っている兵士は生き残れません。ビジネスも同じです。まずはフィールドに出て、泥を被りながら学ぶ。頭でっかちの秀才よりも、足の速い実践者が勝つのが、商売という名のゲームなのです。
【ここから学ぶユーモアのヒント】
「準備ができたら始めます」という言葉は、しばしば「一生やりません」の丁寧な言い換えです。 もしあなたがマッチングアプリで「もっと痩せてから会おう」と思っているなら、その間に意中の相手は他で結婚してしまいます。とりあえず今の体型のまま会いに行き、もしフラれたら、そのショックをダイエットの燃料にする。これこそが「柳井流・恋愛一勝九敗」の精神です(※責任は持てません)。
「負け」を認める勇気。しがみつくのは、ただの「心中」
3つ目のポイントは、本記事のハイライトの一つかもしれません。 「『失敗した』と判断したらすぐに撤退する。しがみつかない」ということです。
『一勝九敗』の中で、最も有名な失敗談といえば「野菜販売事業(SKIP)」でしょう。「ユニクロの服がこれだけ売れるなら、次は野菜だ!」と意気揚々と参入したものの、これが大苦戦。
しかし、ここからが柳井氏の真骨頂です。彼はわずか1年半ほどで、多額の赤字を出しながらも「この事業はダメだ」と判断し、スパッと撤退を決めました。
普通の経営者なら、「もう少し頑張れば黒字になるかも」「今まで投資したお金がもったいない」「世間に失敗を認めるのが恥ずかしい」という心理が働き、ダラダラと傷口を広げてしまいます。これを行動経済学では「サンクコスト(埋没費用)の呪い」と呼びます。
しかし、柳井氏は違いました。 「失敗は失敗。次に行こう!」 この潔さこそが、会社を致命傷から救うのです。9回の負けを「致命傷」にしないこと。かすり傷のうちに撤退し、次の「1勝」のための体力を温存しておくこと。これが、10回目に大きな花を咲かせるための絶対条件です。
【ここから学ぶユーモアのヒント】
これは飲み会でも同じです。「この飲み会、面白くないな……」と開始30分で確信したなら、無理に2軒目に行ってはいけません。 「すみません、急にヒートテックの裏表が気になってきたので帰ります」と言って(言わなくていいですが)、さっさと帰宅して寝る。その勇気が、翌日の「1勝」を生むのです。
成功は「最大の敵」。過去の栄光はゴミ箱へ捨てろ
最後のポイントは、最も耳が痛い話かもしれません。
「成功して慢心すると失敗する。成功はゴミ箱へ」
昨日までの大成功は、今日からの失敗の引き金になります。なぜなら、一度成功してしまうと、人は「これでいいんだ」と変化を止め、保守的になってしまうからです。
ユニクロが爆発的なブームになった後、柳井氏はあえて「ユニクロはもうダメだ」という危機感を社内に煽り続けました。 「フリースが売れたのは、運が良かっただけかもしれない」 「今のやり方のままでは、数年後には時代遅れになる」
柳井氏の言葉に「自己変革」というものがあります。自分たちを、自分たちの手で壊し、作り変え続ける。昨日までの「1勝」に酔いしれている暇があるなら、明日くるかもしれない「9敗」に備えて新しい種をまく。
書籍のタイトルが『一勝九敗』である理由は、ここにもあります。 「自分は成功者だ」と思った瞬間、成長は止まり、凋落が始まります。「自分はまだ9敗している途中のチャレンジャーだ」という謙虚さと危機感こそが、世界一を目指すためのエネルギー源なのです。
【ここから学ぶユーモアのヒント】
かつて学級委員だったとか、昔はモテたとか、10年前のプレゼンで褒められたといった「過去の栄光」を語り始めたら、それは老害化のサインです。 成功体験は、賞味期限の短い生菓子のようなもの。その日のうちに食べて消化するか、さもなくばゴミ箱へ。私たちの手元に残すべきは、常に「次は何をやらかしてやろうか?」という、少年のよう(あるいは悪ガキのよう)な好奇心だけです。
泥まみれの「1勝」を掴み取るために
柳井正氏の『一勝九敗』が、時代を超えて読み継がれる理由。それは、この本が「格好いい成功法則」ではなく、「泥臭い戦い方の記録」だからです。
- 他業界の知恵を盗む(徹底的にパクる)
- 考えすぎる前に、まず動く
- ダメだと思ったら、ソッコーで逃げる
- 勝った時ほど、自分を疑う
もし今、あなたが仕事や人生で「負け」が込んでいると感じているなら、ラッキーだと思ってください。あなたは今、最強の「1勝」に向かうための、正しいプロセスの中にいます。
大切なのは、負けることではありません。負けた時に「あーあ、ダメだった」で終わらせず、「次はどうしてやろうか?」とニヤリと笑えるかどうかです。
さあ、今日も元気に、新しい失敗を探しに行きましょう。 ゴミ箱には、昨日の成功を捨てて。手元には、ほんの少しの仮説だけを持って。
あなたの「1勝」が、世界を驚かせるその日まで。