生涯に約50枚ものリーダー作を残したビル・エヴァンスですがそのほとんどはトリオまたはソロピアノで、管楽器との共演は多くありません。晩年にハロルド・ランドをゲストに迎えた「クインテッセンス」等数作品ありますが、全盛期の60年代だとフレディ・ハバードと共演した「インタープレイ」、没後に発表されたお蔵入り作品でズート・シムズをテナーに迎えた「ルース・ブルース」、そして今日ご紹介するジェレミー・スタイグとの「ワッツ・ニュー」ぐらいではないでしょうか?なお、エヴァンスは1961年にもハービー・マンの「ニルヴァーナ」にも参加しており、フルート奏者との共演はこれが初めてではありません。
スタイグはこの作品以外ではあまり知られていませんが、録音当時26歳の気鋭のフルート奏者で、1963年にコロンビア盤「フルート・フィーヴァー」でデビューしています。エヴァンスはその作品等でのスタイグのプレイを気に入り、どちらかと言うとエヴァンスからの働きかけによって共演が実現したようですね。メンバーはエディ・ゴメス(ベース)とマーティ・モレル(ドラム)。当時のビル・エヴァンス・トリオのレギュラーメンバーです。

全7曲、オリジナルは1曲だけで他は有名スタンダードが中心です。聴く前はエヴァンスのリリカルなピアノにフルートが加わることによりどんなロマンチックな演奏が繰り広げられるのかと思いますが、1曲目のセロニアス・モンク”Straight, No Chaser"からその印象は思いっきり覆されます。ソロ一番手はエヴァンスでいつもよりアグレッシブなタッチのピアノを聴かせますが、それより続くスタイグのプレイが予想を超える激しさで、音がかすれんばかりにハードにフルートを吹き鳴らすさまは前衛ジャズと言っても良いほどです。続く"Lover Man"はスタンダードのバラードでテンポそのものはだいぶ落ち着きますが、スタイグのフルートソロは相変わらず攻めてます。3曲目はタイトルトラックの”What’s New"でこの曲が本作の中で一番ソフトで聴きやすい演奏かもしれません。4曲目”Autumn Leaves”は何と言ってもエヴァンス「ポートレイト・イン・ジャズ」の名演が思い浮かびますが、ここではまずゴメスがベースソロを取り、その後エヴァンスの鮮やかなピアノソロ→スタイグのアグレッシブなフルートソロとリレーします。
後半(B面)1曲目は本作唯一のエヴァンスのオリジナル"Time Out For Chris"。曲はブルースで出だしはスローですが徐々にスタイグのフルートが激しさを増していきます。続くエヴァンスのブルージーなピアノソロも聴きモノです。6曲目”Spartacus Love Theme”は1960年のスタンリー・キューブリックの映画「スパルタカス」のためにアレックス・ノースが書いた曲。ロマンチックなバラードで、エヴァンス以外にもラムゼイ・ルイス、ユセフ・ラティーフ、アーマッド・ジャマルら多くのジャズマンに取り上げられています。ここでもリリカルな演奏で、スタイグも比較的おとなしめ。ラストはマイルス・デイヴィスの”So What”。エヴァンスも参加したご存知マイルス・デイヴィス「カインド・オヴ・ブルー」の1曲ですね。まずエヴァンスが原曲よりかなりテンポアップしたピアノソロを聴かせ、続いてスタイグが激しくフルートを吹き鳴らし、ゴメスのベースソロ→テーマに戻っておしまい。以上、エヴァンスの中ではかなり異色の作品ですが、いつもと違うハードな彼の一面も悪くないと思います。