「ポーギーとベス」についてはジャズファンにとってもすっかりお馴染みだと思います。アメリカを代表する作曲家ジョージ・ガーシュウィンが1935年に制作したオペラで、ジャンル的にはクラシック音楽に位置づけられるのですが、南部の貧しい黒人達を主人公にした物語で、音楽にもジャズやブルース、ゴスペル等黒人音楽の要素を詰め込んでいるとあって、昔からジャズマンにも大人気です。”Summetime”"I Loves You, Porgy"をはじめ、収録曲の多くはジャズスタンダード化していますし、作品まるごとのカバーも多いですね。
一番有名なのはマイルス・デイヴィス、及びエラ・フィッツジェラルド&ルイ・アームストロングでしょうが、他にもオスカー・ピーターソン、ハンク・ジョーンズ、MJQもカバー作品を残しています。個人的には歌手のダイアン・キャロル(過去ブログ参照)のバージョンがお気に入りです。今日ご紹介するビル・ポッツの作品もその一つですが、そもそもビル・ポッツって何者?ですよね。調べたところ白人ジャズマンでもともとはピアニストだったそうですが、50年代以降はもっぱらアレンジャーとして活躍。とは言えリーダー作は少なく、本作の他には60年代に「バイ・バイ・バーディ」と言うミュージカルのジャズ版を残しているぐらいです。
そんな素性の良くわからない人物ですが、一体どういう人脈を駆使したのかものすごい顔ぶれが集まっています。メンバーは総勢19名。トランペットにハリー・スイーツ・エディソン、アート・ファーマー、チャーリー・シェイヴァース、マーキー・マーコウィッツ、バーニー・グロウ、テナーにアル・コーン&ズート・シムズ、アルトにフィル・ウッズ&ジーン・クイル、バリトンにソル・シュリンジャー、トロンボーンにジミー・クリーヴランド、フランク・リハック、アール・ソープ、ロッド・レヴィット、ボブ・ブルックマイヤー、リズムセクションがビル・エヴァンス(ピアノ)、ジョージ・デュヴィヴィエ(ベース)、チャーリー・パーシップ(ドラム)、ハービー・パウエル(ギター)です。録音は1959年1月15日、ユナイテッド・アーティスツ・レコードへの吹き込みです。

全13曲、有名スタンダード化した曲と普段あまり演奏されない曲が半々と言う構成です。オープニングトラックは劇中でも最も有名"Summertime"。通常はスローバラードで演奏されることが多いですが、ここではアップテンポで料理されており、ゴージャスなアンサンブルに乗ってスイーツ・エディソンのミュートトランペット→アル&ズートのテナーソロがフィーチャーされます。続く"A Woman Is A Sometime Thing(女は気まぐれ)"も同じくアップテンポの演奏で、ソロはジーン・クイル→アール・ソープのトロンボーンです。3曲目"My Man's Gone Now"も良く知られた定番曲。ここでは原曲通りのバラード演奏で、マーキー・マーコウィッツのトランペットが哀愁漂うメロディを奏でます。4曲目"It Takes A Long Pull To Get There(そこに漕いで行くのは大変だ)"はあまり知らない曲。ここでソロを取るのはバリトンサックスのソル・シュリンジャーに待ってましたのビル・エヴァンス(ただし短い)、ジーン・クイルにジミー・クリーヴランドです。5曲目"I Got Plenty O' Nuttin'"はまずジーン・クイルがアルトでメロディを奏で、アル&ズートがそこに絡む展開。6曲目"Bess, You Is My Woman"は本作品のハイライトと言っても良い美しいバラードです。溜息の出るような絶品のアルトソロを聴かせるのはフィル・ウッズです。7曲目"It Ain't Necessarily Sn"はアル・コーンをフィーチャーした演奏。
8曲目はメドレーで"Prayer〜Strawberries〜Honey Man And Crab Man"とあまり聞いたことない曲ばかりです。ジミー・クリーヴランド、ズート・シムズ、ソル・シュリンジャー、ビル・エヴァンスらがソロを取ります。9曲目"I Loves You, Porgy"も有名なバラード。ゆったりしたアンサンブルに乗ってビル・エヴァンス→アート・ファーマー→ズート・シムズとソロをリレーします。10曲目"Clara, Clara"はよく分からん曲。11曲目"There's A Boat Dat's Leavin' Soon For New York(ニューヨーク行きの船が出る)"はエヴァンス→フィル&クイルらを、12曲目"Oh Bess, Oh Where's My Bess"はバラードでボブ・ブルックマイヤーのトロンボーンをフィーチャーした曲です。ラストの"Oh Lawd, I'm On My Way"はアップテンポの演奏でゴージャスなアンサンブルに乗って各人が短いソロをリレーして締めくくり。チャーリー・パーシップのドラミングがグッジョブです。以上、リーダーのポッツはよく知らない人物ですが、内容はオールスターメンバーのプレイが楽しめる充実の1枚です。