
序論
日本経済の最大の課題は、需要ではなく「供給不足」にある。 その中心にあるのが 人手不足 だ。
ただし、問題は単純に「働く人が少ない」ことではない。 より深刻なのは、労働投入量(働く総時間)の縮小である。
就業者数は過去最多を更新しているにもかかわらず、労働時間は年々短くなり、結果として労働供給力はむしろ低下している。
労働投入量の実態:人数は増えても、働く時間は減っている

労働投入量の実態:人数は増えても、働く時間は減っている
【労働投入量の推移】
| 年代 | 就業者数(万人) | 年間総労働時間(一般) | 年間総労働時間(パート) | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1990 | 約6,200 | 約2,100時間 | 約1,300時間 | バブル期、長時間労働 |
| 2000 | 約6,400 | 約2,000時間 | 約1,200時間 | 非正規雇用が増加 |
| 2010 | 約6,300 | 約1,950時間 | 約1,100時間 | リーマン後の調整 |
| 2015 | 約6,500 | 約1,900時間 | 約1,050時間 | 働き方改革が進む |
| 2020 | 約6,700 | 約1,850時間 | 約950時間 | コロナ禍で急減 |
| 2023 | 約6,850 | 約1,820時間 | 約930時間 | テレワーク普及 |
| 2025 | 約6,860〜6,870 | 約1,800時間弱 | 約900時間弱 | 高齢者・女性の就業増 |
失業率は2%台で、働ける人はほぼ働いている状態。
それでも企業の人手不足感は強く、日銀短観では 雇用人員判断DIが▲36%Pt(2024年度平均) と深刻な供給制約を示している。
さらに、帝国データバンクの調査では 人手不足倒産が過去最多 を更新している。
労働供給を縛る“隠れ壁”とは何か
供給不足を悪化させているのは、統計に表れにくい制度・文化的な制約―― いわゆる “隠れ壁” である。
✅ 1. 税制・社会保険制度の壁
これらが「働きすぎると損をする」構造を生み、労働時間を抑制している。
✅ 2. 企業文化・雇用慣行
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扶養内で働きたい人に合わせたシフト制限
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長時間労働を前提とした組織文化
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柔軟な働き方を阻む評価制度
制度よりも“空気”が労働参加を縛っているケースも多い。
✅ 3. 家庭・地域社会のジェンダー役割
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家事・育児・介護の負担が女性に偏る
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地域の慣習や期待がフルタイム就業を難しくする
これらの要因が積み重なり、労働投入量の縮小を招いている。
結論:必要なのは“働き方そのもの”の見直し
残業規制を緩めるといった一時的な対策では、日本の供給不足は解消しない。
今求められているのは、働き方そのものを根本から見直すことである。
✅ 取り組むべき方向性
これらは制度だけでなく、社会に深く根付いた価値観や習慣にも関わるため、解決は容易ではない。
しかし、この“見えない壁”を放置すれば、労働力不足は慢性化し、日本経済の活力は確実に失われていく。