
日本アカデミー賞の最優秀作品賞を受賞した「侍タイムスリッパー」という映画。
いろいろなところで話題になっていますね。
そして見た人は概ね好評です。
Amazonプライムビデオでも公開されていますので、視聴しました。
映画の概要
監督:安田淳一
脚本:安田淳一
撮影:安田淳一
編集:安田淳一
製作会社:未来映画社
公開:2024年8月17日
上映時間:131分
製作費:2600万円
興行収入:およそ10億円~
キャスト
高坂新左衛門(山口馬木也)
山本優子(沙倉ゆうの)
住職(福田善晴)
住職の妻(紅萬子)
殺陣師関本(峰蘭太郎)
撮影所所長(井上肇)
錦京太郎=心配無用ノ介(田村ツトム)
斬られ役(安藤彰則)
風見恭一郎(冨家ノリマサ)
あらすじ
幕末の京都にて、会津藩の実直な藩士、高坂新左衛門は密命を受けます。
それは長州藩士、山形彦九郎の暗殺でした。
山形彦九郎と退治した高坂新左衛門。
どちらも腕に覚えのある強者で、命を賭した戦いですが、突如落雷によりタイムスリップしてしまうのでした。
気がつけば彼は、京都の時代劇の撮影所にいました。
状況かわからず、撮影所の機材で頭部をぶつけて倒れてしまいます。
怪我をしている彼を病院へ連れて行ったのは、撮影所で働いている助監督の優子さん。
病院で治療を受けたものの、彼は病院を脱し、未来に来たことを徐々に察します。
彼はあるお寺の門前で、もう一度落雷にあって過去に戻ろうとしますが、衰弱して再び倒れてしまうのです。
そんな彼を庇護したのはお寺の住職。
この寺は撮影所にも近く、時代劇ロケとしてもよく使われる場所で、優子とも懇意にしている場所でした。
気さくな住職夫妻のお陰で居候することになりますが、テレビの時代劇を見て、感動します。
ひょんなことからエキストラとして急遽出演することになり、斬られ役として生きていくことこそが自分ができる仕事だと考え、時代劇の斬られ役集団に入門します。
高坂は変わり者と見られながらも、斬られ役として真面目に努力をした結果、徐々にその仕事も増えていきます。
時代劇から卒業したとされる大スター、風見恭一郎が主演の時代劇映画が作られるという発表がありました。
斜陽な時代劇にとっては大きなニュース。撮影所の人たちも注目しています。
もともと時代劇出身の風見。
この撮影所にも風見をよく知るの人間はいるのですが、よりによって役者としては無名の高坂を準主役に指名してきたのでした。
高坂は役者のキャリアもなく、そんなだいそれた役を自分には分不相応と辞退するのですが、風見は自分の正体を明かします。
風見は高坂と対峙していた長州藩士、山形彦九郎だったのです。
当時若かった山形ですが、高坂より30年も前にタイムスリップしていたのでした。
そして山形も高坂と同様に時代劇の斬られ役としてキャリアをスタートさせ、今のスターの地位を築き上げた人物。
彼が活躍できた頃は時代劇が活況でしたが、今は風前の灯であり、なんとか時代劇を残したい、本物の侍の姿を残したい、という気持ちで高坂に語りかけるのです。
感想
日本アカデミー賞最優秀作品賞となったこの映画、なんと自主制作映画で上映は1館からスタートしたらしいです。
製作費も2600万円という低予算映画。製作会社は未来映画社という会社で全然知らない会社でした。
2600万円というのはとても低予算な映画なのですが、未来映画者にとってはとてつもない投資で売れなければ倒産するというくらいの賭けだったようですね。
なんといっても監督であり、会社の代表でもある安田淳一さんの自己負担がほとんどで、撮影が終わったときには通帳の残高はわずか7000円だったとか。
これまで未来映画社は「拳銃と目玉焼き」「ごはん」という映画を作っていたそうですがどちらも知らない映画です。どちらもヒロイン役をしていた沙倉ゆうのさんが出演されているようです。
その前2作の製作費からすると、とんでもない「大作」です。
自主制作映画だけあって、前2作は台本もなかったそうです。
こういうシーンを撮りたい、作りたいというのはすべて監督の頭の中にあって、それらを制作陣が共有するのが難しいようですね。
それにしても監督さんのみならず、助演の女優さんである沙倉さんもスタッフとして演じるだけではなかったみたいですね。
下の動画では、スタッフの一員でもある沙倉ゆうのさんが監督批判をしている?とも受け取れる発言がありますが、親しい間柄なのでしょうね。
普段は日本映画の未来を考えると、このままでは厳しいとこぼしている方なのですが、それは主に予算的なこと。
ハリウッド大作の巨額予算と比べると日本映画は本当に少ない予算で映画を作っています。
委員会方式ということでいろんなスポンサーやら芸能会社とかから協賛を得て、作られるとある程度の予算は確保できるものの、中途半端。
ある程度予算を集めても、ハリウッドのみならず、中国や韓国の大作映画に比べても勝てないなという実感しかないです。
ただ、面白い映画とは、予算で豪華なキャストを使って、贅沢な資材やらセット、あるいは巨額のCG技術を駆使して映像的にすごいものを作ったとしても、それが面白いかどうかを決めるのは観客です。
そのように強く思うようになったのはマーベル作品の影響でしょう。
マーベル作品は派手でわかりやすく、予算も桁違いで羨ましい限りでした。
日本の特撮はどこの田舎の採石場で撮影したんだ?という感じの映像が多く、お金はかけていません。
破壊される車や建物、爆発シーンなどどうやっても勝てないわけですが、そればかり見続けると正直飽きてしまいます。
特にディズニー資本になってからはマーベル作品は本当につまらなくなったなと感じています。
シリーズ化するために無理やりこじつけたような設定とか、観客そっちのけではないかと思ってしまうんですね。
ヒーロー物は単純でわかりやすいです。子どもが夢中になるのはそういうところもあるわけですが、あれこれヒーローを出して、それらを一つのスクリーンで活躍させるというコンセプトは本当に楽しく、ワクワクしました。
しかしそれらにも限界があります。どうしてもヒーローたちを集めすぎると矛盾が生じてしまい、それの辻褄合わせで白けてしまっています。
予算があれば、CGがあればどんな映像も作られてしまう時代だけに、そこに作り手の情熱のようなものがだんだん感じなくなってきました。
この映画は監督だけでなくいろんなことを一人でやってしまう安田淳一さんの熱量が出演者たち、主演の山口馬木也さんたちにも乗り移ったかのようなものを感じます。
クライマックスの真剣勝負は、もちろん撮影で真剣を使っていることはないのですが、命を奪うために振るう真剣の迫力が伝わってきます。
役者さんって本当にすごいですね。
とにかくシンプルにストーリーも面白いですし、笑いとともに日本人の奥にある心を刺激する部分が見事に調和していると思います。
子供の頃にはよく放映していた時代劇ですが、最近は本当になくなってしまいましたね。これを機会にまた面白い時代劇が復活することを願いますね。