【コラム】ロメオとジュリエットに“ベニスから来た商人”?
オペラにおける合唱の楽しみ方は、ただ歌うだけにとどまりません。舞台上に立つ合唱メンバーの中には、それぞれが密かに“自分なりの物語”を持ち込み、役を膨らませている人もいます。
今回ご紹介するのは、そんな自由で想像力豊かな視点から、オペラ《ロメオとジュリエット》に参加している合唱団員さんの寄稿コラムです。
「合唱にも必然性を」──そんな思いから勝手に作り上げたキャラクター設定とは?
かつて《愛の妙薬》では“うずら亭の夫婦”、そして今回の《ロメジュリ》では“ベニスから来た謎の商人”として登場(?)しているそうです!
舞台裏で繰り広げられる、合唱メンバーならではの密やかな創作と楽しみ方。
ぜひ本編と合わせて、舞台に立つ一人ひとりの背景にも目を向けてみてください。
それでは、団員・藤江泰郎さんによるコラムをどうぞ。

ー合唱としてのオペラの(勝手な)楽しみ方ー
オペラで合唱があると、音楽的に厚みも出るし、舞台にも変化が出るということで効果があるのでしよう。ただ、大勢が出たり入ったりするし、動いたりするので、下手をすると、唐突な感じになってしまったりするのではないかと思っています。
そうならないように、私は、出入りや動きに「必然性」があるように気をつけています。
「必然性」を持たせるために、勝手に自分の「物語」まで作っちゃっています。
前回の「愛の妙薬」では、今回ジェルトルードを演じている青木さんと「うずら亭」という居酒屋の夫婦をさせていただきました。ドゥルカマーラの偽薬のおかげで結ばれるネモリーノとアディーナとは逆に、最初はラブラブだった我々は、のどかだった村が近代的な街へと変貌していくにつれ、酒に溺れ、偽ドリンク中毒になり、仮面夫婦となっていくということを勝手にやっておりました。


今回のロメオとジュリエットでは、1幕でキャプレット家に招かれた夫婦をやっています。勝手に、「ベニスから来た商人」という設定にしてしまいました(このことは相方の女性にも話してもいないのですが)。ベニスでは、以前の裁判の判例で「血を流さなければ自分の肉を担保にしても借金が踏み倒せる」ことなっていることを悪用し、自分の肉を担保に借りまくり、踏み倒しまくり、財をなしました。大金を手にしていい気になって浮気をしてしまい、妻に離婚を迫られます。妻の機嫌を取るために、クレオパトラが身につけていたとされる指輪を贈り、ヴェローナへの旅行に行くことにしました。1幕では、この指輪を失ってしまうことになるのですが・・・。

本筋とは全然関係ないことをやっているとバレると、演出家の舘さんに怒られるかもしれないと、ハラハラしながら書かせていただきました。
合唱指導者の佐藤さんが、インタビューで、「ひとつひとつの木があるという状態で全体の森をどうするか」ということに意を配していると話されています。歌劇団テオ・ドーロの合唱団の一本一本の「木」は、なかなか個性的です。オペラに来られるお客様も、時には合唱団の方に目を向けていただき、「何か変なことしてないか?」探されても面白いかもしれません。
寄稿:合唱団員 藤江泰郎


【コラム】「なぜ?」に対して演出家・舘さんが引いた“補助線”
本番まで3週間を切り、稽古もいよいよ大詰めに入ってきた6月15日に、7月5日組を中心とした粗通し稽古が行われました。
そんな中、団員の方からすてきなコラムを寄稿していただきましたので、当日の写真とあわせてご紹介します。どうぞお楽しみください。

「なぜ?」に対して演出家・舘さんが引いた“補助線”
『ロメオとジュリエット』の物語をご存じの方も多いと思います。あまりに有名な話ゆえ、「ああ、あれね」と流してしまいがちですが、改めてじっくり見つめてみると、いくつもの「なぜ?」が浮かび上がってきます。
そもそも、ロメオとジュリエットは「愛し合ってしまった」という個人的な事情をきっかけに、長年対立していたモンタギュー家とキャピュレット家の和解を目指そうとします。にもかかわらず、どうしてその思いはうまく実を結ばなかったのでしょうか?
さらに掘り下げてみると、
- なぜ、ステファノ(オペラ版のみ登場の人物)のちょっとした挑発から大きな争いに発展し、メルキュシオが命を落とす事態になったのか?
- なぜ、ロメオはティボルトと戦い、彼を殺すに至ったのか?
- なぜ、ジュリエットが飲んだ毒薬の真相が、ロメオに届かなかったのか?
…と、物語の中には「なぜ?」と思わされる出来事がいくつも存在します。
数学の図形問題で、補助線を一本引くだけで答えが見えてくることがありますよね。それと同じように、演出家の舘さんはこの物語に一本の“補助線”を引くことで、これらの疑問に対して私たちに新たな視点を示してくれます。
「その補助線って、何のこと?」
そう思われた方、ぜひ7月5日・6日の本番で、その“答え”を確かめてみてください(もったいぶってすみません!でも、観劇のひとつの手がかりになれば嬉しいです)。
寄稿:合唱団員 藤江泰郎












