こんにちは。Speee リフォームDX事業本部 開発責任者の佐藤です。
本記事は Speee Advent Calendar 8日目の記事となります。 前日の記事はこちら。
私たちは「DX Democracy」および「産業AX(AI Transformation)」を掲げ、リフォーム産業という巨大かつ複雑な領域の変革に挑んでいます。
前回の記事「リフォームDX開発の組織紹介〜ミッション編〜」では、そのビジョンと、私たちが解決しようとしている構造的な課題についてお話ししました。 今回は、そのビジョン実現に向けて始動した「10の挑戦」プロジェクトの進捗と、現場で起きている具体的な変化について、振り返りを兼ねてお伝えします。
華々しい成功譚ではなく、地に足をつけて進めてきた実装の記録と、そこから見えてきた今後の課題についての共有です。
※ 産業AXについて tech.speee.jp
はじめに:私たちが目指しているもの
私たちは現在、以下の3つの領域で変革を進めています。
- ユーザー接点の変革: AIによる対話体験の刷新
- 事業者支援の変革: for B向け業務インフラ作り
- 開発組織の変革: 生成AI前提のDevOps
これらは単なる機能追加ではなく、産業のバリューチェーン全体をアップデートするための取り組みです。プロジェクト発足から数ヶ月、構想段階を抜け、具体的な実装フェーズに入ったいくつかの取り組みについて、その進捗をご報告します。
なお、各プロジェクトにおける技術的な詳細や具体的な実装内容については、今後公開予定の各担当者による連載記事に譲ります。本記事では、それらに先立ち、事業部全体で今どのような変化が起きているのか、その全体像と概観をお伝えすることに留めます。
直近の進捗:現場で起きている4つの変化
1. 「AIを前提としたオペレーション構築」プロジェクトを始動することができた
これまで構想段階だった「AIを前提としたオペレーション構築」が、正式なプロジェクトとしてスタートしました。 これは、ユーザーと事業者を繋ぐ私たちのカスタマーセールス(CS)組織において、AIとオペレーションを高度に融合させるためのロードマップ策定から始まっています。
ここ半年間で複数のR&Dプロジェクトを実際に走らせることができており、「AIがどのようにセールス活動を支援できるか」「人とAIがどう役割分担すべきか」という問いに対して、机上の空論ではない実践的な解像度を高めることができています。 単なる業務効率化に留まらず、顧客体験の質的向上に寄与する新たなオペレーションモデルの構築に向けて、着実な一歩を踏み出しています。
個人的な感覚としても、想像していたよりも早く成果が出始めているなと感じています。R&Dといっても、開発チームで検証や調査をするというより、現場が既にAIによる改善を強く望んでいて、どんどんコラボレーションが生まれて開発が進んでいるような状態です。オペレーションが多いバーティカル領域とAIの親和性の高さを肌で感じています。
2. 全社的なAI活用エコシステムが整ってきた
開発組織だけでなく、事業部全体でAIを活用するためのエコシステムが整ってきました。 全社的な基盤整備により、GeminiやDifyといったLLMツールを、セキュリティを担保した状態で誰もが利用できる環境が構築されています。
特にDifyを活用できる範囲が広がったことで、現場の動き方に変化が生まれています。 これまではエンジニアと連携しながら進めていた機能開発の検証フェーズを、ビジネス職がDifyを使って単独で代替したり、場合によってはDify上のアプリケーションだけで業務課題を解決してしまう事例も出てきました。
「開発者の手を借りずに、まずは自分たちで検証まで済ませる」という動きが標準的になりつつあり、後述する「プランナーによる実装」へとつながる土壌が醸成されています。
※ 全社的な基盤整備について tech.speee.jp
3. for B向けにAI型業務支援ツール「Budii」をリリースできた
これまで私たちはマッチングプラットフォームとして価値を提供してきましたが、さらに踏み込んで、事業者(For B)の業務を直接的に支援するための土台として、AI型業務支援ツール「Budii」をリリースすることができました。
マッチングサービスを超えた領域への挑戦ですが、すでに現場での活用が進み、確かな結果が出始めています。 このプロダクトの最大の特徴は、企画当初から「AI前提」で設計されている点です。
AIを「後付けの便利機能」としてではなく、システムの核として据えることで、従来の手法では膨大にかかっていた開発コストを大幅に圧縮したり、これまでにないアプローチでユーザー体験を劇的に改善するような事例も実際に生まれ始めています。 現状はまだスタート地点に立った段階ですが、将来的にはリフォーム事業者のあらゆる業務を支えるAll-in-Oneプロダクトへの進化を目指しています。
4. 開発環境のAI化が進み、プランナーによる実装が当たり前になってきた