【開催レポート】ダンスの基礎を学ぶワークショップを実施しました!
去る 5月10日(土)、オペラ舞台に欠かせない所作や動きを学ぶワークショップを開催いたしました。講師には、舞台指導・振付のプロフェッショナルである 鷲田実土里先生 をお迎えし、姿勢・歩き方・舞台上での立ち居振る舞いといった、表現の土台となる身体の使い方を丁寧にご指導いただきました。

ダンスのワークショップでは、まず柔軟体操によるウォーミングアップからスタート。続いて、舞踏会シーンに欠かせない ワルツのステップ を中心に、実際に 7月公演で使用する振付にも挑戦しました。
一般参加者の皆さんも加わってのレッスンは、いつしか一大舞踏会のような華やかさに! ギャロップやワルツのリズムに包まれ、楽しくも実りある時間となりました。


■ 参加者の声(一部抜粋)
Aさん(男性)
「以前、別団体で出演した際は振り付け指導がなかったため、みどり先生のレッスンをしっかり受けることができませんでした。今回は楽しく充実した時間を過ごすことができ、本当に良かったです。」
Bさん(女性)
「オペラの舞踏会シーンではこれまで特に指導がなく、毎回これで大丈夫なのか不安を抱えながら踊っていました。今回は、テオ・ドーロさんの場で基礎から学べたことで、自信を持って舞台に立てそうです。」
このように、参加者の皆さまからは嬉しいご感想をたくさんいただきました。
なお、鷲田先生も7月の本公演をご観劇くださる予定とのこと。今回学んだことを舞台上でしっかりと活かし、より豊かな表現に繋げていきたいと思います。



合唱指揮者 佐藤尚之氏にインタビュー
指導者紹介 第2弾
今回は、オペラ制作に欠かせない存在、合唱指揮者にスポットを当ててみました。
オペラの本番で指揮をするのは通常「指揮者」ですが、その舞台の成功を支えているのが「合唱指揮者」です。表には出ませんが、本番までに合唱団を導き、音楽的な完成度を高める……つまり、歌えるように訓練し、音色を整え、音楽に命を吹き込むという極めて重要な役割を担っています。
今回は、そんな「縁の下の力持ち」である合唱指揮者、佐藤尚之さんにお話を伺いました。
インタビュアー::今日は歌劇団テオ・ドーロを代表して、事前に団員さんから募った質問をもとに、佐藤さんにいくつか質問させていただきます。よろしくお願いします。
Q1:ご指導の際に気をつけてらっしゃることは何ですか?三つ教えてください。
佐藤氏:気を付けていることに関係するのかもしれませんが、毎回の練習が楽しかったと思える内容にしたいとは思っています。本番までの道のりは長いので、暗譜とか苦しいこともつらいこともあるかもしれませんけど、音楽は楽しんでほしいですね。あと二つ……、えーとなんだろうな(笑)、合唱は木と森の関係だと思っているのですが、ひとつひとつの木があるという状態で全体の森をどうするかを練習をしながら考えています。森からは作り始めないですね。

Q2:一番好きな合唱指揮者は誰ですか?
佐藤氏:樋本英一先生です。私の師匠になりますが、どのような音楽・合唱でも奇をてらわず音楽を作り上げる姿が憧れです。
Q3:練習中に発声指導もしてくださり、大変良いお声と思っています。テオ・ドーロでキャストはされないのですか?
佐藤氏:ありがとうございます(笑)。 どちらかというと裏方が好きなので。テオ・ドーロでは裏方でいると思います。
Q4:オペラで得意な役、好きな役、歌ってみたい役を教えてください。
佐藤氏:得意な役かどうかは分かりませんが、コミカルな役をやることが多いですね。オペラよりはオペレッタのキャスティングが多いです。パンフレットのプロフィールに演じた役が載ると思いますが、演じた役はどれも好きですね。
Q5:オペラの中で、特に合唱が素晴らしいと思う作品をいくつでも教えてください。
佐藤氏:オペラで合唱が素晴らしい作品といえば、マイナーな演目かもしれませんが、マイアベーヤの「悪魔のロベール」ですね。ヴェルディの「トロヴァトーレ」の合唱も好きです。
Q6:佐藤先生は、「うまく歌うこと」「きれいに歌うこと」「声を揃えて歌うこと」ではないことを合唱団に求めておられるように感じます。指導されている時のお気持ちをお聞かせください。
佐藤氏:うーんと、 「うまく歌うこと」「きれいに歌うこと」「声を揃えて歌うこと」は求めてないことはないですよ(笑)。私の場合、どの音楽にも共通しているところではありますが、ビートやパッションを感じられない演奏はつまらないなと感じるので、「うまく歌うこと」「きれいに歌うこと」はベースであって、結局のところは「そのシーンにふさわしい音楽かどうか」が大事かなと思っています。

Q7:ティボルトが死んだ後合唱が歌う「おお!悲しみの日」で、練習の時に、佐藤先生は、「怒りながらでも泣きながらでもいいから何かの気持ちを込めて歌うよう」指導してくださいました。泣きながら歌ったのは初めてでしたが、面白かったです。でも、あれは練習の時の話で、本番では嗚咽を交えて歌ってはまずいですよね。
佐藤氏:前の質問と被るかもしれませんが、私個人的には全然まずいとは思いません。そのシーンにふさわしい空気感が出るかどうかじゃないですかね。あ、でもマエストロの山内さんがダメって言ったらダメです(笑)。
Q8:お酒がお好きとお見受けしましたが、日本酒、ビール、ウィスキー、ワイン何がお好きでしょうか?お好きな銘柄があればお教えください。
佐藤氏:なんでも好きです! 意外と人見知りなので、練習後に一緒にお酒飲みたい人は誘ってください(笑)。

Q9:「数的劣勢?」の男声ですが、本番に向けてお言葉をいただければ幸いです。
佐藤氏:数的劣勢なんて全然感じないですけどね。合唱はひとくくりにされちゃうことが多いですが、全然そんなことないと思うんですよね。個々の人たちがもっと目立っていいと思いますので、男声陣はもっともっと目立ってください!
Q10:前回の本番当日や歌オケ合せのときの身の振る舞いや立ち回りが只者ではない印象を持ちました。舞台慣れしているというか……。落ち着いて周りをすごくよく見ていて、安心感と尊敬を抱いてます。そのような振る舞いができるに至った経歴を是非伺いたいです!
佐藤氏:只者ではないって、面白いですね(笑)。 自分も舞台人なので多くはその経験だと思います。ただ、オペラの舞台を作り上げるって自分が演奏する、演じるだけじゃない部分があるじゃないですか。例えば、本番の舞台の準備や片づけ……、そうですね、幕を吊ったり、山台を組んだり、歌を歌うことだけじゃなくて、そういう経験は活きていると思います。あと裏方が好きなのでジャンルは違うのですが、制作に関わったりした経験も活きていると思います。
インタビュアー: ありがとうございました!



ダンスの基礎を学ぶワークショップ
日 程: 2025年5月10日(土) (事前申し込み制)
時 間: 13:00~17:00
場 所: 和光市民文化センター サンアゼリア 企画展示室
参加費:団員 1,000円/一般 2,000円 (当日受付にてお支払い願います)
対 象:オペラなど舞台に興味がある方なら誰でも参加可能
服装/持ち物:男女共通 フェイスタオル
女性はロングスカート&パンツスタイル 本番で履くヒール靴
■内容
舞台で映える!所作とペアダンスの基礎ワークショップ
美しい立ち方・姿勢・歩き方、手の動きやしぐさなど、
舞台上での所作の基本を丁寧に学びます。
さらに、ペアでの歩き方や手の取り方、
ワルツを中心とした基本的なペアダンスにも挑戦。
オペラや舞台での表現力を高めたい方、ダンス初心者の方も大歓迎!
✉一般参加のお申し込みはこちらまで
■ 講師紹介
鷲田実土里 氏

4/1発売「音楽と友」。書店へ急げ!
今年も発売されました。4/1版「音楽と友」
あと少しで4/2になっちゃう 早く買いに行かないと売れきれちゃう~。
(今年もジェルトリュード役の青木菜津美さん作成です。なお、発売は4/1限定です。)