開発組織においても、役割分担に大きな変化が起きています。 まず、プランナー職を含めた開発に関わる関係者全員に「Claude Code」などの生成AIコーディングツールを配布しました。これに伴い、もともとWindowsユーザーだったBiz職メンバーが、開発のためにMacへ切り替えるといった動きも見られ、職種の垣根を超えた開発体制が整いつつあります。
現在では、「簡単な機能開発や改修はプランナーが自ら行う」ことが当たり前になってきました。仕様の理解においても、いきなりエンジニアに質問するのではなく、まずAIに聞いて整理してからコミュニケーションを取るフローが定着しています。 また、プランナーがプロトタイプを作成して動作確認を行うレベルまでは普通に行われるようになり、局所的ではありますが、開発生産性が従来の2〜3倍に向上した事例も生まれています。
その結果、エンジニアは実装作業の手離れが進み、技術的な実現可能性の検証や、複雑なデータモデルの設計といった、より高度で専門的な業務に時間を割ける割合が確実に増えてきました。
全体的に、プランナーもエンジニアも、AIを通して仕事のレベルが一段階上がった感じがしています。プランナーは隣接領域までカバーするのが当たり前で、連携する企画の質としても求められるレベルが上がりました。その分、プランナー同士やエンジニアからの要求レベルも上がっています。エンジニア側も単純な実装はプランナーでもできてしまうので、より専門的で、高度な問題解決力が要求されるように変わってきています。
AIによって健全な切磋琢磨が起きて、関わるメンバーの仕事のレベルが引き上がるというのは非常にいい流れだなと思っています。
今後の課題と展望
一定の進捗は見られましたが、ビジョン実現にはまだ多くの課題が残されています。 AI活用を進める中で、私たちは新たな「痛み」や「ボトルネック」にも直面しています。
既存システムとオペレーションの解像度向上
既存のデータ構造やオペレーションの複雑さが、変革のスピードを鈍らせる要因となっています。
- 影響範囲の拡大: 既存のデータが複数のドメインを複雑に横断しているため、一箇所の改善が及ぼす影響範囲が極めて大きく、調整のために多くのステークホルダーを巻き込まざるを得ず、プロジェクトが一時的にストップしてしまうといった事象が起きています。
- 新たなボトルネック: プランナーの実装参加によりプルリクエストの作成までは劇的に早くなりましたが、その反動として、CI(継続的インテグレーション)の実行待ち時間が新たな深刻なボトルネックとして顕在化し始めました。
- 部分最適の罠: 現場レベルでのAI活用による個別最適は進んでいますが、バリューチェーン全体を俯瞰したオペレーションのデザインが追いついておらず、部分的な改善に留まってしまうケースも課題です。
今後は、技術的負債の解消やデータアーキテクチャの再設計に加え、全体最適の視点でのオペレーション設計に、より一層注力する必要があります。
開発者の役割の再定義と育成
技術の進化に伴い、エンジニアに求められる役割も変化しています。 単に仕様通りに機能を実装するだけでなく、先進的な技術をキャッチアップし、それを自社の事業課題にどう適用できるかを探る「R&D的な動き」や、技術的な実現可能性を検証しつつ事業価値へと転換する「事業開発的な動き」が、より一層重要になってくると考えています。
同時に、求められるスキルの基準が高まることで、新卒や若手メンバーの育成が難しくなるという新たな課題も生まれています。 これまでは「まずは簡単な実装タスクから」というオンボーディングが可能でしたが、そうしたタスクはAIやプランナーが担うようになります。高度な設計や技術検証といった役割を、いかにして早期に担えるように育てていくか。新しい時代の開発組織に即した育成システムの整備が急務となっています。
おわりに
これまで「構想」や「ビジョン」として語ってきた「産業AX」という言葉が、こうして少しずつですが具体的な形になり、進捗をご報告できる段階まで来れたことを、開発責任者として非常に嬉しく思っています。
もちろん、今回触れたように、理想と現実の間にはまだまだ多くのギャップがあり、解決しなければならない課題は山積みです。 技術的な負債の解消、複雑なオペレーションの再設計、組織のアップデート……どれも一朝一夕に片付くものではありません。
だからこそ、私たちは焦らず、けれど止まることなく、目の前の課題に対して着実に向き合い続けていきたいと考えています。
最後に、私たちと一緒にこの「産業AX」という長く険しい、しかし最高にやりがいのある挑戦を共にしてくれる仲間を募集しています。 華やかなAI活用だけでなく、その裏にある泥臭い現実も含めて面白がれる方、ぜひ一度お話ししましょう。
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次回以降の記事では、今回触れた各プロジェクトを担当するメンバーが、具体的な取り組みの内容や直面した技術的課題について、より詳細にお話しします。